【あり】~【あん】

−−−−−−−あり(#ari)−−−−−−−
・蟻集まって樹を揺るがす
(ありあつまってきをゆるがす) 1.蟻のような弱い虫でも、沢山(たくさん)集まれば木を揺るがすほどの大きな力になる。個々は無力な庶民も、群集になると大きな力になるという喩え。 類:●蟻の塔を組む如し 2.また逆に、無力な蟻が集まって木を揺るがそうとしてもできることではないと解釈して、身分不相応の大望を抱くことの喩えとしても使う。
・有り難い
(ありがたい) 存在することが難しいの意味。 1.存在が稀(まれ)である。なかなか有りそうにない。滅多にない。珍しい。 用例:枕草子−七五「ありがたきもの、舅にほめらるる婿」 2.世に生きることが難しい。存在し難(にく)い。生き長らえ難い。 用例:源氏−東屋「世の中は、ありがたく、むつかしげなる物かな」 3.世にも珍しいほど優れている。非常に立派である。 用例:宇津保−吹上・上「いとありがたき君と聞き奉るぞ」 4.滅多にないことで、またとなく尊(とうと)い。 類:●勿体ない畏(おそ)れ多い 用例:二度本金葉−681「ありがたき法をひろめし聖にぞ」 5.人の好意などに出会って、滅多にないことと感謝したい気持ちである。喜ばしく思う。身に染みて嬉しい。 類:●忝(かたじけな)い●有難う 用例:人情・春色梅児誉美−四「御隠居さまの有がたい思召」 6.良い状態であり、幸運である。恵まれている。 例:「有り難いことに健康そのものです」
・在り来たり
(ありきたり) 1.元からあること。今まで通りである。 類:●在来 2.転じて、有り触れていること。 類:●陳腐●月並み  例:「在り来たりの発想」
・在りし日
(ありしひ) 1.過ぎ去った日々。昔。2.死んだ人が、まだ生きていた頃。 類:●生前
・在りし世
(ありしよ) 過ぎ去った昔。特に、栄えていた昔の時世。または、生前。 類:●在りし昔
・有り付く(ありつく) 1.職・金銭・食べ物など、求めていたものがやっと手に入る。また、偶然手にする。 例:「ご馳走に有り付く」 2.ものごとに慣れる。生活に慣れる。 用例:源氏−蓬生「さるかたにありつきたりしあなたの年ごろ」 3.住み付く。安住する。そこに長く住む。 用例:今昔−10「国に大水出で、人を流し里を失ふ。然れば、民ありつく事難し」 4.あることが、自分の考えや趣味と一致する。似合う。また、納得する。 類:●板に付く 用例:源氏−総角「けさうだちたることは、いとまばゆく、ありつかず」 ★下に否定語を伴うことが多い<国語大辞典(小)> 5.落ち着く。 用例:狭衣−一「あらぬ所に渡りて、ありつかず、花々ともてかしづかれ給ふ有様」
・蟻の穴から堤も崩れる(ありのあなからつつみもくずれる)[=より堤の崩れ] 堅固に作った堤防も蟻が開けた小さな穴が原因となって崩れ去ることもある。ほんの僅(わず)かな油断や不注意が元で、大惨事を招くことがある。 類:●
蟻の一穴千里の堤も蟻の穴から小事は大事●It is the last straw that breaks the camel’s back.(最後の藁一本が駱駝の背を折る) 出典:「韓非子−喩老」「千丈之以螻蟻之穴潰
・蟻の甘きに付くが如し
(ありのあまきにつくがごとし) 利益のあるところに、人が群がり集まること。
・蟻の一穴
(ありのいっけつ) ちょっとしたことが原因で大変なことになる。
・蟻の思いも天に届く
(ありのおもいもてんにとどく)[=昇る] 小さな力しか持たない者でも、一念が強ければ願い通りになるものだ。 類:●一念岩をも徹す
・蟻の熊野参り
(ありのこまのまいり)[=伊勢参り・百度参り・堂参り・物参り] 蟻が列をなして続くのを熊野参りの人の列に喩えたもの。転じて、大人数が列をなして、ぞろぞろと行くこと。
・蟻の丈
(ありのたけ) どれもこれも平凡で代わり映えがしないこと。特に、抜きん出た者がないことの喩え。 類:●一寸法師の背比べ●団栗の背比べ
・蟻の門渡り
(ありのとわたり) 人がぞろぞろと列をなして行く様子を、蟻が一列に並んで行く様子に喩えた言葉。また、人が一列でなければ歩けないような、両側が深い谷間の尾根道などのことも言う。 類:●蟻渡り●
蟻の熊野参り
・蟻の這い出る隙もない(ありのはいでるすきもない) 小さな蟻でさえ逃げ出す隙間がないという意味で、厳しく四方八方を固められて、出る隙間がない警備状態の喩え。 類:●水も漏らさぬ
・ありやなしや 1.生きているかいないか分からない。無事でいるかどうか分からない。 用例:伊勢−九「わが思ふ人はありやなしや」 2.本当であるかないか分からない。 類:●実否 用例:源氏−浮舟「ありやなしやをきかぬまは」 3.存在するかしないか分からない。 用例:雑俳・柳多留−三「気はありやなしやとすびく角田川」 4.あるかないかはっきりしないくらい目立たない。 例:「ありやなしやの髭」

−−−−−−−ある(#aru)−−−−−−−
・主顔(あるじがお) いかにも主人であるといった顔付きや振る舞い。特に、主人に替わって、まるで自分が主人であるかのごとくに振る舞っている様子。 類:●主人面(づら)
・有る時は米の飯(あるときはこめのめし) 余裕があるときは、贅沢をしがちであるということ。 類:●有れば有るだけ無いとき三昧
・ある時払い
(あるときばらい) 支払いの期限を決めないで、金銭の都合が付いたときに払うこと。結果的に支払われなくても構わないという、温情の意味合いも含んでいる。 例:「有る時払いの催促なし」
・有るは無く無きは数添う世の中
(あるはなくなきはかずそうよのなか) 古歌の文句。生きているものは死んでいき、死ぬものの数はいよいよ増えるこんな世の中。無常の世の中を嘆く言葉。
・あるべき限り
(あるべきかぎり) 限度一杯、ぎりぎり一杯。 類:●ありったけ●最大限に●十二分に 
★「できる限り」と同じような使い方をする<国語慣用句辞典(集)>

−−−−−−−あれ(#are)−−−−−−−
・吾か人か(あれかひとか) 自分なのか他人なのか判然としない状態。茫然として己を失っている状態。恍惚(こうこつ)としている状態。 用例:
古今−九六三「我か人かと身をたどる世に」 類:●吾(われ)か●吾かにもあらず●吾か人にもあらず●吾にもあらず●茫然自失 用例の出典:古今和歌集(こきんわかしゅう) 平安初期の最初の勅撰和歌集。20巻。延喜5年(905)醍醐天皇の勅命により、紀貫之、紀友則、凡河内躬恒、壬生忠岑の撰。延喜13年(913)頃の成立とされる。読人知らずの歌と六歌仙、撰者らおよそ127人の歌1111首ばかりを、四季、恋以下13部に分類して収めたもの。仮名序と真名序が前後に添えられている。短歌が多く、七五調、三句切れを主とし、縁語、掛詞など修辞的技巧が目立つ。優美繊細で理知的な歌風は、組織的な構成とともに後世に大きな影響を与えた。「古今集」「古今」。 人物:紀貫之(きのつらゆき) 平安前期の歌人、歌学者。三十六歌仙の一人。?〜945。加賀介、土佐守など下級官を歴任、木工権頭(もくごんのかみ)に至る。醍醐天皇の勅命で「古今和歌集」撰進の中心となり、仮名序を執筆。歌風は理知的で技巧にすぐれ、心と詞の調和、花実兼備を説いて古今調をつくりだした。漢文学の素養が深く、「土佐日記」は仮名文日記文学の先駆とされる。ほかに「新撰和歌集」、家集「貫之集」など。
・あれよあれよ 意外な成り行きに驚いている様子を表わす言葉。多く、はらはらしながら見守るときや、見送るときに使う。 例:「あれよあれよという間にトップに躍り出た」

−−−−−−−あろ(#aro)−−−−−−−
・あろう事か(あろうことか)[=事] 「あってよいことか」の意味から、とんでもないことだ。 用例:浄・神霊矢口渡−四「ほんにマア有ふ事か」

−−−−−−−あわ(#awa)−−−−−−−
・合わす顔がない
(あわすかおがない)[=せる〜] 他人に対し、面目がない。申し訳ない。 類:●面目(めんぼく)ない
・合わせ物は離れ物(あわせものははなれもの)[=離れる] 会った者同士、縁で結ばれた者同士は、やがて別れる時が来る。多く、男女・夫婦などの仲について使われる。 類:●会うは別れの始め
・慌てる乞食は貰いが少ない
(あわてるこじきはもらいがすくない) 人より多く貰おうとして欲張る乞食は、却(かえ)って施(ほどこ)しが少なくなる。同じように、慌てて騒いだり行動したりすると、却って損をすることが多いということ。 類:●急いては事を仕損じる急がば回れ残り物には福がある
・阿波に吹く風は讃岐にも吹く
(あわにふくかぜはさぬきにもふく)[=伊予に〜] 1.ある土地の風俗や流行が、他の土地にも移っていく様子。また、上の人の行ないは、下の人も見習うようになるということ。2.どこの土地に行っても人情は変わらないということ。 反:■所変われば品変わる難波の葦は伊勢の浜荻
・合わぬ蓋あれば合う蓋あり(あわぬふたあればあうふたあり) 容器には合う蓋と合わぬ蓋があるように、人間にも物にも相応(ふさわ)しい人や物が必ずあるということ。広い世間には、必ずその人に適した相手がいるものだということ。主に、男女の間柄について言う。 類:●破れ鍋に綴じ蓋
鮑の片思い
(あわびのかたおもい)
・あわよくば 
間(ま)が良ければ。良い機会があったら。事が巧く運べば。 用例:浄・
吉野都女楠−二「此具足着て働き、あはよくは義貞をしてやらふと思ふ気はないか」 ★「間(あわい)よい」に助詞「ば」の付いたもの<国語大辞典(小)> 用例の出典:吉野都女楠(よしのみやこおんなくすのき) 浄瑠璃。近松門左衛門。宝永7年(1710)。「太平記」に拠った作。新田義貞の情けと小山田高家の身代わり。妻の献身が却(かえ)って夫や義父の死を招いてしまう皮肉な成り行きを描く。第4段に楠木正成の子・正行が母とともに後醍醐天皇を迎えて、吉野に案内するくだりがある<近松門左衛門でございーい!> 人物:近松門左衛門(ちかまつもんざえもん) 江戸前期の浄瑠璃・歌舞伎作者。越前の生まれ。1653〜1724。本名杉森信盛。別号巣林子。初め古浄瑠璃の脚本を書き、その後竹本義太夫のために「出世景清」などの浄瑠璃を、40歳頃からは坂田藤十郎のために歌舞伎に筆を染め次々と名作を発表、再び浄瑠璃にもどって世話浄瑠璃を創始するに至った。作品に「曾根崎心中」「冥途の飛脚」「国性爺合戦」「心中天の網島」「女殺油地獄」など。
・哀れみを乞う
(あわれみをこう) 人の同情心を求める。 類:●情けに縋(すが)る
・哀れみを蒙る(あわれみをこうむる・こうぶる) 人から慈悲を掛けられる。同情される。また、目を掛けられる。
・哀れみを垂れる
(あわれみをたれる)[=垂る] 慈悲を掛ける。情けを掛ける。 類:●哀れみを掛ける●不憫がる
・哀れを交わす(あわれをかわす) お互いに深く思い合う。お互いに愛情を持つ。いじらしいと思い合う。
・哀れを留む
(あわれをとどむ) 1.情趣や同情心、または悲しみを心深く感じて、長い間忘れられない。2.悲しみや不幸などを一身に受ける。 用例:説経・
しだの小太郎・五「爰にあわれをとどめしは、せんじゅの姫にて」 ★説経節、古浄瑠璃などで、愁嘆場に「ここにあわれをとどめしは」の形で、慣用される<国語大辞典(小)> 用例の出典:信田小太郎(しだのこたろう) 説教浄瑠璃。近松門左衛門。元禄14年(1701)15年説あり 。・・・詳細調査中。
・あわわの三太郎(あわわのさんたろう) 馬鹿者や馬鹿な目に遭う人を人名のように表わしたもの。 参照:三太郎 ★「あわわ」をする幼児と同程度の知能の持ち主という意<国語大辞典(小)> 参考:あわわ 子供をあやしなどするとき、開いた口に手をあてて、軽く叩きながらアワワの声を出すこと<広辞苑第四版(岩)>
・泡を噛む
(あわをかむ)[=噛み出(い)だす] 口から唾(つば)の泡を出すことから、苦しんだり、悔しがったりする。
・泡を食う
(あわをくう) 酷(ひど)く慌てる。うろたえ慌てる。 類:●周章狼狽(しゅうしょうろうばい)●足下から鳥が立つ ★「泡」は、「慌(あわ)つ」の「あわ」から。「食う」は、「出くわす」の意。
・泡を吹かす(あわをふかす) 人を苦しませる。度肝を抜く。驚き慌(あわ)てさせる。 類:●一泡吹かせる 用例:浄・
平家女護島−五「平家にあはふかせ」 用例の出典:平家女護島(へいけにょごのしま) 浄瑠璃。時代物。5段。近松門左衛門。享保4年(1719)大坂竹本座初演。「平家物語」に題材をとり、文覚、俊寛、常盤御前、清盛などの話を脚色したもの。二段目の鬼界ケ島の段が能の「俊寛」より脱化、歌舞伎にもはいって名高い。
・泡を吹く(あわをふく) 1.苦しんで、口から泡を吹き出す。2.喋(しゃべ)り立てて、口から泡を吹き出す。 類:●口角泡を飛ばす

−−−−−−−あん(#an)−−−−−−−
・暗雲低迷(あんうんていめい) 《四熟》 1.暗い雲が低く垂れ込めて、今にも雨が降り出しそうな様子。2.悪い状態が長く続き、向上の兆(きざ)しが見えてこない前途不安な状況。好くないことが起こりそうな気配。不穏な情勢。 類:●前途多難前途遼遠 用例:「経済は暗雲低迷している」
・暗影を投ずる
(あんえいをとうずる) 暗い影が差すという意味で、ことをなそうとするときに一抹の不安が生じること。 類:●不安を宿す
・案外者(あんがいもの) 思いの外のことをする者。特に、無礼な者。 類:●慮外者
・安居楽業
(あんきょらくぎょう) 《四 1.居所や地位が安定し、楽しく仕事をしている。今の環境や状況に満足し、自分の仕事を楽しんいること。 出典:「漢書−貨殖伝・序」「各、甘其食而美其服」 ★「居に安んじ、業を楽しむ」と訓読する。 2.世が治(おさ)まり生活が安定して、皆それぞれの仕事に励(はげ)む。善政が行なわれていることの喩え。
・鮟鱇の餌待
(あんこうのえまち) 口を開いて、ぼんやりしている様子。
・鮟鱇の唾に噎せたような人
(あんこうのつにむせたようなひと) 口を開けてぽかんとし、腰の落ち着かない愚鈍な者。
・鮟鱇の待ち食い
(あんこうのまちぐい) 1.鮟鱇は小魚が寄ってくるのを待って食べることから、食べ物が出されるのをただ待っていること。2.転じて、自分は何も貢献していないのに、ご馳走(ちそう)に与(あず)かること。 反:■働かざる者食うべからず
・鮟鱇武者
(あんこうむしゃ) 《四熟》 口では大きなことを言うが実際は臆病な武士のことを、罵って言う言葉。 類:●鮟鱇侍(あんごうざむらい)
・闇室を欺かず
(あんしつをあざむかず)・侮(あなど)らず[=暗室を〜] 誰も見ていない暗い部屋の中にいても、後ろめたいことをしたことをしない。自分自身の行動を慎(つつし)むべきであるということ。 類:●君子は独りを慎む屋漏に愧じず 出典①:「宋史−呂希哲」「不欺闇室」 出典②:「南史−阮長之伝」「長之固遣送曰、一生不侮暗室」 故事:中国、梁の簡文帝(かんぶんてい)蕭綱 (しょうこう) は大宝2年(551)の10月、酔臥している間に土嚢(どのう)を積まれ、圧死して果てた。自室の壁には「自序」が書き付けられていた。「有梁の正士の蘭陵の蕭世纉(しょうせいさん)、身を立て道を行ない、終始一の如し。風雨は晦(やみ)の如く、鶏鳴は已(や)まず。暗室を欺かず、豈(あ)に況(いわ)んや三光をや。数は此こに至る、命や如何(いかん)せん」
・晏子の御
(あんしのぎょ)[=御者(ぎょしゃ) 他人の権威に寄り掛かって得意になっている者。 
故事:史記−晏嬰伝」 宰相晏子の御者が、宰相の御者であるのに満足していたのを妻に窘(たしな)められ、発奮した。
・安車蒲輪
(あんしゃほりん) 《四熟》 老人を、労って遇すること。老人を重んじること。 
★「蒲輪」は、蒲(がま)の葉で車輪を包み、車の動揺を和らげたもの<国語大辞典(小)>
・安常処順
(あんじょうしょじゅん) 《四 平穏でのどかな暮らしのこと。万事が順調に運ぶ状況にあること。
・暗礁に乗り上げる
(あんしょうにのりあげる) 航海中、船が暗礁に乗り上げると動きがとれなくなる。転じて、思い掛けない困難や障害によって、事の進行が妨げられること。 類:●二進も三進も行かない
鞍上人なく鞍下馬なし(あんじょうひとなしあんかうまなし)
・安心立命
(あんしんりつめい・あんじんりゅうめい・あんじんりゅうみょう) 《四熟》 人力を尽くしてその身を天命に任せ、どんな場合にも落ち着いていること。信仰によって心を平安に保ち、下らないことに心を動かさないこと。 類:●天を楽しみ命を知る 出典:「伝燈録」 
★初め儒学の語であったが、のちに主として禅宗の語として使われ、その後、広く使われるようになった<大辞林(三)>
・案ずるより生むが易し(あんずるよりうむがやすし) 心配して手を拱(こまね)いてばかりいないで、実際に事に当たってみれば、案外容易(たやす)いことだったりするものだということ。取り越し苦労をするなということ。 類
:●An attempt is sometimes easier than expected. <「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典
・黯然銷魂
(あんぜんしょうこん) 《四熟》 悲しみのため、愁(うれ)いに打ち沈んでいる様子。悲嘆に暮れ、悄然として魂が抜けたような状態。 用例:呉偉業の詩「悲歌贈呉季子」「人生千里与万里、黯然消魂別而已」
・暗中飛躍
(あんちゅうひやく) 《四熟》 密かに計画を立てて活動する。暗躍する。また、向こう見ずの行動にも言う。 類:●影の工作
・暗中模索(あんちゅうもさく) 《四熟》 闇の中で、手探りに捜し求めること。転じて、手掛かりのないものを、色々探ってみること。 類:●暗索●川の中の手探り●砂漠の塩探し
・安直(あんちょこ) 教科書にある問題に解答を付けた解説書。中学、高校生などの学生用語。 類:●虎の巻 
★「あんちょく」の変化<国語大辞典(小)>
・案に落つ
(あんにおつ)[=入(い)る] 推量通りになる。思う壺に嵌(は)まる。また、計略に引っ掛かる。 用例:源氏−藤袴「人のおしはかるあんにおつることもあらましかば」
・案に違う
(あんにたがう) 予想が外れる。考えていたことと違う。 類:●案に相違する●当てが外れる 
反:■案の定(じょう)■案の如く■案に落つ
・鞍に拠りて顧眄す(あんによりてこべんす) 馬の鞍に寄り掛かって前後を見回す。老人の威勢の盛んな態度を表わす表現。 出典:「後漢書・馬援伝」の故事
・安寧秩序
(あんねいちつじょ) 《四熟》 国家や社会などが平穏で、乱れていないこと。
・案の定(あんのじょう) 思った通り。果たして。案のごとく。 用例:雑俳・
川傍柳−二「あんのじゃう封をきったら女筆也」 ★「定」は、…の通り、様子などの意の名詞<国語大辞典(小)> 類:●案の如く●案に落つ 反:■暗に違う■案に相違する■当てが外れる 用例の出典:川傍柳(かわびやなぎ) 雑俳。全5編。柳樽余稿。安永9年(1780)−天明3年(1783)。牛込御納戸町・蓬莱連の組連句集川柳博物館
・塩梅(あんばい・えんばい)・安排・按排 1.程よく配置したり処置したりすること。程あいを加減する。 例:「安排してそちらにも人をやる」 用例:正法眼蔵−栢樹子「此の沙弥別処に安排せよ」 2.食物の味加減を調えること。また、よい味加減であること。 用例:俳・
類船集−天「料理の按排は亭主の心にしたかへば」 3.ものごとの具合い、様子、格好。 例:「エンジンの塩梅が好い」 用例:浄・傾城反魂香−上「武士の刀のあんばい見よと」 4.身体の具合い。健康状態。 用例:浮・世間侍婢気質−一「頭痛が致しまして、あんばいがわるさに」 5.やり方。 用例:洒・古契三娼「深川という所は、客人のあそびにでへぶあんばいのある所さ」 ★程よく排列する意の「あんばい(安排・按排)」と、塩と梅の酢で食物の味加減を調える意の「えんばい(塩梅)」とが、中世末期から近世初頭にかけて混同された語とされるが、「あわい(間)」からとする説もある<国語大辞典(小)> 用例の出典①:類船集(るいせんしゅう) 俳諧連想辞典。高瀬梅盛。延宝4年(1676)。付合の題材をいろは順に掲出し、それぞれに付合語を列挙する。見出語、付合語が先行書や前著『便船集』に比べ極めて多く、見出し語に関する詩歌・故事・物語・伝説など様々な知識を注記している。貞門・談林の連句を解釈する上には不可欠。 用例の出典②:傾城反魂香(けいせいはんごんこう) 浄瑠璃。時代物。3段。近松門左衛門。宝永5年(1708)大坂竹本座初演。狩野元信が土佐光信の女婿になり、絵所の預かりとなった史実を中心に、吃(ども)の又平の伝説、反魂香の説話、名画の威徳、名古屋山三の話などを加えて脚色したもの。「吃又」。 用例の出典③:世間侍婢気質(せけんこしもとかたぎ?) 浮世草紙。・・・調査中。 用例の出典④:古契三娼(こけいのさんしょう) 江戸時代の洒落本。1冊。山東京伝。北尾政演(=京伝)画。天明7年(1787)刊。借家人同士で気心の知れた古傾城三人が、遊里の風俗や遊びの機微を物語る。 人物:山東京伝(さんとうきょうでん) 江戸後期の戯作者。1761〜1816。本名岩瀬醒、通称伝蔵。北尾重政に浮世絵を学び北尾政演(まさのぶ)として活躍。また、黄表紙、洒落本に筆をとり、その第一人者となるが、寛政改革時の筆禍後は、読本に主力をそそいだ。黄表紙「江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)」、洒落本「通言総籬」、読本「桜姫全伝曙草紙」などはその代表作。
・安本丹
(あんぽんたん) 愚か者を指す言葉。多く、人を罵(ののし)って言う。 類:●阿呆●馬鹿すっとこどっこい頓痴気 用例:談・根無草−二「あの通の安本丹にては行末心もとなし」 
関西の俗語「阿呆太郎」から成立した「あほ(ん)だら」からの転とするのが、有力。また、薬の名、「反魂丹」に準(なぞら)えた語とも言われる。 参考:67話の最下段
・安歩当車
(あんぽとうしゃ) 《四熟》 歩くよりは車に乗る方が楽だが、買えるほど財産がないからいっそのことのんびり歩こうということ。貧しくても清く正しく生きていれば、常に満ち足りた心でいられるということ。 類:●晩食以て肉に当つ 出典:「戦国策−斉策・上」「晩飯以当肉、安歩以当車、無罪以当貴、清浄貞正以自虞」
・按摩の稼ぎで掴み取り
(あんまのかせぎでつかみどり) 地口(じぐち)の一つ。 按摩は元手なしに稼ぐことから、掴(つか)んで取るように儲(もう)けること。ぼろ儲けしたときなどに言う。 類:●坊主丸儲け ★利が多い職種を並べて「百姓百層倍、薬九層倍、魚三層倍、坊主丸儲け、按摩掴み取り」などとも言われた。
・余り
(あんまり) 1.非常に。度を過ぎて。 用例:狂言記・柿売「あんまりあまふて物がいはれませぬ」 ★「余(あま)り」を強調した言葉。 2.多く、前に「余りと言えば」を伴って、あまりにも酷(ひど)い。あまりにも非道だ。 例:「僕だけ置いてきぼりなんてあんまりだ」
・暗夜に灯を失う
(あんやにともしびをうしなう)[=消ゆ] これからどうしたら良いか途方に暮れる。
・暗夜の礫
(あんやのつぶて) 1.不意に訪れる襲撃。防ぎようがなく、恐ろしいことの喩え。2.当たるか当たらないか覚束ないこと。目当ての付かないことの喩え。また、当たらないこと。
・暗夜の燈(あんやのともしび) これからどうしたらよいか途方に暮れる。 類:●闇夜の燈●一筋の光明
・安を偸む(あんをぬすむ) のんびりと過ごす。一時の安逸を貪(むさぼ)る。
・案を回らす(あんをめぐらす) あれこれ考える。工夫を凝らす。 用例:風姿花伝−三「心中にあんをめぐらすべし」

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