【いあ】~【いか】

−−−−−−−いあ(#ia)−−−−−−−
・威ありて猛からず
(いありてたけからず)) 威厳はあるが、内面に温情があって、荒々しくない様子。君子の理想的な人柄を言った言葉。 出典:「論語−述而」「子温而
?威而不猛、恭而安」

−−−−−−−いい1(#ii)−−−−−−−
・依依
(いい) 1.枝のしなやかな様子。2.離れるに忍びない様子。3.遠くてぼんやり見えること。仄(ほの)かに見える様子。
・言い得て妙
(いいえてみょう) 実に的確に言い表わしたものである、ということ。 例:「『瓢箪鯰』という渾名(あだな)は言い得て妙だ」 ★「妙」は、「巧妙」「絶妙」の妙。
・好い顔
(いいかお) 1.綺麗な顔。 類:●美貌 2.機嫌が良さそうな顔。子供の取り澄ました顔。3.多方面に顔が利くこと。顔役。
・好い顔をしない(いいかおをしない) 機嫌良くしない。そのことに対して好意的でない。賛成しない。承知しない。
・言い掛かり(いいがかり) 1.一度口にしてしまったため、後に引けなくなっている状態。言い合いをしてお互いに意地になっている様子。 用例:浄・丹波与作−中「こちも引かれぬ言掛り」 2.相手を困らせるために言う事実無根の口実。 類:●難癖 例:「それはとんでもない言い掛かりだ」
・言い掛かりを付ける
(いいがかりをつける) 人を責め困らせるために言う、事実無根の口実。 類:●因縁(いんねん)を付ける●難癖を付ける
・好い加減(いいかげん) 1.かなりの程度まで行っているので、もう程々にしたい状態。 例:「好い加減なところで今日は切り上げよう」 用例:洒・傾城買四十八手「しったかいいかげんにしやれや」 2.かなりの程度。 類:●相当 例:「いい加減年をとった」 3.無責任なさま。 類:●出鱈目 例:「好い加減なことばかり言う」 4.徹底しない様子。 類:●中途半端 例:「好い加減なことでは白状しない」 5.〔連語〕 丁度(ちょうど)好い程度。 類:●適度●程(ほど)好く●程々 例:「好い加減に煮えている」 ★「よい加減」からの変化。
・言い勝ち高名
(いいがちこうみょう) 正論を述べるよりも、喋り捲った者の方が勝つものだということ。仮令それが良い意見でも、黙っていては通らないという場合に使う。
・好い鴨
(いいかも) 巧い話に乗り易く、こちらの思う壺に嵌(は)まるような人のこと。 類:●良い獲物(えもの) 用例:風来六部集「こちらの後家も素人なれば、いい鴨の類になつて」 用例の出典:風来六部集(ふうらいろくぶしゅう) 談義本。風来山人(平賀源内)。森島中良序。1巻2冊。安永9年(1789)。序によれば、源内が生前に刊行した6篇の著書を収録したものという。「放屁論」「放屁論後編」「痿陰隠逸伝」「飛だ噂の評」「天狗髑髏鑑定縁起」「里のをだまき評」から成る。
・好い気
(いいき) 客観的に見ればそんな風にはできない筈なのに、本人は自分のすることに満足し得意に思っている様子。独り善がりで他人に気を使わないこと。 例:「こっちが黙っていれば好い気になって」
・好い気味
(いいきみ・いいきび) 1.気分が爽快である様子。良い気持ち。2.胸が透(す)くような気持ち。日頃不快に思ったり、仲が悪かったりする人の不幸や失敗を喜ぶようなときに使う。 類:●痛快 用例:人情・春色梅児誉美−初「いいきみとおもふゆゑ」 
★「いいきび」とも<国語大辞典(小)>
・良い薬
(いいくすり) その人にとって良い教訓となるようなこと。身のためになること。 例:「失敗が好い薬になった」
・以夷攻夷
(いいこうい) 異民族を利用して異民族を抑える。敵国を抑えるのに他国の力を利用する。 類:●夷を以て夷を制す
・好い事
(いいこと) 1.良い事柄。楽しいこと。面白いこと。特に、男女の情事について使う。 例:「ハワイで好いことをしてきた」 2.良い巡り合わせ。好運。 例:「好いことに、彼もそこに行くらしい」 3.付け込むのに良い口実。利用する良い機会。 例:「親の留守を好いことに、彼女を連れ込む」 4.感動詞。 子供などに念を押して言う女性語。 類:●いいわね 例:「いいこと、お婆ちゃんにちゃんとご挨拶するのよ」
・言い込める
(いいこめる) 理屈や弁舌で人を遣り込める。言い伏せる。 類:●言い伏せる●
言い竦(すく)める 例:「母親を言い籠める」
・好い勝負(いいしょうぶ) 1.実力が拮抗(きっこう)していて見応えのある勝負になる。2.転じて、程度が同じくらいである。 類:●どっこいどっこい 例:「臭いのひどさはクサヤと好い勝負だ」
・言い竦める
(いいすくめる) 言葉で遣り込める。巧みな弁舌で相手を自分の考えに同意させる。 類:●言い伏せる●
言い込める 用例:浮・世間胸算用−四「何人出ても云すくめられ、後には相手になるものなし」 用例の出典:世間胸算用(せけんむなざんよう) 浮世草子。5巻5冊。井原西鶴。元禄5年(1692)刊。副題「大晦日(おおつごもり)は一日千金」。大晦日を様々な形で切り抜けて行く町人たちの生きようを描いた20話の短編集。西鶴の到達点を示す町人物の傑作。江戸中期までは「せけんむねさんよう」と呼ばれていた。
・以夷制夷(いいせいい) 他国の力を抑えるのに、別の他国の力を利用する。他人の力を借りて、自分の利益を得る。 類:●夷を以て夷を制す

−−−−−−−いい2(#ii2)−−−−−−−
・唯々諾々
(いいだくだく) 少しも逆らわずに、言いなりになる。 類:●言う成り地獄 出典:「韓非子−八姦」「此人主未命而唯唯、未使而諾諾
・言い出し屁(いいだしべ・っぺ) 1.押並(な)べて、身の潔白や無実を最初に言い出した者が犯人であるものだということ。2.転じて、言い出した者が最初にそれをすること。この場合、普通「いいだしっぺ」という。 類:●言い出し兵衛 
★「いいだしっぺ」とも。くさいと言い始めた者が放屁(ほうひ)の犯人であるというところから<国語大辞典(小)> 
・意到りて筆随う(いいたりてふでしたがう) 詩歌や文章を作るとき、自分の思う儘に筆が動くということ。詩歌などがすらすら作れる様子。 出典:
春渚紀聞(しゅんしょきぶん) 中国・宋代。何遠撰。・・・詳細調査中。
・言い付ける(いいつける) 1.ものごとを人に頼む。目下の者に命じる。また、出前などを注文する。 類:●申し付ける 用例:源氏−手習「かの人のいひつけし事など」 例:「用事を言い付ける」 2.その人にとって好ましくないことを、誰かに告げる。告げ口をする。密告する。 用例:源氏−葵「さるうとましきことをいひつけらるる」 例:「父親に言い付ける」 3.渾名(あだな)などを付ける。命名する。 用例:栄華−日蔭のかづら「大宰相の君などいふ人、おばおとどなどいひつけ給ひ」 4.言い慣れる。 用例:徒然草−七八「ここもとにいひつけたることくさ、物の名など」 5.叱り付ける。厳しく言い聞かせる。 用例:狂言記牛馬「急度(きっと)いひ付て被下(くだされ)」
・好い面の皮
(いいつらのかわ) とんだ恥曝し。良い迷惑。再三再四悪い目に逢って、馬鹿馬鹿しくなるようだ。不幸や失敗を自嘲して、また、不幸な相手に同情したり、嘲ったりするときに使う。 用例:人情・
春色辰巳園−初「手めへの自由にされたらいいつらの皮だ」 用例の出典:春色辰巳園(しゅんしょくたつみのその) 人情本。4編12冊。為永春水作。挿絵は歌川国直。天保5(1834)〜6年刊。「春色梅児誉美」の後続作品。
・好い仲(いいなか) 親密な間柄。また、相思相愛の男女の仲。 類:●恋愛関係 例:「好い仲になる」
・許婚
(いいなずけ) 1.結婚の約束をした相手。 類:●婚約者●フィアンセ 2.双方の親同士の合意で、幼いうちから子供の結婚を約束しておくこと。また、その間柄。 用例:浮・好色二代男−四「七明年なる親共云名付して」 ★動詞「言い名付く」の連用形から<大辞林(三)> ★かつて日本では、女性は名前を公にしないのが普通であった。婚儀が整った折、夫となる男子が相手を呼ぶときの名前=「言い名」を付けたことによる。
・言い成り
(いいなり) 言う通り。言うが儘。言う成り。 例:「親の言いなり」
・言い含める
(いいふくめる) 懇切丁寧に話して聞かせ、その旨を覚らせる。説明して納得させる。良く言い聞かせる。 類:●因果を含める 用例:今昔−二七・一五「此の女の童に、此の由を云ひ含て」
・言い旧す
(いいふるす) 珍しいと感じなくなるくらい何度も口に出す。陳腐の説となる。 用例:蜻蛉−中「いひふるしたるかひもありけり」
・言い紛らす
(いいまぎらす) 論点をぼかしたり、話題を反らしたりして、誤魔化してしまう。また、嘘を言って誤魔化す。言い紛らわす。 類:●言いはぐらかす●話をぼかす●有耶無耶にする 用例:浄・
神霊矢口渡−三「箱根へ湯治に参る者と、云い紛らして」 用例の出典:神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし) 浄瑠璃。時代物。5段。福内鬼外(平賀源内)。明和7年(1770)初演。「太平記」に拠り、新田義興が武蔵国矢口の渡で討たれたあと、義興の弟義岑や遺臣たちの、新田家再興までの苦心を、義興をまつる新田明神の縁起に結びつけて脚色。江戸浄瑠璃の代表作。
・好い迷惑(いいめいわく) 自分に直接関係のないことなのに迷惑を受ける。 例:「私こそいい迷惑だ」 
★「いい」は反語的表現<国語大辞典(小)>
・言い寄る
(いいよる) 異性に話し掛けたり手紙を出したりして近付く。口説く。求愛する。 類:●モーションを掛ける 用例:源氏−帚木「むすめども多かりと聞き給へて、はかなきついでにいひよりて」
・依依恋恋(いいれんれん) 恋い慕うあまり離れるに忍びない様子。 類:●
依依 用例:読・桜姫全伝曙草紙−二「依々恋々として、轟坊にぞ帰りける」 用例の出典:桜姫全伝曙草紙(さくらひめぜんでんあけぼのそうし) 読本。5巻。山東京伝。歌川豊国挿絵。文化2年(1805)刊。丹波桑田の鷲尾家のお家騒動に絡む復讐談を骨子とし、清玄桜姫の伝承を導入し、因果談的趣向をあわせた伝奇小説。「曙草紙」。

−−−−−−−いう(#iu)−−−−−−−
・言う口の下から
(いうくちのしたから) 言った途端。類:●言う傍(そば)から●言う下から●舌の根も乾かぬうちに
・言うことなし(いうことなし) 申し分がない。 類:●文句なし
言うなれば(いうなれば) 言ってみるなら。いわば。
・言うに言われず(いうにいわれず)[=ない] 1.言葉では巧く表現できない。言いようがない。 例:「言うに言われない面白み」 2.話すと具合いの悪い事情があったりして、言いたくても、言うことができない。 用例:伎・韓人漢文手管始−四「いふにいわれぬ親子のきづな」
・言うに落ちず語るに落ちる
(いうにおちずにかたるにおちる) そのことを口では言っていないけれど、自然とその言葉の裏に語られている。 類:●問うに落ちず語るに落つ
・言うに及ばず(いうにおよばず) 1.特に述べ立てる必要はない。言うまでもない。 用例:平家−五「我朝はいふに及ず」 2.言葉ではうまく言い表わせない。 用例:光悦本謡曲・
小塩「いふに及ばぬけしきをば」 類:●言う限りにあらず●言うまでもない●言うも愚か●言えば更なり 用例の出典:小塩(おしお) 謡曲。四番目物。各流。金春禅竹作。「伊勢物語」に見える二条の后が大原野にお成りになった話を脚色。 人物:本阿弥光悦(ほんあみこうえつ) 江戸初期の芸術家。家業の刀剣の鑑定・研摩のほか書、作陶、漆芸などに天分を発揮。書は寛永の三筆の一人といわれ、作陶では名物楽茶碗に、漆芸では蒔絵硯箱などに名品を残している。1558〜1637。晩年は家康から洛北の鷹ケ峰を賜り、いわゆる光悦村を形成した。
・言うに事欠いて(いうにことかいて) 言うにしては、もっと増しな言い方もあろうに、そうではなくて。 類:●選りに選って 例:「言うに事欠いて人の秘密まで喋らなくても良いものを」 ★非難の意を含めて言うことば<学研国語大辞典> 参照:事を欠く

−−−−−−−いえ(#ie)−−−−−−−
・家売れば釘の価(いえうればくぎのあたい)[=縄の値] 大枚を使って手に入れた家屋も、売る時には釘(縄)に掛かった費用程度の値段でしか売れない。
・家柄より芋茎(いえがらよりいもがら) 家の格式などという腹の足しにもならないものより、芋茎の方が増しだということ。家柄などは、芋茎ほどの値打ちもないということ。
・家給し人足る
(いえきゅうしひとたる) 全ての家も人も豊かで生活に困らないこと。天下が太平で、民が安心して生活している様子。 出典:「淮南子−人間訓」
・家高(いえたか) 家の格式が高いこと。また、そのような家柄。 用例:咄・
醒睡笑−四「人これを見れば、なにとしたる家高(イエタカ)ぞや」 類:●名門●名家●家(いえ)高し 用例の出典:醒睡笑(せいすいしょう) 咄本。8巻。安楽庵策伝著。元和9年(1623)頃の成立。戦国末期から近世初期、お伽衆によって語られていた笑話を中心として42項に分類。集大成した一大笑話集。後代の落語や咄本などに大きな影響を与えた。
・家徒四壁(いえただしへき) 家にはただ四方の壁が立っているのみで、他に何もない。酷く貧しい家のこと。 類:●居徒四壁(きょただしへき)
・家に諫むる子あればその家必ず正し
(いえにいさむるこあればそのいえかならずただし) 父が不義を企てても、それを諌める子があれば、その家は安泰である。 出典:「
孝経−諫争章」「父有争子、則身不陥於不義」 出典:孝経(こうきょう) 中国の経書。1巻。十三経の一つ。孔子の弟子、曾子の学派の撰とされる。戦国時代に成立。古文と今文の二種がある。その多くは孔子と曾子との問答形式を取り、孝道を理論的根拠として、封建社会における家族を中心とした道徳を説く。
・家に杖突く(いえにつえつく) 家の中で杖を突く年齢という意味で、50歳のこと。 出典:「礼記−王制」「五十杖於家、六十杖於郷、七十杖於国、八十杖於朝」
・家に無くてならぬものは上り框と女房(いえになくてはなならぬものはあがりかまちとにょうぼう) 家庭には、女房はなくてはならない存在であるということ。家が栄えるか衰えるかは、女房の才覚に掛かっているということ。 類:●女房は家の大黒柱●女と俎板は無ければ敵わぬ●女房は半身上 ★「上り框」は、玄関の上り口の化粧横木。日本式の家屋では、これのない家はない。「あがりがまち」とも。
・家に女房なきは火のなき炉の如し
(いえににょうぼうなきはひのなきろのごとし) 女房のいない家は、炉の中に火がないのと同じである。大事なものが欠けたら寂しいものだということ。 類:●家に女房の無きは梁の無きと同じ●家に無くてはならぬものは上がり框と女房●女房と俎板は無ければならぬ
・家の風
(いえのかぜ) 1.代々、家に伝えて来た流儀、伝統。また、家の威風。 類:●家風(いえかぜ) 用例:拾遺−四七三「久方の月の桂も折るばかり家の風をも吹かせてし哉」 2.家庭内で起こる波風(なみかぜ)。家の中に起こった揉め事。 用例:浮・本朝二十不孝−三「静かなる浦に家の風を吹かし」 
「家風(かふう)」の訓読み<国語大辞典(小)>
・家の乱れは女から
(いえのみだれはおんなから) 家庭の乱れは女性が原因で起こることが多い。主人の女性関係や、主婦の軽はずみな行動などを指して言う。
・家は弱かれ主は強かれ
(いえはよわかれぬしはつよかれ) 家屋は弱くても良いが、主人はしっかりしていなくては駄目だ。
・家貧しくして孝子顕わる
(いえまずしくてこうしあらわる)・出ず[=孝を顕わす] 家が貧乏だと、孝行な子の善行がはっきり人に知られるものだということ。逆境に陥ったとき、誠実な人間が表面に現れるものだ。 類:●六親和せずして孝慈有り 出典:「宝鑑」「家貧顕孝子、世乱識忠臣」 出典:
明心宝鑑(めいしんほうかん) 箴言(しんげん)集。高麗時代。に編まれた儒学の箴言集。高麗の忠烈王の文臣・秋適(しゅうてき)編といわれる。19篇、のち5編増補。孔子を始めとする中国儒学の先人達の名言を集めたもの。
・家貧しくて良妻を思う
(いえまずしくてりょうさいをおもう) 家が貧しくなると、家庭を切り盛りしてくれる良い妻が欲しいと思う。国や組織が乱れると、良き大臣や補佐役が必要になるという喩え。 類:●国乱れて良相を思う 出典:「史記−魏世家」「先生嘗教寡人曰、家貧則思良妻、国乱則思良相」 中国戦国初期の政治家・李克(りこく)の言葉。
・家持ちより金持ち
(いえもちよりかねもち) 高い金額を使って家を購入して持ち家に住むよりは、借家に住もうとも金持ちでいた方が気楽である。 
★一説に、家作を持つより、現金を運用した方が有利であるの意とする<国語大辞典(小)>
・家を傾ける
(いえをかたむける) 家の財産を使い果たす。身代を潰す。 類:●家を潰す●家を破る●家崩し
・家を破る鼠は家から出る(いえをやぶるねずみはいえからでる) 家や国家を破滅させる者は、外部から来るのでなく、内部から出るものだという喩え。

−−−−−−−いお(#io)−−−−−−−
・庵さす(いおりさす) 庵を作って住むこと。 類:●いおさす

−−−−−−−いか(#ika)−−−−−−−
・如何わしい(いかがわしい) 1.疑わしい。信用できない。 用例:伎・
濃紅葉小倉色紙−発端「斯やうな儀を御諫言申し上げられぬは如何はしう存じまする」 2.よろしくない。怪(あや)しげである様子。 ①下品で卑猥(ひわい)な様子。 例:「いかがわしい言葉遣い」 ②正体がはっきりしないで、いんちきな様子。 例:「いかがわしいよそ者」 ★「いかがしい」の変化<国語大辞典(小)> 用例の出典:濃紅葉小倉色紙(こいもみじおぐらしきし) 歌舞伎。奈河晴助。文化10年(1813)大阪中座初演。九州豊前小倉藩の小笠原家で実際に起こったお家騒動に同家に伝わる狐の伝説をからめたもの。
・毬栗頭
(いがぐりあたま) 髪を毬栗のように短く刈った頭。また、毛の伸びかかった頭。 類:●いがぐり●いがあたま●坊主頭
・毬栗も中から破れる
(いがぐりもなかからやぶれる) 時期が来て年頃を迎えれば、どんな者でも自然と色気付くものである。 類:●豌豆(えんどう)は日陰でも弾ける●陰裏の桃の木も時がくれば花咲く●鬼も十八番茶も出花
・鋳掛け屋の天秤棒
(いかけやのてんびんぼう) 鋳掛屋の天秤棒は普通の天秤棒より長く、棒の端が荷より先に長く出るところから、出しゃ張り者のこと。また、出過ぎた行ない。
・生かさず殺さず
(いかさずころさず) 積極的に生かそうともしないし殺しもしない、という意味で、中途半端な状態において苦しめる。やっと生きてゆける程度の苛酷な状態に置いておくこと。 類:●生(なま)殺し●生けず殺さず
・如何様
(いかさま) 1.状態、方法などについて、疑問である。どんなものか。どんな風(ふう)。 用例:万葉−167「何方(いかさま)に思ほしめせか」 用例:宇津保−菊の宴「いでや、いかさまになすべき」 2.相手の意見に同意して、感動的に応答する言葉。如何にも。その通り。正に。なるほど。ご尤も。 例:「いかさま、得心がいった」 用例:虎寛本狂言・素袍落「『定て汝が行くで有う』『いか様(さま)』」 3.いかにも本当らしく見せ掛けたもの。似せたもの。 類:●いんちき●ぺてん 用例:雑俳・川柳評万句合−安永三「いかさまの元祖は小野の小町なり」 例:「露店には如何様が多い」
・如何様師(いかさまし) 贋物を作ったり売ったりする者。また、詐欺やいんちき賭博を常習とする者。 類:●詐欺師●いかもの師
・嫁かず後家
(いかずごけ)・不嫁後家 1.婚約者と死に別れ、または生き別れて、未亡人同様に暮らしている女。 ★一緒に死ねなかった後家の意味からか。 2.婚期を失い独身で過ごす女。 
★近世上方語では、前者をいい、後者を「いかず」として区別した<国語大辞典(小)>
・移花接木
(いかせつぼく) 《四熟》 花を取り替え、枝を接ぎ木する。 1.人や物を取り替えて、表面を取り繕うこと。2.論点などを、巧みに擦り替えること。
・筏流して木端を拾う
(いかだながしてこっぱをひろう) こつこつと少しずつ苦労して貯えたものを、一度に無造作に使い果たすこと。 類:●枡で計って箕で零す爪で拾って箕でこぼす ★茨城県のことわざ。
・桴に乗りて海に浮かばん
(いかだにのりてうみにうかばん) 今の世はどんなに努力してもものの道理が通らないから、いっそのこと、世間から抜け出して、筏(いかだ)に乗って海に浮かんでいたい。現実に失望して、どこかへ逃避したいと願うという意味でも使う。 出典:「論語−公冶長」「子曰、道不行、乗桴浮于海」 乱世を嘆いた孔子の言葉。
・如何にせん
(いかにせん)[=如何せん] 1.為すべき手段を躊躇(ためら)い、困っている様子。どうしよう。どんなにしたら良かろうか。 用例:万葉−3712「ぬば玉の妹が干すべくあらなくにわが衣手を濡れて伊可爾勢牟(イカニセム)」 2.嘆き、諦(あきら)める気持ち。どうしようもない。仕方がない。 用例:万葉−3418「上つ毛野佐野田の苗の占なへに事は定めつ今は伊可爾世母(イカニセモ)」
・烏賊の金玉
(いかのきんたま)・睾丸 地口(じぐち)の類(たぐい)。「そうは旨くは烏賊の金玉」などと言い、そう巧い具合いに行くものではないぞの意味で言う。 ★「烏賊の金玉」は、足の間にある骨格質の咀嚼(そしゃく)器の俗称で、江戸時代、珍味として持て囃(はや)された。俗に「とんび」などとも呼ばれる。 参考:江戸後期の川柳「金玉も入れなと女房烏賊を買い」
・烏賊の甲より年の劫
(いかのこうよりとしのこう) 「亀の甲」の誤用、または洒落。年功は積めば積むだけ価値がある。年長者の経験は重んじなければならない。 類:●亀の甲より年の功
・歪みの物取る大盗人
(いがみのものとるおおぬすっと) 悪漢の物を盗み取る大盗人という意味で、悪人にも、上には上があるということ。 類:●盗人の上前を取る 出典:「新版歌祭文
・偽物食い
(いかものぐい) 1.普通の人の食べないようなものを好んで食べる、または、わざと食べること。また、そういう人。2.普通の人が相手にしないような女を愛すること。また、そういう人。3.普通の人と違った趣味、または嗜好を持つこと。類:●悪食(あくじき)●下手物(げてもの)食い
・栗毬より栗(いがよりくり) 痛い栗毬より美味しい栗の実が良い。何かと煩(うるさ)く言う人より、ご馳走してくれる人の方が良いということ。
・怒り心頭に発する
(いかりしんとうにはっする) 激しい怒りの気持ちを心の内に抑えておけなくなる。転じて、激しく怒る。 ★「心頭」は、「心の内」の意味。
・怒りは敵と思え
(いかりはてきとおもえ) 腹を立てれば、判断を誤ったり人の反感を買ったりする。怒りは我が身を滅ぼす敵だと思って、慎(つつし)まなくてはいけない。 類:●堪忍は無事長久の基 ★徳川家康の遺訓の一つ。
・怒りを移す
(いかりをうつす) 立腹して、他の関係のないものにまで当たり散らす。 類:●八つ当たりする●当り散らす
・錨を下ろす(いかりをおろす) 1.船舶を港などに繋ぎ止めるために錨を水中に降ろす。 類:●係船する●停泊する●ふながかりする 2.比喩的に、そこにゆっくりと腰を落ち着ける。 類:●尻を据える●御輿(みこし)を据える●根を生やす●居続ける 用例:浮・
傾城歌三味線−一「此揚屋に碇をおろし」 用例の出典:傾城歌三味線(けいせいうたじゃみせん) 浮世草子。5冊。八文字屋自笑・江島其磧。享保17年(1732)刊。遊女小女郎と新兵衛は周囲の迫害を受け、島原、吉原、新町と流転する。やがて新兵衛の勘当も許され、小女郎は身受けされるが、新兵衛の妻へ義理を立てて尼となる。当時流行りの浄瑠璃、歌舞伎の趣向をきかせた長編小説。
・怒りを買う(いかりをかう) 怒られる。相手を怒らせてしまった要因がこちら側にある場合。
・忿りを懲らし欲を窒ぐ(いかりをこらしよくをふさぐ) 心に生じた怒りを止(とど)め、貪欲な心を閉ざしなさいということ。過(あやま)ちを起こす根本原因は、怒りと欲である。つまり、怒りと欲は損(そん)の元である。 出典:「易経−損象」「象曰、山下有沢、損、君子以懲忿窒欲
・いかれぽんち
 《俗語》 軽薄で頭の悪い男のこと。腑抜けな男や不良っぽい男に言うこともある。 ★「ぽんち」は関西方言「ぼんち(=坊ッチャン)」の転<大辞林(三)> ★19世紀の大衆週刊誌「パンチ」または雑誌「ザ‐ジャパン‐パンチ」に由来する、「ポンチ絵」(=明治時代の漫画の呼称)からとも言う。
・いかれる
 1.先を越される。先手を打たれる。してやられる。 例:「この勝負はあんたにいかれた」 2.物が古くなって役に立たなくなる。機械などが壊れて駄目(だめ)になる。また、生き物が死ぬ。 例:「エンジンがいかれた」 3.生意気な様子をする。不良じみる。 例:「いかれた身なり」 4.頭の働きがまともでなくなる。腑抜(ふぬ)けになる。 例:「お頭(つむ)がいかれている」 5.心を奪われる。夢中になる。 例:「彼女にすっかりいかれている」 類:●参る ★もと「行かれる」の意か。俗語<国語大辞典(小)>
・怒れる拳笑面に当たらず
(いかれるこぶししょうめんにあたらず)・笑顔に〜 怒って拳を振り上げてきた人も、笑顔で対応する人には気勢を殺(そ)がれてしまうものである。怒りや強気に対しては、むしろ優しい態度で接する方が効果的であったりするということ。 類:●尾を振る犬は叩かれず●杖の下に回る犬は打てぬ窮鳥懐に入れば猟師も殺さず 出典:「五燈会元−一五、智門祚禅師法嗣・雲台省因禅師」「僧問、如何是和尚家風、師曰、嗔拳不打笑面
・いかん通
(いかんつう) 自称「通人」のこと。 類:●半可通 
★安永(1772−81)頃の流行語。「いかん」は「行かん」か<国語大辞典(小)>
・遺憾千万
(いかんせんばん) 《四熟》 ものごとが自分の思い通りにいかず、とても残念に思うこと。非常に心残りであること。また、口惜(くちお)しくてならないこと。 類:●残念至極●無念千万 ★「千万」は、程度が甚だしい意味。
・衣冠束帯
(いかんそくたい) 《四熟》 貴族の礼装で、平安朝以降の天皇・公家・貴族・高級官僚の正装。 ★「束帯」は天皇以下文武百官が朝廷の公事に着た正服。「衣冠」は、束帯を簡略化した服装のこと。 ★衣冠と束帯が同一のものと誤解され、江戸時代後半以降に成立した言葉。
・遺憾ながら
(いかんながら) 会話の冒頭に言って、残り惜しさや同情の気持ちを示す言葉。残念ではあるが。また、気の毒ではあるが。 例:「遺憾ながら欠席」
・遺憾なく
(いかんなく) 1.心残りになることなく。残念とは思わないで。 例:「遺憾なく割愛する」 2.十分に。全部。洩(も)れるところなく。 例:「実力を遺憾なく発揮する」

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