【けい】~【けを】

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・鯨飲馬食
(げいいんばしょく) 《四熟》 鯨のように大量の酒や水を飲み、馬のようにがつがつ食べる。無闇にたくさん飲み食いすること。また、その勢いが凄(すさ)まじいこと。 類:●牛飲馬食●痛飲大食●暴飲暴食 出典:「史記−范雎蔡沢列伝」「(確認中)」
・形影相弔う
(けいえいあいとむらう)[=相弔(あいちょう)す] 自分の形と影とが互いに憐み慰め合うと言う意味から、孤独で、訪れてくれる人がいないこと。 類:●形影自ら相憐れむ 出典・人物:
李密(りみつ) 蜀・西晋に仕えた政治家。別名虔(けん)、字は令伯。224〜287年。祖母の看病のために、天子のお召しを断わり、「陳情評」を奉(たてまつ)った。
・形影相憐
(けいえいそうりん) 《四熟》 鏡に映った自分と現実の自分が、互いに憐れみ合う。自分で自分自身を哀れむこと。 出典:「唐詩選−第九」 「宿昔?雲志、磋[足+它]白髪年、誰知明鏡裏、形影相憐」 ★いつの間にか年老いて、鏡中に自己の老残の姿を見た悲哀の言葉。 ★「形影、自ら相憐れむ」と読み下す。
・形影相伴う
(けいえいあいともなう) 形とその影がいつも一緒であるように、夫婦などが睦(むつ)まじく、離れない様子、人が仲の良い様子。 類:●鴛鴦(えんおう)の契り偕老同穴(かいろうどうけつ)●比翼連理
・形影相同(けいえいそうどう) 《四熟》 形が曲がっていれば影も曲がる。転じて、心の善悪と行ないの善悪は一致するものだということ。 出典:「列子−説符」「列子顧而観影、枉則曲、直則正」
・敬遠
(けいえん) 1.敬(うやま)って遠巻きにし、汚(けが)さないこと。 類:●敬して遠ざく 2.表面は敬っているように見せながら、実は当たらず触らずで親しまないこと。また、単に人やものごとを避けること。 例:「親父は敬遠しておこう」 3.野球の戦術の一つとして、投手が意識的に打者に四球を与えること。 例:「敬遠策を採る」 出典:「礼記−表記」「尊命事鬼、神而之」、「論語−雍也六」「務民之義、鬼神而之」
・継往開来
(けいおうかいらい) 《四熟》 先人の事業を受け継ぎ、未来を切り開く。過去のものを継続し、それを発展させながら将来を開拓していくこと。 類:●承前啓後
・傾蓋故の如し
(けいがいこのごとし)[=旧の〜] ちょっと会っただけで、忽(たちまち)ち昔からの知り合いのように親しくなる。 類:●傾蓋の友 
故事:孔子家語−致思」 「蓋」は衣笠。孔子が、道で偶々(たまたま)会った程子と車の蓋を傾け合って親しく話し込んだ。 参照:鄒陽「獄中上書自明」「語曰、白頭如新、傾蓋如故」 出典:「史記—鄒陽伝」
・傾蓋知己
(けいがいちき) 《四 初対面で意気投合することの喩え。初めて出会った者同士が、以前からの友のように親しくなること。また、友情の強さは、年月の長短では計れないものだということ。 類:●傾蓋故の如し 反:■白頭新の如し
・謦咳に接する
(けいがいにせっする) 尊敬する人に直接話を聞く。直接お目に掛かる。 
★面会すること、会うことの敬称<国語大辞典(小)> 参考:「謦」も「咳」も、咳(せき)を意味する。咳払いのこと。また、人が笑ったり、物を言ったりすること。
・圭角が取れる
(けいかくがとれる) 人間ができてきて、性質が円満になる。 類:●角が取れる 出典:蘇軾の詩
・芸が細かい
(えいがこまかい) 芸事などの演技が隅々まで行き届いているという意味で、細部にまで注意が払われていて、ものごとのやり方が綿密である。
・芸が無い
(げいがない)[=も〜] 1.遊芸の嗜(たしな)みがない。不風流である。2.平凡で面白味がない。 類:●能がない
・芸が身を助けるほどの不仕合わせ
(げいがみをたすけるほどのふしあわせ) 生活にゆとりがあった時代に道楽で習い覚えた芸を、すっかり零落(おちぶ)れた後で、生計の頼りとして余生を送ること。また、そのような境遇。 
★「芸は身を助ける」を皮肉な面からいったもの<国語大辞典(小)>
挂冠(けいかん)
・桂玉之艱
(けいぎょくのかん) 《四熟》 物価の高い都会で生活する苦しさ。地方から都会に出て来て苦学することの喩え。 類:●桂焼き玉炊ぐ●食玉炊桂●桂玉之地●都門桂玉 出典:「戦国策−楚策」「令臣食、因鬼見帝」
・荊棘の道
(けいきょくのみち) 苦難に満ちた人生行路のこと。 類:●茨(いばら)の道
・軽挙妄動
(けいきょもうどう) 《四熟》 事の是非を考えず、闇雲(やみくも)に軽率な行動をすること。また、軽はずみな行動。
・景気を付ける
(けいきをつける) 元気を付ける。心を奮い立たせる。 例:「一杯やって景気を付ける」
鶏群の一鶴
(けいぐんのいっかく)
・鶏犬相聞こゆ
(けいけんあいきこゆ) 鶏と犬の鳴き声があちらこちらから聞こえて来るということで、村里の様子が家続きになっていること。 類:●鶏鳴狗吠(けいめいくはい)相聞こゆ 出典:
陶淵明集(とうえんめいしゅう) 詩文集。陶淵明。10巻。宋代。死後7、80年経って梁の昭明太子が初めて全集を編集したという。四言詩1巻、五言詩3巻、巻五以下は賦・辞・記・伝・述・賛・祭文・集聖賢群輔録を収める。 人物:陶淵明(とうえんめい) 中国東晋の詩人。365〜427。名は潜(せん)。淵明は字。29歳で仕官したが、41歳のとき「帰去来辞」を作って退官し帰郷。叙景詩にすぐれ、日本でも古来愛好される。
鶏口となるも牛後となるなかれ(けいこうとなるもぎゅうごとなるなかれ)
・傾国
(けいこく) 1.国家の存立を危うくすること。2.美人。為政者が女色に溺れて、城や国を顧みなくなり滅ぼすということから言われる。 類:●傾城(けいせい)●佳人 出典:「漢書−外戚伝上・光武李夫人」「一顧傾人城、再顧」 妲己(だっき)、妹喜(ばっき)、褒?(ほうじ)、驪姫(りき)、夏姫(かき)、西施(せいし)、虞美人(ぐびじん)、楊貴妃(ようきひ)、趙飛燕(ちょうひえん)、昭儀(しょうぎ)など。 3.遊女。 類:●傾城 4.遊里。遊郭。
・計算高い
(けいさんだかい) 1.金銭の計算に細かく気を使う。けちである。 2.損得に敏感である。まず利害を考えて行動する。打算的である。 類:●勘定高い算盤高い
・瓊枝栴檀
(けいしせんだん) 《四熟》 才徳の備わった人。また、巧みな詩文。
・敬して遠ざく
(けいしてとおざく)[=遠ざける] 敬って無闇に馴れ馴れしくしないという意味から転じて、上辺は敬う振りをして、内実は疎(うと)んじて親しくしないことをいう。 類:●
敬遠する 出典:「論語−雍也編」「務民之義、鬼神而之。可謂知矣」
芸術は長く人生は短し(げいじゅつはながくじんせいはみじかし)

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・傾城買いの糠味噌汁
(けいせいがいのぬかみそじる) 傾城買いで多額の金銭を使う者が、他方では、糠味噌汁のような粗末な食事を取っているということ。無駄金使いの者は、えてして必要なことへの費用を惜しむものだということ。また、豪遊をした後に、必要最低限の小銭も残っていないこと。 類:●女郎買いの尻切れ草履
・傾城に誠なし(けいせいにまことなし) 遊女が客に対して、誠意を以って接する筈などない。
・傾城の巷
(けいせいのちまた) 遊郭、娯楽場、飲食店などの並ぶ歓楽街。 類:●紅燈の巷
蛍雪(けいせつ)
・蛍雪の功
(けいせつのこう) 苦学した成果。 類:●蛍雪 用例:米沢本
沙石集−一・八「蛍雪の功、年つもりて碩学の聞へありけり」 出典:「晋書−車胤伝」、「蒙求−中・孫康映雪」 用例の出典:沙石集(しゃせきしゅう・させきしゅう) 鎌倉時代の仏教説話集。10巻。無住著。弘安六年(1283)成立。のち、作者により改訂が繰り返された。庶民を教化・啓蒙するために、説話を随所にまじえながら仏法の趣旨を説いたもの。和歌説話、笑話、動物説話なども多く、内容は多彩をきわめる。
・蛍雪勤め
(けいせつづとめ) 苦心して勉強すること。勉学すること。 用例:平家−二「教輩の学侶、蛍雪のつとめおこたらむ事心うかるべし」
・螢窓雪案
(けいそうせつあん) 《四熟》 →蛍雪 類:●頭(かしら)を掛け股を刺す●錐を引いて自ら刺す●壁を穿って光を引く●蛍窓●蛍の光窓の雪●錐股(すいこ)の勉●股を刺して書を読む
・継続は力なり
(けいぞくはちからなり) 小さなことでも、続けていれば、いつかは大きな力となり、大事業を成し遂げられる。 類:●千里の行も足下に始まる涓滴岩を穿つ ★出典は「念願は人格を決定す」と共に、住岡夜晃(すみおかやこう)の法話かという。法話『若人よ』。
・軽率短慮
(けいそつたんりょ) 《四熟》 考えが浅はかで、行動が軽はずみなこと。 類:●短慮軽率●軽挙妄動●軽佻粗暴●直情径行 反:■隠忍自重■深謀遠慮思慮分別
・継体之君
(けいたいのきみ) 《四熟》 正統を継いで皇位を受け継ぐ君。世継ぎの王子のこと。 類:●皇太子
・軽諾寡信
(けいだくかしん) 安請け合いする者は当てにならず、信用できないということ。 類:●巧言令色 出典:「老子−六三章」「軽諾者必寡信」(軽諾は必ず信寡(すく)なし)
兄たり難く弟たり難し
(けいたりがたくていたりがたし)
・軽佻浮薄
(けいちょうふはく) 《四熟》 考えや行動などが軽はずみで、浮わついていること。 類:●軽率短慮●軽佻佞巧●軽佻浮華●鼻先思案 ★「佻」は「窕」とも書く。
・兄弟牆に鬩ぐ
(けいていかきにせめぐ) 兄弟で内輪喧嘩をする。仲間どうしが喧嘩をする。 類:●仲間割れ
・兄弟牆に鬩げども、外その務を禦ぐ
(けいていかきにせめげども、そとそのあなどりをふせぐ) 兄弟は、仮令(たとえ)内輪喧嘩をしていても、外から侮辱を受けたら、一緒になってそれを防ぐものである。 出典:「詩経−小雅・棠棣」
・兄弟には美を致す
(けいていにはびをいたす) 自分の兄弟に対しては、できるだけ善い行ないをすべきである。 出典:「春秋左氏伝−文公十五年」「史佚有言曰、兄弟致美、救乏、賀善、弔[ウ/火]、祭敬、喪哀」<乏を救い、善を賀し、[ウ/火](わざわい)を弔い、祭りには敬し、喪には哀しむ>
・兄弟は左右の手なり
(けいていはさゆうのてなり) 兄弟は左右の手のように、お互いに助け合うべき関係にある。 出典:「魏書−王脩伝」
・兄弟は手足なり
(けいていはしゅそくなり) 兄弟は人間の手と足のように、お互いに助け合うべきである。 出典:「宋史−張存伝」
・刑の疑わしきをば軽んぜよ
(けいのうたがわしきをばかろんぜよ) 罪の疑わしい者を処分する時は、軽い方の刑に従って処罰するべきである。 出典:「書経−大禹謨」「罪疑惟軽、功疑惟重、与其殺不辜、寧失不軽」
・刑は軽きを厭わず
(けいはかるきをいとわず) 刑罰というものは重いよりも、むしろ軽過ぎるくらいの方が結果的には良いものだということ。 出典:「世説新語
・啓発(けいはつ) 弟子や子供を教え導き、関心を抱かせ、より高い知識を与えること。また、一般の人が気付かないような点について、専門の観点から教えること。 類:●啓蒙 出典:「論語−述而」「不憤不、不
<教えを受けんとする者は、発憤の気持ちが表に出るくらいでなければ、私はこれを啓き教えようとはしない。分かっていながらどう言えば良いのか分からず口をもぐもぐさせているのでなければ、私は端緒を発して導きはしない>
・芸は道によって賢し
(げいはみちによってかしこし) 専門の事柄はその道その道で精通しているものである。商売柄その分野のことは良く分かっている。専門のことは専門家に任せるべきだということ。 類:●餅は餅屋
・芸は身の仇(げいはみのあだ) 習い覚えた技芸のために、却って身を誤ることがあるということ。
・芸は身を助ける
(げいはみをたすける) 一つの技芸に優れていると、困窮した時など、それが生計の頼りになる。
・鶏飛蛋打
(けいひたんだ) 《四熟》 鶏には逃げられ、卵は割れてしまう。あれもこれもと両方を狙って結局は何も得られない喩え。また、踏んだり蹴ったりな状況の喩え。 類:●二兎を追う者は一兎をも得ず虻蜂取らず
・掲斧入淵
(けいふにゅうえん) 《四熟》 斧は山林でこそ役立つもので、それを川の深い所へ持って行っても役に立たない。適材適所でないこと。才能を発揮すべき所を誤まることの喩え。
・桂馬の高上がり
(けいまのたかあがり)[=高飛び] 1.将棋を指(さ)す時に言う口遊び。桂馬は前にしか進めないため、無闇に進み過ぎると戻るに戻れなくなって、結局歩に取られてしまうということ。 ★あとに「歩(ふ)の餌食(えじき)」と続けていう<国語大辞典(小)> 2.身分や実力に相応(ふさわ)しくない高い地位に上(のぼ)って失敗を招くことの喩え。 類:●高木は風に折らる出る杭は打たれる
鶏鳴狗盗
(けいめいくとう)
・桂林の一枝
(けいりんのいっし) 僅かばかりの出世という意味。自分の地位が十分でないことの喩え。また、非凡でない、なんということもないということ。 出典:「晋書−郤
伝」「幀対日、臣挙賢良、対策為天下第一、猶桂林之一枝、崑山之片玉、帝笑」
・驚浪雷奔
(けいろうらいほん) 《四熟》 激しく早い波が雷光のように飛沫を上げる様子。岸や船べりに激しい高波が打ち寄せること。 ★「驚」は、激しく早い様子。
・毛色が変わる
(けいろがかわる)・違う 性質や種類が違う。異質のものである。 類:●毛並みが違う 例:「毛色が変わった客」 ★髪の色が違うことから。
・鶏肋
(けいろく) 1.鶏(にわとり)の肋(あばら)骨には食べるほどの肉はないが、少しは肉が付いているので、捨てるには忍びないところから、たいして役に立たないが捨てるには惜しいもののこと。 出典:「後漢書−楊修伝」「修独曰、夫鶏肋食之則無所得、棄之則如可惜」 曹操が蜀との漢中争奪の戦で不利になったとき、命令して「鶏肋」とだけ言ったとされる。 2.身体が鶏の骨のように貧弱な者のこと。 出典:「晋書−劉伶伝」「嘗酔与俗人相忤、其人攘袂奮拳而往、伶徐曰、鶏肋不足以安尊拳、其人笑而止」

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・気圧される
(けおされる)・気押される 全体の感じや相手の勢いに、気持ちが押される。なんとなく気分的に圧倒される。 用例:源氏−紅葉賀「顔のにほひにけおされたる心地すれば」

−−−−−−−けか(#keka)−−−−−−−
・毛が三本足りない
(けがさんぼんたりない) 1.猿のこと。人間よりも頭の毛が三本足りないと喩えられる。2.思考が猿並みの人間という意味で、愚鈍、または幼稚な者のこと。 類:●毛の足りない者●お頭(つむ)の螺子(ねじ)が1本抜けている
怪我の功名
(けがのこうみょう)
・毛が生えたようなもの(けがはえたようなもの) → 毛の生えたよう

−−−−−−−けき(#keki)−−−−−−−
・毛嫌い
(けぎらい) 1.鳥獣が相手の毛並みによって好き嫌いすること。2.1.から)はっきりとした理由もなく、ただ感情的、または本能的に、嫌うこと。 例:「ロック音楽を毛嫌いする」
逆鱗
(げきりん)
・檄を飛ばす
(げきをとばす) 1.人々を急いで呼び集める。「檄」を用い、同意者を集めて決起を促(うなが)したことによる。 ★「檄」は、古代中国で、召集または説諭のための文書のこと。 ★「首相が構造改革実現に努力するよう、閣僚に檄を飛ばした」のように、激励や発破を掛けるの意味で使うのは間違い。 ★「檄」は、目の前の人には「飛ば」せない。 2.自分の意向を広く人々に伝えて、同意を求める。 ★「檄」は、現代では特に、一般大衆に自分の主張や考えを強く訴える文章。檄文。ふれぶみ<.国語大辞典(小)>

−−−−−−−けこ(#keko)−−−−−−−
・下戸
(げこ) 酒があまり飲めない人。また、酒が好きではない人。 反:■上戸
・下剋上
(げこくじょう・かこくじょう) 下が上に剋(か)つの意味。下の者が上の者を押し退けて権力を取ること。 
★主に南北朝末期から戦国時代にかけて、下層階級の者が、国主や主家などをしのいで、実権を握る風潮を、旧体制側の者が非難した言葉<国語大辞典(小)>
・下戸と化け物は無し(げことばけものはなし) 世の中に化物がいないのと同じように、酒を飲めない者はいないということ。
下戸の肴荒らし(げこのさかなあらし) 酒を飲めない者は料理をたくさん食べる、ということ。
・下戸の建てたる蔵も無し(げこのたてたるくらもなし) 酒を飲まない者は金を残しそうなものだが、必ずしも金を残し倉を建てるとは限らない。飲酒を勧めるときに言う言葉。 
★後に「上戸の蔵も建ちはせねども」などと続けても言われる。

−−−−−−−けさ(#kesa)−−−−−−−
・戯作三昧
(げさくざんまい) 《四熟》 戯作するのに夢中になること。また、小説などを書くのに一心不乱になること。 参考:「戯作三昧」
芥川竜之介。 人物:芥川竜之介(あくたがわりゅうのすけ) 小説家。東京生まれ。1892〜1927。別号澄江堂主人、我鬼。第三次、第四次の「新思潮」同人。「鼻」が夏目漱石に認められ、文壇出世作となる。昭和2年7月自殺。作品「羅生門」「地獄変」「歯車」「或阿呆の一生」「西方の人」など。

−−−−−−−けし(#kesi)−−−−−−−
・怪しからない
(けしからない) 1.不都合である。非難すべきことである。 用例:洒・世説新語茶「ヲヤけしからねへ、今にお出なせいす」 2.副詞的に、酷く〜。大層〜。本当に〜。 用例:滑・旧観帖−初「ほんにけしからねへ御丈夫な」 ★「けしからず」の「ず」の代わりに東国風の「ない」を用いたもの。明和初期からの江戸の流行語<国語大辞典(小)> 用例の出典:旧観帖(きゅうかんちょう) 滑稽本。感和亭鬼武(2篇下巻のみ十返舎一九)。歌川美丸画。3冊。文化2年(1805)〜6年刊。奥州人の江戸見物を浮世物真似の手法を借りて綴り、婆の偏屈な性格を滑稽に描いたもの。人気が高く再版本も出た。
・怪しからん
(けしからん)・怪しからぬ 1.道理や礼儀に外れていて、非難すべきものである。不都合だ。良くない。憤慨した感情を表出する言葉。 類:●とんでもない 例:「実に怪しからん話だ」 2.江戸後期の用法。副詞的に、酷く〜である。大層〜である。 用例:滑・浮世床−初「けしからん御寒い事でございます」 ★本来は「怪(け)しかる」の意。強い否定の意を表すために、誤って打ち消しの助動詞「ぬ」を加えたもの<大辞林(三)>
・気色覚ゆ
(けしきおぼゆ) 1.趣(おもむき)が感じられる。面白い風情(ふぜい)が感じられる。 用例:徒然草−一四「古き歌どものやうに、いかにぞや、ことばの外に、あはれにけしきおぼゆるはなし」 2.嫌な気がする。不気味な感じがする。 用例:大鏡−五「かく人がちなるにだに、けしきおぼゆ」
・気色ばむ
(けしきばむ) 1.気持ちを外に表わす。心の内を仄(ほの)めかす。 用例:宇津保−嵯峨院「時々けしきばめる事はあれど」 2. むっとして怒った表情になる。憤慨する。 類:●色をなす色めき立つ 用例:蜻蛉−中「人のけしきばみ、くせぐせしきをなん、あやしと思ふ」
・消し口を取る(けしくちをとる・けしぐちを〜) ある火消しの組が他に先んじて消し口を作る。消し口に組の旗印を立てる。 参考:消し口 火事を消すために取り掛かる所。転じて、そこに立てる火消しの組の旗印。
・けじめを食う(けじめをくう)[=食らう] 人から差別待遇を受ける。人から疎外され卑(はずか)しめられる。 
★「差別」「区別」などの字を当てる場合もある<国語大辞典(小)>
・けじめを付ける(けじめをつける) 「けじめ」とは、区別という意味で、それを付けるということから、きちんと筋道を通すこと。
・けじめを取る(けじめをとる) 1.機先を制して、優劣、強弱の差をはっきりと付ける。2.動きが取れないように念を押す。駄目を押して決め付ける。

−−−−−−−けす(#kesu)−−−−−−−
・下衆と鷹とに餌を飼え
(げすとたかにえをかえ) 下賤(げせん)の者を使うのには、鷹を餌で手懐(なず)けるように、飲食を与えて従わせるのが良い。 類:●憎き鷹には餌を飼え
・下衆の後知恵
(げすのあとぢえ) 愚かな者は、必要な時に名案を出せず、事が終わった後になって役に立たない知恵を出すものだ。 類:●
下衆の知恵は後から
・下衆の一寸鈍間の三寸
(げすぼいっすんのろまのさんずん)[=一寸戸(いっすんど) 襖(ふすま)や障子を閉じるのに、一寸ぐらい残すのは下賤(げせん)、三寸ぐらい残すのは鈍間というように、注意の足りなさで人の品格が分かるということ。 類:●鈍間の一寸馬鹿の三寸 ★後に「馬鹿の開けっ放し」と続けても言う。
・下衆の勘繰り
(げすのかんぐり) 下賤(げせん)の者は、何かにつけて妙に気を回し、邪推するものだ。
・下衆の逆恨み
(げすのさかうらみ) 下賤の者は、他人の好意ある忠告に対して、感謝するどころか、逆にその人に恨みを抱いたりする。
・下衆の謗り食い
(げすのそしりぐい) 下賤の者は、物を食べるのに、不味い不味いと言いながら、結局たくさん食べてしまう。
・下衆の知恵は後から
(げすのちえはあとから)[=後に付く] 下賤の者の知恵は事が済んでから浮かぶ。なんの役にも立たないこと。 類:●
下衆の後知恵虚仮の後思案
・下衆の楽は寝楽
(げすのらくはねらく) 下賤(げせん)の者は寝ることを唯一の楽しみとするという意味で、他の楽しみを味わう余裕がないこと者を指して言う。
・下衆は槌で使え
(げすはつちでつかえ) 下賤の者を使う場合には、道理を言っても分からないから、びしびし叩いてやらせないと、ちゃんと働かない。
・下衆も三食上
?も三食(げすもさんじきじょうろうもさんじき) 下賤の者でも高貴の人でも食事は一日三回取るという意味で、ものごとの種類によっては、上下貴賤の区別はないということ。

−−−−−−−けせ(#kese)−−−−−−−
・下世話(げせわ) 1.世間でよく言われる言葉や話。諺(ことわざ)やものの道理など。 用例:伎・「仕事は大勢、食ひ物は小勢に限ると下世話のたとへ」 類:●一般 例:「下世話に言うところの『藪医者』というやつだ」 2.俗なものごと。世間の噂(うわさ)。 類:●世俗的な●上品でない 例:「下世話な話だが、財界と芸能界は繋がっているらしい」 用例の出典:(しばらく) 歌舞伎十八番の一つ。悪公卿が善良な人々を殺害しようとする瞬間、荒事(あらごと)役の主役が「しばらく」と声を掛けて花道から登場し、悪人どもを懲らしめるという形式の一幕物。元禄10年(1697)、江戸中村座で初世市川団十郎が自作の『参会名護屋(さんかいなごや)』の中で演じたのに始まる。毎年の顔見世狂言で上演ごとに筋や「連(つらね)」を新作した。明治11年(1878)東京新富座で九世団十郎が演じて以来形式が定まり、現行定本は明治28年(1895)の台帳による。 参考:参会名護屋(さんかいなごや) 歌舞伎。お家騒動をめぐる主人公不破伴左衛門(ふわはんざえもん)とその友人名護屋山三(なごやさんざ)との、友情と確執と恋の鞘当ての長い物語。台本は現存していない。

−−−−−−−けた(#keta)−−−−−−−
・外題学問
(げだいがくもん) 《四熟》 書名や芝居の外題だけしか知らないのに、いかにも内容まで知っているような顔する者を罵(ののし)った言葉。ものごとの内容も知らずに通じた振りをすること。 類:●本屋学問 用例:浮・元禄大平記「此外外題学問には宇都宮由的、松下見林」
・桁が違う
(けたがちがう) 位が違う。格段の差がある。 類:●格が違う 例:「君と僕では生活の桁が違う」
・桁が外れる
(けたがはずれる) まるで勘定に合わない。普通の尺度では計り切れない。段違いである。 例:「桁が外れたお人好し」 類:●
桁外れ
・下駄と焼味噌(げたとやきみそ) 味噌を板に付けて焼いたものと下駄とは、形こそ似ているが実際は大変違うということで、一見、形は似ていても内容が全く違うものごとのこと。
・下駄履いて首っ丈
(げたはいてくびったけ)[=首丈(くびだけ) 下駄を履いても首の辺りまで沈むくらいの深みに嵌(は)まっているという意味で、それほど深く異性に惚(ほ)れ込んで夢中になっていること。 類:●足駄履いて首っ丈
・桁外れ(けたはずれ) あるものごとの価値、等級、程度などが他と非常に懸け離れていること。 例:「桁外れの力持ち」
・獣雲に吠ゆる
(けだものくもにほゆる) つまらない人間が非常な光栄に浴する。 伝説:神仙伝」 淮南王(わいなんおう)劉安(りゅうあん)が仙薬を飲んで天に昇ったとき、貴重な仙薬の残りを鶏や犬が舐(な)めると、にわかに昇天し、鶏は雲中に鳴き犬は天上に吠えたという。
・下駄も仏も同じ木のきれ
(げたもほとけもおなじきのきれ) 下駄も仏像も、元は同じ木からできたものであるという意味で、尊卑の区別はあるが、その根本は同一であるもののこと。
・下駄を預ける
(げたをあずける) 1.無理を承知である事を頼み込むとき、その処理の方法や責任などを全て相手に一任する。2.自分の身の振り方や、あることへの決断を他人に一任すること。 ★江戸時代、芝居小屋や寄席、遊郭などで、履き物を預ける習慣があったことから。
・下駄を履かせる(げたをはかせる) 物の価格を高く偽る。また、ものごとを実際よりもよく、または大きく見せる。 類:●足駄(あしだ)を履く

・下駄を履くまで分からない(げたをはくまでわからない) 勝負事の勝ち負けは、終わってみるまで分からない。 ★碁からできた言葉。「下駄を履く」は、勝負が終わって碁会所から帰るときを意味する。一手で勝敗がひっくり返ることもあるところから。

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・けちが付く
(けちがつく) 縁起の悪いことが起こる。良くないことが起こったためにものごとが巧く進まなくなる。 用例:洒・
南江駅話「女郎買にけちが附いた」 用例の出典:南江駅話(なんこうえきわ) 洒落本。北左農山人。安永6年(1777)。・・・詳細調査中。
・けちを付ける
(けちをつける) 1.縁起の悪くなるような嫌なことを言ったりしたりする。 用例:雑俳・柳多留−二「手の筋を見ると一筋けちをつけ」 2.欠点を見付けて貶(けな)す。 類:●難癖を付ける癖を付ける 例:「商品にけちを付ける」

−−−−−−−けつ(#ketu)−−−−−−−
・決河の勢い
(けっかのいきおい) 堤防を決壊させて河水が流出するような、猛烈な勢い。
月下氷人
(げっかひょうじん)
・月寒江清
(げっかんこうせい) 《四 冬の川の清冷な夜景。冷たく冴えた月光が川面に照り返し、川は清く流れている。 ★「月寒く、江は清し」と読み下す。
・血気に逸る
(けっきにはやる)[=進む] 元気に任せて、向こう見ずに勢い込む。
・血気の勇
(けっきのゆう) 血気にかられた一時の勇気。向う見ずな勇気。 類:●猪勇(ちょゆう)
・結構毛だらけ
(けっこうけだらけ) 大いに結構であるということを言った地口(じぐち)。 ★同音ではじまる語を重ねた語<国語大辞典(小)> ★「結構毛だらけ猫灰だらけ」などとも言う。 ★「結構」は、「家屋の構造」の意味。日本に入って、「立派なこと」の意味が加わった。
・結構は阿呆の唐名
(けっこうはあほうのからな・とうみょう) 好い人過ぎるのは、実は愚か者と変わらないということ。お人好しで、とかく人に騙(だま)され易い人を嘲(あざけ)って言う。
・血相を変える
(けっそうをかえる) 顔の様子、顔色を変えるという意味で、何事かが起こったときの驚きや怒りなど、顔に表れた急激な反応。
・月旦評(げったんひょう) 人物を論評すること。 類:●人物評●品定め●月旦 
故事:後漢書−許劭伝」 中国、後漢の許劭(きょしょう)と従兄の靖は、郷里の人々の人物評をし、毎月朔日(ついたち)に品題を変えたという。 曹操許劭訪ねており、その「治世の能臣、乱世の姦雄」という評が元で兵を挙げる決心を固めたという。
・決定版
(けっていばん) 1.書物や出版物で、それ以上の修正や増補を必要としない最終的なもの。 例:「漱石全集の決定版」 2.同一種類のものの中で、品質や機能などが最も優れているもの。他の追随を許さない優れた作品。 例:「これぞ下町グルメの決定版」
・尻の穴が小さい
(けつのあながちいさい)[=狭い] 1.度量が狭い。小心である。 例:「尻の穴のちっちゃいことばかり言うな」 2.けちである。吝嗇(りんしょく)である。 類:●みみっちい ★尻の穴が小さいと「出すものが小さい」ので、けちで小額しか払わないことを言った洒落(しゃれ)から、という。
・尻の穴が太い
(けつのあながふとい)[=広い] 1.度量が広い。大胆である。2.図々しい。
・桀の犬尭に吠ゆ
(けつのいぬぎょうにほゆ) 暴君として悪名の高い桀王の飼い犬でも、主(あるじ)から命令されれば、聖人の尭にでも吠え掛かるものである。主人が目を掛ければ、事の善悪に関わらず、その主人に忠義を尽くすものだという喩え。 出典:「文選−鄒陽・於獄上書自明書」「桀之犬可使吠尭、而跖之客可使刺由」
・穴の毛まで抜かれる
(けつのけまでぬかれる)[=尻の〜] 何も残らなくなるまで騙し取られる。 類:●骨の髄までしゃぶられる
・尻の毛を抜く
(けつのけをぬく)[=毟(むし)る] 誑(たぶら)かす。騙(だま)す。欺(あざむ)く。 類:●尻の毛を抜く
・血路を開く
(けつろをひらく) 1.囲みを切り抜けて逃げ道を作る。敵の包囲を破って逃げる。 用例:読・
弓張月−前「終に一条(ひとすぢ)の血路をひらき、東南を投(さ)して走りける」 2.困難な事態の解決方法を見付ける。困難を切り抜ける。 用例の出典:椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき) 江戸後期の読本。5編29冊。曲亭馬琴。葛飾北斎画。文化4(1807)〜8年刊。源為朝を主人公として、為朝伝説を縦横に利用し、「保元物語」「太平記」などの古典、中国の「水滸後伝」の構想などを生かした伝奇小説で、九州、京都、伊豆七島、琉球を舞台に、雄大な構成で波乱に富む筋を展開させた長編。 人物:滝沢馬琴(たきざわばきん) 江戸末期の戯作者。明和4年(1767)〜嘉永元年(1848)。別号曲亭など。山東京伝に師事し、はじめ黄表紙などを書くが、寛政8年(1796)の「高尾船字文」以後次第に読本に力を注ぐ。勧善懲悪を標榜しつつ、雄大な構想と豊かな伝奇性を備えた長編の読本に力作が多い。著「椿説弓張月」「南総里見八犬伝」など。 参考:南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん) 読本。9輯98巻106冊。曲亭馬琴。文化10年(1813)起稿。天保12年完成。文化11〜天保13年(1842)刊。室町時代、安房・上総・下総に勢威を張った豪族里見家の興亡を背景に八犬士が活躍する長編伝奇小説。勧善懲悪を基調とする。全体の構想を「水滸伝」に借り、文体は雅俗折衷の和漢混交文。「里見八犬伝」・「八犬伝」。
・決を採る
(けつをとる) 採決する。
・尻を捲る
(けつをまくる) ならず者などが着物の裾を捲って座り込むところから、窮地に立った者が、本性を現わして、威嚇的な態度に出る。 類:●尻を捲る居直る
・尻を割る
(けつをわる) 1.悪事の企(たくら)みなどを露見させる。悪事を暴露(ばくろ)する。 類:●尻(しり)を割る 2.隠し誤魔化していたのが見付かる。 類:●尻尾を出す 3.仕事を受けたが難しくて手に負えず、途中で依頼主に断わること。 ★「欠を割る」から。江戸時代の職人用語で、
「欠」は、仕事をする上で欠けていた点の意。 4.が変化して)ものごとを中途で放り出す。 類:●投げ出す 5.商売をしくじって破産する。

−−−−−−−けな(#kena)−−−−−−−
・毛並みが良い(けなみがいい) 1.動物の、血統が良い。主に、サラブレッドや愛玩動物に言う。2.人の、家柄が良い。学歴などが優秀なものである。 反:■何処の馬の骨か分からぬ 例:「毛並みの良いエリート社員」

−−−−−−−けに(#keni)−−−−−−−
・褻にも晴れにも(けにもはれにも) 1.平常でも晴れた日でも。普段でも表立った日でも。 類:●いつでも 用例:中華若木詩抄「褻にも晴れにも蓑一つなれば」 2.ただ一つであること。良くも悪くも。 類:●後にも先にも 用例:滑・浮世風呂−二「褻にも晴れにも人の男だけに」

−−−−−−−けの(#keno)−−−−−−−
・毛の荒物
(あらもの・あらきもの) 毛が硬(かた)い、大きな獣。 
反:■毛の柔物(にこもの)
・毛の末
(けのすえ)[=先] 極めて少ないことを、毛の先端に喩えて言う。 類:●毛の先●毫末(ごうまつ)●小指の先 用例:
日本書紀−允恭10年正月(図書寮本訓)「毫毛(ケノスヱ)まかりも、弟姫を嫉むに非ず」 出典:日本書紀(にほんしょき) 日本最初の勅撰の歴史書。六国史の一つ。「日本紀(にほんぎ)」とも。全30巻。養老4年(720)。舎人(とねり)親王の主裁の下に完成、朝廷に献じられた記録が見えるが、その編修過程は未詳。第1・2巻は神代、第3巻以下は神武天皇の代から持統天皇の終わりまでを、年紀を立てて編年体に排列。「古事記」と関係が深く、「古事記」の撰録者である太安万侶(おおのやすまろ)も編集に加わる。「古事記」が一つの正説を定めているのに比べ、諸説を併記するなど史料主義の傾向がある。
・毛の柔物
(けのにこもの・にこきもの) 毛が軟らかな、小さな獣。 
反:■毛の荒物
・毛の足りない者
(けのたりないもの) 人間より毛が足りないのは猿であるということから、普通の人間より知能が劣っている者、愚かな人間を指して言う。
・毛の生えたもの
(けのはえたもの)[=ようなもの] 主に、「〜に毛の(が)生えたようなもの」の形で使う。 1.ほんの少し立派になったがまだまだであること。また、やや年功を経たもの。 例:「社会人と言っても学生に毛の生えたようなものだ」 ★「赤ん坊に頭髪が少し生えた程度で、まだまだたわいないもの」、ということからか。 2.少しだけ増しなものであるがまだまだであるということの喩え。 例:「巧いといっても素人に毛が生えたようなものだ」「湖とは言っても沼に毛の生えたようなものだ」

−−−−−−−けは(#keha)−−−−−−−
・下馬評(げばひょう) 1.下馬先(げばさき)で、主人を待っている供の者などがし合う評判。2.当事者以外が、責任のないところで勝手な批評をすること。また、その評判や噂話。世間での、あれやこれやの取り沙汰(ざた)。 ★下馬先で、主人を待っている間に、供奴(ともやっこ)たちがしあう批評やうわさ話の意から<国語大辞典(小)>

−−−−−−−けむ(#kemu)−−−−−−−
・煙が懸かる(けむがかかる)[=掛かる] 災いが自分の身に及ぶ。 用例:伎・
初冠曾我皐月富士根−四立「おれが旧悪をしゃべったら、こんたの身にも煙(ケム)がかからう」 用例の出典:初冠曾我皐月富士根(げんぷくそがさつきのふじがね) 歌舞伎。鶴屋南北。文政8年(1825)。・・・調査中。
・煙たい(けむたい) 気詰まりである。気兼ねがある。窮屈である。また、相手を敬遠したい。 類:●けぶたい●煙い 例:「煙たい存在」 用例:浄・嫗山姥−二「道理道理、身にかからぬこちとさへ、けむたうてたまられぬ」 用例の出典:嫗山姥(こもちやまんば) 浄瑠璃。時代物。五段。近松門左衛門。正徳2年(1712)大坂竹本座初演。謡曲「山姥」をもとにして、これに頼光四天王の世界を取り入れたもの。二段目の「八重桐廓話」は「しゃべり」の演技として名高く、四段目の山姥と快童丸のくだりは歌舞伎所作事「山姥」の原拠となる。
・煙になる(けむになる) 消え失せる。跡形も無くなる。 類:●灰と化す●灰燼(かいじん)に帰す 用例:伎・霜夜鐘十字辻筮−三幕「金が烟(ケム)になったら」 用例の出典:霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら) 歌舞伎脚本。世話物。5幕。河竹黙阿弥。明治13年(1880)初演。散切物。士族六浦正三郎が天下のため恩師を討ったが、妻に自殺され、乳呑児を抱えて苦労する。助けてくれた巡査が恩師の子息と知った正三郎は討たれようとするが、和解して剃髪する。
・煙に巻く
(けむにまく) 相手がよく知らないようなことを一方的に言い立てて、戸惑わせたり、茫然(ぼうぜん)とさせたりする。
・煙となる(けむりとなる・けぶりと〜)[=になる] 1.死んで火葬にされる。また、死ぬ。 用例:源氏−柏木「ゆくへなき空のけぶりとなりぬとも」 2.焼けてなくなる。焼失する。 用例:源氏−橋姫「見し人も宿もけぶりになりにしを」 3.焼けてなくなるように、ものごとがすっかりなくなってしまう。
・煙を立てる
(けむりをたてる・けぶりを〜) 1.竈(かまど)を炊く煙を上げる。2.生計を立てる。 類:●けぶりを立てる

−−−−−−−けめ(#keme)−−−−−−−
・外面如菩薩内心如夜叉(げめんにょぼさつないしんにょやしゃ)[=似菩薩(じぼさつ)〜] 容貌は菩薩のように美しく柔和だが、その心は夜叉のように残忍邪悪である者のこと。 類:●薔薇に棘あり 
★仏教で、男性の煩悩の種となる女性を喩えて言う。 ★経論にはなく、日本でつくられた言葉<大辞林(三)> ★平安時代にわが国で作られた語か<広辞苑第四版(岩)>

−−−−−−−けも(#kemo)−−−−−−−
・獣を逐う者は目に太山を見ず
(けものをおうものはめにたいざんをみず) 獣を追い掛ける者は、獣にばかり目を奪われて、そこが太山であることを忘れてしまう。利欲に血迷っている者は、良心を忘れて道理を見失うものである。 類:●鹿を逐う者は山を見ず ★「太山(泰山)」は、中国五岳の1つで、霊山。 出典:「淮南子−説林訓」「逐獣者、目不見太山、嗜欲在外、則明所蔽矣」

−−−−−−−けら(#kera)−−−−−−−
・快楽不退
(けらくふたい) 《四熟》 快い楽しみを永久に失わないこと。 類:●快楽不退楽
・けらけら照り
(けらけらでり) 朝焼けがして日が強く照りつけること。 ★「けらけら」は、甲高(かんだか)く笑う様子を表わす言葉。
・螻蛄才
(けらざい) 1.螻蛄(けら)は、五つの才能を持ちながら、満足なものが一つもないということ。 類:●螻蛄芸 2.転じて、多芸多才ながら、どれも未熟でものになっていないこと。また、役に立たない才能。 出典:「古今注−魚虫」「螻蛄、〈略〉有五能而不成伎術。一飛不能過屋、二縁不能窮木、三没不能窮谷、四掘不能覆身、五走不能絶人」 出典:古今注(ここんちゅう) 中国、晋代。崔豹(さいひょう)撰。3巻。成立年代不明(3世紀頃の作か?)。輿服・都邑・鳥獣・音楽・魚虫など8編に分けられ、それぞれについて考証を加えたもの。変遷を経て原本は失われ、現在あるものは五代時代・十世紀始めごろの後人の馬縞の作のものと思われる。
・螻蛄の水渡り
(けらのみずわたり) 1.真似(まね)をしても成し遂げ難(がた)いこと。2.最初は熱心だが、中途で止(や)めてしまうことの喩え。
・螻蛄腹立つれば鶫喜ぶ
(けらはらたつればつぐみよろこぶ) 一方が怒ればもう一方が喜ぶように、両者の利害が相反していることの喩え。 ★鶫を捕えるのに、螻蛄を餌としてつないでおくところからいう<国語大辞典(小)>

−−−−−−−けり(#keri)−−−−−−−
・けりが付く
(けりがつく) ものごとの決まりが付く。終了する。また、解決する。 類:●決まりが付く 例:「その事件はけりが付いた」 ★和歌や俳句などが、多く助動詞の「けり」で終わることから。
・けりを付ける
(けりをつける) ものごとに決着を付ける。締(し)め括(くく)る。終わりにする。 類:●決まりを付ける 例:「喧嘩にけりを付けた」

−−−−−−−けれ(#kere)−−−−−−−
・外連味(けれんみ) 俗受けを狙って、笑わせるように、或いは大袈裟(おおげさ)に演じること。はったりや誤魔化しなど。また、その程度。 例:「外連みのない演技」 ★「み」は接尾語<国語大辞典(小)>

−−−−−−−けを(#kewo)−−−−−−−
毛を吹いて疵を求める(けをふいてきずをもとめる)

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