【のう】~【のほ】
・能ある鷹は爪を隠す(のうあるたかはつめをかくす) 本当に能力がある者は、妄(みだ)りにそれをひけらかすようなことはしない。 類:●上手の鷹が爪を隠す●能ある猫は爪を隠す●大賢は愚なるが如し ●Still waters run deep.静かな川の水は深く流れる<「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典> ★略して「能鷹(のうよう)」ともいう<国語慣用句辞典(集)>
・能書き(のうがき) 1.薬品などの効能を書き記したもの。効能書き。2.転じて、自分の優れた点を述べ立て、吹聴(ふいちょう)する言葉。自己宣伝の文句。 例:「能書きを並べる」
・能がない(のうがない) 1.ものごとをなし得る能力がない。また、機転が利かない。2.平凡で面白味がない。 類:●芸がない
・能工巧匠(のうこうこうしょう) 《四熟》技能に優れた大工や、腕の良い職人。また、有能な芸術家。
・能事畢る(のうじおわる)[=足(た)る] なすべき仕事を全部終える。やるべきことは悉(ことごと)くやり尽くしたということ。時に、事を成し遂げた満足感などを表わして用いる。 出典:「易経−繋辞伝・上」「引而伸之、触類而長之、天下之能事畢矣」<引きてこれを伸べ、類に触れてこれを長くすれば、天下の能事畢る>
・能書は筆を択ばず(のうしょはふでをえらばず) 書の達人欧陽詢(おうようじゅん)は筆や紙については一切文句を言わず、どんな筆でもどんな紙にでも書いた。 類:●弘法は筆を択ばず 参考:「唐書−欧陽詢伝」「王肯堂筆塵」などに見られる、書の達人欧陽詢にまつわる故事。 出典:王肯堂筆塵(おうこうどうひつじん) 中国、明代。王肯堂著。・・・調査中。
・脳足りん(のうたりん) 俗語。脳味噌が足りないの意味で、馬鹿者のこと。 類:●阿呆 ★昭和後期の言葉。昭和前期には「ノールス(脳留守)」が使われた<日本語俗語辞書>より抜粋
・嚢中の錐(のうちゅうのきり)
・能天気(のうてんき)・能転気・脳天気 安直で調子ばかりが良い軽はずみな者。後先をあまり考えない軽薄な者。 用例:魂胆惣勘定「能天気といふ者、夜々に出て群り、大口をきひて喧嘩を起し亦はやり哥をうたふて」 ★関東・中部方言<新明解国語辞典(三)> 用例の出典:魂胆惣勘定(こんたんそうかんじょう) 宝暦4年(1754)。2冊3巻。・・・調査中。
・能無し犬の高吠え(のうなしいぬのたかぼえ) 役に立たない犬ほど大きな声で吠える。取り柄のない役立たずのものほど、口先が達者なものである。 類:●能無しの口叩き●A dog which barks much is never good at hunting.(よく吠える犬は狩りが下手)
・脳無し犬は昼吠える(のうなしいぬはひるほえる) 駄目な犬は、番犬の役もこなせず、昼間にばかり吠える。才能のない者に限って、大きなことを言ったり、些細なことで大騒ぎをしたりするものである。 類:●能無し犬の高吠え
・能無しの口叩き(のうなしのくちたたき) 役立たずの者ほど講釈をぶつものである。口は達者だが、仕事が一向に捗(はかど)らない者を嘲(あざけ)って言う。 類:●能無し犬の高吠え●吠える犬は噛まぬ●光るほど鳴らぬ
・伸う伸うと(のうのうと) 1.束縛(そくばく)から開放されて、気分がゆったりとしている様子を表わす言葉。 類:●伸び伸びと 用例:滑・浮世風呂−前「四五日も内に居るから、ヤレヤレのうのうとしたと思ふと」 2.特に、悪事を働いた者などが、処罰を逃れて自由に振舞っている様子を指して言う。 例:「顧問という肩書きをもらって、のうのうと生きている」
・脳味噌を絞る(のうみそをしぼる) ありったけの知恵を捻(ひね)り出す。必死に考える。 類:●脳漿(のうしょう)を絞る●知恵を絞る
・能面のよう(のうめんのよう) 顔が端麗である。また、無表情な人のこと。
・暖簾を掛ける(のうれんをかける) 破産する。
−−−−−−−のか(#noka)−−−−−−−
・逃れぬ(のがれぬ)[=ざる・られぬ] 1.逃げることができない。避けることができない。止むを得ない。 用例:浄・新版歌祭文−座摩社「蔵屋敷の侍をばらしたからは、どふでおりゃ遁がれぬ命」 2.切っても切れない間柄。深い関係。また、血縁である。 類:●割りない 用例:太平記−一一「今は残り留たる者とては、三族に不遁(ノガレざ)る一家の輩」 用例の出典:新版歌祭文(しんばんうたざいもん) 浄瑠璃。世話物。2段。近松半二。安永9年(1780)大坂竹本座初演。お染久松を題材とする戯曲の代表作。
−−−−−−−のき(#noki)−−−−−−−
・野菊も咲くまでは只の草(のぎくもさくまではただのくさ) 野菊は、花を咲かせるまでは雑草とたいして変わらないが、花を咲かせると人目に付くようになる。人の値打ちも、その人柄や才能が発揮されて初めて分かるものであるということ。
・軒を争う(のきをあらそう)[=競(きそ)う] 1.草などが高く伸びて軒を覆(おお)い、隙間なく生い茂る。寂れて人が住まなくなった家の喩え。 用例:源氏−蓬生「しげき蓬は、のきをあらそひて生ひのぼる」 2.軒と軒とが重なり合うように家が建て込む。人家が密集している様子。 用例:方丈記「のきをあらそひし人のすまひ」 類:●軒を並べる●軒を連ねる●軒をきしる
・軒を貸して母屋を取られる(のきをかしておもやをとられる) 屋根の端の軒を貸したばかりに、家の中央部分まで取られてしまうという意味から、好意で自分の所有物を貸したのに、その一番大切な部分、あるいはその全体を奪われてしまうこと。また転じて、恩を仇で返されること。 類:●庇(ひさし)を貸して母屋を取られる●片屋貸して母屋取られる●貸家栄えて母屋倒る
・軒を軋る(のきをきしる) 軒と軒とが接して軋む音が出そうだということで、人家が密集して建ち並んでいる様子。 類:●甍を競う●軒を争う●軒を並べる●軒を連ねる
・軒を並べる(のきをならべる)[=連(つら)ねる] 軒と軒とが重なり合うように家が建て込む。人家が密集している様子。 類:●軒を争う
−−−−−−−のけ(#noke)−−−−−−−
・仰け反り返る(のけぞりかえる) 後ろに反り返って胸を張るという意味から、威張って偉そうに振る舞う様子。 類:●踏ん反り返る
・退けば他人(のけばたにん) どんなに惚(ほ)れ合って結婚しても、夫婦は、離婚すればまったくの他人になってしまうということ。離縁は、それだけの覚悟を持って踏み切りなさいということ。 用例:浮・西鶴織留−四「まことにのけば他人、さてもおそろしの人心や」
−−−−−−−のこ(#noko)−−−−−−−
・鋸座敷(のこぎりざしき) 押して切り、引いて切る鋸のように、二つの座敷を行き来するという意味から、遊郭で太鼓持ちなどが二つの座敷の客を掛け持ちして、両方から金を貰うこと。
・残らず(のこらず) あますところなく。 類:●すべて●悉(ことごと)く●全部
・残り多い(のこりおおい) 心残りが多い。残念だ。 類:●残り惜しい 用例:枕・一三六「のこりおほかる心地なんする」
・残りの月(のこりのつき) 明け方、空に残っている月。 類:●有明の月●残月(ざんげつ)●残んの月
・残り物には福がある(のこりものにはふくがある)
・残る隈なし(のこるくまなし) 隅(すみ)から隅まで残るところがない。すべて明らかである。
−−−−−−−のさ(#nosa)−−−−−−−
・のさばる 1.勝手に場所を占める。好き勝手に伸び広がる。 用例:浄・百合若大臣野守鏡−二「身をのさばって立ち居たり」 2.横柄(おうへい)な態度をする。縦(ほしいまま)に振る舞う。 用例:仮・仁勢物語−下「人の見るをも知らで、のさばれば」 ★「のさ」は「のさのさ」の「のさ」、「ばる」は接尾語<国語大辞典(小)>
・野晒れ者(のざれもの) 野垂れ死にして風雨に晒(さら)されている者という意味で、人を罵(ののし)って呼ぶ言葉。罵詈雑言(ばりぞうごん)の類(たぐい)。
−−−−−−−のし(#nosi)−−−−−−−
・伸し上がる(のしあがる) 1.人の弱みに付け込んで威張る。 類:●付け上がる 用例:浄・淀鯉出世滝徳−上「のしあがった面見れば」 2.のさばって上へあがる。横柄(おうへい)に構えて上へあがる。 用例:浄・心中万年草−中「蒲団にのしあがり」 3.他人を抑えて地位が次第に昇る。身代が次第に豊かになる。 例:「丁稚から伸し上がって番頭になる」 用例の出典:心中万年草(しんじゅうまんねんそう) 浄瑠璃。世話物。3段。近松門左衛門。宝永5年(1708)大坂竹本座初演。高野山吉祥院の寺小姓成田久米之助と雑賀屋(さいかや)の娘お梅との高野山での心中を扱ったもの。
・熨斗を付ける(のしをつける)[=添(そ)える] 喜んで他人に物を与える意志を表わす。 例:「熨斗を付けて呉れてやる」 参考:熨斗(のし) 四角い色紙を細長い六角形(上は広く下は狭い)にし、襞(ひだ)を付けて折り畳み、中に熨斗鮑(あわび)の細片を貼り付けたもの。贈物・進物に添えた。
−−−−−−−のそ(#noso)−−−−−−−
・野育ち(のそだち) 正しい行儀作法を躾(しつけ)られないで、放任されて育つこと。また、自分が不躾(ぶしつけ)であると、遜(へりくだ)るときにも言う。
・望みの綱(のぞみのつな) 願いの拠りどころとなる綱という意味で、希望を叶えてくれる最後の頼りとなるもののこと。 類:●頼みの綱
・望みを属す(のぞみをぞくす・しょくす)[=託(たく)す] 希望することの成否を、ある物や特定の人物に委(ゆだ)ねる。希望を掛ける。
・望むべくは(のぞむべくは)[=べくんば] 望むことができるならば。希望としては。
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・のたうつ 1.もがき苦しむ。苦痛に転げ回る。 類:●のたくる●五体を投ぐ 用例:浄・心中刃は氷の朔日−下「のたうつ藍の虫の息」 2.波が激しく押し寄せる様子。また、大地に地割れが広がる様子。 例:「のたうつ波」
・のたまく 「宣(のたまわ)く」からの変化。 1.のたまう。仰(おっしゃ)る。 用例:洒・新吾左出放題盲牛「すでに孔子のたまくに、あまりせきやるな浮世はくるま、いのちながけりゃめぐりあふと」 2.訳の分からないことを、くどくどと言うこと。 類:●御託(ごたく)を並べる 用例:談・根無草−後「貸た奴がのたまく云や、横ぞっぽうはりのめすに」 ★「論語」などの「子、のたまはく」を堅くわけのわからないことと解し、さらに「管を巻く」などの「巻く」をふまえて「宣(のた)巻く」という意をこめたものか<国語大辞典(小)> 3.酔っ払い。酔漢。 用例:黄・従夫以来記「下戸餅に酔ひ、のたまくとなる」 4.酔っぱらいのように、訳の分からないことを言う者。または、正体のない腑抜け者を罵(ののし)る言葉。 用例の出典①:新吾左出放題盲牛(しんござでほうだいもうぎゅう) 洒落本。天明元年(1781)。大盤山人偏直。・・・調査中。 用例の出典②:従夫以来記(それからいらいき) 黄表紙本。天明4年(1784)。竹杖為軽(別名・森羅亭萬象)。喜多川歌麿画。・・・詳細調査中。
・のたまく者(のたまくもの) 呂律(ろれつ)が回らない酔っ払いを表わす。また、酔っ払いのように訳の分からぬ事を言う者や、怠け者を罵って言う。
・野垂れ死に(のたれじに) 路傍などで倒れてそのまま死ぬこと。また、そのような惨(みじ)めな死に方。 類:●行き倒れ●die a dog’s death ★「のたれ」は下二段動詞「のたれる」の連用形から。「野垂」は当て字<国語大辞典(小)> ★「のたれる」は、這う、這って行くの意味。
−−−−−−−のち(#noti)−−−−−−−
・後の百より今五十(のちのひゃくよりいまごじゅう) 後で入るかもしれない多くのものより、少なくても今確実に手に入る方が良い。 類:●明日の百より今日五十●朝三暮四●即時一杯の酒●明日の親鳥より今日の卵●死しての千年より生きての一日
−−−−−−−のつ(#notu)−−−−−−−
・仰っけから(のっけから) 1.最初から。開始早々から。 例:「のっけから三連打を浴びた」 2.いきなり。 用例:俳・皮籠摺−上「品川でのっけにかへる帆かけ船」 ★「仰向(あおむ)けに」の意味の「仰(の)っけに」と同源かという。 ★「除(の)けてから」の転訛かという説もある。 用例の出典:皮籠摺(かわごすり) 雑俳。岩田涼莵(いわたりょうと)。元禄12年(1699)。作者は芭蕉門下だが、無作為・平明な作風から「伊勢派」と呼ばれる。・・・詳細調査中。
・伸っつ反っつ(のっつそっつ)[=反つ・返しつ] 身体を伸ばしたり、反り返ったりする。苦しみもがく様子。また、退屈した様子。 用例:雑俳・軽口頓作「たいくつで・ごまの施主どののっつそつ」 用例の出典:軽口頓作(かるくちとんさく?) 雑俳。堀内雲鼓。宝永6年(1709)。・・・調査中。
・乗っ取る(のっとる) 1.城や領地に攻め入って自分の支配下に置く。攻略する。 例:「城を乗っ取る」 2.奪い取って自分のものにする。支配権を握る。 例:「会社を乗っ取る」 3.運航中の航空機などで、乗員・乗客を威して自分の支配下に置く。 例:「旅客機を乗っ取る」 ★「乗り取る」の転。
・退っ引きならない(のっぴきならない)[=ならぬ] 元々は戦(いくさ)などで使われた言葉で、避けることも退くこともできないこと。逃れることができない。動きがとれない。 類:●進退これ谷(きわ)まる●抜き差しならない●二進も三進も
−−−−−−−のと(#noto)−−−−−−−
・喉が渇く(のどがかわく) 1.咽喉に水気がなくなって、水などが欲しくなる。2.見たものがどうしても欲しくなる。人の美しい衣装や持ち物などを羨(うらや)み、欲しがる。
・喉が鳴る(のどがなる) 美味そうなものなどを見て、食べたくてうずうずする。甚だしく欲求が起こる。 類:●涎を垂らす
・喉から手が出る(のどからてがでる) 1.ひどく食べたいときの喩え。2.欲しくて堪らないときの喩え。 例:「そのチケットが喉から手が出るほど欲しい」
・喉口を干す(のどくちをほす) 咽喉や口に入るものがないという意味から、家族などに食物を与えないで、ひもじい思いをさせること。
・喉の鎖(のどのくさり) 咽喉のこと。人の命の繋ぎとなる鎖という意味を込めて「鎖」と付けたもの。
・喉の下へ入る(のどのしたへはいる) 人を扇動して、自分が利を占めること。また、媚(こ)び諂(へつら)って巧く取り入ること。
・喉元思案(のどもとじあん) 胸の深いところでじっくり考えたのでない、極めて浅はかな考え。 類:●鼻先思案●鼻の先知恵
・喉元過ぎれば熱さを忘れる(のどもとすぎればあつさをわすれる)
・喉を通らない(のどをとおらない) 1.食物などを飲み下せない。2.傷心や心配事などのため、また、興奮や疲れなどのために、食欲がまったく湧かない。 例:「恋煩いで食事が喉を通らない」
・喉を鳴らす(のどをならす) 腹が空いているときに、旨いものを見て唾を飲み込み、咽喉でゴクリと音を立てる様子。欲求が甚(はなは)だしい様子。
・喉を吹き切る(のどをふききる) 艱難辛苦を諭(さと)して激励したりする言葉。 ★咽喉を痛め声を嗄らして後、更にそれを乗り越えて練習を続け、初めて味わいのある声が出るに至るという日本音曲の練習過程を示した言葉<国語慣用句辞典(集)>
・喉をして背を拊つ(のどをやくしてせをうつ) 戦(いくさ)の戦術の一つ。前後から急所を攻めて、避ける道がないようにする。 出典:「史記−劉敬叔孫通列伝」
−−−−−−−のな(#nona)−−−−−−−
・野中の一本杉(のなかのいっぽんすぎ) 1.野原にぽつんと立った杉の木のように、孤独で助けてくれる人もいないことの喩え。 類:●独りぼっち 2.《相場》 相場全体が下落しているとき、それに逆行して上昇している銘柄のこと。
−−−−−−−のの(#nono)−−−−−−−
・のの様(ののさま) 幼児語。日・月・神・仏など、尊ぶべきものを指して言う。 類:●のの 用例:俳・談林十百韻「あれ有明のののさまを見よ」 2.知能が低くて、子供のような人を嘲って言う言葉。〔俚言集覧〕 用例の出典:談林十百韻(だんりんとっぴゃくいん) 俳諧。江戸談林俳諧初の書。田代松意編。延宝3年(1675)。2冊。寛文13年(1673)に、貞門俳諧の停頓期に相当し、新風を起こすべく松意らは「誹諧談林」なる会所を結成した。延宝3年、内藤風虎の誘いによって西山宗因が大坂から江戸に下ると、松意らは宗因の発句を乞い得て十百韻を張行した。
・のの字を書く(ののじをかく) 平仮名の「の」の字形から、渦を描くようにすること。また、そういう仕種。特に、女性が恥じらう様子の形容に使う。 例:「畳にのの字を書く」
−−−−−−−のふ(#nohu)−−−−−−−
・野太い(のぶとい) 1.非常に横着である。図々しい。また、大胆不敵である。 類:●図太い 用例:浄・夕霧阿波鳴渡−中「今も先身に逢ひたいといふべい所、竹を呼出してくれとはのぶとい者だ」 2.声が太い。 例:「野太い声」 ★「野」は当て字。箆(の)が太いの意という<国語大辞典(小)> 参考:箆(の) 矢竹(やだけ:竹の一種。主に弓矢の矢に使われた)のこと。 用例の出典:夕霧阿波鳴渡(ゆうぎりあわのなると) 浄瑠璃。世話物。3段。近松門左衛門。正徳2年(1712)大坂竹本座初演と推定される。新町扇屋の遊女夕霧と藤屋伊左衛門との間の子を養う阿波の侍平岡左近の妻雪は、夕霧を身請けし乳母として迎えようとする。伊左衛門が駕籠舁に扮して、密かに親子の対面をするのを見た左近は、親子三人を追い払う。傷心で危篤の夕霧は伊左衛門の母に身請けされる。
−−−−−−−のへ(#nohe)−−−−−−−
・のべつ幕なし(のべつまくなし) 芝居で、幕を引くことなしに場面を進行させること。転じて、絶え間なく続く様子。 例:「のべつ幕無し小言を言う」 類:●引っ切り無し●ぶっ続け
・述べて作らず(のべてつくらず) 先哲の言葉を”述べて“、自説を”作らぬ“という孔子の態度。自分は実際に起こったことを述べているのであって、新たに作り出しているのではないということ。 出典:「論語−述而編」
・延べなら鶴でも(のべならつるでも) 「延べ」は、代金の支払いを延期すること、または月賦という意味。月賦で買うとなれば、高価の上に実質的でない鶴までも買ってしまうということから、現金で買い物をするときは慎重に余計なものを買わないようにするが、月賦だと、つい不必要なものや高いものでも買ってしまうものだということ。
・野辺の送り(のべのおくり) 亡骸(なきがら)を、火葬場や埋葬場まで、付き従って送ること。また、その行列や儀式。 類:●弔(とむら)い●野送り
・野辺の煙(のべのけむり・けぶり) 火葬するときの煙。荼毘(だび)の煙。
−−−−−−−のほ(#noho)−−−−−−−
・野方図(のほうず) 1.人を人とも思わない振る舞いや態度のこと。 類:●横柄●傍若無人 例:「野放図な生活」 2.際限のないこと。締まりがないこと。 例:「野放図もなく広がる公害」「管理が野放図になる」 ★一説に「のふうぞく(野風俗)」の変化という<国語大辞典(小)>
・野方図もなく(のほうずもなく) 際限もなく。途方もなく。「方図」は、限り・際限という意味。
・上り一日下り一時(のぼりいちにちくだりいっとき) 坂道を上るには一日掛かっても、同じ道を下るには僅(わず)かな時間しか掛からない。ものごとを築き上げるのには多くの時間や労力が必要だが、壊すのはあっという間だということ。 類:●一夜乞食
・上り大名下り乞食(のぼりだいみょうくだりこじき) 出発のときは華やかだったのに、帰路がみすぼらしいこと。
・上りての世(のぼりてのよ) 遡(さかのぼ)っての世。昔の世。上代。
・登れない木は仰ぎ見るな(のぼれないきはあおぎみるな) 自分の力に相応(ふさわ)しくないことや、身分不相応なことを望んではならない。程好いところで満足せよということ。高望みするなということ。 類:●分相応に風が吹く
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