【せな】~【せを】
・背中合わせ(せなかあわせ) 1.二人の人が互いに背と背を合わせて、反対の方向を向いていること。また、家などが反対向きに接し合って建っていること。 反:■向かい合わせ 例:「芝生に背中合わせで座る」 2.裏側に接していること。また、背中と腹のように、ものごとが裏表(うらおもて)の関係にあること。 用例:人情・恩愛二葉草−二「是れ正に煩悩と菩提の裏表にして〈略〉解脱(さと)って見れば背会(セナカアハ)せ」 例:「生と死は背中合わせ」 3.仲が悪いこと。 類:●不和 用例:伊勢集「のけざまに人におはれしわれなれやせなかあはせに人のなるらん」 用例の出典:伊勢集(いせしゅう) 平安時代。女流歌人伊勢の家集。 人物:伊勢(いせ) 平安前期の女流歌人。三十六歌仙の一人。伊勢守藤原継蔭の娘。貞観14年(872)〜元慶2年(945)以降(没年不詳)。中務の母。宇多天皇の中宮温子に仕え、藤原仲平、時平、宇多帝らとの恋が、その作品に反映。「古今集」以下三代集に女性最多の歌を採られている。屏風歌・賀歌が多い。家集に「伊勢集」がある。
・背中が禿げる(せなかがはげる) 狐や狸(たぬき)が年劫を経ること。また、人が、老獪(ろうかい)である。世慣れて狡(ずる)賢(がしこ)いこと。
・背中に眼は無し(せなかにめはなし)[=付いていない] 人は背後のことには気が付かないものである。人は、陰でやる悪事には気が付かないということ。
・背中を向ける(せなかをむける) 1.人や物に対して、後ろ向きになる。2.ものごとに対して、無関心な態度を取る。 例:「世間に背中を向けて暮らす」
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・銭ある時は鬼をも使う(ぜにあるときはおにをもつかう) 金銭の蓄えさえあれば、どんな人でも自分の意のままに使えるということ。 類:●地獄の沙汰も金次第
・銭あれば木仏も面を和らぐ(ぜにあればきぶつもおもてをやわらぐ) 木仏のように感情の冷ややかな者でも、お金のある者には表情を和らげるものである。金の力には誰でも靡(なび)くということの喩え。 類:●阿弥陀も銭ほど光る●金さえあれば行く先で旦那
・銭金は親子でも他人(ぜにかねはおやこでもたにん)[=夫婦でも〜] 金銭のこととなると、親子のような親しい間柄でも他人がましくなるものである。親しい間でも、金銭の貸し借りには、けじめを付けなければならないということ。 ★略して「銭金は他人」とも。また、「なんの仲でも銭金は他人」などとも言う。
・銭になる(ぜにになる) 収入になる。儲(もう)けになる。
・銭離れが良い(ぜにばなれがいい) 気前良く金銭を使う。金銭の使いっ振りが良い。 類:●金離れ
・背に腹は替えられぬ(せにはらはかえられぬ)
・銭持たずの団子選り(ぜにもたずのだんごえり) 買えもしないくせに、あれにしようかこれにしようかと団子を選ぶ。 1.権利も資格もない者が余計な口を出す喩え。2.無駄な望みを抱く、身の程知らずの喩え。 類:●銭なしの市立ち
・銭を用いること水の如し(ぜにをもちいることみずのごとし) 金銭を惜しげもなく使うこと。 類:●湯水のように使う 出典:梅尭臣「観「[手+曳]竜舟懐裴宋韓李詩」「用銭如水贈舞児、却入上苑看闘鶏」
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・背伸び(せのび) 1.爪先を立てて伸び上がること。また、両手を上に伸ばし、背中を反らせて上半身を伸ばすこと。 例:「掲示板を背伸びして見る」 2.自分の実力以上のことをしようとすること。 例:「ちょっと背伸びをして父の背広を着て出掛ける」
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・是非曲直(ぜひきょくちょく) 《四熟》 良いこと(是)と悪いこと(非)、曲がったこと(曲)と真っ直ぐなこと(直)、という意味から、ものごとの正不正、道理のあるなしなどのこと。 類:●理非曲直
・是非ない(ぜひない)・是非もない 1.善悪に関わらない。善い悪いの判断を持たない。 類:●只管(ひたすら)●遮二無二 用例:栄花−岩蔭「中宮は若宮の御事の定りぬるを、例の人におはしまさば、ぜひなく嬉しうこそはおぼしめすべきを」 2.仕方がない。止むを得ない。 用例:上杉家文書−(大永5年)5月18日「直に据候而罷上候、無是非候」 例:「そう言う事情なら是非もない」 3.当然である。言うまでもない。 用例:風姿花伝−二「物狂の出立、似合ひたるやうに出立つべき事、ぜひなし」 用例の出典:風姿花伝(ふうしかでん) 室町前期の能楽論。7編。世阿弥。応永7年(1400)から同9年(1402)頃の成立。世阿弥の現存する21種の伝書のうち最古の書。能に関して、修業・演出の心得、歴史、本質などについて述べる。通称「花伝書」、略して「花伝」とも。
・是非に及ばず(ぜひにおよばず)[=叶(かな)わず] 善し悪しや方法をあれこれ論議する必要がない状況。最早そういう段階でない状態である。どうしようもない。 類:●止むを得ない 用例:狂言・吹取「これは一代一度の事ぢや。是非に及ばぬ」 用例の出典:吹取(ふきとり) 狂言。男が清水の観世音に妻乞いの祈願をしたところ、月夜の晩に五条の橋で笛を吹き、その音につられて出てきた女を妻とせよとのお告げを得た。笛の吹けない男は、笛の上手な何某に頼んで吹いて貰うと、お告げの通り被衣(かずき)を被った女が現れたまでは良かったが、とんでもない醜女(しこめ)だった。
・是非も知らず(ぜひもしらず) 事の良し悪しを意識に留めないという意味で、夢中になって自分を失い、前後の見境をなくしている状態。
・せびらかす 1.強要する。無理にたのむ。 類:●せがむ●せびる●せぶる 用例:虎寛本狂言・縄綯「イヤ、あつうて舌を焼たは、ぬるうてむせたはのと申て、私をせびらかしまする」 2.苛(いじ)める。揄(からか)う。 類:●せぶらかす 用例:虎寛本狂言・鎌腹「向後某をせびらかすまいか」 用例の出典①:縄綯(なわない) 狂言。各流。主人の博打の賭物になって某(なにがし)の家にやらされた太郎冠者は、全然働こうとしないので元の主人の所に戻される。主人の所で縄を綯いながら某の悪口を並べ立てるが、某が後ろにいるので慌てて逃げる。 用例の出典②:鎌腹(かまばら) 狂言。各流。怠(なま)け者と妻に責められた夫が鎌で腹を切ろうとするが、恐くてできず、ついに働く決心をし柴刈りに行く。
・せびり取る(せびりとる) 無理に頼んで手に入れる。強要して無理矢理に取る。 例:「親から小遣いをせびり取る」
・是非を犯す(ぜひをおかす) 事の良し悪しの掟(おきて)を破るという意味で、善悪の道理に背(そむ)くこと。
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・せぶり殺す(せぶりころす) 責め苛(さいな)んで殺す。苛(いじ)め抜いて殺す。
・せぶる 横になる。伏せる。寝る。 用例:浮・当世芝居気質−一「せぶらんかせぶらんかと云つつ枕するからは寝る事とさとり」 ★もと、人形浄瑠璃社会の隠語。「臥(ふ)せる」の「ふ」「せ」を逆にして連濁にしたもの<国語大辞典(小)> 用例の出典:当世芝居気質(とうせいしばいかたぎ) 浮世草紙。安永6年(1777)。・・・詳細調査中。
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・狭き門(せまきもん) 1.競争が激しくて入学や就職が難しいこと。また、そのような入ることが非常に難しいところ。 例:「芸大は狭き門だ」 2.元は、聖書にある言葉。キリスト教で、天国に至る道は険しいものだということの喩え。 出典:「新約聖書−マタイ伝7」「狭き門より入れ、…生命に至る門は狭く、その路は細く、之を見出す者すくなし」 3.アンドレ・ジイドの著作の題名。
・迫り痴る(せまりしる) 貧しさに追い詰められて愚かになる。貧乏のために頭が呆(ぼ)けてしまう。 用例:宇津保−藤原の君「せまりしれたる大学の衆のいふやう」
・迫り惑う(せまりまどう) 貧困になって苦しむ。貧しくなって途方に暮れる。 用例:宇津保−忠こそ「博打(ばくち)のせまりまとひたるを召して」
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・蝉の小便(せみのしょうべん) 地口(じぐち)の一つ。 1.蝉の小便は木に掛かるから、気に掛かること。2.裏山にシーとすると洒落て、羨(うらや)ましいこと。
・蝉の脱殻(せみのぬけがら)[=殻(から)・蛻(もぬけ)] 1.蝉が幼虫から成虫になるとき、脱皮によって残された殻。2.中身はなくて外側の包みなどだけが残ったものの喩え。
・宣命を含める(せみょうをふくめる・せんみょうを〜) 事の訳を良く言って聞かせて納得させる。 類:●因果を含める
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・攻め倦む(せめあぐむ) いくら攻めても効果が上がらずに、嫌になる。攻略するための糸口が掴めずに、弱り果てる。 用例:太平記−一四「いつまでか向ひ居(を)るべきと、責(セメ)あぐんで」
・責め一人に帰す(せめいちにんにきす) 全ての責任は、煎(せん)じ詰めれば、結局、最高責任者一人に帰着(きちゃく)する。
・責め落とす(せめおとす) 1.責めて承知させる。 類:●口説き落とす 用例:落窪−二「後の夜せめおとさんと思ひて」 2.責めて白状させる。拷問に掛けて口を割らせる。 用例:浄・義氏−三「七度八度のとひじゃうをかけ、責おとさせたまへや」 3.責めて追い遣る。責めて罪に服させる。 用例:虎明本狂言・朝比奈「ぢごくへせめおとさうずる」 用例の出典①:義氏(よしうじ) 古浄瑠璃。・・・調査中。 用例の出典②:朝比奈(あさひな) 狂言。各流。閻魔(えんま)王が、朝比奈三郎を地獄へ連れ去ろうとするが、逆に負かされ、脅かされて極楽浄土に案内する。
・鬩ぎ合う(せめぎあう) 1.お互いに恨み合う。敵対し合う。 例:「右派と左派が鬩ぎ合っている」 2.比喩的に、複数のものが、負けまいとするかのように、自分の存在を主張し合う。 例:「恐怖心と好奇心が鬩ぎ合う」
・責め苛む(せめさいなむ) 苛(いじ)め苦しめる。繰り返し惨(むご)く責める。 用例:黄・化物太平記−中「むげんの鐘をつきたるものをせめさいなむ」 例:「後悔の念に責め苛まれる」 用例の出典:化物太平記(ばけものたいへいき) 黄表紙本。十返舎一九作・画。「絵本太閤記(1802完成)」を化物化して焼き直したもの。これにより、一九は50日間の手鎖の罪となった。 参考:絵本太閤記(えほんたいこうき) 読本。7編84巻84冊。武内確斎著。岡田玉山挿絵。寛政9年(1797)〜享和2年(1802)刊。豊臣秀吉の一代を記したもの。
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・競り合う(せりあう) 1.互いに競争する。先を争う。特に、実力が伯仲した者同士の争いを指す。 用例:狂言記・桜争「むさとしたことを言ひをって、それがしとせりあひをる」 2.喧嘩をする。小競(ぜ)り合いをする。 用例:浄・仮名手本忠臣蔵−三「はなせ本蔵放しやれとせり合内」 3.口論をする。口喧嘩をする。 用例:浮・新色五巻書−三「声高々とせりあいけるにぞ」 用例の出典①:花争(はなあらそい) 狂言の曲名。各流。主人が花見に行こうというと、太郎冠者は桜見と言うべきだといい、互いに古歌を引いて争うが、結局太郎冠者が負ける。桜争(さくらあらそい)。 用例に出典②:仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 浄瑠璃。11段。時代物。竹田出雲(二世)・三好松洛・並木千柳合作。寛延元年(1748)大坂竹本座初演。赤穂四十七士の仇討ちを題材とする。塩谷判官が高師直の無礼に堪えかねて刃傷に及び、その身は切腹。忠臣大星由良之助が同志とともに師直邸に討入り敵を討つ。初演後間もなく歌舞伎に移植され、日本における上演回数最高の記録を持つ。「仮名手本」。
・競り上げる(せりあげる) 値段をだんだん高くする。競り売りなどで、買い手が値段を吊り上げる。 用例:浮・傾城禁短気−三「いはぬ顔して金をせりあげる言廻し」
・台詞打つ(せりふうつ) 1.無心を言う。金品を強請(ねだ)る。 類:●せがむ●強請る 2.無心を聞いてやることをいう。
・台詞を付ける(せりふをつける) 1.仕種(しぐさ)に台詞を付ける。転じて、演出する。2.事情を説明する。話を付ける。
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・世話入る(せわいる) 手間が掛かる。手数が掛かる。
・世話がない(せわがない) 1.手数が掛からない。2.呆れ果ててどうしようもない。 類:●処置なし 例:「自分の掘った穴に落ちてりゃ世話はない」
・世話が焼ける(せわがやける) 他からの手助けが必要で、手数が掛かる。面倒だ。 例:「随分と世話が焼ける子だ」
・忙しない(せわしない) 1.しなければならないことが多く重なって暇がない。忙しい。多忙である。 用例:虎寛本狂言・二人袴「申々、早う通らせられいと申まする。扨々せわしない」 2.落ち着きがない。せかせかしている。気忙しい。 用例:謡曲・黒塚「草の庵りのせはしなき、旅寝の床ぞもの憂き」 ★「ない」は、その意味を強調し形容詞化する接尾語。 用例の出典①:二人袴(ふたりばかま) 狂言。各流。婿入りする男が親と二人で舅(しゅうと)の家へ行き、一着の袴で親と交代に舅の前に出る。二人一緒にと言われ、やむなく袴を二つに裂き、前だけ当てて舅の前に出る。舞を所望され背中を見せまいと苦心して舞うが、終に見付けられて恥を掻く。 用例の出典②:黒塚(くろづか) 謡曲。五番目物。各流。作者不明。那智の山伏一行が奥州の安達原で宿を求める。親切な主の老女の留守中に、その寝室を覗き死体の山を発見する。驚いて逃げる一行を老女が鬼女となって襲うが、終に山伏に祈り伏せられる。
・世話なし(せわなし) 1.手数が掛からないこと。また、そういう人。 例:「カップ麺で満足というのなら世話なしだ」 2.呆れ果ててどうしようもないこと。また、そういう人。
・世話に砕ける(せわにくだける) 1.歌舞伎の台詞回しで、時代物風に調子を張っていたのが、急に日常的・庶民的な砕(くだ)けた調子に変わる。2.転じて、言葉つきや態度が打ち解けていて、庶民的である。格式ばっていない。
・世話になる(せわになる) 他人の援助を受ける。他人の力に頼り、面倒を掛ける。 類:●厄介になる
・世話をかく(せわをかく) 良く気を配って人の面倒を見る。 類:●世話を焼く●世話をする 用例:浄・菅原伝授手習鑑「教ゆる人は取り分けて世話をかくとぞ見えにける」
・世話を掛ける(せわをかける) 自分のために、他の者に面倒な思いをさせる。 類:●厄介を懸ける
・世話を拾う(せわをひろう) 世話の掛かることを拾うという意味から、厄介(やっかい)な問題を背負い込んで苦労すること。
・世話を焼く(せわをやく) 1.進んで人の面倒を見る。2.人のために尽力する。
・世話を病む(せわをやむ) 人の面倒を見て、大変な苦労をする。自分自身が病むほど、心を掛けて深く世話をする。 用例:浄・生玉心中−上「世話を病んで病み死にの母様の恩をはや忘れ」
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・瀬を踏む(せをふむ) 瀬踏みをする。前もって試してみる。練習する。 参考:瀬踏み(せぶみ) 1.川を渡る前に、その深さを、実際に足を踏み入れて測ること。2.まず試みてみること。様子を見ること。
・瀬を踏んで淵を知る(せをふんでふちをしる) 先(ま)ず浅瀬を渡ってみて、その川の深さをはっきりと知る。用心深く、前もって試してみて、危険かどうかを知ることの喩え。
・背を向ける(せをむける) 物に対して後ろを向くという意味で、無関心な態度を取ること。また、同意しない。背(そむ)く 類:●背中を向ける
・背を縒る(せをよる) 苦痛や苦労に苦しむ。〔日葡辞書〕
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