【さた】~【さん】
・沙汰の限り(さたのかぎり) 1.是非を論じる範囲。2.是非を論じる範囲を越えていること。 類:●もってのほか●論外●言語道断●沙汰の外(ほか) 用例:虎寛本狂言・千鳥「其様な沙汰の限りな事が有るものか」 用例の出典:千鳥(ちどり) 狂言。各流。酒を断られた太郎冠者は、酒屋に津島祭の千鳥や流鏑馬(やぶさめ)のことを仕形まじりに話し、油断している隙に酒樽を取って逃げる。 参考:大蔵虎寛本(おおくらとらひろぼん) 狂言台本。大蔵流。大蔵彌右衛門虎寛(とらひろ)。寛政4年(1792)。・・・詳細調査中。
・定め無い(さだめない) ものごとはいつどうなるか分からない。一定しない。移り変わり易い。 類:●無常 用例:宇津保−国譲上「それこそはよの中さだめなければ、かならずとも思はず」
・沙汰止み(さたやみ) 官府からの命令が中止や立ち消えになってしまうこと。また、計画していたことが中止になること。
・左袒(さたん)
−−−−−−−さち(#sati)−−−−−−−
・沙中語(さちゅうご) 砂の上に座って話し合う。臣下たちが密かに謀反(むほん)を企(くわだ)てることの喩え。 類:●沙中の偶語●沙中の謀 出典:「史記−留侯世家」「上在洛陽南宮、従復道望見諸将、往往相与坐沙中語」 前漢の6年(前201)、高祖(=劉邦)は二十余人の封侯を済ませたが、まだその他の将の封侯は行なえていなかった。洛陽の南宮の上から見下ろすと、将軍たちがあちこちと砂の上に座って何かを話している。「何を話しているのだろうか」と聞いてみると、張良(ちょうりょう)が「謀反の相談をしています」と答えた。高祖はこれを憂慮して、最も嫌っていた雍歯(ようし)を侯に封(ほう)じた。
−−−−−−−さつ(#satu)−−−−−−−
・五月の鯉の吹き流し(さつきのこいのふきながし)
・ざっくばらん・ざっくばらり 心の中を曝(さら)け出して隠し事をしない様子。遠慮がないこと。繕(つくろ)わないこと。 類:●明け透け 用例:伎・処女翫浮名横櫛−中幕「ざっくばらんに言ってくりやれ」 ★一説に、心の殻をざっくり割ってばらりと曝すというところから。また一説に、無精な人の髪形から、取り繕わないことを表わしたともいう。 用例の出典:処女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし) 歌舞伎。世話物。河竹黙阿弥。元治元年(1864)江戸守田座初演。体を傷だらけになるまで切られたお富は、東海道の薩多峠(さったとうげ)で開いている茶店で恋人だった与三郎(よさぶろう)と再会。北斗丸(ほくとまる)という刀を買い取るための金を調達することを約束し、強請(ゆす)りや殺人まで犯して、与三郎のために金を手に入れる。『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』の書替狂言。通称『切られお富』。 参考:与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし) 歌舞伎。世話物。三世瀬川如皐。嘉永6年(1853)初演。9幕。複雑なお家騒動の筋であるが、伊豆屋与三郎と木更津の博徒の妾お富との見初め、露見、再会が中心で、特に再会の「源氏店(玄冶店ゲンヤダナ)」が強請場(ユスリバ)として有名。通称『切られ与三(ヨサ)』。
・札片を切る(さつびらをきる) 惜し気なく大金を使う。見せびらかすようにして大金を使う。 例:「派手に札びらを切る」
・薩摩守(さつまのかみ) 1.薩摩国の長官。特に、平忠度(たいらのただのり1144−1184)を指すことが多い。2.無賃乗車のこと。平忠度が薩摩守であったことから、「忠度」と「只乗り」をもじったもの。 例:「薩摩守を決め込む」 3.狂言の一つ。大蔵流。能「忠度」のパロディ。神崎の渡し守は秀句好きと教えられた出家が、「平家の公達(きんだち)薩摩守忠度」という句で只乗りを試みるが、肝心の「忠度」という部分を忘れて失敗する。「舟銭は薩摩守ぢゃとおしゃれ」という台詞がある。
・薩摩飛脚(さつまびきゃく) 《四熟》 1.薩摩国(さつまのくに)へ行く飛脚。2.江戸時代、薩摩国では国情が漏(も)れるのを恐れ、一旦入国した者は生きて帰さないといわれたところから、出掛けた者が帰らないことの喩え。 類:●冥途の使い●鉄砲玉
−−−−−−−さて(#sate)−−−−−−−
・左提右挈(さていうけつ) 《四熟》 左右の手で携(たずさ)えること。互いに助けあうこと。 類:●相互扶助 出典:「漢書−陳余伝」
・さて置き(さておき) 1.ある事当面の関心の外に置くこと。…は別として。 例:「冗談はさて置き」 2.話題を転換するときに用いる。それはともかくとして。それはそれとして。 例:「それはさて置き」
−−−−−−−さと(#sato)−−−−−−−
・左党(さとう) 1.フランス議会で、議長席の左側に座席を占めていたところから、政府に対する反対党。 類:●野党 2.酒を好む人。左利き。 反:■右党 ★江戸時代、金山鉱夫たちの隠語で、右手の「槌手(つちて)」に対して、左手を「鑿手(のみて)」と呼んだことによる。「飲み手」と掛けた洒落(しゃれ)。
・砂糖の木へ餠を背負って登る(さとうのきへもちをしょってのぼる) 非常に旨(うま)い話である。堪(こた)えられないことの喩え。
・座頭の木割り(ざとうのきわり) 地口の一つ。 目の見えない座頭が薪割りをしても、刃物は当たらない。当てが外れたこという洒落。
・里が知れる(さとがしれる) 主に「お里が知れる」の形で用いる。素姓や生い立ち、育ちが知れる。その人の言葉使いや態度で、生まれや育ちの善し悪しが分かる。 用例:洒・廻覧奇談深淵情「もらってくれろのなんのといふ様な客ならお里のしれた男だが」 用例の出典:廻覧奇談深淵情(かいらんきだん???) 洒落本。安永8年(1779)。・・・調査中。
・里心が付く(さとごころがつく) 実家や故郷を恋しく思う気持ちになる。 類:●ホームシックに罹(かか)る
・悟り顔(さとりがお) 何もかも分かっていて、迷いなどは全くないというような様子。
−−−−−−−さに(#sani)−−−−−−−
・座に耐えない(ざにたえない) その席に座っていられないという意味で、人々と同席したものの、その場の雰囲気に居たたまれない。
・座に連なる(ざにつらなる) 同じ席や場所に居並ぶという意味で、人々の集まりに同席すること。 類:●列席する
−−−−−−−さは(#saha)−−−−−−−
・捌ける(さばける) 1.乱れていたものが直る。縺(もつ)れていたものが解け分かれる。整然とする。 例:「糸が捌けた」 用例:浄・井筒業平河内通−二「弁舌さばけし長口上」 2.割れる。砕ける。裂ける。 用例:浮・好色一代男−六「床の上なるかもじ、忽(たちまち)四方へさばけ」 3.商品が全て売れる。捌(は)ける。 例:「品物がすっかり捌けた」 4.世慣れていてものごとに理解があり、固苦しくなくて気取らない。 類:●話せる●話が分かる 例:「あいつは捌けた気性だ」 用例:浮・好色一代女−五「さばけぬ人の長座敷、あくびも思はず出」 用例の出典:井筒業平河内通(いづつなりひらかわつどおり) 浄瑠璃。近松門左衛門。享保5年(1720)。帝位争いにからんで、業平と井筒姫の河内通い伝説を彩りに加える。「伊勢物語」の文言を散りばめて巧みに構成。最後に帝位争いを少年相撲の勝負で決める場面も<近松門左衛門でござーい!>
・鯖を読む(さばをよむ) 1.物を数えるとき二つずつ数えること。 用例:名語記−八「ふたつづつよむをば、鯖読と云事あり」 2.自分の利益になるように、数を誤魔化すこと。数を誤魔化していうこと。 例:「あの女優は年を十歳も鯖読みしている」 ★サバはいたみやすいので、数えるとき急いで飛ばして数えて実数をごまかすことが多いからという<大辞林(三)> ★『名語記』の記述から、刺鯖など二枚重ねを一連として数えた慣習から二つずつ数えることを「鯖読み」と言い、後に誤魔化す意味に転じたともいう。他に、「魚市(イサバ)読み」が略されたもので鯖とは関係ない、とする説もある。 用例の出典:名語記(みょうごき) 鎌倉時代の辞書。全10巻。経尊著。初稿6巻本は文永5年(1268)成立。増補10巻本が、建治元年(1275)北条実時に献上された。現在本は著者自筆本で、巻1を欠く。「名(みょう)」はほぼ体言を意味し、「語」は用言などを意味する。引用元は『万葉集』や『伊勢物語』など。当時の通用語を音節数によって分類したものを、更にいろは順に配列し、問答体で語源説明を加えたもの。
−−−−−−−さひ(#sahi)−−−−−−−
・錆は鉄より出でて鉄を腐らす、愚痴は人より出でて人を亡ぼす(さびはてつよりいでててつをくさらす、ぐちはひとよりいでてひとをほろぼす) 自分の行為の報いとてして禍災を蒙(こうむ)る。自分の悪行が元で、結果として自分が苦しむこと。 類:●身から出た錆 出典:「法句経−240」「錆は鉄より生ずれど、その鉄を傷つくるが如く、穢れある人は己の業により悪処に導かれん」
・山葵を利かせる(さびをきかせる) 1.寿司などで、山葵(わさび)をたっぷり付けて味を引き締める。2.ものごとを、ぴりっと引きしまった感じにする。 類:●山葵が利く ★楽曲の盛り上がりの部分「サビ」の語源であるという。一方、「さび」を「低音を効かせた哀切な部分」と解して、「寂(さび)」が語源であるともいう。
−−−−−−−さへ(#sahe)−−−−−−−
・左平治(さへいじ)・左平次 1.口のこと。また、口を利くこと。2.転じて、余計な口出しをすること。また、追従(ついしょう)を言うこと。3.出過ぎた真似をすること。余計な世話を焼くこと。出しゃばること。また、そういう者。 用例:伎・天満宮菜種御供−八「わりゃ仲裁人ぢゃない、きつい左平次ぢゃなア」 ★もと人形浄瑠璃社会の隠語<国語大辞典(小)> 用例の出典:天満宮菜種御供(てんまんぐうなたねのごくう) 歌舞伎。並木五瓶(初世)。安永6年(1777)。菅原伝授手習鑑の書替え物。藤原時平(じへい)が、初めは菅原道真に味方する貴公子として描かれるが、幕切れの最後の一瞬に、恐ろしい悪心を告白して笑う。通称「時平の七笑」。
−−−−−−−さほ(#saho)−−−−−−−
・サボる(さぼる) 俗語。学校や仕事など、ずるをして休む。 類:●怠(なま)ける 例:「授業をサボる」 ★フランス語「サボタージュ」の略の「サボ」の動詞化。 ★大正9年(1920)に発刊された、村嶋歸之の『サボタージユ—川崎造船所怠業の真相』によって一般化したという。
−−−−−−−さま(#sama)−−−−−−−
・様々(さまさま) 接尾語。自分に益を齎(もたら)す人や物に、感謝や賛嘆、または懇願の気持ちを言う場合に付ける。少しくだけた調子で使う。 例:「冷蔵庫様々だな」 ★接尾語「様(さま)」を重ねた語<国語大辞典(小)>
・様に様を付ける(さまにさまをつける) 敬称の接尾語「様」を二重に付けて、敬う上にも敬う。最上級の敬意を払う。
・様になる(さまになる) 何かをする様子や、できあがった外見などが、それに相応しい格好になる。 例:「初めてにしては様になっている」
・様はない(ざまはない) だらしなくみっともない。 類:●ざまあない●ざまくない
・様を見ろ(ざまをみろ) 己(おのれ)の様子を見てみろという意味で、相手の失敗や不運を嘲(あざけ)って言う言葉。 類:●それ見たか●ざまあ見ろ●ざまあ見やがれ
−−−−−−−さみ(#sami)−−−−−−−
・五月雨式(さみだれしき) 《四熟》 継続するのではなく、起こっては止み起こっては止みを繰り返すこと。繰り返し繰り返し行動を起こすこと。 例:「敵がさみだれ式に押し寄せる」
・五月雨戦術(さみだれせんじゅつ) 1.五月雨のように、長期に亘って闘争を繰り返すこと。2.特に、持続する労働組合の戦術の俗称。
−−−−−−−さむ(#samu)−−−−−−−
・侍と黄金は朽ちても朽ちぬ(さむらいとこがねはくちてもくちぬ) 金がその輝きを失わないように、武士の誉(ほま)れの名も永く朽ちない。 類:●黄金と侍は朽ちても朽ちぬ
−−−−−−−さも(#samo)−−−−−−−
・然もあらばあれ(さもあらばあれ) 既に存在する事態を受けて、その事態を不本意ながら容認する気持ちを表わす。 類:●どうともなるがよい●それはそれでかまわない●ままよ●南無三 用例:伊勢−65「思ふには忍ぶることぞ負けにける逢ふにしかへばさもあらばあれ」 用例の出典:伊勢物語(いせものがたり) 平安時代の歌物語。作者不明。現存本はある男の初冠(ういこうぶり)から辞世の歌に至る約125の章段より成る。「古今集」以前に存在した業平の歌物語を中心にして、次第に他の章段が付加され、「後撰集」前後に現存の形になったかという。在五が物語。在五中将日記。勢語。
・然もありなん(さもありなん)・然もあらん・然もあろう そうであろう。尤(もっと)もなことだ。当然のことだ。
・さもしい 1.態度や様子がみすぼらしい。また、身分や地位が低く、卑(いや)しい。見苦しい。 用例:虎寛本狂言・牛馬「此めで度い市の始に何とあの様なさもしい牛が」 2.心が卑しい。品性が下劣である。 類:●浅ましい 用例:俳・十八番発句合−十二番句合題「さもしき心にも花を愛するの躰」 ★托鉢(たくはつ)して歩く法師「沙門(さもん)」がみすぼらしく感ぜられたところから、その形容詞化「さもんしい」の変化という<国語大辞典(小)> 用例の出典①:牛馬(ぎゅうば・うしうま) 狂言。各流。牛を売る男と馬を売る男が新市で場所争いをし、結局牛と馬とを競争させ、牛の方が負けるという筋。 用例の出典②:十八番発句合(じゅうはちばんほっくあわせ) 雑俳。松尾芭蕉。延宝6年(1678)。・・・詳細調査中。 人物:松尾芭蕉(まつおばしょう) 江戸前期の俳人。俳諧の革新を大成した蕉風の祖。正保元年(1644)〜元禄7年(1694)。本名忠右衛門、甚七郎宗房。幼名金作。通称甚七郎。俳号は初め宗房、のち桃青、芭蕉。別号釣月軒、泊船堂、風羅坊など。伊賀国(=三重県)上野生まれ。藤堂良忠(俳号蝉吟)に仕えたが、良忠の病死とともに致仕。京に上り諸学を修め、のち江戸に下り延宝8年(1680)深川の芭蕉庵に入居。談林風の俳諧に飽き足らず新風を求め、漢詩文調、破格調を経て「蕉風(しょうふう)」を確立。天和3年(1683)「虚栗(みなしぐり)」を刊行、江戸俳壇の主流となる。以後没年まで各地を行脚(あんぎゃ)し、紀行文を残した。更に「高悟帰俗」の理念の下、晩年に至り「軽み」を提唱。元禄7年(1694)、51歳で病没した。句集は「冬の日」「曠野」「ひさご」「猿蓑」など。紀行文は「笈の小文」「野ざらし紀行(甲子吟行)」「奥の細道」など。 参考:笈の小文(おいのこぶみ) 俳諧紀行文。松尾芭蕉。作者死後の宝永6年(1709)刊。門人乙州編。1冊。貞享4年(1687)江戸を出発、尾張を経て、郷里伊賀に入り、伊勢、吉野、奈良、大坂、須磨、明石などを巡った7ヶ月の旅を記す。別称「卯辰紀行」「芳野紀行」「大和紀行」「大和後の行記」「庚午紀行」。
・然もないと(さもないと)・然もなければ もしそうしないと。そうでないときには。 ★「さもなくば」の口語的な言い方。特に命令、勧誘表現の後にいうことが多い<国語大辞典(小)>
−−−−−−−さや(#saya)−−−−−−−
・鞘がある(さやがある) 内心を包んで、相手になかなか現さない様子。相手に打ち解けず、心中に隔て心を持つ。 類:●引き篭もり
・鞘を取る(さやをとる) 売買の仲介をして、その価格の差の一部を利益(マージン)として取る。 類:●鞘を稼(かせ)ぐ●利鞘を取る●上前を撥ねる
−−−−−−−さゆ(#sayu)−−−−−−−
・左右に託す(さゆうにたくす) あれこれと曖昧(あいまい)な返答をする。 類:●言を左右にする
・座右の銘(ざゆうのめい) 常に自分の身近なところに記(しる)しておいて、日常の戒(いまし)めとする言葉や文。 類:●座左の銘
・白湯を飲むよう(さゆをのむよう) 沸(わ)かしただけの何も混ぜていない湯を飲むという意味から、味も素っ気もないこと。 類:●味も素っ気もない
−−−−−−−さよ(#sayo)−−−−−−−
・然様なら(さようなら)・左様なら 1.それならば。然(しか)らば。 用例:伎・鳴神「『御免なさい御免なさい』『左様ならあやまらしゃったか』」 ★「さようならば」の変化 2.別れの挨拶。 類:●さよなら●それでは 用例:洒・曾我糠袋「『さやうなら、御きげんよふ』『行ってまゐりやせう』」 用例の出典①:鳴神(なるかみ) 歌舞伎十八番の一つ。謡曲「一角仙人」が原型。天和4年(1684)に江戸中村座で初演された「門松四天王」(初世市川団十郎作)に始まり、諸作品を経て、寛保2年(1742)大坂大西芝居で初演された「鳴神不動北山桜」によって定着。鳴神上人は、竜神を封じ込めて天下を早魃(かんばつ)におとし入れるが、雲の絶間姫の容色に迷って呪法を破ってしまう。現行のものは、岡鬼太郎が「鳴神不動北山桜」によって改訂した一幕物。 用例の出典②:曾我糠袋(そがぬかぶくろ) 洒落本。・・・調査中。
−−−−−−−さら(#sara)−−−−−−−
・晒し者になる(さらしものになる) 江戸時代、罪人を広く世の人の目に触れるようにした刑罰を「晒し刑」といったところから、人前で恥を掻かされること。
・皿嘗めた猫が利を負う(さらなめたねこがりをくう) 魚を食った猫は逃げてしまって捕らえられずに、後から行って皿を舐めた猫が罪を背負い込む。転じて、大悪人や主犯は捕まらずに、小物や従犯だけが罰を受けることの喩え。 類:●米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる●笊舐めた犬が科被る
・ざらに 同類がいくらでも有って珍しくない様子。その物がありふれている様子。 用例:洒・初葉南志「だれのかれのといふ事はない紀文殿はざらさ栄三殿もお珍らしくちとお出なさい」 例:「こんな逸品はざらにない」 ★もと、「ざら」は「ばら銭」の意でどこにでもたくさん有る意から<新明解国語辞典(三)> 参考:散銭(ばらせん) 細かい銭(ぜに)。小銭。ばら。ざら銭。 参考:ざら銭(ざらせん) 緡(さし)に通さない、ばらばらの銭。また、数枚の銭。ばらせん。 用例の出典:初葉南志(??ばなし?) 洒落本。・・・調査中。
・然らぬだに(さらぬだに) そうでなくてさえ。唯でさえ。 類:●然なきだに 用例:栄花−浦々の別「さらぬだにかかる世の中に」
・然らぬ体(さらぬてい) なんでもないような様子。素知らぬ振り。 用例:平家−11「涙おしのごひ、さらぬていにもてないて申しけるは」
・避らぬ別れ(さらぬわかれ) 避けることのできない別れ。死別。 用例:伊勢−84「老いぬればさらぬ別れのありと言へば」
−−−−−−−さり(#sari)−−−−−−−
・去り跡へは行くとも死に跡へは行くな(さりあとへはゆくともしにあとへはゆくな) 後妻に行くときは、先妻と離縁した男のところへ行くのは良いが、死別した男のところへは嫁ぐなということ。妻と死別した男の心の中には、先妻の好い思い出ばかり残っていて、なにかと比較されることが多いため。
・然り気ない(さりげない) 考えや気持ちを表面に表さない。そのような様子が見られない。そのような気配が感じられない。何気ない。 例:「さりげなく目配せをする」 用例:源氏−空蝉「さのみもえ思しのどむまじければ、さりげなき姿にて」
−−−−−−−さる(#saru)−−−−−−−
・笊(ざる) 1.何をやってもどこかが抜けている者の喩え。漏れが多いことの喩え。 例:「お前は何をやらせても笊だな」 2.《俗語》 酒を飲んでも少しも酔わない者のこと。 類:●蠎蛇(うわばみ)
・猿が木から落ちたよう(さるがきからおちたよう) 頼みにする人や拠り所を失って、どうして良いか分からない状態の喩え。 類:●木より落ちた猿●木を離れた猿●水を離れた魚●陸(おか)へ上った河童●頼みの綱も切れ果てる 反:■水を得た魚のよう
・猿が髭揉む(さるがひげもむ) つまらない者が立派な人の真似(まね)をして威厳を繕(つくろ)うのを、嘲(あざけ)って言う言葉。 類:●顰に効う
・猿芝居(さるしばい) 1.猿に、衣装や鬘(かつら)などを付けさせて芸を行わせる見世物。2.下手な芝居を嘲(あざけ)る言葉。3.直ぐに見透かされてしまうような浅墓(あさはか)な企(たくら)みや、愚かな言動。
・笊舐めた犬が科被る(ざるなめたいぬがとがかぶる) 食物を盗み食いした犬が逃げた後、空になった笊を舐めただけの犬が見付かって打たれるということから、悪事を働いた大物は逃げ果(おお)せて、小物が捕まること。 類:●米食った犬が叩かれず糠食った犬が叩かれる●皿舐めた猫が科を負う
・猿に烏帽子(さるにえぼし) 猿が烏帽子を被っても似合わないことから、人柄に相応(ふさわ)しくない服装や言動を揶揄(やゆ)して言う言葉。
・猿に木登り(さるにきのぼり) 木登りを得意とする猿に木登りを教えるのは愚かなことである。知り尽くしている人に生齧(なまかじ)りの教えを説くこと。また、余計なこと、無駄なことをする喩え。 類:●河童に水練●孔子に論語●釈迦に説法 出典:「詩経−小雅・角弓」「毋教エン[=ケモノ偏+柔]升木、如塗塗附、君子有徽猷、小人与属」
・笊に水(さるにみず) 笊に水を入れても溜まらないことから、努力しても無駄であることの喩え。効果がないことの喩え。
・猿の柿笑い(さるのかきわらい) 猿が自分の顔の赤いのを顧(かえり)みずに柿の赤いのを笑うように、自己の醜態を顧みず他人の悪口を言うこと。 類:●目糞が鼻糞を笑う●猿の尻笑い●猿の面(つら)笑い●樽抜き渋柿を笑う●鍋が釜を黒いという●五十歩百歩
・猿の尻笑い(さるのしりわらい) 自分のことを顧(かえり)みずに、他人の欠点を嘲笑(あざわら)うことの喩え。 類:●目糞が鼻糞を笑う
・猿の水練(さるのすいれん) 猿が水の中で泳ぐことなど有り得ないという考えから、在り得ないこと、あるいはやることが逆であること。 類:●魚の木登り●猿の水練魚の木登り
・猿の空虱(さるのそらじらみ) 猿が虱を取っているようなふりをしているところから、仕事や用事があるふりをして、実は何もしないことの喩え。
・去る者は追わず(さるものはおわず) 去ろうとする人を引き止めない。自分から離れて行こうとする人の自由な意志に任せて、無理に束縛したりなどしない。 類:●往く者は追わず来る者は拒まず●来る者は禁ずるなく往く者は止むるなし 出典:「春秋公羊伝−隠公二年」「来者勿拒、去者勿追」 出典:春秋公羊伝(しゅんじゅうくようでん) 「春秋」の注釈書。紀元前5世紀頃。斉の公羊高(くようこう)が伝述したものを、その玄孫の寿と弟子の胡母子都等が記録したもの。「公羊伝」。
・猿も木から落ちる(さるもきからおちる) その道に優れている人でも、時には失敗をすることがある。 類:●釈迦にも経の読み違い●弘法にも筆の誤り
・猿も頼めば木へ登らぬ(さるもたのめばきへのぼらぬ) 頼まなくとも普段はやるくせに、いざ頼むと勿体ぶってなかなかやってくれないこと。こちらが下手に出て頼みごとをすると、殊更に渋面を作りなかなか引き受けてくれないこと。 類:●犬も頼めば糞食わず●鬼も頼めば人食わず
・去る者は日々に疎し(さるものはひびにうとし)
・猿を決め込む(さるをきめこむ) 「三猿(さんえん)」から、見聞きもしなければ喋(しゃべ)りもせず、知らぬ振りを決め込む。 参考:三猿(さんえん) 青面金剛(しょうめんこんごう)の三匹の使い猿。また、庚申(しんこう)をいう。三匹の猿が、「見ざる・聞かざる・言わざる」の三態を表し、両手で両目、両耳、口をおおった姿を絵や像にしたもの<国語大辞典(小)>
−−−−−−−さわ(#sawa)−−−−−−−
・触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし)
・触り三百(さわりさんびゃく)[=三百目] ちょっと触れたばかりで三百文の損をする。なまじっか関わり合ったために思い掛けない損害を蒙(こうむ)る。 用例:浮・胸算用− 一「是ぞ世にいふ触り三百なるべし」
−−−−−−−さを(#sawo)−−−−−−−
・座を組む(ざをくむ) 胡座(あぐら)を掻く。また、安座する。 用例:謡曲・頼政 「芝の上に扇をうち敷き鎧を脱ぎ捨て座を組みて」 用例の出典:頼政(よりまさ) 能楽の曲名。二番目物。各流。世阿弥。古名は「源三位(げんざんみ)」・「宇治頼政」。「平家物語」による。源頼政の自刃の跡である宇治平等院の扇の芝の由来と、頼政の最期の有様を脚色したもの。三修羅の一つ。 参考:三修羅(さんしゅら) 「頼政(よりまさ)」「実盛(さねもり)」「朝長(ともなが)」の三つを指す。
・座を占める(ざをしめる)[=取る・なす] 席に付く。座る。また、ある地位に就く。 類:●座に付く 例:「議長の座を占める」
・座を取り持つ(ざをとりもつ) 同座の人々の気分を和(なご)ませるするように応対する。
・座を外す(ざをはずす) 席を立って外に出る。話し合いの席から退(しりぞ)く。
・梭を投ぐる間(さをなぐるま) 梭が縦糸を潜(くぐ)り抜けて通る間。極めて短い時間のこと。また、歳月が早く過ぎ去ること。 参考:梭(さ) 織機の部品の一つで、緯(よこ)糸を通す用具。シャトル。
・座を見て皿を舐れ(ざをみてさらをねぶれ) 宴席では、一座の様子を確かめてから料理に手を付けるようにすれば、恥を掻くこともない。場所柄やものごとの成り行きを見極めた上で、態度を決めたり意見を述べたりするのが賢明だということ。 類:●座を見て法を説け●機に因りて法を説け●人を見て法を説け
−−−−−−−さん(あ)(#san1)−−−−−−−
・山雨来たらんと欲して風楼に満つ(さんうきたらんとほっしてかぜろうにみつ) 1.山雨が来る前には、まず高殿へ風が吹き付けて来る。 出典:許渾(キョ・コン)「咸陽城東楼」「渓雲初起日沈閣、山雨欲来風満楼」 ★元は、自然の景色を述べた句。 2.転じて、何か事が起ころうとしている時は、なんとなく形勢が穏やかでなくなるという喩え。 類:●嵐の前の静けさ●雲行きが怪しい●Coming events cast their shadows before.
−−−−−−−さん(か)(#san2)−−−−−−−
・三界に家なし(さんがいにいえなし)[=は所なし] どこにも安住の場所がない。 例:「女は三界に家なし」 参考:三界(さんがい) 心を持つ者が存在する欲界・色界・無色界の三つの世界。この世。
・三界の火宅(さんがいのかたく)[=家] 苦しみの絶えない人間界を煩悩(ぼんのう)の火に焼かれる家に喩えた言葉。 出典:「法華経−譬喩品」「三界無安、猶如火宅」
・三界の首枷(さんがいのくびかせ) この世の苦悩から逃れることを妨げるもの。断ち難いこの世の愛着や苦悩。 例:「子は三界の首枷」
・山海の珍味(さんかいのちんみ)[=珍・珍物] 山や海の産物から作った珍しい味の食べ物。転じて、色々な料理が取り揃えられた御馳走。豪華な料理のこと。
・三界流転(さんがいるてん) 《四熟・仏教用語》 衆生(しゅじょう)の霊魂が三界に迷い、何度も生死を繰り返すこと。 類:●三界の苦輪●三界輪廻
・三槐を植う(さんかいをうう) 三本の槐(えんじゅ)の木を庭に植えて、子孫の中から三公の高官に上る者が出ることを期待すること。 出典:「宋史−王旦伝」「植三槐于庭曰、吾子孫必有為三公者」
・三月の木の股裂き(さんがつのきのまたさき) 旧暦三月になってから、木の股が裂けるような大雪が降ることもあるということ。 ★「木の股裂き」は、多く旧暦二月の大雪をいう。旧暦三月の雪のことを「花崩し」などともいう。
・三寒四温(さんかんしおん) 《四熟》 冬季に寒い日が三日ほど続くと、その後四日ほど温暖な日が続き、また寒くなるというように七日周期で寒暖が繰り返される現象。また、そういうことを繰り返しながら段々暖かくなるものだということ。 ★朝鮮半島や中国北東部に典型的に現れる現象で、日本でも見られる。
・山高水長(さんこうすいちょう) 《四熟》 仁者や君子の徳が長く伝わるのを、山がいつまでも高く聳(そび)え、水が永久に流れ続けることに喩えたもの。または、徳が山のように高く、人民を潤すことが川のように広いということ。 類:●山高く水長し
・三国一(さんごくいち) 1.日本・唐土(もろこし=中国)・天竺(てんじく=インド)の三国の内で、第一位である。比喩的に、世界で最も優れているということ。 類:●世界一 用例:義経記−八「三国一の剛の者」 ★室町時代の流行語<広辞苑第4版(岩)> 2.婚礼の席などで、世界一の意に用いて婿(むこ)や嫁を褒(ほ)め称(たた)えて言う言葉。 例:「三国一の婿殿(花嫁)」 3.江戸初期に流行した祝宴の席で歌う小唄。また、その歌詞の一部。「三国一じゃ○○○○になりすまいた、しゃんしゃんしゃん」と歌う。4.「一夜造り」の意味から、甘酒の異称。 ★駿河・甲斐・相模三国一の名物である富士山が一夜でできたという伝説による。
・三五の十八(さんごのじゅうはち)[=二十五] 3と5を掛けると正しくは15であり、18や25ではないところから、計画や予想が外れること。主に、商売上の見込みが、実際とは合わないこと(実際より悪いこと)。 用例:浮・胸算用 −一「何ほど利発才覚にしても若き人には三五の十八、ばらりと違ふ事数々なり」
・三顧の礼(さんこのれい)
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・三三九度(さんさんくど) 献杯(けんぱい)の礼の一つ。三杯ずつ三度杯を遣り取りすること。現在では、日本風の婚礼のときに行われる。
・三々五々(さんさんごご) 人が三人、また五人ぐらいずつ続いて歩いて行く、来る、または居る様子。また、あちらこちらに家などが小さく固まって散在している様子。 類:●三々両々●ちらほら 例:「中締めが済むと散会となり、三三五五と帰途に就く」 出典:李白「採蓮曲」「岸上誰家遊冶郎、三三五五映垂楊、紫[馬+留]嘶入落花去、見此踟[足+厨]空断腸」
・散々の目(さんざんのめ)[=な目] 「散々」は様子が酷く悪い、見苦しいという意味で、甚(はなは)だしい苦しみや辛さ、迷惑など。
・山紫水明(さんしすいめい) 《四熟》 山が紫色に霞み、澄んだ水が清くはっきりと見えること。山水の景色が清らかで美しいこと。 類:●風光明媚 例:「山紫水明の地」 ★江戸末期の儒学者、頼山陽(らいさんよう)が、自分の庵(いおり)に「山紫水明処」と名付けたことによる。文政11年(1828年)建立。
・三下に見る(さんしたにみる) 三下奴のように見做(みな)すという意味から、見下して軽くあしらうこと。 類:●下目に見る
・三下奴(さんしたやっこ) 博徒の仲間で最も下位の者。 類:●三下(さんした) 参考:三より下 賽子(さいころ)の目数が四以上の場合は勝つ可能性があるが、三より小さい場合には絶対に勝てないところから、「どうにも目の出そうにない者」を意味するようになったという。
・三枝の礼(さんしのれい) 鳩は礼儀を知っていて、子は親鳥が止まっている枝から三本下の枝に止まるということ。転じて、鳥さえも孝道を弁(わきま)えているという喩え。 →「鳩に三枝の礼あり」 類:●反哺の孝●烏鳥(うちょう)の私情 出典:梁武帝の「孝思賦」
・三尺去って師の影を踏まず(さんじゃくさってしのかげをふまず)[=下がって〜] 弟子が師に随行するとき、あまり近付くことは礼を失するので、三尺後ろに離れて従うべきである。弟子は師を尊敬して礼儀を失わないようにしなければならないという戒(いまし)め。 類:●七尺去って師の影を踏まず
・三舎を避ける(さんしゃさける)[=譲(ゆず)る] 1.恐れ憚(はばか)って遠く避ける。相手を恐れて、尻込みをする。遜(へりくだ)った態度を取る。2.相手に遠く及ばないことを認めて引き下がる。到底(とうてい)比較にもならない。まったく問題にならない。 出典:「春秋左氏伝−僖公23年」「晋楚治兵、遇于中原、其辟君三舎」 参考:三舎(さんしゃ) 中国で古代、軍隊の三日間の行程。一日一舎を行軍するとされ、一舎は30里で、一里を360歩として、三舎は約60キロメートルの行程。
・三獣渡河(さんじゅうとが) 《四熟・仏教用語》 三乗の修行に浅深があるということ。それを、兎、馬、象の三獣が川を渡るのに喩えたもの。声聞(しょうもん)→円覚(えんがく)→菩薩(ぼさつ)で、「声聞」は兎が水に浮かんで底に届かないように、「縁覚」は馬の足が水の底に届いたり届かなかったりするように、「菩薩」は象の足が水の底に達するように、それぞれ程度が異なるということ。 出典:優婆塞戒経(うばそくかいきょう) 大乗経典の一つ。曇無讖(どんむしん)が426年に漢訳。大乗仏教の在家信者が守るべき戒律を説いた。「養生経」。
・三十にして立つ(さんじゅうにしてたつ) 三十歳になり、自己の確固とした立場を以って揺るがさず、精神的に自立する。 類:●而立(じりつ) 出典:「論語−為政」「子曰、吾十有五而志于学。三十而立。四十而不惑。五十而知天命。六十而耳順。七十而従心所欲、不踰矩」
・三十の尻括り(さんじゅうのしりすぼり) 人間、三十歳ともなれば思慮分別ができて、世の中に即応した堅実な生活をするようになるものである。 反:■うかうか三十きょろきょろ四十
・三十六計逃げるに如かず(さんじゅうろっけいにげるにしかず)
・三種の神器(さんしゅのじんぎ・しんぎ) 1.皇位の印として、代々の天皇が伝承する三つの宝物。「八咫鏡(やたのかがみ)」、「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」、「八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)」を指す。天孫降臨に際して、天照大神から授けられたものとする。 類:●みくさのかむたから 2.家庭生活、日常の社会生活などで貴重なもの三種類の喩え。 例:「洗濯機・冷蔵庫・掃除機は家電の三種の神器と呼ばれた」
・三上(さんじょう) 文章を練るのに最もよく考えが纏(まと)まるという三つの場所。馬上(ばじょう)・枕上(ちんじょう)・厠上(しじょう)。つまり、馬に乗っているとき、布団に横になっているとき、便所に入っているとき。 出典:欧陽修「帰田録−二」「多在三上、乃馬上、枕上、厠上也」 参考:三餘(さんよ)
・山椒は小粒でもぴりりと辛い(さんしょうはこつぶでもぴりりとからい)
・山椒飯で木の実木の飯(さんしょうめしできのみきのまま) 地口の一つ。着のみ着のままという洒落。
・斬新奇抜(ざんしんきばつ) 《四熟》 風情や趣向が目新しく、思いも寄らないほど変わっていること。着想が奇抜で、それまでに類を見ないほど新しいこと。 類:●奇想天外
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・三竦み(さんすくみ) 蛇は蛞蝓(なめくじ)を、蛞蝓は蛙を、蛙は蛇を恐れるということ。転じて三者が互いに牽制し合って、身動きできない状態。 参照:「関尹子−三極」「螂蛆食蛇、蛇食蛙、蛙食螂蛆、互相食也螂蛆」 …但し、ここでの「螂蛆」は、百足(むかで)のこと。 参考:虫拳(むしけん) 拳の一種。親指を蛙、人差指を蛇、小指を蛞蝓(なめくじ)と定め、蛇は蛙に、蛙は蛞蝓に、蛞蝓は蛇に勝つものとして勝負を争うもの。
・三寸息絶ゆ(さんずんいきたゆ) 人の呼吸機能は咽喉三寸の間にあるとするところから、咽喉元三寸の呼吸が止まる。死ぬ。
・三寸の舌(さんずんのした)[=舌端(ぜったん)] 1.たいした長さではない舌ということから、口先のこと。心が篭もっていない上辺だけの言葉や話しぶり。 故事:「史記−淮陰候列伝」 漢のレイ食其(いき)は舌先三寸で斉の国の城70余りを手中に収めた。 2.また、弁舌のこと。 出典:「史記−平原君列伝」
・三寸の舌に五尺の身を亡ぼす(さんずんのしたにごしゃくのみをほろぼす) 不用意な発言のため、身の破滅を招くこと。禍(わざわい)を招かないためには、口を慎(つつし)みなさいということ。
・三寸の見直し(さんずんのみなおし) 物の寸法も測りようによっては三寸ぐらいの誤差はあるというところから、何事も細かく点検すれば、多少の欠点はあるものだということ。また多少の欠点は見慣れれば苦にならないということ。
・三寸俎板を見抜く(さんずんまないたをみぬく) 三寸ほども厚さがある俎板の裏まで見抜くということで、眼力が鋭いこと。洞察力が優れていること。また、「見抜く」が「見抜いた」の形で、確かに見極めたという意味にも使う。
・三寸見通し(さんずんみとおし) 眼力、眼識の鋭いこと。 類:●三寸見抜く●三寸やらぬ●三寸俎を見抜く
・三省(さんせい・さんしょう) 一日に三度反省するという意味で、不忠、不信、不習について、日々何度となく我が身を顧(かえり)みている、また、戒(いまし)めているということ。 出典:「論語−学而」「曾子曰、吾日三省吾身。為人謀而不忠乎、与朋友交而不信乎、伝不習乎」 ★この場合「三」は、「何度も」の意味かともいうが、「3つのこと(不忠、不信、不習)について」と解釈したい。 ★出版社「三省堂」の社名の由来とされる。
・山川万里(さんせんばんり) 《四熟》 山や川を隔てて遠く離れていること。
−−−−−−−さん(た)(#san4)−−−−−−−
・三太(さんた) 1.江戸時代の商家で、丁稚(でっち)、小僧などの通称。 参考:お三どん 2.愚鈍な者を嘲(あざけ)って言う呼び名。3.犬にさせる芸の一種。「ちんちん」のこと。 ★丁稚小僧達がよく犬にたわむれて、この芸を仕込むところから呼ばれるようになったという。一説にキリシタンの礼拝の形に似るところから「サンタマリア」の略とも<国語大辞典(小)> 4.(3.から)他人に世辞を言うこと。追従(ついしょう)すること。諂(へつら)うこと。5.賭博の「おいちょかぶ」で、手の合計数が三であること。
・三立てを食う(さんたてをくう)[=食らう・喫(きっ)する] 三回立て続けに負ける。三連敗する。 例:「先月はドラゴンズに三立てを食った」 ★日本のプロ野球からできた造語。同じチームと3試合続けて戦う決まりであることに因る。 ★接尾語の「立て」は、室町時代頃から勝負事の回数を数えるのに用いられていた。また、江戸時代には、歌舞伎の幕数を数えるのにも用いられた。
・三太郎(さんたろう) 1.江戸時代の商家で、丁稚(でっち)、小僧などの通称。2.愚鈍な者を嘲(あざけ)って言う呼び名。3.迷子(まいご)の別称。 ★迷子を捜し歩く際に、みんなで声をそろえて「迷子の迷子の三太郎やあい」と呼んだという<国語大辞典(小)>
・山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し(さんちゅうのぞくをやぶるはやすくしんちゅうのぞくをやぶるはかたし) 山に潜(ひそ)む賊を退治するのは易しいが、心の中の邪念に打ち勝つのは難しい。己の欲望を制御(せいぎょ)するのは難しいということ。 出典:「陽明全集−与楊仕徳薛尚謙書」「嘗寄書仕徳云、破山中賊易、破心中賊難」 王陽明が46歳の時(1517年)、門人・楊仕徳に送った書簡にある言葉。 出典:王陽明全集(おうようめいぜんしゅう) 文集。王守仁(陽明)撰述。10巻。「王文成公全書(おうぶんせいこうぜんしょ)」から、上秦文や書翰・詩・学問論などを選出し収録したもの。
・山中暦日無し(さんちゅうれきじつなし) 山中に間居(かんきょ)して、世間から隔(へだ)たって暮らしていると、歳月の経過などどうでも良いようになるものである。隠者の悠然とした生活の喩え。 出典:「唐詩選−太上隠者・答人詩」「偶来松樹下、高枕石頭眠、山中無暦日、寒尽不知年」 詩の作者が人から姓名を問われたとき、名乗らずにこの詩を書いて答えとした。
・三刀の夢(さんとうのゆめ) 出世(しゅっせ)を暗示する夢のこと。また、そういう夢。 類:●丁固生松 故事:「晋書−王濬伝」 晋の王濬(おうしゅん)が三本の刀に更に一本が加わったという夢を見た。不吉に思っていると、主簿(しゅぼ)の李毅(りこく)が、刀は「リ(りっとう)」で、それが三つ並べば「州」の字になり、そこに一本が「益(ま)」したので、これは益州の刺史になる夢であるという。そして、後にその通りになった。
・三度の火事より一度の後家(さんどのかじよりいちどのごけ) 女にとっては、三度火事に遭(あ)うよりは、夫に死なれて後家になる方が遥(はる)かに不幸な出来事であるということ。
・三度の飯も強し柔し(さんどのめしもこわしやわし)[=柔らかし] 三度三度の炊飯でも、ご飯が固過ぎたり柔らか過ぎたりで、丁度良い炊け具合いになるのは難しい。日々のことさえ思うようにいかないのだから、世の中のことは尚更だということ。
・三度の飯より好き(さんどのめしよりすき) 一日に三回の大切な食事を抜いても良いほどに、ある事が好きだということ。ある事柄に熱中している喩え。 例:「博打が三度の飯より好き」
・三度目の正直(さんどめのしょうじき) 最初の二回は失敗したりして当てにならなくても、三回目は巧くゆくということ。 反:■二度あることは三度ある
−−−−−−−さん(な)(#san5)−−−−−−−
・算無し(さんなし) 数限りない。非常に多くて数え切れない。 類:●無数
・三人行くときは、必ず我が師あり(さんにんいくときは、かならずわがしあり)[=行なえば〜] 三人で行動を共にすれば、自分の手本となる人が一人いて、自分の戒(いまし)めとなる人が一人いる。そこに自分の師を見出したことになるということ。善い方を選んでは「師」としてこれに倣(なら)い、善くない方を選んでは「反面教師」として己の戒めとする。 出典:「論語−述而」「子曰、我三人行、必得我師焉、択其善者而従之、其不善者改之」
・三人市虎を成す(さんにんしこをなす)[=虎を成す] 事実無根の噂や風説でも、言う人が多ければ、終(つい)に信ずるようになる。また、存在しないことや偽りなどが、実(まこと)しやかに言われること。 類:●市に虎あり●市に三虎を致す●曾参人を殺す 出典:「淮南子・説山」
・三人旅の一人乞食(さんにんたびのひとりこじき) 三人で何かすると、とかく一人が除(の)け者扱いされて嫌な思いをすることが多いということ。 類:●一人旅するとも三人旅するな
・三人寄れば公界(さんにんよればくがい) 人が三人集まれば、そこはもう公(おおやけ)の場所となるということ。そこで言ったりしたりしたことは、もう秘密にはならない。。 類:●三人寄れば人中(ひとなか)
・三人寄れば文殊の知恵(さんにんよればもんじゅのちえ) 「文殊」は知恵を司(つかさど)る菩薩のこと。凡人でも三人集まって相談すれば、なんとか良い知恵が浮かぶものだということ。 反:■船頭多くして船山に登る
・三年飛ばず鳴かず(さんねんとばずなかず) 久しく隠忍して他日に期すること、雄飛(ゆうひ)の機会を待って長い間雌伏(しふく)すること。 類:●鳴かず飛ばず●雌伏 故事:「史記−楚世家」 春秋時代、楚の荘王が三年間酒色に耽(ふけ)って政治を顧みないのを臣下が諫(いさ)めると、王は「飛べば天まで上がり、鳴けば必ず人を脅(おびや)かすろう」と答えたという。そして、喪が明けたとき、その言葉の通り大幅な家臣の粛清(しゅくせい)を行なった。 出典:「呂氏春秋−重言」・「史記−楚世家」・「史記−滑稽伝・淳于?」など。
・残念閔子騫(ざんねんびんしけん) 「残念」を洒落て言う言葉。その音が似ているところから孔子の門弟十哲として有名な「顔淵(がんえん)」に掛けて、同門の閔子騫と続けて語呂を合わせたもの。地口(じぐち)の類。文化年間(1804〜1818)に流行した。 用例:洒・辰巳之園「是は残念閔子騫」 人物:顔回(がんかい)・顔淵(がんえん) 中国、春秋時代の儒者。魯の人。前523〜前490。字は子淵。孔子の第一の門弟。貧窮の生活にあったが、学徳共に優れ、後世「復聖」と称(たた)えられた。29歳のときに髪の毛が全て白髪になり、32歳で没した。孔子をして「賢なるかな回や。一箪の食、一瓢の飲、陋巷に在り。人は其の憂いに堪えず、回や其の楽しみを改めず。」と言わしめた。
・三年塞がり(さんねんふさがり) 古暦にいう大将軍(陰陽道の八将神の一つ)の俗称。転じて、当分の間、開運や成功の見込みがないこと。 参考:大将軍 東西南北の四方に三年ずつ滞留し、その方角を塞いでいるとされ、この神が坐(おわ)す方位を三年間忌むる。
・三年三月(さんねんみつき) 《四熟》 長い年月のこと。久しい期間のこと。
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・三拝九拝(さんぱいきゅうはい) 《四熟》 1.三拝の礼と九拝の礼。2.何度も繰り返し礼拝して、敬意を表わすこと。転じて、何度も頭を下げて人に何かを頼むこと。3.手紙文で、末尾にしるして深い敬意を表わす挨拶(あいさつ)の言葉。
・三百代言(さんびゃくだいげん) 《四熟》 1.ここでの「三百」は低級の意味。明治初期、代言人(弁護士)の資格を持たないで、他人の訴訟や談判などを取り扱った者。もぐりの代言人。また、弁護士を罵(ののし)って言う言葉。2.転じて、詭弁を弄(ろう)すること。また、その人。
・三拍子揃う(さんびょうしそろう) 1.三つの必要な条件が巧く揃うということ。全ての条件が備わる。何もかも完全に備わる。2.三つの悪癖が備わる。酒を飲む、博打(ばくち)を打つ、女を買うの悪行が備わる。 例:「飲む打つ買うの三拍子」
・三一(さんぴん) 1.賽子(さいころ)遊びなどで3と1の目が出ること。2.「三一侍(さんぴんざむらい)」「三一奴(さんぴんやっこ)」の略。身分の低い侍を卑(いや)しめて呼んだ言葉。 類:●三両侍 ★江戸時代の最下級武士の1年の給与が、三両一人扶持(現金3両と1日あたり5合の米)だったところから。 ★武士の俸禄の最低が「三両一人扶持」だったのは享保(1716〜36)頃の話で、文政(1818〜30)頃には「四両一人扶持」になっていた。 ★「ぴん」はポルトガルpinta(点の意)の変化か<国語大辞典(小)>
・三釜の養(さんぷのよう) 三釜ばかりの乏(とぼ)しい食禄(しょくろく)であっても、親に孝行を尽くすことの喩え。 類:●菽水の歓 ★「一釜」は、中国で6斗4升、日本で4升(7.2リットル)のこと。 故事:「荘子−寓言」 曾子(そうし・曾参)は、親の生きている間は貧しい給料でも孝養を尽くすことができて楽しかったが、その後出世して三千鍾(三万釜)の高禄を得るようになった時は、親がこの世にいなくて孝養が尽くせず悲しかったと言った。
・三平二満(さんぺいじまん) 《四熟》 1.「三」「二」は数が少ないことを表わす。三でも平安、二でも満足という意味で、満たされない状況にあっても、心が平安で満足していること。2.額や鼻、頬などの起伏が普通でない顔。また、醜い顔の女をたとえていう言葉。 類:●阿亀●おかちめんこ●阿多福 参考:平らな部分、三箇所については、「額・鼻・顎」とも、「目・鼻・口」とも、「両頬(ほお)・鼻」ともいい、ふくらんだ部分、二箇所については、「額・頬」とも、「額・顎」とも、両頬とも言い、諸説ある。
・三遍回って煙草にしょ(さんべんまわってたばこにしょ) 夜回りを3度回ってから休憩を取ろうという意味で、念には念を入れてやってから休むことにしようということ。また、休むことばかり考えていないで、手抜かりがないようにしっかりやりなさい、ということ。
・三歩下がって師の影を踏まず(さんぽさがってしのかげをふまず) 弟子が師に随行する時、三尺離れて影も踏まないようにするということで、弟子は師を尊敬し、礼儀を忘れてはならないという戒め。 類:●三尺去って師の影を踏まず
−−−−−−−さん(ま)(#san7)−−−−−−−
・秋刀魚が出ると按摩が引っ込む(さんまがでるとあんまがひっこむ) 秋になると、健康に良い食材が出回り、病人が少なくなるということ。 類:●柿が赤くなると(蜜柑が黄色くなると)医者は青くなる●柚が色付くと医者が青くなる●十月の戸たて医者 ★「さんま」と「あんま」の語呂合わせの洒落。
・三面記事(さんめんきじ) 《四熟》 新聞の社会記事のこと。社会の雑事や雑話を扱(あつか)った記事。 ★新聞紙が四ページだった頃、第三ページが社会面だったところから<国語大辞典(小)> ★一面が「広告」、二面が「政治や経済の記事」、三面が「社会面」、四面が「家庭文化記事や連載小説」だったらしい。
・三面の大黒(さんめんのだいこく) 正面に大黒天、右面に毘沙門天(びしゃもんてん)、左面に弁才天と三つの顔を身に合わせ持つ大黒天。仏・法・僧の三宝を守護するといわれ、比叡山をはじめ各地にまつる。三面大黒天。
・三面六臂(さんめんろっぴ) 《四熟》 1.三つの顔と六つの臂(ひじ)とを一身に備えていること。2.顔が三つ、腕が六本あるというところから、一人で数人分の働きをすること。また、その様子 類:●八面六臂 例:「三面六臂の活躍」
−−−−−−−さん(や)(#san8)−−−−−−−
・三餘(さんよ)・三余 読書をするのに最も適した三つの時期または時。冬(年の余)・夜(日の余)・陰雨(時の余)の三つ。 出典:「魏志(三国志)−弘農董遇・注」「遇言、冬者歳之餘、夜者日之餘、陰雨者時之餘也」 参考:三上(さんじょう)
−−−−−−−さん(ら)(#san9)−−−−−−−
・山林は金持ちの持ち物(さんりんはかねもちのもちもの) その日暮らしの貧乏人には、植林から伐採までの長年に亘る山林経営は持ち堪えることができないということ。
−−−−−−−さん(を)(#sanwo)−−−−−−−
・産を傾ける(さんをかたむける) 1.財産を使い果たす。財産を失う。2.ある事に全財産を差し出す。 類:●産を破る 反:■産を成す
・算を乱す(さんをみだす)[=散らす] 算木を乱したように、列を乱す。ちりぢりばらばらになる。散乱する。 類:●算を散らす●蜘蛛の子を散らす
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