【きあ】~【きこ】
・気合いが入る(きあいがはいる)[=掛かる] 何かをしようとするとき、精神が集中し熱が篭もる様子。
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・利いた風(きいたふう) 1.気が利いていること。また、その人。 用例:浮・紅白源氏物語−一「きゐたふうなる男ぶり」 2.いかにもその道に通じているように見せること。また、その人。 類:●知ったか振り●半可通(はんかつう) 用例:滑・膝栗毛−三「ヱヱさっきから、だまって聞てゐりゃア、弥次さんおめへきいたふうだぜ」 ★「いかにも気が利いている(=粋である・通である)ようである」の意味から。 3.生意気なこと。また、その人。 用例:洒・傾城買四十八手「あんなきいたふうな女郎はねへ」 用例の出典①:紅白源氏物語(こうはくげんじものがたり) 浮世草子。宝永6年(1709)。・・・詳細調査中。 用例の出典②:膝栗毛(ひざくりげ) 滑稽本。十返舎一九(本名:重田貞一)。弥次郎兵衛・喜多八の道中記。滑稽の中に風刺や教化を盛り込んでいる。「東海道中膝栗毛」享和2年(1802)〜文化6年(1809)、「続膝栗毛」(木曾街道・中山道)、「続々膝栗毛」などがある。
・木一倍の元失い(きいちばいのもとうしない) 材木は原価が安いから、売れば倍以上の利益があるように思われるが、実際には運搬の費用が多く掛かって、利益どころか、時として元手を切って損をするようなこともあるということ。
・聞いて呆れる(きいてあきれる) 呆れる。真面目に聞いていられない。 ★明和頃から江戸で用いられたはやり言葉で、「何々が聞いて呆れる」の形で用いられる。他の人の言葉を受け、それを否定したりからかったりする意に用いる<国語大辞典(小)>
・生一本(きいっぽん) 1.純粋で混じり気がないこと。 例:「灘の生一本」 2.生まれつき純心でものごとに真っ直ぐに打ち込んでいく性質。天真で、邪心のないこと。策略を用いないこと。 例:「生一本な性格」
・聞いて極楽見て地獄(きいてごくらくみてじごく)
・黄色い声(きいろいこえ) 特に女性などの、甲(かん)高い声。 類:●金切り声●甲ばしった声
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・気宇盛大(きうせいだい) 《四熟》 器量に富み進取の気持ちが強いという意味から、人間性が豊かで心が広く、望みが大きいこと。 類:●気宇壮大
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・驥塩車に服す(きえんしゃにふくす) 千里を駆けるほどの駿馬が塩運びの車を引くのに使われている。才能ある者が世に認められないでいることの喩え。 類:●驥も櫪に伏す 出典:「戦国策−楚策」「夫驥之歯至矣。服塩車而上太行」<それきのよわいいたれり。えんしゃにふくしてたいこうにのぼる> ★中国戦国時代、遊説家の汗明(かんめい)が楚の宰相春申君(しゅんしんくん)に自分を売り込んで言った言葉。
・気炎を揚げる(きえんをあげる)[=気焔を〜] 意気が盛んである状態。また、意気盛んに議論をすること。 類:●気炎を吐く●メートルを上げる ★女性が気炎を揚げる場合は「赤い気炎を揚げる」などとも言う。
−−−−−−−きお(#kio)−−−−−−−
・既往は咎めず(きおうはとがめず) 過ぎ去った出来事についてとやかく咎(とが)め立てするよりは、将来を慎むことが大切であるということ。 類:●旧悪を念(おも)わず 出典:「論語−八?」「成事不説、遂事不諫、既往不咎」
−−−−−−−きか(あ)(#kika1)−−−−−−−
・机下(きか)・几下 1.あなたの元。お傍(そば)。お手元へ。 2.手紙で、宛名の脇付けに書く尊敬語。 類:●机右●案下●座下 例:「鈴木太郎先生机下」 ★相手の机の下に差し出すの意<国語大辞典(小)> ★ふつう、男性が使う<学研国語大辞典>
・気が合う(きがあう) 気持ちが通じあう。気分が互いに一致する。 用例:滑・浮世風呂−三「気の合った夫婦」
・気がある(きがある) 1.興味や関心がある。心が傾く。2.好意や恋心を抱いている。 用例:伎・お染久松色読販−序幕「あの美しいお袋様が此久太に気が有るとは」
・気が好い(きがいい) 気持ちが素直である。気立てが良い。また、気前が良い。
・気が多い(きがおおい) 心が定まらないで、移り気である。色々なものごとに興味を持つこと。浮気である。
・気が大きい(きがおおきい) 細かなことなど気に掛けないで、心が広い。 反:■気が小さい
・気が大きくなる(きがおおきくなる) 細かいことに頓着(とんちゃく)しなくなる。 例:「ボーナスを貰って気が大きくなった」
・奇貨居くべし(きかおくべし)
・気が置けない(きがおけない)[=置かれない] 緊張したり遠慮したりする必要がない。気遣いする必要がない。打ち解けられる。 例:「彼とは気が置けない間柄だ」 参考:「気を置く」の1. ★「気が許せない」「油断ができない」の意味で使われるのは誤用。 ★「置かれない」の「れない」は、可能の助動詞の否定形(置くことができない)ではなく、自発の助動詞「れる」の否定形(無意識に置いてしまわずに済む)。
・気が置ける(きがおける)[=置かれる] 何となく打ち解けられない。遠慮される。 用例:雑俳・川柳評万句合−宝暦二「御手かけも相馬の家は気がおかれ」 ★「置かれる」の「れる」は、可能の助動詞(置くことができる)ではなく、自発の助動詞(無意識に置いてしまう)。 用例の出典:川柳評万句合(せんりゅうひょうまんくあわせ) 柄井川柳編。宝暦7年(1757)。当時行われていた雑俳の前句付の点者(選者)の一人として、市民から句を募り、入選句を刷物にした。この中からさらに秀句を抜きだして『俳風柳多留』が編まれた。 人物:柄井川柳(からいせんりゅう) 江戸中期の川柳の点者。1718〜90。名は正通。通称、八右衛門。江戸浅草竜宝寺門前町の名主。雑俳の点者となり万句合を始めたのは宝暦7年、40歳の時で、以後前句付の点者として評判をとり、その選句を川柳点、単に川柳と呼ぶ。明和2年(1765)、「川柳評万句合」の中から佳句を抜いた「柳多留」が出版され、生前に23編に及んでいる。
・気が重い(きがおもい) ものごとをするのに気が進まない様子。億劫(おっくう)な様子。 例:「気が重い任務」
−−−−−−−きか(か)(#kika2)−−−−−−−
・気が勝つ(きがかつ) 気性が強い。勝ち気である。 例:「気の勝った娘」
・気が軽い(きがかるい) 容易にももごとに打ち解けて振る舞うことができること。 類:●気が置けない●気さくである
・木が可愛けりゃ枝まで可愛い(きがかわいけりゃえだまでかわいい) 愛するあまり、相手の付属物まで愛してしまうということ。 類:●愛屋烏に及ぶ●屋烏の愛 反:■坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
・気が利いて間が抜ける(きがきいてまがぬける)[=利き過ぎて〜] 気を利かせ過ぎて却って手抜かりがあること。また、機敏でありながら不注意なところがあること。
・気が利く(きがきく) 1.細かなところまでよく気が付くこと。心が行きとどくこと。 類:●気転が利く●気が付く 用例:甲陽軍鑑−品一四「機のきいたる男は」 2.洒落(しゃれ)ている。 類:●粋である●乙(おつ)である 用例:滑・膝栗毛−初「『あのかかアは江戸ものよ』『どふりで気がきいてらア』」
・気が気でない(きがきでない) 酷く気に掛かって、心が落ち着かない状態。
・気が腐る(きがくさる)[=飢(う)える] 思うようにならないで心が晴れない。嫌になる。腐る。
・気が暗くなる(きがくらくなる) 1.気が滅入ること。沈んだ気持ちになること。 類:●陰気になる 2.気が遠くなること。ぼんやりとなってくること。または、うっとりすること。 用例:浄・生玉心中−中「いとしや漸々に気がくらふならんす」 用例の出典:生玉心中(いくだましんじゅう) 浄瑠璃。世話物。3巻。近松門左衛門。正徳5年(1715)。大坂竹本座初演。大坂の茶碗商一つ屋五兵衛の子嘉平次と伏見坂町柏屋の遊女おさがとが、生玉神社の境内で心中した事件を脚色したもの。
−−−−−−−きか(さ)(#kika3)−−−−−−−
・気が差す(きがさす) なんとなく気になる。後ろめたい感じになる。 類:●気が咎める
・気が沈む(きがしずむ) 心が晴れない。気分が塞(ふさ)ぐ。 類:●気が腐る
・気が知れない(きがしれない) 相手の気持ちが分からない。訳が分からない。 用例:洒・風俗七遊談−上「一癖ありて気のしれぬ者なり」 用例の出典:風俗七遊談(ふうぞくしちゆうだん?) 洒落本。3巻。鈍苦斎。宝暦6年(1756)。・・・詳細調査中。
・気が進まない(きがすすまない) 何かの刺激を受けても、気が惹(ひ)かれない。 類:●気乗りがしない●気がない
・気が済む(きがすむ) 気持ちが治(おさ)まる。気分が落ち着く。満足する。
・気が急く(きがせく) ものごとを早く実行したくて心が落ち着かない様子。心が忙(せわ)しい。気が焦(あせ)る。
−−−−−−−きか(た)(#kika4)−−−−−−−
・木が倒れると、皆斧を持って駆け付ける(きがたおれると、みなおのをもってかけつける) 誰かが成功すると、労せずその利益に与(あずか)ろうとする者が沢山寄り集まってくる。 類:●低き所に水溜まる●窪い所に水溜まる●百川海に朝す
・気が立つ(きがたつ) 心が苛(いら)立つ。興奮する。 用例:洒・風流仙婦伝「ふみつけにされ、外聞きもあしければ、気がたつゆへに」 用例の出典:風流仙婦伝(ふうりゅうせんぷでん?) 洒落本。・・・調査中。
・気が小さい(きがちいさい) 小さなことを気にする。小心である。 反:■気が大きい
・気が違う(きがちがう) 気が狂う。狂気になる。 類:●気が上(のぼ)る
・気が散る(きがちる) 気持ちが一つに集中しないで、色々なことに心が惹かれる状態。注意が散漫になること。 類:●注意散漫 例:「騒々しくて気が散る」
・気が尽きる(きがつきる) 1.気力、根気がなくなる。精根が尽きる。元気がなくなる。2.気分がくさくさする。退屈する。 用例:浮・好色一代女‐六「奈良苧も気がつきます。客はなし喰ねばひだるし」 3.後に打ち消しの語を伴って、気疲れがする。気詰まりがする。 用例:浮・好色一代女−五「上京の歴々にも気(キ)のつきぬやつといわれて」
・気が付く(きがつく) 1.考えが及ぶ。気付く。勘付く。 用例:狂言記・宗論「いやまことによい所へ気がついた」 2.細かなところに注意が行き渡る。配慮が行き届く。 類:●気が利く●気が回る 用例:浮・好色一代男−六「気のつかぬ仁左衛門と声高にののしり」 3.息を吹きかえす。正気に返る。 例:「気が付いたら病院のベッドだった」 4.元気が出る。
・気が遠くなる(きがとおくなる) 意識を失なう。正気を失なう。 例:「気が遠くなるような遠大な 構想」
・気が通る(きがとおる) ものごとの事情を良く承知していて、心が行き届いていること。また、捌(さば)けていること。 類:●気が利く●粋である
・気が咎める(きがとがめる) 心の中に疾(やま)しさを感じる。何となく気後れがする。 類:●気が差す●気が引ける
−−−−−−−きか(な)(#kika5)−−−−−−−
・聞かない(きかない)[=ぬ] 1.人から言われたことに従わない。頑固である。2.承知しない。許さない。 用例:人情・春色梅児誉美−三「今の所へ行くときかないヨ」
・気がない(きがない) 関心がない。興味を感じない。気持ちが乗らない。 類:●気が進まない 用例:咄・鹿の子餅−唐様「四の五のとちいさい目は気(キ)がごんせぬ」 例:「気のない返事」
・気が長い(きがながい) 気持ちがのんびりしていて、せかせかしない。気長である。
・聞かぬが花(きかぬがはな) 実際に真相を聞いてしまうと想像していたほどではないから、期待している間が一番良い。 類:●見ぬが花
・気が抜ける(きがぬける) 1.魂が体から抜ける。ぼんやりする。また、正気を失う。 用例:浄・大内裏大友真鳥−四「ハテとでも無い、きつう吾御寮は気(キ)が抜(ヌ)けた」 2.腰を折られてやる気がなくなる。拍子抜けがする。3.本来の香り、匂い、味などがなくなる。多く、酒類や発砲飲料に使われる。 用例の出典:大内裏大友真鳥(だいだいりおおとものまとり) 浄瑠璃。竹田出雲(初世)。享保10年(1725)上演。時代物浮世草紙としては、江島其磧の作。・・・詳細調査中。 人物:江島其磧(えじまきせき) 江戸中期の浮世草子作者。京都生まれ。1667〜1736.本名、茂知。通称、市郎左衛門。西鶴の作風を真似た役者評判記や浮世草子を京都八文字屋から、その主人、八文字屋自笑の名で発表。著「傾城色三味線」「傾城禁短気」「世間子息気質」など。
・気が上る(きがのぼる) 1.逆上(のぼ)せる。上気する。 用例:落窪−一「むげにはづかしとおもひたりつるに、きののぼりたらん」 2.精神の安定を失う。正気でなくなる。 類:●気が狂う●気が違う 用例:浄・三荘太夫五人嬢−誓文「手酷う是までぼっ詰められ、気(キ)が上(ノボ)ってのたわ言な」 用例の出典:三荘太夫五人嬢(さんしょうだいゆうごにんむすめ) 浄瑠璃。竹田出雲。享保12年(1727)。厨子王を主人公とする家再興のモチーフ(厨子王伝説)。
・気が乗らない(きがのらない) 気が進まないこと。 類:●気乗り薄●乗り気薄
−−−−−−−きか(は)(#kika6)−−−−−−−
・気が早い(きがはやい) 性急である。気短である。 類:●せっかち
・気が張る(きがはる) 1.心が緊張する。気持ちにゆとりがない。精神が興奮する。 類:●気張る 例:「気が張っていれば風邪などひかぬ」 2.派手に振る舞う。 類:●見栄を張る●気張る
・気が引ける(きがひける) 身に疾(やま)しい感じがして気後れする。遠慮される。 類:●気が咎める 用例:洒・多佳余宇辞「気の引けて居るから、意地わるく、こりゃアしみに成ろうす」 用例の出典:多佳余宇辞(たかようじ) 洒落本。・・・調査中。
・気が塞ぐ(きがふさぐ) 気分が重く晴れない。憂鬱(ゆううつ)である。
・気が触れる(きがふれる) 1.気が狂う。狂人になる。 用例:滑・膝栗毛−四「あのべらぼうめはどふでも気がふれてゐると見へる」 2.心が動く。気の迷いが起こる。 用例:浄・冥途の飛脚−中「さもしい金に気がふれたみせ女郎のあさましさ」 用例の出典:冥途の飛脚(めいどのひきゃく) 浄瑠璃。世話物。3段。近松門左衛門。正徳元年(1711)大坂竹本座初演。大坂の飛脚問屋亀屋の養子忠兵衛は遊女梅川になじみ、友人八右衛門と張り合うために封印切りの大罪を犯し、梅川とともに郷里新口(にのくち)村に逃げるが捕らえられる。「梅川忠兵衛」・「梅忠」などともいう。
−−−−−−−きか(ま)(#kika7)−−−−−−−
・気が回る(きがまわる) 1.色々と推測する。僻(ひが)んで悪く考える。 類:●邪推する 2.細かなところに気が付く。注意が行き届く。 類:●気が利く●気が通る
・気が短い(きがみじかい) 短気である。 類:●せっかち
・気が滅入る(きがめいる) 考え込んで憂鬱(ゆううつ)な気分になる。 類:●意気消沈 例:「暗い世相に気が滅入る」
・気が揉める(きがもめる) 心配で気持ちが落ち着かない。もどかしくいらいらする。 類:●やきもきする 用例:古今集遠鏡−五「来ぬ人がもしや来もせうかと待たれてきがもめる」 用例の出典:古今和歌集遠鏡(こきんしゅうとおかがみ) 「古今集」の注釈書。6巻。本居宣長著。寛政6年(1794)成立、同9年(1797)および文化13年(1816)刊。真名序、長歌を除いて口語訳したもの。「古今集遠鏡」。 人物:本居宣長(もとおりのりなが) 江戸中期の国学者、語学者。伊勢国(三重県)の人。1730〜1801。通称、弥四郎。号は鈴屋(すずのや)。初め医学を修業したが、契沖の書に啓発されて古典の学に志し、「源氏物語」などを研究した。賀茂真淵に会ってから古道研究の素志を固め、「古事記」の研究に着手し、「古事記伝」を完成した。彼の家学は、子春庭、養子大平に継承された。著は他に「源氏物語玉の小櫛」「古今集遠鏡」「てにをは紐鏡」「詞の玉緒」「玉勝間」「うひ山ぶみ」など。 蛇足:命日は長月(9月)29日。西暦では11月5日。
−−−−−−−きか(や)(#kika8)−−−−−−−
・気が良い(きがよい) = 気が好(い)い
−−−−−−−きか(ら)(#kika9)−−−−−−−
・木から落ちた猿(きからおちたさる)[=木より〜] 頼みとする拠り所や地位などを失って、どうして良いか分からない状態の喩え。為す術(すべ)のない、お手上げの状態の喩え。 類:●木を離れた猿●水を離れた魚●陸へ上った河童●頼みの綱も切れ果てる●お先真っ暗 反:■水を得た魚のよう
−−−−−−−きか(わ)(#kikawa)−−−−−−−
・気が悪い(きがわるい) 1.気分が悪い。快くない。 用例:浄・天神記−三「なふお医者様、我が持病にてひとりねすればきがわるし」 2.気味が悪い。 用例:浄・道中亀山噺−二「イエイエ此化物はずんど正道な、爾な気の悪い化物じゃ無い」 3.気が重い。憂鬱(ゆううつ)である。 用例:洒・卉閣秘言「それでわしゃ末の事おもふと、とんときがわるいわいな」 4.意地が悪い。 用例:浄・夏祭浪花鑑−一「ああこれ佐賀右気の悪い。貴様が取り成言うてくれねば仕廻いが付かぬ」 5.欲望をかきたてられるような情景や物を見たり聞いたりして、その気分になりそうである。 用例:雑俳・柳籠裏−正月一五日「気のわるひものあふのけにねた女」 用例:伎・櫓太鼓鳴音吉原−二幕「『褒美の金は望み次第』『そりゃあ気の悪い話だな』」 用例の出典①:天神記(てんじんき) 浄瑠璃。近松門左衛門。正徳4年(1714)。左大臣藤原時平の為に筑紫太宰府に流されてしまった菅原道真が、再び都に上り時平を征伐する. 扇原, 多田町にある史跡、「扇原」にまつわる演目。「菅原伝授手習鑑」に影響を与えた。 用例の出典②:道中亀山噺(どうちゅうかめやまばなし) 浄瑠璃。近松半二。安永7年(1778)。・・・調査中。 用例の出典③:卉閣秘言(しょうかくひげん) 洒落本。・・・調査中。 用例の出典④:柳籠裏(やなぎかごうら?) 雑俳。3編。明和5年(1768)。柄井川柳。川柳の選句集。 用例の出典⑤:櫓太鼓鳴音吉原(やぐらだいこおともよしわら) 歌舞伎。河竹黙阿弥。慶応2年(1866)、市村座。通称「明石志賀之助と傾城簿雲」・・・詳細調査中。
−−−−−−−きき(#kiki)−−−−−−−
・危機一髪(ききいっぱつ) 《四熟》 髪の毛一本ほどの違いで、極めて危険な状態になりそうなこと。ひとつ間違えば大変な危険に陥りそうなこと。 例:「危機一髪のところで命拾いした」 出典:韓愈「与孟尚書書」
・奇奇怪怪(ききかいかい) 《四熟》 「奇怪」の意味を強めた言葉。非常に奇怪なこと。 類:●奇絶怪絶 用例:中華若木詩抄−下「奇々怪々として」
・聞き齧る(ききかじる) ものごとの一部分や、上辺(うわべ)だけを聞き知ること。表面的な知識しか得ていないこと。 用例:洒・当世気どり草「女童も自然と古人の姓名をききかぢる」 用例の出典:当世気とり草(とうせいきどりぐさ) 洒落本。金金先生著。安永2年(1773)。「金金先生」は偽名か?・・・詳細調査中。
・雉子の頓使い(きぎしのひたづかい) 行ったきり帰って来ない使者のこと。 類:●雉の頓使い 故事:天つ神の命を受けて、日本の国土を平定するために天から地上に降った天若日子(あめのわかひこ)が、8年経っても復命しなかったので、雉子を遣(つか)わして事情を問わせたところ、天若日子はこれを射殺してしまった。 ★一説に、使者をやる時に副使を付けないで単独でやるのを忌んで言った言葉<国語大辞典(小)>
・雉子は寒中山鳥は木の芽頃(きぎすはかんちゅうやまどりはきのめごろ) 雉子(きじ)が美味しいのは寒いうちであり、山鳥が美味しいのは春に木の芽の出た頃であるということ。 ★岡山県のことわざ。
・聞き捨てならない(ききずてならない) 聞き流すことができないという意味で、聞いた内容が自分に関わることなため、それを無視する訳にはいかないということ。
・聞き流す(ききながす) 聞いても心に留めないでおく。聞きっ放しにする。 類:●聞き捨て 例:「人事(ひとごと)だと思って聞き流す」
・忌諱に触れる(ききにふれる) 目上の人が非常に忌み嫌っていることを言ったり行なったりして、その人の機嫌を損なうこと。
・騏驥にも躓きあり(ききにもつまずきあり) よく走る馬でも時には躓(つまず)くことがあるという意味で、どんな優れた者でも偶(たま)には失敗することがあるということ。
・騏驥の跼躅は駑馬の安歩に如かず(ききのきょくちょくはどばのあんぽにしかず) 優れて足の速い馬でもぐずぐずしていれば、つまらない馬が静かに歩き続けるのに及ばない。どんなに優れた人でも、怠けていれば、凡庸な人の努力に劣るというたとえ。 類:●駑馬十駕(どばじゅうが) 出典:「史記−淮陰候列伝」
・聞き耳潰す(ききみみをつぶす) わざと聞かない振りをすること。
・聞き耳遠し(ききみみとおし) 聞いても実感が湧かない状態。
・聞き耳を立てる(ききみみをたてる)[=欹(そばだ)てる] 注意を集中して聞こうとすること。 類:●耳を澄ます
・危急存亡(ききゅうそんぼう・ぞんぼう) 危難が迫って、存続するか、それとも滅びてしまうかという瀬戸際。生きるか死ぬかの境。 例:「危急存亡の秋(とき)」 出典:諸葛亮「前出師表(ぜんすいしのひょう)」「今天下三分、益州疲弊、此誠危急存亡之秋也」 出典:出師表(すいしのひょう) 中国三国。蜀漢。諸葛亮。建興5年(227)。前後2編。先主劉備の死後、出陣するにあたって後主・劉禅(りゅうぜん)に上奏した出師文。憂国の至情に溢れたもの。これを読んで涙しない者はいないとまで言われた。後の岳飛がこれを書き写したことでも有名。後編の「後出師表」は後世の贋作という説もある。
・枳棘は鸞鳳の棲む所に非ず(ききょくはらんぽうのすむところにあらず) 枳殻(からたち)や茨(いばら)の中には、鸞(らん)や鳳(おおとり)は住まない。立派な人は低い地位にいてはならないということ。賢人は居る場所を選ぶということの喩え。 類:●大魚は小池に棲まず●冠履は同じく蔵まず 出典:「晋書−循吏・仇覧伝」「枳棘非鸞鳳所棲、百里豈大賢之路」 ★「鸞」も「鳳」も中国の想像上の鳥で、「鸞」は、五色の羽と五色の声の鳥。「鳳」は、瑞鳥、霊鳥とされている鳥。
−−−−−−−きく(#kiku)−−−−−−−
・木草も物言う(きくさもものいう) ものを言うはずのない木や草が喋る。秘密が漏れたり、世間に知られるはずのないことが噂になって流れたりすることの喩え。また、隠し事はできないものだということ。
・規矩準縄(きくじゅんじょう) 《四熟》 物の標準となるもの。法則、手本、決まり、などの意味で使う。 類:●規矩縄墨●規則縄墨 出典:「孟子−離婁・上」「聖人既竭目力焉、継之以規矩準縄」 ★「規」は円を描く器、ぶんまわし。「矩」は方を描く器、さしがね。「準」は平をはかる器、みずもり。「縄」は直をはかる器、すみなわ<国語大辞典(小)>
・聞くと見るとは大違い(きくとみるとはおおちがい) 人から聞いたのと、自分の目で実際に見たのとでは大きな相違がある。多く、実際のものが評判倒れであったときに言う。 類:●聞いて極楽見て地獄●聞いて千金見て一毛
・菊の水(きくのみず) 酒のこと。 類:●菊水●亡憂の物 参考:「菊水」は、中国、河南省内郷県にある白河の支流。この川の崖の上に咲く菊から滴(したた)り落ちた露を飲んだ者は長生きしたと伝えられる。
・聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥(きくはいっときのはじ、きかぬはいっしょうのはじ)[=一旦の〜・当座の〜]・[=末代の恥] 知らない事を聞くのは、そのときは恥ずかしい思いをするが、聞かずに知らないままに過ごせば、生涯恥ずかしい思いをし続けなければならないということ。 類:●問うは一旦の恥、問わぬは末代の恥●知らざるは人に問え●下問を恥じず
・聞く耳持たぬ(きくみみもたぬ) 他人の言うことを聞くつもりがない。相手の発言を封じる言葉として用いる。
−−−−−−−きけ(#kike)−−−−−−−
・聞けば聞腹(きけばききばら) 聞かなければそのままで済むことも、聞けば腹立たしくなるということ。
・聞けば気の毒見れば目の毒(きけばぉのどくみればめのどく) 聞いたり見たりすれば欲望が起こってしまい、心身や金銭への害になるということ。
・利け者(きけもの)・利き者 腕利きの者。優れた働きをする人。手腕家で幅を利かせている人。 類:●切れ者 用例:社会百面相「土佐村さんは自由党でも利け者の方だから」
−−−−−−−きこ(#kiko)−−−−−−−
・鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう) 《四熟》 浮かばれない霊魂の泣き声がするということ。鬼気迫(せま)っていて、物凄い様子である。
・気心が知れた(きごころがしれた) 相手の性格や本性が分かっている間柄。信頼できる相手。 類:●気が置けない 例:「気心が知れたやつ」
・ぎこちない・ぎごちない まだ十分に慣れていないためや、心的圧迫があるために、動作や表現が滑(なめ)らかでない。しっくりしない。 例:「手元がぎこちない」「新品の背広をぎこちなく着ている」 ★「ぎこつない」の変化した語<国語大辞典(小)>
・騎虎の勢い(きこのいきおい) 虎に乗った者は走っている途中で降りることができないということ。ものごとの勢いが盛んになって、行き掛かり上、中止できなくなったり、後へ引けなくなったりすること。 出典:「隋書−独孤皇后紀」 出典:隋書(ずいしょ) 中国の史書。85巻。唐の太宗の時、魏徴らの奉勅撰。24史の一つ。貞観10年(636)帝紀五巻・列伝50巻が成立。のち経籍志など10志30巻が編入された。隋代および南北朝後半の制度・経済・学芸などを知る重要な史料となっている。
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