【さい】~【さそ】

−−−−−−−さい1(#sai)−−−−−−−
・最右翼
(さいうよく) ある物に関して争うものの中で最も有力なもの。 例:「首位打者争いの最右翼」 ★軍関係の学校では成績順に右から並んだところから<国語大辞典(小)> ★古代ギリシャの戦隊に由来するとする説もあるが、ちょっと遠過ぎるように思う。右手に槍左手に盾を持った場合、右の端の人は隣の盾に隠れられないため、最右翼に一番強い兵を置いたとかという。
塞翁が馬
(さいおうがうま)
・財多ければ命殆うし
(ざいおおければいのちあやうし) 財産を多く持っていると、賊に狙われるから命が危うくなるということ。 類:●位尊ければ身危うし●象は歯有りて以って其の身を焚(や)かる●膏燭は明を以って自ら鑠(と)く 出典:「後漢書−馮衍伝・上」「況今位尊身危、財多命殆、鄙人知之、何疑君子」 ★後漢の光武帝の時代、田邑(でんゆう)が馮衍(ふうえん)に送った書簡にある言葉。
・斎戒沐浴
(さいかいもくよく) 《四熟》 神事や仏事に関わる前に、飲食や行動を慎(つつし)み、穢(けが)れを落とすため身体を洗うこと。 出典:「孟子−離婁・下」 
参考:斎戒(さいかい) 神仏に関する物事や神聖な仕事などをする者が、飲食や動作を慎み、時に一定の規律を守って、心身の穢れを除くこと。
・才覚者
(さいかくもの) 機転が利く人、才知がある人という意味で、事に臨んで的確にてきぱきと処理できる人。 類:●才覚人
・歳寒の三友(さいかんのさんゆう) 東洋画の画題の一つで、寒い季節に耐える「松・竹・梅」または「梅・水仙・竹」の三種の植物を描くもの。
・歳寒の松柏
(さいかんのしょうはく) 極寒に耐える松や柏のように、逆境に置かれても、思想を変えない人を喩えていう。 類:●後凋(こうちょう)の節●後凋の心 出典:「論語−子罕」「歳寒然後、知松柏後凋也」 
・才気煥発
(さいきかんぱつ) 《四熟》 優れた才気が表に現れ出ること。頭の働きが早く、活発で目立つこと。 例:「機に臨んで才気煥発する」
・細工は流流仕上げを御覧じろ(さいくはりゅうりゅうしあげをごろうじろ)[=見よ] 十分に工夫技巧を凝らしているから、遣り方についてとやかく言わないで、出来上がりを見てから批評して呉れという意味。
・細工貧乏人宝
(さいくびんぼうひとだから) 器用な人は他人から重宝(ちょうほう)がられるが、自分の得にはならず、結局貧乏するということ。
・歳月人を待たず
(さいげつひとをまたず) 年月は人の都合に関わりなく刻々に過ぎ去り、瞬時も留まらない。 類:●歳月流るる如し●光陰矢の如し月日に関守りなし 出典:「陶淵明集−4・雑詩」
・最後通牒
(さいごつうちょう) 《四熟》 英語のultimatumの訳。 国家間の友好的な外交交渉を打ち切り、最終的な要求を提示し、一定期限(通常24または48時間)内に容(い)れられなければ実力行使をする旨を述べた外交文書。
・最後っ屁
(さいごっぺ) 鼬(いたち)が追い詰められたとき、身を防ぐために尻から放つ悪臭のことで、転じて、切羽詰まったとき、苦し紛れに考える手段のこと。 類:●窮余の一策
・最後に笑う者が最も良く笑う
(さいごにわらうものがもっともよくわらう) 初め笑っていた者も最後に泣くこともある。最終の結果が良くて笑う者が最高であるということ。
・最後の手段
(さいごのしゅだん) 切羽詰まったとき、講じることができる残された一つの方策。 類:●窮余の一策
・在在所所
(ざいざいしょしょ) 《四熟》 1.あちらこちら。ここかしこ。あらゆる所。いたるところ。 類:●所々在々 2.あちらこちらの村里。そこここの在郷。
・幸先が良い
(さいさきがいい・よい) 1.何かを行なうにあたって、良い前兆である。 例:「朝の蜘蛛は幸先が良い」 2.出だしとしては上々である。今後の見通しが明るい出来事である。 例:「先頭打者ホームランとは幸先が良い」
・採算が取れる
(さいさんがとれる)[=合う] 収支が引き合う。または、利益がある。 類:●採算が合う●算盤(そろばん)が合う
・再三再四
(さいさんさいし) 《四熟》 何度も。ある動作が繰り返し何度も行われる。再三を強めて言った言葉。 類:●度々 例:「再三再四注意しているのに遅刻する」 出典:「紅楼夢−二七」「況且他再三再四的和我説了、若没謝的、不許我給[イ+尓][口+尼]」 
★多くは副詞的に用いる<国語大辞典(小)> 参考:再三(さいさん) 二度(再)も三度も。 出典:紅楼夢(こうろうむ) 中国の通俗小説。乾隆57年(1792)刊。80回本と120回本とがあり、120回本の前80回は清の曹雪芹(そうせつきん)、後40回は高蘭墅(こうらんしょ)の作という。大貴族の栄華と没落を背景に、主人公賈宝玉と従妹林黛玉の悲恋を中心に描き、暗い宿命観と人生の無常観を漂わせており、自伝的要素が強い。「石頭記」「金玉縁」「金陵十二釵」「風月宝鑑」「情僧録」などとも。

−−−−−−−さい2(#sai2)−−−−−−−
・才子佳人(さいしかじん) 《四熟》 才知の優れた男と美人の誉れ高い女という意味で、好一対の男女の組み合わせのこと。結婚式などでの誉め言葉。
・妻子眷属(さいしけんぞく) 《四熟》 妻子と眷属(=血が繋がっている者、一族)。妻子や親族。一家一門。 類:●一族郎党●一家眷属
・才子才に倒れる
(さいしさいにたおれる)
=(おぼ)れる] 才知の優れた者は、自分の才知や学問を頼むあまりに却(かえ)って失敗しがちである。 類:●策士策に溺れる
・再思三考(さいしさんこう) 《四熟》 もう一度良く考え、更にまた考え直すという意味から、考えに考えを重ねて熟慮すること。 類:●再思再考
・才子多病(さいしたびょう) 《四熟》 才子は才がある代わりに兎角(とかく)体が弱くて病気になりがちである。
・罪障の山(ざいしょうのやま) 成仏(じょうぶつ)の障害となる罪業(ざいごう)が大きいことを山に喩えて言ったもの。 
参考:罪障(ざいしょう) 仏教用語。往生(おうじょう)・成仏(じょうぶつ)などの善果を得るのに妨げとなる悪い行ない。往生の障害となる罪業(ざいごう)。
・才色兼備
(さいしょくけんび) 《四熟》 女性が優れた才能と美しい顔貌(かおかたち)とを持っていること。 例:「新婦は才色兼備の人です」
・采薪の憂(さいしんのうれい・うれえ・ゆう)[=採薪の〜] 1.病身で薪(たきぎ)採りにも出られないという状態。病気のこと。特に、自分の病気を遜(へりくだ)って言う。 類:●負薪の憂  出典:「孟子−公孫丑・下」「昔者有王命、有采薪之憂、不能造朝」 2.一説に、薪を採った疲れのために発症した病い。
・彩ずる仏の鼻を掻く
(さいずるほとけのはなをかく) 「彩ずる」は彩色を施して飾るの意。念を入れ過ぎたため、却って大切な部分を駄目にしてしまうこと。 類:●過ぎたるは猶及ばざるが如し 
★仏像を作り上げるのに、もう少しよくしようと手を入れているうちに肝心な鼻を欠いてしまうことから。 
・再全之錦
(さいぜんのにしき) 《四熟》 誤って裁(た)ってしまってもまた完全に元通りになる錦の織物のこと。このような錦はないことから、政治は一度誤ると、再び回復することができない、ということの喩え。 出典:「春秋左氏伝−襄・三一」
・催促振る舞い
(さいそくぶるまい) こちらから催促して馳走(ちそう)させる。饗応を強請(ねだ)る。 類:●催促顔
・材大なれば用を為し難し
(ざいだいなればようをなしがたし) 材木が大き過ぎると使い難(にく)いものである。大人物であればあるほど、世間に受け容(い)れられないものであるということの喩え。志が高く世に容れられない人を慰(なぐさ)めても言う。 出典:杜甫の「古柏行(こはくこう)」「志士幽人莫怨嗟、古来材大難為用
・才太郎畑
(さいたらばたけ) 1.江戸時代、大坂千日寺の火葬場の東にあった空地の俗称。2.冥土ではあるが地獄と極楽との間にある、どっちつかずの所。 用例:浄・心中二つ腹帯「死出の田長を友がねに—のかがしかと」 3.どっちつかずで中途半端なこと、生半可なこと。
・才太郎畑へ行く
(さいたらばたけへいく)[=走る] 無駄な仕事、または益のないことをする。
・在天の霊
(ざいてんのれい) 死者を祀(まつ)る時などに、その霊魂を指す言葉。
・賽の河原(さいのかわら) 1.仏教で、死んだ子供が行くとされている、冥途(めいど)にある三途(さんず)の河原。子供の亡者(もうじゃ)はここで恋しい父母のために小石を積んで塔を作ろうとするが、何度作っても鬼が来てすぐこれを壊してしまう。そこへ地蔵菩薩が現われて救うという。西院(斎院)の河原とも。2.転じて、無駄な努力の喩え。 例:「賽の河原の石積み」 3.独身者を嘲(あざけ)って言う言葉。結婚しないうちは子供の部類とされ、死ねば賽の河原にやられるということから。
・才走る
(さいばしる) 才能が働き過ぎる。才能が閃(ひらめ)き過ぎる。才気に溢(あふ)れる。また、才能に任せて事をする。
・賽は投げられた
(さいはなげられた) ラテン語のAlea jacta estの訳。 
カエサル(シーザー)がルビコン川を渡る時に言ったといわれる言葉。一旦乗り出してしまった以上、最早最後までやるより外に道はない。開始してしまったからには断行あるのみである。 出典:ローマ皇帝伝(こうていでん) 古代ローマ史。スエトニウス。西暦140年頃。カエサル及び、ユリウス=クラウディウス朝、内乱期、フラウィウス朝のローマ皇帝の伝記。ローマ帝国の実質的な初代皇帝と見なされていたカエサルは皇帝伝の冒頭に登場し、失なわれた部分を含めると彼に関する記述が最も多い。「帝王伝」とも。 人物:カエサル 英語名はシーザー、ケーザル(Caesar)。ローマの将軍、政治家。ジュリアス・シーザー。前100〜前44。紀元前60年、クラッスス、ポンペイウスと第一次三頭政治を樹立。全ガリアの平定後、ポンペイウスをエジプトに追って滅ぼし、各地の内乱を平定して、独裁官となる。多方面に事績を上げたが、共和政体擁護を唱えるカッシウス、ブルトゥスらによって暗殺された。文人としてもすぐれ、「ガリア戦記」「内乱記」の史書がある。
・采薇の歌
(さいびのうた) 己の潔(いさぎよ)さを守るためなら、穢(けが)れた穀物を口にせず、ゼンマイを食べ、餓死も厭(いと)わない。中国殷末周初の賢人伯夷(はくい)と叔斉(しゅくせい)の兄弟が詠んだ詩。 故事:史記−伯夷叔斉列伝」 伯夷と叔斉は周の武王が殷(いん)の紂王(ちゅうおう)を討伐しようとしたとき、それを不忠として諫(いさ)めたが、聞き入れられなかった。天下が周に帰属すると、周の粟(あわ)を食べるのを恥とし、首陽山(=西山)で薇(ぜんまい)を採って食べながら暮らした。二人が餓死するときに「采薇歌」を作ったと言われる。
・財布の口を締める
(さいふのくちをしめる) 無駄な金を使わないように気を付ける。 類:●節約する
・財布の紐が堅い(さいふのひもがかたい) 無駄金を使わない。
・財布の紐が長い(さいふのひもがながい) 金を出し渋る。けちで金を出さない。
・財布の紐を首に掛けるよりは心に掛けよ
(さいふのひもをくびにかけるよりはこころにかけよ) 金を盗まれないように用心するよりは無駄使いしないように気を付けよ。
・財布の紐を握る
(さいふのひもをにぎる) 金銭の出し入れの権限を持っている。 類:●財布の尻を押さえる
・財宝は地獄の家苞(ざいほうはじごくのいえづと) 「家苞」は家へ持ち帰る土産(みやげ)のこと。いくら財宝を貯(たくわ)えても、結局はあの世への手土産になるだけである。財産を残したつもりでも、相続や没収(ぼっしゅう)などで、あっという間になくなってしまうから、蓄財は空(むな)しいものだということ。 ★ここでの「地獄」は、天国に対しての地獄ではなく、仏教的な黄泉(よみ)の国(=あの世)のこと。
・材木屋の算用違い
(ざいもくやのさんようちがい) 地口の一つ。木が違っているということから、気違いという洒落。
・材木屋の鳶
(ざいもくやのとび・とんび) 地口の一つ。お高く止まっているという洒落(しゃれ)。人が偉ぶっていること。 類:●風見の烏
・材木屋の暴風雨
(ざいもくやのぼうふうう) 地口の一つ。気が利いていること。気が利くに、木が利く(=材木の相場が上がること)を掛けた洒落。
・財を成す
(ざいをなす) 事業などで成功して、大きな財産を築く。 例:「海運業で財を成した」
・采を振る
(さいをふる・ざいを〜)[=採(と)る] 人に指図(さしず)をする。指揮してものごとを行なう。 類:●采配を振る●采を採る

−−−−−−−さお(#sao)−−−−−−−
・竿竹で星を打つ(さおだけでほしをうつ) 1.竹竿で星を払い落とすということで、不可能な事をすること。その愚かさの喩え。2.思う所に届かないもどかしさの喩え。
・竿の先の鈴
(さおのさきのすず) 口喧(やかま)しく騒々しいこと。人が、多弁なこと。
・棹楫干さず
(さおかじほさず) 舟を漕ぐ道具を乾かす隙(ひま)がないほど、絶えず舟で通航していること。また、舟の通航が多いこと。

−−−−−−−さか(#saka)−−−−−−−
・逆馬に入る
(さかうまにいる) 将棋で、王将が相手の三段目以内の陣に入る「入り王」のことを言うが、転じて、人が年齢に逆らって若やぐことを喩えても言う。
・逆恨み(さかうらみ) 1.こちらが恨みに思っている相手から、逆に恨まれる。 例:「逆恨みを受ける」 2.他人からの好意を曲解して、却(かえ)って恨むこと。 例:「忠告したら逆恨みされた」
・座が醒める
(ざがさめる)[=白(しら)ける] その場の人々の感興が削(そ)がれる。
・逆さ別れ(さかさわかれ) 当然の順序と違って、子供が親に先だって死ぬこと。 類:●逆様の別れ
・杯を返す
(さかずきをかえす) 1.差された杯の酒を飲み干して、その人へ差し返す。返杯する。2.侠客仲間などで、子分が親分に対して縁を切ること。 
反:■杯を貰う
・逆立ちしても
(さかだちしても) 後ろに打消しの言葉を伴って、どういう手段をとっても到底(とうてい)〜できない。 用例:毎日新聞夕刊S46.5.15「民間デベロッパーがサカ立ちしても、太刀打ちできず」 例:「逆立ちしても天皇にはなれない」 ★「精一杯頑張っても」の意から。
・座が長い
(ざがながい) 長い時間座り込んでいるという意味で、訪問してきて中々帰ろうとしない客のこと。 類:●長尻(ながじり)●長っ尻(ながっちり)
・魚は殿様に焼かせよ、餅は乞食に焼かせよ(さかなはとのさまにやかせよ、もちはこじきにやかせよ) 魚はひっくり返さずに弱火でじっくり焼くと上手く焼き上がることから、殿様のようにおっとりした性格の人に焼かせるのが良く、餅はせかせかと頻繁(ひんぱん)に裏返しにして焼くと上手く焼けるものである。適切な加工法は、ものによって異なるものだということ。また、ものごとには向き不向きがあるという喩え。 類:●瓜の皮は大名に剥かせよ、柿の皮は乞食に剥かせよ●適材適所
・逆螺子を食わす
(さかねじをくわす)[=食わせる] 非難や抗議を仕掛けてきた者に対して、反対に詰(なじ)る。逆に問い詰める。または、逆手(ぎゃくて・さかて)を取る。 類:●反りを打つ
・坂道を転げるよう
(さかみちをころげるよう)[=転がるよう] 1.段々勢いが付いて転がり落ちていく様子。2.転じて、人などが加速度的に堕落していく様子。状況が益々悪くなっていく様子。 例:「40の声を聞くと坂道を転がるように衰える」
・盛りが付く(さかりがつく) 動物が、一定の時期に発情すること。 例:「盛りが付いた猫のよう」
・逆を食わす
(さかをくわす) → 
逆螺子を食わす

−−−−−−−さき(#saki)−−−−−−−
・先が思い遣られる(さきがおもいやられる) 将来が心配である。良くない状態になるのではないかと案じられる。 例:「算数で苦労しているようでは先が思い遣られる」
・先が見える(さきがみえる) 1.将来のことについて見通す能力がある。2.将来どうなるか予想が付く。 類:●目に見える 
★悲観的予想についていうことが多い<国語大辞典(小)> 3.期間に亘(わた)った仕事などが終りに近付く。 類:●目鼻が付く 例:「景気回復もやっと先が見えてきた」
・先立つ
(さきだつ) 1.真っ先に起こる。他のことより先に起こる。第一となる。先んずる。 用例:伊勢−一六「つひに尼になりて、姉のさきたちてなりたる所へ行くを」 例:「涙が先立つ」 2.先に死ぬ。 用例:源氏−桐壺「限りあらむ道にも、後れさきだたじと契(ちぎ)らせ給ひけるを」 例:「先立つ不孝をお許しください」 3.真っ先に必要になる。 例:「先立つものは金」
・先立つもの
(さきだつもの) お金のこと。 ★先ず第一に必要なもの、という意味から。
・先走る
(さきばしる) 1.先頭を走る。2.他人より先になる。先んじて行なう。 用例:浄・平家女護島−二「いかめしげに先走独ぬきん出何とする」 3.不確かな判断に基づいて、他人を出し抜いた言動をする。また、事実を確かめる前に、独り善がりに判断したり行動したりする。 例:「先走って失敗をする」 4.取引市場で、相場が材料の実現より先に騰貴(とうき)したり下落したりする。
・先棒担ぎ
(さきぼうかつぎ) 人の先に立って騒ぎ回ること。また、その人。
・先棒を振る
(さきぼうをふる)[=に立つ] 人々の先に立ってものごとをする。
・先を争う
(さきをあらそう) 我先にと互いに競い合う。一番になろうと争う。
・鷺を烏(さぎをからす) 明らかに白いものを、無理矢理に黒いと言い張るように、ものの道理をわざと反対に言い曲げること。不合理なことを強引に主張すること。 類:●烏を鷺鹿を指して馬と言う這っても黒豆
・先を越す
(さきをこす)[=潜(くぐ)る] 相手の考えなどを察して相手より先に手を打つ。 類:●先を潜る●先を回す●先手を打つ●先を取る
・先を読む
(さきをよむ) 将来に起こることを予測・推測する。
先んずれば人を制す
(さきんずればひとをせいす)

−−−−−−−さく(#saku)−−−−−−−
・策士策に溺れる
(さくしさくにおぼれる) 策士は、自分の才能を鼻に掛けるあまり、謀(はかりごと)を用い過ぎて、却(かえ)って失敗しがちである。 類:●才子才に倒れる
・削足適履
(さくそくてきり) 《四熟》 靴に合わせるために自分の足を削るように、ものごとの本末を誤まること。 類:●足を削けずりて履に適せしむ●殺頭便冠 出典:「淮南子−説林訓」「譬猶削足而適履、殺頭而便冠」
・昨非今是
(さくひこんぜ) 《四熟》 境遇や考え方が変わって、昨日悪いと思ったことが今日は正しいと思われること。 出典:陶潜(
陶淵明)「帰去来辞」「実迷途其未遠、覚今是昨非
・桜
(さくら) 1.江戸時代の劇場で、頼まれて役者に声を掛ける者などを入れるための特別の桟敷(さじき)。また、その者。 類:●太郎桟敷 ★芝居と違って桜は只で見ることができ、その「只で見る」の意から芝居の無料見物人の意となり、そこから生じたという。 2.露店などの業者の仲間で、客を装って品物を買ったり褒めたりして他の客の購買心をそそる者。また一般に、馴れ合いをいう俗語。 類:●回し者手の者 例:「夜店のさくら」 ★桜が咲くと人が集まるから、または、散々賑わしておいてパッといなくなるのが桜が散るのに似ているから、という。 ★「偽客」という字を当てることもある。
・桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿
(さくらきるばか、うめきらぬばか) 桜は、枝を切ると切り口から細菌が入って枯れ易く、梅は、剪定しないと枝が伸びて花が咲かなくなる。同じ切るにしても、どの木は切ってはいけないか、どの木は切った方が良いかを知らない者は馬鹿だということ。 類:●桜折る馬鹿柿折らぬ馬鹿
・桜の皮で横向き
(さくらのかわでよこむき) 地口の一つ。 横剥きと横向きとを掛けた言葉遊び。
・桜は七日
(さくらはなのか・なぬか) 桜の花が咲いているのは、僅(わず)か七日間ほどの短い間である。盛りの時期は短く儚(はかな)いということの喩え。 類:●花七日花一時人一盛り
・桜は花に顕る
(さくらははなにあらわる) 花の咲かぬ内はなんの木とも知れなかったが、花が咲いたので桜であったことが知れる。それまでは他の人と変わらなかった者が、ある切っ掛けで優れた才能を世に現すことの喩え。 類:●紅は園生に植えても隠れなし
・桜を折りたるよう
(さくらをおりたるよう) 桜の枝を折って身に付けたように、美しく着飾ること。
・探りを入れる
(さぐりをいれる) 相手の様子を、または、隠していることなどを探ろうとして、それとなく聞いてみる。 類:●鎌を掛ける
・簀を易う
(さくをかう) 学徳のある人の死や賢人の死を敬って言う言葉。 
故事:礼記−檀弓・上」「我未之能易也、元起易簀」 孔子の弟子の曾子は、死ぬ前に病床の大夫用の簀(すのこ)を、身分不相応だとして、童子の元(げん)に易(か)えさせた。 類:●易簀
・策を巡らす
(さくをめぐらす) 謀(はかりごと)をあれこれと行き渡らせるという意味で、ある目的を遂げるために様々な工夫を凝らすこと。 類:●策を講ずる
・策を弄する(さくをろうする) 不必要な策、もしくは不純な策を好んで用いること。

−−−−−−−さけ(#sake)−−−−−−−
・酒が酒を飲む
(さけがさけをのむ) 酒の酔いが回るに従って飲む量は益々増えるということ。酒飲みが理性を失って大酒を飲むこと。
・酒買って尻切られる
(さけかってしりきられる) 酒をふるまってやったのに、その相手から尻を切られるような乱暴をされる。好意を仇(あだ)で返されること。 類:●恩を仇で返される●酒買うて臂切らるる●酒盛って尻踏まれる
・蔑む
(さげすむ)・貶む 他人を、自分より価値の低いものと見て、軽蔑する。見下げる。見下(くだ)す。 用例:甲陽軍鑑−品三二「信玄公の、氏政をさげすみ給ふと」 例:「蔑むような目つきで見られる」 ★動詞「下げ墨(す)む」から派生した語<大辞泉(小)> 参考:下げ墨(さげすみ) 大工が柱などの曲がりを測るために、墨縄を垂直に下げて見定めること<国語大辞典(小)>
・酒と朝寝は貧乏の近道
(さけとあさねはびんぼうのちかみち) どんな人でも大酒を飲み朝寝をして仕事を怠(なま)けていれば、忽(たちま)ち貧乏になる。 ★酒歌に「少しずつ杯(さかずき)に注ぐ酒なれど家も田畑もついに傾く」とある。
・酒と産には懲りた者がない
(さけとさんにはこりたものがない) 酒とお産では相当辛(つら)く苦しい思いをするのだが、やめたという者もない。
・酒に飲まれる
(さけののまれる) 酒に酔って正気を失うこと。 類:●酒人を飲む 例:「酒を飲んでも飲まれるな」
・酒に別腸あり
(さけにべっちょうあり) 酒量の多少は、身体の大小には関係しない。 出典:「通俗篇−飲食」「左右曰、酒有別腸、不必長大」
・酒の皮を剥く
(さけのかわをむく) 「剥く」は杯の酒を飲まずに零(こぼ)して捨てること。贅沢(ぜいたく)を尽くすこと。浪費を重ねること。
・酒飲みの尻切れ襦袢(さけのみのしりきれじゅばん) 酒飲みは酒代の支払いに追われて、身なりに構(かま)っている余裕がないということ。
・酒飲み本性違わず
(さけのみほんしょうたがわず) 酒飲みの人は、どんなに酔っても本性を失うものではない。 類:●上戸(じょうご)本性違わず●酒の酔い本性忘れず●酒の酔い本性違わず
・酒は憂いの玉箒
(さけはうれいのたまばはき) 酒は心の憂いを忘れさせ、憂さを掃き去る道具である。酒を飲めば沈んだ気持ちも晴れるということ。 類:●亡憂の物 出典:蘇軾「洞庭春色詩」「応呼釣詩鉤、亦号掃愁帚
・酒は燗肴は気取り酌は髱
(さけはかんさかなはきどりしゃくはたぼ) 酒を飲むときには、ほどよいお燗と、肴は気の利いた刺身、それに若い女のお酌があればこの上ないということ。 類:●酒の燗は人肌 ★「髱」は、日本髪の後ろに突き出た部分のことで、若い女性の喩え。 ★一方、「酒は古酒女は年増」ということわざもある。
・酒は詩を釣る色を釣る
(さけはしをつるいろをつる) 飲酒は詩を誘い出し、更に、色情をも誘い出すものだ。 出典:蘇軾「洞庭春色詩」「応呼釣詩鉤、亦号掃愁帚」
・酒は天の美禄
(さけはてんのびろく) 1.酒は天から賜(たまわ)った俸禄(ほうろく)であるということ。 出典:「漢書−食貨志・下」「酒者、天之美禄、帝王所以頤養天下、享祀祈福、扶衰養疾」 前漢末の魯匡(ろきょう)の言葉。 2.酒の美味を褒(ほ)めて言う言葉。 類:●甘露
酒は百薬の長
(さけはひゃくやくのちょう)
・酒盛って尻切られる
(さけもってしりきられる)[=酒買って〜]・[=踏まれる] 好意を尽くしたのに、逆に損をさせられること。

−−−−−−−さこ(#sako)−−−−−−−
・左顧右眄
(さこうべん) 《四熟》 左を顧(かえり)み、右を流し目で見るという意味。 1.左右を見回して、悠然として自得(じとく)する様子。 出典:「文選曹植・与呉季重書」「左顧右眄、謂若無人。豈非君子壮志哉」 2.判断を下す時に、人の意見、噂や思惑を気にしてぐずぐずすること。躊躇(ためら)うこと。 類:●右顧左眄 出典:李贄(りし)「孔明為後主写申韓管子六韜」「以故瞻前慮後、左顧右眄、自己既無一定之学術」

・雑魚の魚交じり(ざこのととまじり) 能力や知恵、身分などの劣(おと)る者が、優(すぐ)れた者の中に交じっていて相応(ふさわ)しくないこと。特に、つまらない者が良い地位に就(つ)いていることを指して言う。 類:●場違い●?(ごまめ)の魚交じり●海老の鯛交じり

−−−−−−−ささ(#sasa)−−−−−−−

・坐作進退
(ざさしんたい) 《四熟》 立居ふるまい。行儀。
・細波立つ
(さざなみたつ) 細かく波が立つという意味で、顔に小皺ができることなどの喩え。
・私語千里(ささやきせんり)[=八丁(はっちょう) 《四熟》 内証話はすぐに遠くへ伝わるものだということ。秘密が洩(も)れ易く、速く広がることの喩え。 類:●こそこそ三里●私語八丁

−−−−−−−さし(#sasi)−−−−−−−
・差し(さし) 二人ですること。 1.二人で向かいあいになること。主に、遊興や情事を二人だけで、人目を忍んで行なうこと。 類:●
差し向かい 例:「さしで飲む」 用例:評判・色道大鏡−一「さし。男女さしむかひ、両吟にかたるをいふ」 ★元来は、「男女の差し向かい」の意味合いが強かったが、現代では、「上司と差しで飲む」「好敵手と差しの勝負」など、色気抜きの用法も多く使われる。 2.二人で荷物や責務を担ぐこと。 類●:差し担(にな)い 用例:雑俳・川柳評万句合−安永五「つりかねをさしでかつぐと雨がふり」 3.(俗語)一対一で勝負をすること。 類:●一騎打ち 例:「サシの勝負」
・差し当たり
(さしあたり) 1.今この場合。今のところ。目下(もっか)。当面。当座(とうざ)。さしずめ。 用例:有明の別−三「今の世の公達(きんだち)はたださしあたり見たてまつるに」 例:「差し当たり給料日まではどうにかなる」 ★多く、「将来はどうなるか分からないが」という意味を込めて言う。 2.差し迫って。緊急に。咄嗟(とっさ)に。突然。 用例:浮・好色五人女−一「清十郎又さしあたり、是はと悦ぶ時」
・差し入れ
(さしいれ) 1.中へ入れること。また、その入れる品物。2.刑務所などに拘留されている者に、外部から食物、衣類、日用品、書籍などを届けること。また、その品物。 例:「実家の父からの差し入れ」 3.2.から)一般に、閉じ篭もって仕事をしている人などに、慰労のための飲食物を届けること。 例:「差し入れに一升瓶をぶら下げてきた」 4.芝居や寄席などで、楽屋の俳優や芸人へ、客から飲食物などを贈ること。また、その贈り物。
・匙加減
(さじかげん) 1.薬剤を調合するとき、匙で薬をすくう分量の多少。薬の調合の加減。2.医者の治療の仕方。手当ての方法。3.料理の味の加減。一般的に、配合の具合い。また、取り合わせ。4.手加減すること。 類:●配慮●手心を加える 用例:雑俳・柳多留拾遺−巻三「薬礼の時はこっちで匕かげん」 例:「事の成否は彼の匙加減一つで決まる」
・差し金
(さしがね)・指し金 1.大工道具。鋼(はがね)または真鍮(しんちゅう)で作った、直角に折れ曲がった形の物差し。曲金(まがりがね)、曲尺(かねじゃく)。 ★「指矩」とも<国語大辞典(小)> 2.文楽の操(あやつ)り人形の腕にしかけた長い棒。その棒に付けた麻糸を引いて人形の手首や指を動かす。3.歌舞伎の小道具で、黒塗りの細い竹竿の先に針金を結わえて弾(はず)むようにし、これに作り物の蝶、小鳥、鬼火などを付けて黒衣(くろこ)の後見が差し出して動かすもの。4.2.3.から転じて)陰で人を唆(そそのか)し、また、指図(さしず)して動かすこと。 類:●入れ知恵 例:「どうせ親父の差し金だろう」 5.代金の一部として、または手付け金として予(あらかじ)め支払う現金。差し金(きん)のこと。
・差しつ押さえつ
(さしつおさえつ) 相手の杯(さかずき)に酒を注いだり注がれたり、注がれるのを留めて注ぎ返したりすること。 類:●差しつ差されつ ★「さいつ押さえつ」とも。「押さえつ」は押しとどめること<国語大辞典(小)>
・差しつ差されつ
(さしつさされつ) 相手の杯(さかずき)に酒を差したり、逆に差して貰ったりすること。盛んに杯を取り交わすこと。多く、男女が睦(むつ)まじく杯を遣り取りする場合に言う。 ★「さいつ差されつ」とも<国語大辞典(小)>
・差し出がましい
(さしでがましい) 己の分際を弁(わきま)えず他人のことに係わる。 類:●出しゃばる 用例:浄・用明天皇職人鑑−三「近比さし出がましう候へ共、日本国があつまっても、財宝費ゆる斗にて」
・差し出口
(さしでぐち) 出しゃばっておせっかいを言うこと。 類:●差し出で口●横槍 例:「いらぬ差し出口を利く」
・坐して食らえば山も空し
(ざしてくらえばやまもむなし)・[=座して食らわば山をも空し] 働かないで暮らしていては山のような財産もやがて尽きてしまう。 類:●居て食えば山も空し●坐吃山空 用例:小説・浮雲「坐して食へば山も空しの諺に漏れず、次第々々に貯蓄の手薄になる所から」 出典:「京本通俗小説−錯斬崔寧」「坐喫山空、立喫地陥」 出典:京本通俗小説(きょうほんつうぞくしょうせつ) 伝奇小説集。宋代。・・・調査中。
・刺身の妻
(さしみのつま) 1.刺身の彩りや取り合わせとして、盛り添えられる野菜や海藻などの類。2.あってもなくても、それほど影響がないものの喩え。 類:●付け足り●付け足し
・差し向かい
(さしむかい) 二人が向かい合っていること。 類:●対座●
差し
・然しもの(さしもの) あれほどの。流石(さすが)の。 用例:金刀比羅本保元−中「さしもの者にてはよもあらじ」 
★「然」は、程度や性質を抽象的に指示する言葉。
・砂上の楼閣
(さじょうのろうかく) 砂地の上に建てた楼閣という意味で、一見すると立派だが、基礎が脆(もろ)いために長く維持できないこと。また、実現不可能なことにも言う。 類:●机上之論空中楼閣●按図索駿●紙上談兵
・匙を投げる
(さじをなげる) 1.医者や薬剤師が調剤用の匙を投げ出すという意味。医者がこれ以上治療の方法がないと診断する。医者が病人を見放す。 用例:雑俳・誹風柳多留「田舎医者さじを投げては馬で逃げ」 2.前途の見込みがないと諦めて、手を引く。救いようがなく断念する。 類:●匙を捨つ

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・流石(さすが) 1.そうはいってもやはり…である。 用例:竹取「是やわが求むる山ならむと思ひて、さすがに恐ろしくおぼえて」 2.なんといってもやはり…である。 用例:古本説話集−二八「さすがにあて人の子なれば、けはひもあてやかに」 3.なんといっても…である。 用例:俳・五元集−拾遺「日の春をさすがに鶴の歩み哉」 4.なんといっても…だけのことはある。 例:「流石は良家のご子息だ」 ★上代の副詞シカスガニに由来するか。当て字で「流石」とも書く<広辞苑第四版(岩)>「然(しか)すがに」 ★漢字表記の由来は明らかでない。「流石」については、「世説」に見える晋の孫楚の「枕流漱石」の故事にもとづくという<国語大辞典(小)> 用例の出典:五元集(ごげんしゅう) 江戸中期の俳諧集。4冊。榎本其角(えのもときかく)自選、小栗旨原編。延享4年(1747)。延宝・天和・貞享・元禄・宝永の五元に亘る発句一千余を四季別に収めた其角自選の「五元集」と、其角その他の連衆(れんじゅ)の「をのが音鶏合」と、旨原編集の「五元集拾遺」から成る。
・流石に(さすがに) 1.そうは思うものの、やはり。そうではあるが。 用例:伊勢「さすがに哀れとや思ひけむ」 2.優れているだけあって。評判だけあって。本分に違(たが)わず。 用例:後撰和歌集−秋「秋風の吹けばさすがにわびしきは」 3.他とは違って。他はともかくも。 用例:謡・羅生門「さすがに羅生門は都の南門ならずや」 用例の出典:羅生門(らしょうもん) 謡曲。五番目物。観世・宝生・金剛・喜多流。観世小次郎信光。「平家物語」などによる。渡辺綱が羅生門で鬼神の片腕を打ち落として武名をとどろかす。「綱」とも。

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・左遷(させん) 1.朝廷の内官から外官に下げること。また、一般に、それまでよりも低い官職や地位に落とすこと。 類:●左降●降格 2.中央から地方に移すこと。 類:●流罪(るざい) 出典:「史記−韓信盧綰列伝」「項王王諸将近地、而王独遠居此、此左遷也」 ★韓王信(股潜りの韓信とは別人)が沛公(はいこう=劉邦)に言った言葉。 ★昔、中国で、右を尊び左を卑しんだところから<国語大辞典(小)> ★関中(かんちゅう)の首都咸陽(かんよう=西安)から見て「左」の意味か。劉邦が封(ほう)じられた漢中(かんちゅう)〜巴蜀(はしょく)は、現在の陝西(せんせい)省〜四川(しせん)省あたり。

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・誘いの隙
(さそいのすき) 態(わざ)と隙を見せて、相手が仕掛けてくるように誘うこと。

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