【いや】~【いん】
・否々三杯(いやいやさんばい)[=十三杯(じゅうさんばい)] 盃(さかずき)を受けるときなどに、口では「いやいや」と辞退する風を見せながら、勧められるままに何杯も続けて飲むこと。口先では遠慮するようでいながら、実際は厚かましいこと。
・否応なし(いやおうなし) 嫌と言おうが良いと言おうが、聞き入れず、文句を言わせないでものごとをさせる様子。 例:「否応なしに連れていく」
・弥が上に(いやがうえに) 既にそうである上に更に。あるが上に益々。 用例:「保元−中」「親死に子撃たるれども顧みず、いやが上に死に重なって戦ふとぞ聞く」 例:「弥が上にも気勢が上がる」
・嫌気が差す(いやけがさす・いやきが〜) もう嫌だという気持ちになる。飽き飽きする。 類:●うんざりする 例:「田舎暮らしに嫌気が差す」
・否でも応でも(いやでもおうでも)[=否が〜] 好むと好まざるとに拘(かか)わらず。承知でも不承知でも。 類:●なんとしてでも●是非とも 用例:狂言記・針立雷「いやでもおふでも、今とらねばなりませぬぞ」 用例の出典:針立雷(はりだていかづち) 狂言。藪医者に助けられた雷が、お礼に豊作を約束するというもの。
・嫌と言うほど(いやというほど) 1.もうそれ以上いらないと言うくらいたくさん。嫌になるほど何回も。 用例:虎明本狂言・福の神「中酒には古酒を、いやというほどもるならば」2.酷く。甚だしく。 例:「嫌と言うほど殴られる」 用例の出典:福の神(ふくのかみ) 狂言。各流。年の暮に二人の信者が出雲大社に参詣すると、福の神が現れ、富貴になるには福の神に十分お供えをし神酒をあげなさいと言う。
・厭味たらしい(いやみたらしい)・厭味ったらしい[=嫌味〜] いかにも厭味である。 1.にやけて嫌らしい。気障(きざ)っぽい。 用例:人情・梅の春−初「なんのいやみたらしい、そんなものを男が持ってたまるものか」 2.嫌がらせが酷(ひど)い。 例:「厭味ったらしく恩にきせる」 用例の出典:梅の春(うめのはる) 人情本。為永春水・歌川貞重共作。天保9年(1838)。隅田川周辺の叙景を歌った清元節「梅の春」(毛利元義作詞)文政10年(1827)を元にしている。
・嫌らしい(いやらしい)・厭らしい 1.感じが悪く、不愉快な気持ちにさせる。様子、態度、行為、状態などが、好ましくない。また、嫌味な感じである。 類:●厭(いと)わしい 用例:浮・好色袖鑑−上「なれて後、いやらしく思ふなりふりの」 2.性に関して節度がなく、嫌悪感をそそる。下品、好色な感じである。淫(みだ)らである。 用例:浄・主馬判官盛久−一「鎧の脇より手をさしいれ〈略〉たはぶるるむくつけにも又いやらしし」 用例の出典①:好色袖鑑(こうしょくそでかがみ) 浮世草子。好色物。天和2年(1682)。・・・調査中。 用例の出典②:主馬判官盛久(しゅめのほうがんもりひさ) 浄瑠璃。近松門左衛門。貞享3年(1686)。「薩摩守忠度」の後編。平家の侍大将で主馬判官と呼ばれた平盛久を主人公にした作品。竹本座のあと宇治座でも上演<近松門左衛門でござーい!>
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・甍を争う(いらかをあらそう) まるで棟瓦(むながわら)の高さを競うかのように、大小の家がぎっしりと並んでいる様子。 用例:方丈記「棟を並べ、いらかをあらそへる」 類:●甍の波●甍を並ぶ●軒を競う●軒を連ねる 用例の出展:方丈記(ほうじょうき) 鎌倉前期の随筆。1巻。鴨長明。建暦2年(1212)成立。仏教的無常観を基底に、作者の体験した都の生活の危うさ・はかなさを描き、ついで移り住んだ日野山の方丈の庵の閑寂な生活を説く。文章は簡明清純な和漢混淆(こんこう)文。
・要らぬおせせの蒲焼(いらぬおせせのかばやき)[=お世話の〜] 不必要なおせっかいを焼くこと。不必要に出しゃばること。 ★「蒲焼」は「世話を焼く」に掛けていい、「おせせ」は「おせわ」を幼児語のように表現したもの<国語大辞典(小)>
・いられ柿に核多し(いられがきにさねおおし) 良く熟さないうちにもいだ柿は種ばかり目立ち、渋くて不味い。せっかちに事を起こすより、時が熟すまで待つ方が良いということ。 ★「いられ」は、高知の方言で「せっかち」のこと。
・以卵投石(いらんとうせき) 《四熟》 割れ易い卵を石に投げ付けるようなものである。 1.容易(たやす)く玉砕してしまって、勝負にならないこと。 類:●以卵撃石 出典:「荀子−議兵」「譬之若以卵投石、以指撓沸」 ★「卵(たまご)を以って石に投ず」と読み下す。 2.無駄で、益のないこと。
・伊蘭の林に交われども赤栴檀の香は失せず(いらんのはやしにまじわれどもしゃくせんだんのかはうせず) 牛頭(ごず)栴檀は香りの好い木で、酷(ひど)い臭いのする伊蘭の林に混じっても芳香を失わない。正しい人は毅然として周囲の醜悪さに影響されないということの喩え。 類:●芝蘭深林に生ず 出典:「観仏三昧海経」 ★「伊蘭」は、インドの伝説上の高木。死臭を放って栴檀の香りを失わせ、花は紅色で食すれば発狂するという。 出典:観仏三昧海経(かんぶつざんまいかいきょう) 経典。東晋の仏駄跋陀羅(ぶつだばつだら)訳(411〜421頃漢訳)。十巻。十二章(品)に分けて、仏の相好(そうごう)の功徳(くどく)を観想する相状や利益(りやく)を説いた。略して、「観仏三昧経」とも。
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・入り浸る(いりびたる) 1.水中にずっと浸かっていること。2.転じて、他の家、場所にずっと居座る。また、何度も訪れる。 用例:浄・淀鯉出世滝徳−上「年中くるわに入ひたり」
・入り日を返す勢い(いりひをかえすいきおい) 勢力が非常に盛んなことの喩え。激しい勢いなどの喩え。 故事:「淮南子−覧冥訓」 魯(ろ)の陽公が戦いの最中に日没となったとき、矛(ほこ)で入り日を招(まね)くと太陽が再び昇ったという。
・炒り豆に花(いりまめにはな)[=花が咲く] 衰えたものが再び栄えること。また、ありそうもないことがまれに実現することのたとえ。 類:●枯れ木に花
・倚閭の望(いりょのぼう) 「倚」は寄り掛かる、「閭」は村里の入口の門の意味で、村の入口の門に寄り掛かって母が我が子の帰りを待ち望むこと。 類:●閭に倚りて望む●倚門の望(情)
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・居留守を使う(いるすをつかう)} 不在を装う。 類:●留守を使う
・入るを量りて出ずるを為す(いるをはかりていずるをなす) 予(あらかじ)め収入を計算しておき、それによって支出の計画を立てるということ。 出典:「礼記−王制」「以三十年之通制国用、量入以為出」
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・入れ揚げる(いれあげる) 愛人や好きなことのために、多くの金銭を使うこと。 類:●注ぎ込む●入り揚げる 用例:浄・夕霧阿波鳴渡−中「給分一文身につけず皆こなたに入あげる」
・入れ替わり立ち代わり(いれかわりたちかわり) 絶えず入れ替わる様子。多くの者が次々に出入りする。 類:●次から次へと
・入れ知恵する(いれぢえする) 他人から教えられた考え。また、他人に自分の考えを吹き込むこと。多く、悪いことを教える場合に用いられる。 類:●入れ性根(じょうね)●付け知恵●差し知恵
・入れ違い(いれちがい) 1.順序を間違って入れること。違うところに入れること。2.一方が出たすぐ後に、他方が入ること。類:●入り違い 例:「たった今入れ違いに出て行った」 3.前と後ろ、右と左などのように、物の配列や動きが食い違うこと。 類:●互い違い
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・色男、金と力は無かりけり(いろおとこ、かねとちからはなかりけり) 女に好かれるような美男子には、兎角(とかく)財力と腕力がないものだということ。 ★川柳からか。
・色衰えて愛弛む(いろおとろえてあいゆるむ) 美貌(びぼう)によって寵愛(ちょうあい)を受けている女性は、その容色が衰えると、愛も薄れてしまうものである。 出典:「史記−呂不韋列伝」「以色事人者、色衰而愛弛」 秦の昭襄王の正室華陽夫人(かようふじん)には子がなかった。そこで異人(子楚=後の荘襄王・始皇帝の父)を養子に迎えるようにと、呂不韋(りょふい)が勧めて言った言葉。
・色気違い(いろきちがい) 1.情欲が異常に強いこと。 類:●色情狂 2.矢鱈に、好色っぽい態度や身なりをすること。また、その人。
・色気より食い気(いろけよりくいけ) 色欲より食欲の方が先であるという意味で、転じて、見栄より実利を取ることの喩え。 類:●花より団子
・色と欲の二筋道(いろとよくのふたすじみち) 美貌の女と資産家の女の両方を手に入れようと、二股掛けて、それぞれを誘惑すること。
・色の白いは七難隠す(いろのしろいはしちなんかくす)[=十難隠す] 色白の女性は、少しぐらい醜い点があっても、目立たない。 類:●髪の長いは七難隠す
・伊呂波(いろは) 1.「いろは歌」の最初の三字を取ったもの。「いろは歌」の仮名四七字の総称。または、これに「ん」あるいは「京」を加えた四八字。 2.「いろは歌」を手習いの初歩に使ったことから、ものごとの初歩。稽古事の初歩。また、基礎的なこと。入門的で、平易なこと。 類:●ABC 例:「剣道のいろは」 新内・恋娘昔八丈−城木屋「恋のいろはを袂から」 ★いろは歌「色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ(※) 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず(ん)」 ※「そ」は清音で読まれることもある。 ★弘法大師(空海)の作であるとする俗説があるが、疑わしい。 用例の出典:恋娘昔八丈(こいむすめむかしはちじょう) 浄瑠璃。世話物。5段。松貫四・吉田角丸。安永4年(1775)。江戸外記座初演。江戸の材木商白子屋の娘お熊が婿の又四郎を殺そうとした事件を脚色し、萩原家の家老の子才三郎と腰元お駒の情話としたもの。通称「お駒才三」。
・色は思案の外(いろはしあんのほか)[=心の外・思いの外] 恋愛は常識では規定できないものだ。色事というものは兎角分別を越え易いものだ。 類:●恋は思案の外
・色眼鏡で見る(いろめがねでみる) ものごとを、ありのままではなく、先入観に頼って見ること。偏(かたよ)った観察をすること。 ★進駐軍が一様にサングラスを掛けて日本人を見たことに由来するか?(未詳)
・色めき立つ(いろめきたつ) 怒りなどで緊張した空気が漲(みなぎ)る。 例:「一同色めきたつ」 類:●気色(けしき)ばむ
・色目を使う(いろめをつかう) 1.異性の気を引くような目付きをする。流し目をする。 類:●秋波を送る 2.あるものごとに興味があるという態度を取る。 例:「政界に色目をつかう」
・色好い(いろよい) 1.姿形が美しい。容貌が美しい。2.こちらの望みに適(かな)っている。こちらとして好ましい。 例:「色好い返事」
・色を失う(いろをうしなう) 1.物の色がなくなる。色が見えなくなる。2.驚きや恐れで顔色が青くなる。意外な事態にどうして良いか分からなくなる。 類:●口が利けない●声も出ない●顔色(がんしょく)なし 3.蹴鞠(けまり)で、蹴上げた鞠が風に流される。
・色を替え品を替える(いろをかえしなをかえる) 様々に手段や方法を尽くす。 類:●手を替え品を替える
・色を変える(いろをかえる) 怒りや喜びなどで、顔色を変える。 類:●色を違(たが)える●色を動かす●色を変ず
・色を付ける(いろをつける) 1.紙や物に(ぬ)色を塗る。2.ものごとの扱(あつか)いで、相手に温情を示す。多少の祝儀を出す、値を引く、景品を付けるなど。 例:「手間賃に色を付けておいたからね」
・色を直す(いろをなおす) 1.元気を取り戻して顔色が元に戻る。元気を回復する。 用例:太平記−十五「色を直して方々より馳せ参りける間」 2.怒って興奮していた顔色を和(やわ)らげる。怒りが解ける。 用例:浄・心中天の網島−中「おさんも色を直し」
・色を作す(いろをなす) 顔色を変えて怒る。 類:●怒髪(どはつ)天を衝(つ)く●気色(けしき)ばむ
・色を見て灰汁をさす(いろをみてあくをさす) 染色で灰汁を加えるときには色の具合いを見て加減をするところから、時と場合に応じて適当な手段を取ること。無闇に事を行なわないという戒め。 類:●枝を見て花を折れ
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・祝い事は延ばせ仏事は取り越せ(いわいごとはのばせぶつじはとりこせ) 祝い事のような喜ばしいことは、遅れてするくらい慎重に行なうのが良く、仏事のように大切なことは、早めに準備して、繰り上げるくらいで行なうのが良い。
・岩が物言う(いわがものいう) 漏(も)れる筈のない秘密が漏れたり、世間に知られる筈のないことが噂として流れること。
・岩木に非ず(いわきにあらず) 人間の心は木や石ではない。喜怒哀楽の情を解する心を持っているということ。冷酷非常ではない、感じ易いものである、人情を解するなどの意味で言う。 類:●木石にあらず●岩木を結ばず 用例:万葉集「かくばかり恋ひつつあらずは石木にもならましものを物思はずして」
・岩木を結ばず(いわきをむすばず)[=分(わ)けず] 人間は、無機物である岩や木を結んで造ったものではないということ。人間は岩や木と違い、人情を解するものだということ。 用例:源平盛衰記−七「武士共も、さすが岩木を結ばねば」
・曰く言い難し(いわくいいがたし) 簡単には説明し難(にく)いと言うしかない。 出典:「孟子−公孫丑・上」「敢問、何謂浩然之気。曰、難言也」 説明を求められて「言い難し」と答えた。
・曰く付き(いわくつき) 1.込み入った事情や複雑な経緯があること。特に、好ましくない事情が付随している場合に使う。 類:●訳あり 例:「あの娘は曰く付きらしい」 2.良くない前歴がある。前科者など。 例:「曰く付きの男」
・鰯網で鯨を捕る(いわしあみでくじらをとる) 意外な収穫や幸運を得ること。 類:●雀網で孔雀●兎の罠に狐が掛かる
・鰯で精進落ち(いわしでしょうじんおち) 鰯のような下等な魚で精進落ち(=肉食することができるようになること)をするのは残念だという意味から、耐えてきた行為や気持ちが報われないこと。また、詰まらないことで努力が無駄になること。
・鰯の頭も信心から(いわしのあたまもしんじんから)
・言わずもがな(いわずもがな) 1.言わない方が良いと思われること。 類:●言わでもの事 例:「言わずもがなの失言」 2.分かり切っていて、今更言う必要もないこと。 類:●言わでもの事 例:「言わずもがなの解説」 3.言うまでもなく。 例:「英語は言わずもがなスペイン語も」 類:●勿論 ★「がな」は願望の意を表わす助詞<国語大辞典(小)>
・言わぬが花(いわぬがはな)
・言わぬは言うに勝る(いわぬはいうにまさる) 1.口に出して言わない方が、言葉にしてしまうよりも、却(かえ)って相手に切実な心情を伝えられるものである。 類:●沈黙は金 2.沈黙を守っている方が効果的、或いは、安全である。また、黙っている方が粋(いき)である。 類:●言わぬが花
・言わぬは腹膨る(いわぬははらふくる)[=ねば〜] 言いたい事や言うべき事を言わないと、不満がつのるものである。 類:●腹が膨れる ★かつては、不平不満や喜怒哀楽の感情は腹に溜まるものとされていた。
・石見太郎(いわみたろう) 入道雲。
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・意を得る(いをえる) 思い通りになる。満足する。 用例:随・孔雀楼筆記−一「意得たりとて、上等の金襴(きんらん)を買て」 反:■意を得ず■意に満たない 用例の出典:孔雀楼筆記(くじゃくろうひっき) 明和5年(1768)。清田タン叟。・・・詳細調査中。
・異を唱える(いをとなえる) 不賛成を表明する。 類:●異議を唱える●異を差し挟む●異を立てる
・威を振るう(いをふるう) 勢威を示す。
・夷を以って夷を制す(いをもっていをせいす) 他国の力を抑えるのに、別の他国の力を利用する。他人の力を借りて、自分の利益を得る。 類:●以夷制夷(いいせいい)●油を以って油煙を落とす●邪を禁ずるに邪を以ってす●楔(くさび)を以って楔を抜く●毒を以って毒を制す 出典:「後漢書−?禹伝」「羌胡相攻、縣官之利、以夷伐夷、不宜禁護」
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・隠逸の花(いんいつのはな) 菊のこと。 出典:周敦頤の「愛蓮説」 「菊、花之隠逸者也」とある。 人物:周敦頤(しゅうとんい) 中国北宋の儒学者。1017〜73。字は茂叔。居所の名をとって濂渓先生と呼ばれた。唐代の経典の注釈にかわり、仏教や道教の哲理を応用した儒教哲学を創始した。著に「太極図説」「周子通書」がある。
・陰影に富む(いんえいにとむ) 「陰影」は、光の当たり具合によってできる暗い部分のこと。その暗い部分が非常に多様で変化に富んでいること。平凡でない性格や、深みある表現を誉めて言う。 類:●趣が深い
・飲灰洗胃(いんかいせんい) 《四熟》 胃袋の中の汚いものを灰で洗い清めるように、自分の過去を悔い、心を改めて出直すこと。心底から改心することの喩え。 類:●灰を飲み胃を洗う●呑刀刮腸 出典:「南史−荀伯玉伝」「若許某自新、必呑刀刮腸、飲灰洗胃。帝善其答即釈之」 中国・斉の高帝は、かつて過ちを犯して罰した笠景秀(りゅうけいしゅう)について荀伯玉(じゅんはくぎょく)に問うたところ、荀伯玉は「彼は『もし悔い改めるのをお許しくださるならば、刀を呑のんで腸を削り、灰を呑んで胃を清めましょう』と申しております」と答えた。
・因果応報(いんがおうほう) 《四熟・仏教用語》 善悪の因縁に応じて吉凶禍福の果報を受けること。善因には富楽などの善果を受け、悪因には貧苦などの悪果を受けること。 類:●因果報応●身から出た錆●自業自得●生得の報い 出典:「法華経」
・因果覿面(いんがてきめん) 《四熟》 悪事の報いがすぐさま眼前に現れること。 類:●因果は皿の縁(ふち)●悪の報いは針の先●因果歴然●天罰覿面
・因果の小車(いんがのおぐるま) 善悪を行なえば、相応の果報(かほう)が、小さな車輪がくるくる回るように早く巡ってくるものである。多く、悪い行ないに対しては、悪い報いが直ぐに巡ってくるという意味で言う。 類:●因果は車の輪の如し
・因果は車の輪の如し(いんがはくるまのわのごとし)[=巡(めぐ)る車の輪] 因果は車輪が回転するように、確実に巡り来るものである。または、因果は迅速に巡ってくるものである。 類:●因果の小車
・因果は皿の縁(いんがはさらのふち)[=端(はた)] 因果の循環は皿の縁を一周するほど速いということ。 類:●悪の報いは針の先●因果歴然●天罰覿面●因果覿面
・飲河満腹(いんがまんぷく) 《四熟》 溝鼠(どぶねずみ)がいくら頑張って大河の水を飲もうとしても、せいぜい小さな身体の腹一杯の分量に過ぎない。自分の身分を弁(わきま)え、安らかに暮らすべきだということ。 類:●偃鼠河に飲めども腹を満たすに過ぎず●鷦鷯深林に巣くうも一枝に過ぎず 出典:「荘子−逍遥遊」「許由曰、…偃鼠飲河、不過満腹」
・因果を含める(いんがをふくめる) 原因結果の道理を言い聞かせるという意味から転じて、事態の止むを得ない状況を説明して諦(あきら)めさせる。 類:●言い含める
・殷鑑遠からず(いんかんとおからず)
・婬虐暴戻(いんぎゃくぼうれい)[=淫虐暴戻] 《四熟》 淫(みだ)らで惨(むご)たらしく、乱暴で人の道に背いていること。 類:●放蕩無頼
・慇懃無礼(いんぎんぶれい) 《四熟》 1.丁寧(ていねい)過ぎて、却(かえ)って無礼と受け止められること。2.表面ではとても丁寧だが、実は甚(はなは)だ尊大であること。 出典・人物:楊巨源(ようきょげん) 中唐の詩人、770〜?。字は景山。蒲州(一説に河中)の人。貞元5年(789)に進士し、太常博士、国子司業、礼部郎中など歴任した。比較的順調な官僚生活を送り、元槙や白居易とも付き合いがあった。声律に力を入れて詩を作ったという。
・因業親父(いんごうおやじ) 頑固で思い遣りのない父親。片意地を張る父親。
・隠公左伝(いんこうさでん) 《四熟》 春秋左氏伝を読む決心をしながら、最初の「隠公の条」で止(や)めてしまうこと。勉学の長続きしないことの喩え。 類:●桐壺源氏
・隠者上戸(いんじゃじょうご) 酔えば酔うほど気が塞いでゆく癖のある酒飲み。また、その癖。
・因循姑息(いんじゅんこそく) 《四熟》 1.古い習慣や習俗によりしたがって、改めず一時逃れをすること。2.決断力に欠けていて、ぐずぐずすること。
・因循守旧(いんじゅんしゅきゅう) 《四熟》 古い習慣を守っていて改めないこと。古臭い形式や方法に拘(こだわ)って、融通が利かないこと。 類:●守株待兎●保守退嬰●旧套墨守●旧態依然
・隠姓埋名(いんせいまいめい) 《四熟》 本名を隠し、偽名を使って世渡りすること。また、改名したりして、余所の土地に逃げること。
・蚓操(いんそう) 蚯蚓(みみず)の生き方のような、小さな世界での節操。蚯蚓が、土を食い水を飲むだけで、それ以上のものを求めないように、自分の分際(ぶんざい)や小さな生活の枠に篭もり、そこに甘んじること。 ★孟子が、廉潔(れんけつ)の士として評判の高い陳仲子(ちんちゅうし)の態度を嘲(あざけ)って言ったもの。 出典:「孟子−滕文公・下」「若仲子者、蚓而後充其操者也」<仲子のごとき者は、蚓にして後その操を充たす者なり>
・いんちき 1.博打(ばくち)で、不正な手段によって相手の金品を騙(だま)し取ること。また、その人。 類:●如何様(いかさま) 2.一般に、本物でないもの。誤魔化しがあるもの。また、無責任であること。 例:「どうもいんちき臭い」 ★語源未詳。昭和初期に一般語化したという<国語大辞典(小)> ★安斎随筆、印地鎗の図説に見える、遠江国小笠郡の方言で、餌を用いない釣針のことをいうインチキ(「餌え無き鉤ち」の転)からか<広辞苑第四版(岩)> ★「ちき」は、「とんちき」の「ちき」と同義の造語成分。「いん」の「い」は、「いかさま」の意という<新明解国語辞典(三)>
・インディアンサマー(いんでぃあんさまあ) 1.冬の初めの、暖かい穏やかな気候。アメリカ北部などで、晩秋の南西の風によって起こる、乾燥して霞(かすみ)の掛かった暖かい日和(ひより)。数日間続く。 類:●小春日和 ★1778年頃からアメリカンインディアンの間で使い始められたという。 2.年の終わりが近付いた頃の上天気を人生に準(なぞら)えて、生涯の晩年の落ち着いた幸福な時期の喩え。
・引導を渡す(いんどうをわたす) 1.「引導」は、仏教用語で、死人を葬る前に、迷わずに悟りが開けるように、棺の前で、僧が唱える経文や法語のこと。引導を説いて聞かせる。2.転じて、相手に教え諭(さと)すように言うこと。また、最終的な宣告をすること。
・陰徳あれば必ず陽報あり(いんとくあればかならずようほうあり) 人知れず善いことを行なえば、後日必ず善い報(むく)いを受ける。 類:●陰徳の陽報 出典:「淮南子−人間訓」「夫有陰徳者、必有陽報。有陰行者、必有昭名」
・陰に籠もる(いんにこもる) 1.表に現われず心の中に籠もっている。 例:「陰に籠もった不平」 2.陰気な様子。 例:「陰に籠もった声」
・員に備わる(いんにそなわる) 集団の中に入る。一員となる。 例:「私などは員に備わるにすぎない」 ★限定の語を伴って、その職や地位などに加わっているだけで実際には役に立たないことや実権のないことをいう場合が多い<国語大辞典(小)>
・陰に閉ず(いんにとず) 1.物の内側に篭もる。 反:■陽に開く 2.全くの静寂となる。
・陰に陽に(いんにように) あるときは密かに、また、あるときは公然と。 類:●陰になり日向になり 例:「陰に陽に援助する」
・因縁を付ける(いんねんをつける) 無理な理屈を付けて困らせる。 類:●言い掛かりを付ける
・陰謀詭計(いんぼうきけい) 《四熟》 密(ひそ)かに企(たくら)む悪巧みと、人を欺(あざむ)く計略策謀。 ★「陰謀」は、こっそり陰で悪い計画を立てること。「詭計」は、偽りの謀(はかりごと)。
・韻を踏む(いんをふむ) 詩歌を作るときの技法で、同じ韻の文字を句の末に用いる。 類:●韻を押す●押韻(おういん)
・印を結ぶ(いんをむすぶ) 1.仏教用語。仏像の手指の示す特定な形を形作ること。また、仏菩薩などの悟りの内容を、真言行者が描いたり手指を組んだりして表わすこと。2.芝居で、幻術使いなどが術を使って姿を消すとき、1を行なうところから、姿を消す。逃げる。 類:●韻を作る ★文政・天保頃の流行語<国語大辞典(小)>
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