【いて】~【いも】
・井手が上がる(いでがあがる) 稼ぎが上がる。商売などが巧くいく。 用例:浮・好色万金丹−一「文日をかかさず勤める女郎がなければ、いでのあがる事もなく」
・居て食えば山も空し(いてくえばやまもむなし) 山ほどある財産も、何もしないで怠惰に生活していればすぐになくなる。 類:●坐して食えば山も空し
・居ても立っても居られない(いてもたってもいられない) 心配、同情、喜びなどの気持ちが強くなって、坐っても立っても落ち着かない。
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・厭うに栄ゆ(いとうにはゆ) 嫌だと思えば思うほど却ってそのものごとが盛んになる。 用例:後撰−六〇九「あやしくもいとふにはゆる心かな」
・愛し子は木尻に置け(いとしこはきじりにおけ) 「木尻」は、炉ばたで最下位の者が座る席のこと。可愛い子は、甘やかさずに育てよということ。 類:●親の甘茶が毒になる●可愛い子には旅をさせよ ★佐渡では囲炉裏の木尻に坐らせると出世するというので、愛児のことを「木尻子」と呼ぶという。
・糸の切れた凧のよう(いとのきれたたこのよう) 1.操作できずにどこへ飛んでいくか分からない凧のことで、どこをほっつき歩いているのか分からない者などの喩え。 類:●根無し草●極楽蜻蛉 ★英語「a threadless kite」の和訳からか。 2.目的を持たない者の喩え。
・井戸の端の童(いどのはたのわらんべ) 井戸端で遊ぶ幼児が危険であるところから、危険な状態のこと。
・井戸端会議(いどばたかいぎ) 共同井戸の周りで水汲みや洗濯などをしながら、女たちが噂話や世間話に花を咲かせることを揶揄して言った言葉。また、主婦たちが家事の合間に集まってするお喋りのこと。
・暇が出る(いとまがでる) 休暇が出る。解雇される。離縁される。
・暇を乞う(いとまをこう)[=申す] 1.休暇を願い出る。暇を貰う。 用例:竹取「おほやけには〈略〉とていとま申て」 2.人に別れを告げる。別れる。勤めを辞(や)める。 用例:宇津保−俊蔭「三人の人にいとまをこひて」 類:●暇を取る
・暇を取る(いとまをとる) 1.勤めを辞(や)める。願い出て主従の関係を絶つ。 類:●暇を貰う 2.夫や主人に願い出て、夫婦や主従の関係を解消する。離婚する。
・糸目を付ける(いとめをつける) ものごとに限度を決める、制限を加える。多く打消しの形で、金品を思いのままに使うことに使う。 例:「金に糸目を付けない」 ★糸目[=凧(たこ)の釣り合いをとるために、表面につける数本の糸]をつけてない凧が風まかせに飛ぶことにたとえて<大辞林(三)> ★一説に「いとめ」は「厭(いと)い目」の意とも<国語大辞典(小)>
・糸を治めんとして之を乱す(いとをおさめんとしてこれをみだす) 1.縺(もつ)れた糸を解(ほぐ)そうとして、却(かえ)って余計に縺れさせてしまう。2.人民を治めるのに徳を以ってではなく、動乱を以ってすることの喩え。人民を武力で統治することはできないということ。 出典:「春秋左氏伝−隠公四年」「衆中曰、〈略〉臣聞以徳和民、不聞以乱。以乱、猶治絲而[林/分]之」
・糸を引く(いとをひく) 糸で操り人形を動かすように、陰で人を操る。裏で指図をして人を思うように動かす。 用例:浄・神霊矢口渡−一「合戦に及ぶ様に糸を引かせ」
・猗頓の富(いとんのとみ) 莫大な富。 出典:「史記−貨殖伝」などにみえる猗頓の話。 ★猗頓(いとん) 中国春秋時代、または戦国時代の大富豪。
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・居直る(いなおる) 1.座り直す。居住まいを正す。 用例:枕−222「扇してかくし、ゐなほり、ひさしく待つもくるしく」 2.急に態度を変える。多く、自分の立場が不利になったり、欠点や弱点を突かれたりしたときなど、相手に対して逆に強い態度や威(おど)すような態度に出る。 類:●ケツを捲る●尻を捲る 用例:愚管抄−三「心うく、くちをしきことに侍るものかなと申させ給ひける時、ゐなをらせ給ひて」 3.仮りの地位から正式の地位に改まる。 例:「番頭が主人に居直る」 4.決まった場所に身を落ち着ける。 用例:日葡辞書「イナヲル」
・田舎学問(いなかがくもん) 《四熟》 時勢の進歩に遅れた古くさい学問。
・田舎者(いなかもの) 1.田舎の人。田舎育ちの人。田舎から出てきた人。 類:●田舎人●田夫●いなかもん 2.粗野で教養のない人を嘲って言う言葉。または、自分自身のことを遜(へりくだ)って言う言葉。 類:●田夫野人●いなかもん ★「いなか」は歴史的仮名遣いだと「ゐなか」で、その語源は「田居中(たゐなか)」で、はないかと言われている。 ★「田舎」は、当て字で、農地と居宅を意味する中国語を借りたもの。
・田舎者の国自慢(いなかもののくにじまん) 田舎者は、よその土地のことをあまり見たことがないので、自分の生まれた故郷が最高だと自慢しがちだということ。 類:●夜郎自大●井の中の蛙●遼東の豕(いのこ)
・鯔背(いなせ) 粋(いき)で男気があり、威勢が良い若者の様子。また、その容姿や気風(きっぷ)。若い男性に言う。 用例:清元・忍岡恋曲者「まだ新宅の見世前を、そそるいなせの地廻り衆」 ★一説に、江戸日本橋魚河岸(うおがし)の若者が髪を「鯔背銀杏」に結っていたところから<広辞苑第四版(岩)> 参考:鯔背銀杏(いなせいちょう) 江戸時代、日本橋の魚河岸の若者の結った髷(まげ)で、鯔(いな=ボラ)の背に似た形のもの。
・稲荷の鳥居を越える(いなりのとりいをこえる) 1.狐が年功を経るという意味で、年功を経ること。長年経験を積むこと。 俗説:狐は稲荷の鳥居を多く越すほど格が上がるという。 2.年を取って狡(ずる)くなり人をよく騙(だま)す。
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・意に介さず(いにかいさず) 少々の事では動ぜず気にもしないという。詰まらない雑音など黙殺して悠然としているような様子。 類:●意とせず●馬耳東風
・以肉去蟻(いにくきょぎ) 《四熟》 蟻の好きな肉で蟻を追い払おうとすると、却(かえ)って無数の蟻が集まってくる。方法を間違えると、逆効果を招(まね)くということ。 類:●以魚駆蠅 出典:「韓非子−外儲説・左下」「人莫能左画方而右画円也。以肉去蟻、蟻愈多、以魚駆蠅、蠅愈至」
・井に坐して天を観る(いにざしててんをみる) 1.井戸の底に座って天を見上げても、ごく狭(せま)い範囲しか目に入らない。見識や見聞(けんぶん)が狭いことの喩え。2.己の狭い見識で、徒(いたずら)に他人を謗(そし)ることの喩え。 類:●井の中の蛙大海を知らず●井中に星を見る●葦の髄から天上を覗く●管を以って天を窺う●管中豹を窺う 出典:韓愈「原道」「坐井而観天、曰天小者、非天小也」 老子の儒家批判を見当外れであるとして述べた文書の中にある言葉。
・古の学者は己れの為にし今の学者は人の為にす(いにしえのがくしゃはおのれのためにしいまのがくしゃはひとのためにす) 昔の学者は自己の修養のために学問したが、当世の学者は世間の名声を得たいがために学問をしている。 出典:「論語−憲問」
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・犬一代に狸一匹(いぬいちだいにたぬきいっぴき) 狸を獲(と)るような大きな機会は一生の内に一度あるかないかのことである。好機は滅多にやってこないものだということ。
・犬々三年人一代(いぬいぬさんねんひといちだい)[=一生] 初めは犬畜生と軽蔑されても、我慢して過ごし、残りの一生を不自由なく送る者もいる。節約を薦めることの喩え。 ★逆の意の「人々三年犬一代」を添えても言う<国語大辞典(小)>
・犬打つ童まで(いぬうつわらべまで) 犬を追い掛け回す三歳の児童でも知っていることだ。誰でも知っていることだということ。
・犬が西向きゃ尾は東(いぬがにしむきゃおはひがし) 疑う余地もないほど、誰が考えても当たり前なこと、分かり切ったことである。それが自明の理であることの喩え。 類:●蛸に骨無し水母に目無し●雨の降る日は天気が悪い●雉(ぎし)の雌鳥(めんどり)ゃ女鳥(おんなどり)●鶏(にわとり)はどれも裸足(はだし)●唐辛子(とがらし)辛くて砂糖は甘い●親父(おやじ)男でおっかあ女●親父ゃワシより歳が上●兄は弟より年ゃ上だ●指を切れば血が出る
・犬が星をまもる(いぬがほしをまもる)[=見る] 高望みをする。物欲しそうにする。
・犬死に(いぬじに) 何の役にも立たない死に方。 類:●徒死(とし)●無駄死に 用例:狂・文山立「かうして死ぬるは犬死ぢやによつて」 ★接頭語の「犬」について ①「燕石雑志−巻一」「似て非なるものを犬といふ。これ本邦の故実か。〔いぬたで〕、〔いぬほうづき〕、〔いぬわらび〕、〔いぬよもぎ〕、〔いぬなづな〕、〔いぬとくさ〕、〔いぬそらまめ〕、〔いぬやへなり〕等、毛挙(かぞへあぐる)に遑(いとま)あらず。宗鑑が犬筑波集亦このこゝろにて名づくといへり」 ②「似て非なるもの」から転じて、卑しめ軽んじて「くだらないもの、無駄なもの」の意として用いた表現=「犬医者」、「犬侍」、「犬死」など。 参考の出典:燕石雑志(えんせきざっし) 江戸後期の随筆。滝沢解(馬琴)。文化6年(1809)成立、8年(1811)刊。5巻。和漢の故事から、市井の話まで様々な主題について述べたもの。
・狗猛ければ則ち酒酸くして售れず(いぬたけければすなわちさけすくしてうれず) 酒屋の飼い犬が剛猛であると、客が寄り付かないために酒が売れ残り、腐って酸っぱくなってしまう。そのように、王の傍(そば)に姦臣がいると賢良の者が寄り付かず、やがて国は衰えてしまうということ。 出典:「韓非子−外儲説・右上」「狗猛則酒何故而不售。曰、人畏焉」
・犬っ腹(いぬっぱら) 次々と子供を産む女性を、お産が軽く安産が多い犬に喩えて言ったもの。 ★侮蔑表現なので、使用には注意のこと。
・犬と猿(いぬとさる)
・犬に小判(いぬにこばん)[=懸鯛(かけだい)] 価値が分からないこと、また、意味が通じないこと。 類:●猫に小判●豚に真珠
・犬に肴の番(いぬにさかなのばん)[=魚の番] 人選を誤まること。災いの元になるものを助長すること。 類:●盗人に鍵を預く●狐に鶏小屋の番をさせる
・犬になるとも大所の犬になれ(いぬになるともおおどころのいぬになれ) どうせなるなら、大きな家の飼い犬になれということ。また、ものごとをするには、どんなつまらないことでも、相手や主人を選ばなくてはならないということ。 類:●犬になっても大家(たいか)の犬
・犬にも食わせず棚にも置かず(いぬにもくわせずたなにもおかず) 犬にも与えず、かといって棚に飾るわけでもない。自分の手元に仕舞い込んで、結局は駄目にしてしまうこと。吝(けち)な人がやってしまいがちな行動の喩え。 類:●宝の持ち腐れ
・犬にも知らすな(いぬにもしらすな) 絶対に秘密にしろということ。
・犬に論語(いぬにろんご)[=念仏] どんな道理を説き聞かせても効果がなく、無駄である。 類:●馬の耳に念仏●豚に念仏猫に経
・犬猫にも馴染めば思う(いぬねこにもなじめばおもう) 犬や猫も、こちらから可愛がってやれば、良く懐(なつ)いて主人のことを思うものである。取るに足らない者でも、こちらが目を掛けてやれば、恩に着るものだという喩え。 類:●犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ●飼い養う犬も主を知る
・犬の一年は三日(いぬのいちねんはみっか) 仔犬は三日ほどで、ヒトの一歳児くらいの行動をするようになる。仔犬の成長は早いということ。 類:●猫は三月を一年(ひととせ)とす
・犬の川端歩き(いぬのかわばたあるき)[=犬の川端] 1.何かにありつこうとしてうろつくこと。幸運を得ようとして彷徨(さまよ)うこと。2.見物や買物などで外出して、途中で飲食しないですごすこと。 類:●犬川 用例:伎・富士額男女繁山−三幕「いつでも犬の川端だが、恩を知らねえ畜生に、如何に酒が呑みてえとッて、尻尾を振って行くものか」 用例の出典:富士額男女繁山(ふじびたいつくばのしげやま) 歌舞伎。河竹木阿弥。明治10年(1877)。通称「女書生」。頭の良い娘(シゲ)を持った父親は、この娘にどうにか学で生計を立てさせたいと思った。娘を男装させて東京へ、そして書生となった。
・犬の糞(いぬのくそ) 1.汚いもの、軽蔑すべきもの、多くあって、手に負えないものなど。2.一般的に、「伊勢屋稲荷に犬の糞」など、単に多くあるもののこと。ありふれたものの喩え。 例:「(苗字で)鈴木佐藤は犬の糞」 蛇足:姓について、中国では「張・王・李・趙・劉はどこにでもある」などと言われる。
・犬の糞で敵を討つ(いぬのくそでかたきをうつ)[=取る] 卑劣な手段で復讐する。
・犬の糞に手裏剣(いぬのくそにしゅりけん) 下らないことに貴重なものを使うことの喩え。
・犬の糞も焼味噌も一つ(いぬのくそもやきみそもひとつ) →糞も味噌も一緒
・犬の手も人の手にしたい(いぬのてもひとのてにしたい) 忙しい時は、誰でも好いから手伝いが欲しいものだ。 類:●猫の手も借りたい
・犬の遠吠え(いぬのとおぼえ)
・犬の蚤の噛みあて(いぬののみのかみあて)[=食いあて] 犬が小さな蚤を噛み当てるのは簡単ではない。滅多(めった)にないこと。非常に稀(まれ)なこと。 類:●猫の歯に蚤●まぐれ当たり●当てずっぽう
・犬の前の淅米(いぬのまえのかしごめ) 不適当な者に番をさせることの喩え。人選を誤まること。 類:●犬に肴の番●盗人に鍵を預ける ★「淅米」は、水に浸した白米のこと。
・犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ(いぬはみっかかえばさんねんおんをわすれぬ)[=養えば〜] 犬でさえ三日飼えば、飼主に懐(なつ)いて恩を忘れない。まして、人間は恩を忘れないのが当然である。 反:■猫は三年の恩を三日で忘れる
・犬骨折って鷹に取られる(いぬほねおってたかにとられる) 鷹狩りで犬が折角(せっかく)骨折って追い出した獲物を鷹に取られるというところから、苦労してようやく得たものを、他に奪われてしまうこと。
・犬も歩けば棒に当たる(いぬもあるけばぼうにあたる)
・犬も食わぬ(いぬもくわぬ) 非常に嫌がられること、人から全く相手にされないこと。
・犬も朋輩鷹も朋輩(いぬもほうばいたかもほうばい) 狩猟用の犬と鷹とは、その受ける待遇は違っていても、同じ主人を持つ仲間であるということから、役目や地位に違いがあっても、同じ主人を持てば同僚であることに変わりはないということ。
・犬を悦ばす(いぬをよろこばす) 飲食物を吐き戻す。反吐(へど)を吐く。 類:●犬悦(けんえつ)する●小間物屋を開く
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・いの一番(いのいちばん) 「いろは」で順番を付けたもののうちの第一番目という意味から、真っ先。一番最初。 例:「いの一番に籤を引く」
・豕を抱いて臭きを知らず(いのこをだいてくさきをしらず) 自分の欠点や醜(みにく)さは、自分では気付き難いものである。人のことは良く分かるが、自分のことは分からないものだということ。
・豕を憎みて臭さを愛す(いのこをにくみてくささをあいす) ものごとの大元を憎んでいるのに、そこから派生することには寛大であることの喩え。
・猪の手負い(いのししのておい) 非常に気が立っていて危険であることの喩え。 ★雄略天皇が葛城山で狩猟をした時の歌「やすみしし 我が大君の遊ばしし 猪(しし)の病猪(やみしし)の 唸(うた)き畏(かしこ)み 我が逃げ登りし 在丘(ありを)の榛(はり)の木の枝」と関わりがあるか。
・猪武者(いのししむしゃ) 前後の事情も考えないで我武者羅に突進するだけの武士のこと。向こう見ずな武士。また、転じて、そのような無鉄砲な人。
・猪も七代目には豕になる(いのししもななだいめにはいのこになる) 変わりようがないように思えても、長い年月のうちには変化するものだということ。 ★「豕」は、豚のこと。
・命あっての物種(いのちあってのものだね)
・命から二番目(いのちからにばんめ)[=より二番目] 命の次に大事なものという意味。非常に大切にしているもの。
・命知らず(いのちしらず) 1.命の危険を顧みないで、無鉄砲な振る舞いをすること。また、その人。 用例:浄・津国女夫池−一「命しらずの狼藉者」 2.物が丈夫で長持ちすること。 用例:浮・日本永代蔵−一「此の手紬の碁盤島は命しらず」 用例の出典:津国女夫池(つのくにめおといけ) 浄瑠璃。近松門左衛門。享保6年(1721)。将軍・足利義輝がからむお家騒動に、大阪天満にあった夫婦池伝説(仲のよい夫婦が入水)を結びつけたもの。人間の愛憎と罪業から、複雑に入り込んだ親子と夫婦が、救いようのない因果に苦しめられる話<近松門左衛門でござーい!>
・命取り(いのちとり) 1.命、地位、財産などを失う原因となるもの。 例:「思い上がりが命取りになる」 2.美女。
・命長ければ恥多し(いのちながければはじおおし) 長生きすればそれだけ、何かにつけて恥を掻くことが多いものだ。 出典:「荘子−天地」「多男子則多懼、富則多事、寿則多辱、是三者非所以養徳也」
・命の洗濯(いのちのせんたく)[=土用干(どようぼ)し] 日常の苦労から解放されて、命が延びるほど思う存分に楽しむ。寿命を延ばすための休養。
・命の綱(いのちのつな) 命を繋(つな)いでいく頼(たよ)り。生きてゆくのに最も頼みとなるもの。また、家や企業などにとって、最後の支(ささ)えとなるものなどの喩え。 類:●命綱●生命線●ライフライン 類: 例:「家賃収入が命の綱だ」
・命は義に縁りて軽し(いのちはぎによりてかるし) 掛け替えのない命も、正義のために拾てるのならば惜しいものではないということ。 出典:「後漢書−朱楽何列伝」「情為恩使、命縁義軽」
・命は鴻毛より軽し(いのちはこうもうよりかるし) 命を捨てるのが少しも惜しくないということ。 類:●死は鴻毛より軽し●命より名を惜しむ●命は義によりて軽し 反:■命あっての物種■命に過ぎたる宝なし■人の命は地球より重い■死んで花実が咲くものか■死は泰山より重し 出典:「文選」に見える司馬遷の「報任少卿書」「人固有一死。或重於泰山、或軽於鴻毛。用之所趨異也」
・命は風前の灯の如し(いのちはふうぜんともしびのごとし)[=風中(ふうちゅう)の灯の〜] →風前の灯
・命は法の宝(いのちはほうのたから) 有り難い仏法を聞くことができるのも、命があればこそであるということ。 ★仏教唱歌などに歌われた言葉。
・命を鯨鯢の腮に懸く(いのちをけいげいのあぎとにかく・げいげいの〜) 「鯨鯢」は雄・雌の鯨のこと。海上に一命を掛ける。船上の危険な生活の喩え。
・命を削る(いのちをけずる) 1.寿命を縮める。 例:「煙草で命を削る」 2.寿命を縮めるほど苦労する。 例:「株価が暴落したときは命を削る思いだった」
・命を捨てる(いのちをすてる) 自分の命が危険になるのも顧(かえり)みないで努力する。 類:●一命を賭す 用例:竹取「命をすてて、かの玉の枝持ちて来るとて」 2.死ぬべきでないのに死ぬ。 用例:平家−九「汝はいのちをすつべからず」 例:「早まって命を捨てるな」
・命を縮める(いのちをちぢめる) 肉体や精神の過労で)寿命を短くする。また、ショックによって命が短くなったような感じを与える。
・命を棒に振る(いのちをぼうにふる) 無意味に命を棄てる。無益に死ぬ。 類:●無駄死にする●犬死にする
・命を養う者は病の先に薬を求め、世を治むる者は乱れぬ先に賢をならう(いのちをやしなうものはやまいのさきにくすりをもとめ、よをおさむるものはみだれぬさきにけんをならう) 体を養生する者は病気に罹(かか)る前に薬を探して手遅れにならないように注意し、国政に携(たずさわ)わる者は世が乱れないうちに平生から賢者の教えに従って心を配っていなくてはいけない。 出典:「潜夫論−思賢第八」「養寿之士先病服薬、養世之君先乱任賢、是以身常安、而国永永也」
・井の中の蛙大海を知らず(いのなかのかわずたいかいをしらず)
・胃の腑に納める(いのふにおさめる) 十分に理解する。
・胃の腑に落ちる(いのふにおちる)[=落ち着く] 十分に納得がいく。良く分かる。 類:●腑に落ちる●心腹に落つ●腹に落ちる 用例:浄・今宮心中「さらさら胃の腑に落ちませぬ」
−−−−−−−いは(#iha)−−−−−−−
・位牌を汚す(いはいをけがす) 祖先の名誉を傷付ける。 類:●位牌に泥を塗る●家名を汚す
・医は死なざる病人を治す(いはしなざるびょうにんをなおす) 医者は寿命のある病人を治すことはできるが、死病までを治すことはできない。 類:●神は幸運の凡夫を守る 出典:「開巻驚奇侠客伝−2」(曲亭主人・馬琴)
・意馬心猿(いばしんえん) 《四熟・仏教用語》 馬が走り回ったり、猿が騒ぎ立てたりしているのを制するのが難しいところから、煩悩や情欲のために、心の乱れを抑え難いこと。 用例:雑俳・柳多留−101「浅草に意馬心猿の道と町」 出典:「趙州録遺表」「心猿罷跳、意馬休馳」 出典:趙州録遺表(ちょうしゅうろくいひょう) ・・・調査中。
・衣鉢を伝う(いはつをつたう)
・茨の道(いばらのみち) 茨が茂った険しい道という意味で、困難な状況、苦難に満ちた人生などに喩えていう。
・茨を負う(いばらをおう) キリストの受難から出た言葉で、茨の冠を被せられたことから、人の罪を一身に背負うこと、また、人の苦しみを自分の苦しみとして生きること。
・茨を逆茂木にしたよう(いばらをさかもぎにしたよう) 刺のある木で逆茂木を作って敵や獣の侵入を防いだところから、辛(から)いこと。転じて、辛くて舌にしみることの喩え。古くは、酒の味にいうことが多かった。
−−−−−−−いひ(#ihi)−−−−−−−
・歪(いびつ)・飯櫃 1.飯櫃(めしびつ)が長円形であったところから、長円形。小判形。 類:●飯櫃形(いびつなり 2.飯櫃にの形に似ているところから、小判などの金貨、銀貨。 3.物の形が歪んでいる様子。 例:「顔が歪になる」 4.動作や状態がきちんとしていないで、崩れている様子。 例:「歪な性格」 ★「いひびつ(飯櫃)」の転<大辞林(三)>
・意表を突く(いひょうをつく) 相手が予想もしていないことを仕掛ける。 類:●意表に出る 例:「敵の意表を突く」
・いびり出す(いびりだす) 苛(いじ)めて居た堪れないようにして、その場から立ち去らせる。苛めて追い出す。 用例:雑俳・柳多留拾遺−巻六「いきがけのだちんに娵(よめ)をいびり出し」
・渭浜の器(いひんのき) 将軍や宰相となるべき大人物。 出典:儲光羲の哥舒大夫頌徳詩「超超渭浜器、落落山西名」 故事:渭水で釣りをしていた太公望が、周の文王に見出だされて、将相となった。
−−−−−−−いふ(#ihu)−−−−−−−
・威風堂々(いふうどうどう) 《四熟》 威厳があって侵(おか)し難い様子。気勢が大いに盛んな様子。 類:●威風辺りを払う●威風辺りを圧す●威風辺りを制す 例:「威風堂々の行進」
・燻し銀(いぶしぎん) 燻しを掛けた銀。くすんで渋みのある銀色。転じて、比喩的に、一見地味だが、実際は力があったり、魅力があったりするもの。また、そういう人。
・燻り出す(いぶりだす) 1.物を焼いて煙を出し、煙たがらせて中にいる獣や虫を外へ追い出す。 例:「地蜂を燻り出す」 2.苛(いじ)めて居た堪れないようにして出て行かせる。苛めて追い出す。 類:●いびり出す
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・韋編三たび絶つ(いへんみたびたつ)
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・以暴易暴(いぼうえきぼう) 《四熟》 暴力で暴力を制すること。統治者が交替しても暴虐な統治に変わりはないということ。 類:●以暴易乱 出典:「史記−伯夷列伝」「以暴易暴兮、不知其非矣」 ★「暴を以って暴にかえる」と読み下す。
・移木の信(いぼくのしん) 約束を履行すること。人に信(まこと)を示すこと。 故事:「史記−商君伝」 中国の秦の商鞅(しょうおう)が、新法を施行する前にまず国民に自分を信じさせる手段として、都の南門の前に立てた木を北門に移した者に50金を与えるという布告をし、その約束を守って、金を与えて信を示した。
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・葦末之巣(いまつのす) 《四熟》 水辺の葦の先に巣を作る鳥は、いつも危険に晒(さら)されて落ち着かない生活をしなければならない。住居が不安定で危険な様子。 類:●燕巣幕上
・今泣いた烏がもう笑う(いまないたからすがもうわらう) 今まで泣いていた者が、すぐ後、機嫌を直して笑っていること。主に、子供の喜怒哀楽の変わり易いのを囃していう。
・今に始めぬ(いまにはじめぬ)[=始まったことではない] 従来からそうだったことで、現在も変わらない。
・今の因果は針の先回る(いまのいんがははりのさきまわる) 昔のことよりも今のことの因果の方が早く巡って来る。因果というものは思っているよりも早く巡って来るものだ。
・今は昔(いまはむかし) 今ではもう昔のこと。説話や物語文学の冒頭に使われる慣用的な言い回し。 類:●むかしむかし 用例:竹取「いまはむかし、竹取の翁といふもの有けり」
・今参り二十日(いままいりはつか)[=百日(ひゃくにち)・三日(みっか)] 奉公人の常として、来た当座は忠実に働くが、往々にして、間もなく怠(なま)け始めるということ。
・今や遅し(いまやおそし) 今か今かと待ち兼ねている気持ち。
・今際の際(いまわのきわ)[=折・刻(きざ)み・時] 臨終(りんじゅう)の時。最期の瞬間。 ★「いまわ」は、「今は限り」の後方省略から出来た言葉という。
・今際の念仏誰も唱える(いまわのねんぶつだれもとなえる) 普段は不信心だった人でも、死ぬ間際には念仏を唱えて仏に縋(すが)るものである。自分が苦境に陥(おちい)った時だけ神仏に祈って助けを求めること。 類:●死にがけの念仏●苦しい時の神頼み
・今を時めく(いまをときめく) 現在、世に持て囃されているもの。今を盛りと栄えている様子。
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・意味深長(いみしんちょう) 《四熟》 ある表現の示している内容や趣が深く、含蓄があること。また、表面の意味の裏に、別な意味が隠されていること。 用例:咄・鹿の子餅−序「意味深長の旨味は、ひとつひとつ読んで御らんなされ」 用例の出典:鹿の子餅(かのこもち) 咄本。明和9年(1772)・・・詳細調査中。
・異名同実(いみょうどうじつ) 《四熟》 名や言い方は違っていても同じ物であること。一つのもので異なった二面をもっていること。 類:●異名同体
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・忌めば則ち怨み多し(いめばすなわちうらみおおし) 誰かを忌み嫌えば、逆にその人から怨まれることになる。 出典:「春秋左氏伝−僖公九年」「公曰、忌則多怨、又焉能克、是吾利也」 秦伯(穆公)が、晋の夷吾(恵公)を評して言った言葉。
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・い文字(いもじ) 烏賊(いか)、石などを指す女房詞。
・ゐ文字(いもじ) 亥子餅(いのこもち)を指す女房詞。
・芋蛸南京(いもたこなんきん) 江戸時代、女の好物を語呂良く並べたもの。 類:●芝居蒟蒻芋南瓜 ★上方で言われていたものらしい。
・芋蔓式(いもづるしき) 薩摩芋(サツマイモ)の蔓を辿(たど)っていくと次々に土中の芋が見付かるようにということで、1.一つのことから、それに関連する他の多くのことが明らかになってくること。 例:「芋蔓式に検挙される」 2.次から次へと手蔓を求めること。 例:「芋蔓式に縁故を求める」
・芋の煮えたも御存じない(いものにえたもごぞんじない)[=知らない] 世間の事情に疎(うと)い人のことを嘲って言う言葉。
・芋を洗う(いもをあらう) 里芋をたくさん桶に入れて棒で掻き混ぜて洗う様子から、人出で混雑していることの喩え。 例:「海水浴場は芋を洗うような混雑だった」 ★「芋の子を洗う」とも<国語大辞典(小)>
・倚門の望(いもんのぼう)[=情(じょう)] 家の門に寄り掛かって帰りを待ち望むこと。外出した子の帰りを待ち侘(わ)びる母の情をいう。 類:●倚閭(いりょ)の望 出典:「戦国策−斉・下」「女朝出而晩来、則吾倚門而望。女暮出而不還、則吾倚閭而望」
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