【なは】~【なれ】

−−−−−−−なは(#naha)−−−−−−−
・名は実の賓
(なはじつのひん) 徳こそが主で、名誉は客である。徳があって初めて名誉が自然に伴うものであること。 出典:「荘子−逍遥遊」「許由曰、…而我猶代子、吾將爲名乎、名者實之賓也、吾將爲實乎」
名は体を表わす
(なはたいをあらわす)

−−−−−−−なへ(#nahe)−−−−−−−
・鍋が釜を黒いと言う
(なべがかまをくろいという) 煤(すす)で黒くなっている鍋が、釜のことを黒いと言って嘲笑(あざわら)う。自分の欠点に気付かないで、または自分の欠点を棚に上げて、他人の欠点を嘲笑うこと。 類:●目糞鼻糞を笑う●目脂が鼻垢を笑う●猿の尻笑い蝙蝠が燕を笑う樽抜き渋柿を笑う五十歩百歩●The pot calls the kettle black.(鍋はやかんを黒いと笑う)<「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典
・鍋釜が賑わう
(なべかまがにぎわう) 鍋と釜は生活の必需品であるところから、暮らしが楽で豊かな状態になる。
・鍋尻を焼く(なべじりをやく) 1.結婚し、夫婦となって世帯を営(いとな)む。2.鍋の底や竈(かまど)の中まで気を配るということから、台所の細かいことにまで世話を焼く。
・鍋取り公家(なべとりくげ) 1.老懸(おいか)けを付けた冠を被(かぶ)る衛府官(えふかん)の俗称。2.下級の公家、貧乏な公家などを嘲(あざけ)って呼ぶ言葉。
・鍋奉行(なべぶぎょう) 鍋料理を囲んだときに、具(ぐ)を入れる順やら、食べ頃であるないなど、とかくあれこれ指図(さしず)をする人。
・鍋蓋に目鼻(なべぶたにめはな) 丸く扁平(へんぺい)で、色が黒い顔を嘲(あざけ)って言う言葉。
・鍋蓋ののの字(なべぶたのののじ) 平仮名(ひらがな)の「の」の字のこと。 ★「乃」を「杖突きののの字」というのに対して言う。

−−−−−−−なほ(#naho)−−−−−−−
・ナポリを見てから死ね(なぽりをみてからしね) ナポリは風光明媚な都市であるから、一生に一度は訪れるべきだということ。 類:●日光を見ずして結構と言うな●桂林山水甲天下 ★イタリアのことわざ。 出典:ゲーテ「イタリア紀行」

−−−−−−−なま(#nama)−−−−−−−
・名前負け(なまえまけ) 1.名前が不相応に立派過ぎること。2.名前と実質とが伴わないために、却(かえ)って人物が見劣りすること。

・生木に鉈(なまきになた) 容易く打ち込んだり、削ったりすることがことができること。また、手応えのないことの喩え。 類:●生木に釘
・生木の筏
(なまきのいかだ) 地口の一つ。 生木は水に浮かばないことから、気が浮かぬという洒落。
・生木の燃え立ちしと百姓の怒り立ちしほど恐ろしきものなし
(なまきのもえたちしとひゃくしょうのいかりたちしほどおそろしきものなし) 燃え難い生木も、一旦火が点けば激しく燃え上がり、手が付けられない。同様に、我慢強い農民が一揆(いっき)を起こすと、手が付けられないほど勢いが盛んになり、恐ろしいものである。
・生木若味噌若世帯
(なまきわかみそわかじょたい) 不経済である事柄を列挙したもの。 類:●生木生味噌五割損 ★生木は火が点き難く、熟成してない味噌は味が悪く、若世帯は節約が足らず無駄が多いことから。
・生木を裂く
(なまきをさく) 相愛の男女を無理に別れさせる。
・生臭坊主
(なまぐさぼうず) 《四熟》 僧侶が食べることを禁じられていた、魚肉・獣肉などの生臭物を平気で食べる坊主のこと。または、戒律を守らない僧のこと。品行の悪い僧。
・怠け者の足から鳥が立つ
(なまけもののあしからとりがたつ) 普段怠けている者は、いざ事が起きると、慌てて対処を始めるものである。準備を怠(おこた)っていて、急な事態に、大騒ぎするばかりでなかなか解決できないこと。 類:●足元から鳥が立つ
怠け者の節句働き
(なまけもののせっくばたらき)
・海鼠の油揚げを食う
(なまこのあぶらあげをくう) ぬるぬるとした海鼠を油で揚げると、更に滑りが良くなる。それを食べた口は滑りが良過ぎるということ。 1.喋り過ぎること。 類:●竹に油を塗る 2.失言することの喩え。 類:●口が滑る口走る
・海鼠の化けたよう
(なまこのばけたよう) 様にならず、締まりのない様子。また、醜(みにく)いものの喩え。
・憖じい
(なまじい)・憖じ・憖じっか 1.できそうもないことを、または気が進まないのに無理にしている様子。 用例:万葉−六一三「物思ふと人に見えじと奈麻強(ナマじひ)に常の面(おもえり)ありそかねつる」 2.すべきでない、またはしなくても良いことをする様子。望んでいないのなら、強(し)いてまでしない方が良いのに、という感じで用いる。 類:●止せばいいのに 用例:源氏−若菜下「及びがたき御仲らひになましひに許され奉りてさぶらふしるしには」 3.中途半端な様子。好い加減である様子。 用例:平家−一「今生も後生も、なまじゐにしそんじたる心ちにてありつるに」 例:「なまじっかの腕では太刀打ちできない」 4.不用意である様子。迂闊(うかつ)である様子。 用例:古今著聞集−一六・五一七「引きつくろひて参るべきよし仰せくだされければ、なまじひに鬢(びん)かきあげて供奉しけり」 ★「生強い」の意。清音にも<広辞苑第四版(岩)>
・膾に叩く
(なますにたたく) 1.魚介や肉などを細く切り刻んで膾にする。細切れにする。2.転じて、人を酷(ひど)い目に遭わせる。特に、大勢で滅多打ちにすること。 用例:浄・聖徳太子絵伝記「膾に叩けと声々にをめいてかかれば」
・生唾を飲む
(なまつばをのむ)・飲み込む 1.美味しいものを見たり匂いを嗅(か)いりしたときに、自然と生唾が出てきて、それを早く食べたいと思う。2.転じて、欲望を刺激するものに接して、それを早く手にしたいと思う。 例:「札束を目にして生唾を飲み込んだ」
・生々しい
(なまなましい) 1.生きている。 用例:大和−六〇「君をおもひなまなまし身を焼くときは」 2.死んだばかりで、まだ、生新しい。 用例:読・弓張月−後「なまなましき髑髏あり」 3.生き生きとしている。目前に見るような感じである。 例:「生々しい記憶」
・生温い
(なまぬるい) 1.少し温(ぬる)い。少し暖かい。また、気味の悪い暖かさである。 例:「生温い風が顔に当たる」 用例:天草本伊曾保「ナマヌルイユヲイッパイ」 2.なんとなく柔弱である。意気地がない。強さが感じられない。 用例:仮・東海道名所記−一「なまぬるき、色の白きひな男也」 3.厳しさが十分でない。好い加減で徹底しない。 類:●手緩(ぬる)い●甘い 例:「叱り方が生温い」 用例:浄・
大経師昔暦−上「エエなまぬるい旦那殿」 用例の出典:大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ) 浄瑠璃。世話物。3段。近松門左衛門。正徳5年(1715)大坂竹本座初演。京都の大経師の妻おさんが手代茂兵衛と通じ、二人で丹波に逃れたが捕えられ、仲介をした下女お玉と三人処刑された事件を脚色。『堀川波鼓』『鑓の権三重帷子』と共に、近松三姦通物の一つ。「おさん茂兵衛」。
・生半可
(なまはんか) ものごとが好い加減で十分でないこと。 類:●中途半端●不十分●生半(なまなか) 例:「生半可な知識」
・生兵法は大疵の基
(なまびょうほうはおおきずのもと・もとい)[=怪我の基] なまじっか少しばかり武術を知っていると、それを頼んで軽々しく事を起こすので、大怪我をする原因となる。生半可な知識を持つ者が、それを自負してものごとを行ない、大失敗をすること。 類:●生兵法は知らぬに劣る●
A little learning [knowledge] is a dangerous thing.(少しばかりの学問は危険)He who commences many things finishes but few. (あれこれ手をつける者はほとんど中途半端に終わる)「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典
・生返事
(なまへんじ) 1.好い加減な返事。はっきりしない返事。2.気のない返事。 例:「上の空の生返事」

・生身を削る(なまみをけずる) 生きている肉体を刃物で削るという意味から、極度の精神的な苦痛のことを喩えて言う。
・生酔い本性違わず(なまよいほんしょうたがわず) 酒に酔っても、その本来の性質は変わらない。 類:●酒の酔い本性忘れず●上戸本性違わず

−−−−−−−なみ(#nami)−−−−−−−
・波風(なみかぜ) 1.波と風。また、強風が吹いて波が立つこと。 類:●風濤(ふうとう) 2.世の中や家庭が騒ぎ乱れること。ごたごたすること。 類:●揉(も)め事。 例:「家の中に波風が絶えない」「世の波風に揉まれる」
・涙片手
(なみだかたて) 片手で涙を押さえながら。泣きながら。また、泣く泣く。
・涙ながら(なみだながら) 涙を流しながらという意味で、非常に悲しい様子や状態を表わす。
・涙に暗れる(なみだにくれる) 涙のために暗くなる。涙のために曇る。また、泣き沈んで途方に暮れる。悲しみのため分別がなくなる。
・涙に暮れる
(なみだにくれる) 泣いて月日を送る。泣いて暮らす。
・涙に沈む
(なみだにしずむ) 泣き臥す。 類:●泣き沈む
・涙に迷う
(なみだにまよう) 涙の闇に迷う。涙に暮れて心が迷う。
・涙に咽ぶ
(なみだにむせぶ) 涙で、声が途絶えがちである。また、泣きに泣く。
・涙に咽る
(なみだにむせる) 涙で喉(のど)が詰まって、声が出なくなる。
・涙の糸
(なみだのいと) 頬を伝わる涙。糸に見立てて言った言葉。
・涙の色
(なみだのいろ) 1.甚(はなは)だしく嘆くと血の涙が出るというところから、血のような色。紅色。2.泣く様子。悲しみ嘆く様子。
・涙の底
(なみだのそこ) 流す涙が集まってできた淵の底という意味で、悲しみの底のこと。
・涙の玉
(なみだのたま)[=数珠(じゅず) 涙の粒を玉と見立てた言葉。玉なす涙。大粒の涙。
・涙の端
(なみだのつま) 涙を誘う糸口。
・涙の闇
(なみだのやみ) 涙に暮れて心が闇になること。悲嘆のあまり分別を失うこと。
・涙脆い(なみだもろい) 涙が出易い性質である。すぐ涙を流しがちである。また、気が弱い。同情し易い。 類:●涙早し 用例:蜻蛉−上「よろづにつけてなみだもろくおぼゆ」
・涙を呑む
(なみだをのむ)・飲む 涙が出そうなのを堪(こら)える。また、口惜しさ、無念さをじっと我慢する。 例:「涙を飲んで諦(あきら)める」
・涙を振るう
(なみだをふるう) 流れる涙を振り払う。私情や同情を棄てる。
・涙を揮って馬謖を斬る(なみだをふるってばしょくをきる) → 泣いて馬謖を斬る
・波に乗る
(なみにのる) 1.波の流れに乗る。2.時の流れに巧く合う。時代の風潮、時勢にあって栄える。3.調子に乗る。勢いに乗る。 類:●調子の波に乗る●調子に乗る軌道に乗る
・波にも磯にも着かず
(なみにもいそにもつかず) 中途半端でどっちつかずの落ち着かない状態。
・波の綾
(なみのあや) 波によって作られる水面の模様。細波(さざなみ)の様子を綾織物に喩えたもの。 類:●波紋
・波の緒
(なみのお) 1.美しい楽音を立てる波。弦楽器(箏・琴など)で胴の表面を海、側面を磯、揺れる弦を波に見立てるところから、逆に波を弦にたとえて言った言葉。 用例:古今−921「からことは浪のをすげて風ぞひきける」 2.二五弦の琴の初の緒。
・波の通路
(なみのかよいじ) 波が行き交う路。海上の通路。 類:●波路
・波の標
(なみのしめ) 長く連なった波頭(なみがしら)を、張り渡した標に見立てて言った言葉。
・波の皺
(なみのしわ) 1.波で作られる水面の模様。
波の綾(あや)。 類:●波紋 2.年老いて皮膚にできる皺。
・波の関
(なみのせき)[=関戸(せきど) 波のために往来が妨げられることを関所に喩えた言葉。
・波の関守(なみのせきもり) 海岸の関戸で、波を関守に見立てて言った言葉。
・波の便り
(なみのたより)[=使い] 波音が伝える便り、消息。
・波の鼓
(なみのつづみ) 波の音を、鼓を打つ音に喩えた言葉。また、波の調べのように打つ鼓。
・波の手
(なみのて) 波の中を船を自由に操る技量や手立て。
・波の音
(なみのと) 波が打ち寄せる音。波の音。 用例:
丹後風土記逸文(釈日本紀)「奈美能等(ナミノト)聞こゆ」 用例の出典①:丹後風土記(たんごふどき) 風土記。伊預部の馬養(うまかいの)連(むらじ)撰。和銅6年(713)? 聖武天皇の勅命で丹後国が提出した地誌書。 用例の出典②:釈日本紀(しゃくにほんぎ) 「日本書紀」の解説書。28巻。卜部懐賢(兼方)編著。文永11年(1274)〜正安3年(1301)の間に成立。奈良時代以降の書紀研究と卜部家家説を集大成したもの。訓や本書以前の書紀研究史が知られ、引用文によって散逸した古書類を窺える。
・波の花
(なみのはな) 1.波が白く泡立つのを白い花に見立てた言葉。 用例:古今−250「わたつうみの浪の花にぞ秋なかりけり」 2.塩。食塩。 
★元は女房詞<国語大辞典(小)>

−−−−−−−なむ(#namu)−−−−−−−
・南無三
(なむさん) 「南無三宝」の略。 1.仏教用語。「三宝」は、仏・法・僧の三つを指す。三宝に帰依(きえ)し奉(たてまつ)るの意で、三宝に呼び掛けて仏の救いを求める言葉。 用例:光悦本謡曲・
邯鄲「げに何事も一炊の夢、南無三宝南無三宝」 2.突然の出来事に驚いたり失敗したりして発する言葉。 類:●しまった 用例:幸若信太「しづめの石ばかりをば、たんふとうち入南無三宝」 用例の出典①:邯鄲(かんたん) 謡曲。四番目物。各流。古名「邯鄲枕」「盧生(ろせい)」。「邯鄲の枕」の故事に取材したもの。 用例の出典②:信太(しだ) 幸若舞。室町時代。・・・調査中。

−−−−−−−なめ(#name)−−−−−−−
蛞蝓に塩
(なめくじにしお)
・蛞蝓にも角
(なめくじにもつの) 弱い蛞蝓にも角がある。弱い者でも角を突いて歯向かうこともある。弱い者だからといって侮るものではない。 類:●一寸の虫にも五分の魂
・舐めて掛かる(なめてかかる) 人やものごとを、軽く見る。 類:●甘く見る●馬鹿にする●見縊(みくび)る 例:「舐めて掛かると痛い目に遭うぞ」 
★「無礼(なめ)」の動詞化<大辞林(三)>

−−−−−−−なよ(#nayo)−−−−−−−
・名好き島に木寄る(なよきしまにもくよる) 流木は、どうせ流れ寄るのなら、名前の好い方の島に流れ寄る。人も、名前や体裁の好い方を好んでそこに集まるということ。

−−−−−−−なら(#nara)−−−−−−−

・習い性と成る
(ならいせいとなる) 習慣は、身に付いてしまえば終(しま)いには天性のようなものになる。 類:●習慣は第二の天性●習慣は自然の如し 出典:「書経−太甲・上」「[玄+玄]乃不義、習与性成
・習うより慣れろ
(ならうよりなれろ)[=慣れよ]  改まって習うより、自然に慣れる方が効果がある。 
類:●Practice makes perfect.(練習は完成を生む)●Custom makes all things easy.(慣れれば何でも容易になる)<「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典
・鳴らす(ならす) 1.鳴るようにする。音を立てさせる。響かせる。 例:「咽喉(のど)を鳴らす」 用例:源氏−若紫「妻戸をならして」 2.放屁する。おならをする。 用例:大鏡−二「いとたかやかにならして侍けるに」 3.名前などを知れ渡らせる。評判を取る。 例:「裏の世界で鳴らした人」 用例:虎寛本狂言・
武悪「此世では、はがねをならいた侍が」 4.遍(あまね)く知らせる。広く聞こえさせる。 例:「罪を鳴らす」 5.取立てて言う。言い立てる。 例:「不平を鳴らす」 用例の出典:武悪(ぶあく) 狂言。各流。太郎冠者は主人に不奉公な武悪を成敗するように命じられるが、殺すに忍びず逃がす。ところが、武悪は鳥辺野で太郎冠者を連れた主人に見付かってしまう。武悪は一計を案じて幽霊になり、あの世での主人の亡父の話をし、父を懐かしむ主人から太刀(たち)や扇を貰う。
・成らず者
(ならずもの) 1.暮らしが思うようにならない者。生活が不如意(ふにょい)な者。 2.生活態度がだらしなく、手の付けようがないほど質(たち)の悪い者。どうしようもない者。 類:●道楽者●ならずめ 3.定職がなく、放浪して悪事を働く者。 類:●破落戸(ごろつき)●無頼漢●やくざ
・成らぬ堪忍するが堪忍
(ならぬかんにんするがかんにん) 忍ぶことができない堪忍を、それでもじっと堪えることこそ、本当の堪忍というものである。 
★「なる」は、できるの意<国語大辞典(小)>
・習わぬ経は読めぬ(ならわぬきょうはよめぬ) 習ったことのない難しいお経など読めるはずがない。知識も経験もないことは、やれと言われてもできるものではないということの喩え。いろは歌留多(大坂・尾張)にあった言葉。 反:■門前の小僧習わぬ経を読む勧学院の雀は蒙求を囀る

−−−−−−−なり(#nari)−−−−−−−
・成り上がる(なりあがる) 1.位階が次第に昇る。出世する。 用例:落窪−二「かく少将なりあがり給ふにつけても」 2.低い地位、賤しい身分から身を起こしす。また、貧乏人が急に金持ちになる。立身する。 用例:史記抄−一四「奴僕から、いかうなりあかりたぞ」 3.できあがる。成就する。 用例:虎寛本狂言・
成上り「渋柿が熟しに成上る」 用例の出典:成上り(なりあがり) 狂言。大蔵・和泉流。眠っている間に都の詐欺師に主人の太刀を青竹に代えられた太郎冠者は、主人に太刀が青竹に成り上がったと言い訳する。主人は盗人の仕業(しわざ)と知り、詐欺師を捕まえるが、太郎冠者の失敗で逃がしてしまう。
・成金(なりきん) 将棋で、敵陣の三段目以内に入って金将と成った駒のこと。転じて、急に金持ちになること。また、その人。 例:「成金趣味」「にわか成金」 類:●俄か分限(にわかぶげん)●梅の木分限
・成り下がる
(なりさがる) 富貴から貧乏になる。身分などが低くなる。零落(おちぶ)れる。零落する。また、品性が高貴であった者が卑しくなる。 用例:米沢本沙石集−五末・二「なりさがりたる身こそつらけれ」
・形振り構わず
(なりふりかまわず) 「形振り」は、服装と態度のこと。身繕いなど、姿格好を気にせずに。外見や体面を気にせずに。
・鳴り物入り(なりものいり) 1.歌舞伎などで、鳴物を使って囃(はや)すこと。また、楽器を使って、調子を取ったり、賑やかに囃し立てたりすること。 例:「鳴物入りの応援」 2.転じて、ものごとを大袈裟に宣伝すること。賑やかに景気を付けること。 例:「鳴物入りで入社してきた」
・生業
(なりわい) 1.五穀が実るように務めること。田畑を耕作すること。 類:●農耕●農業 2.生活していくための仕事。世渡りの仕事。 類:●職業●家業 例:「筆で生業を立てる」 3.小正月の予祝行事として、若木で小さな農具を作って祝うこと。 
★「なり」は生産の意の「なり(業)」、「わい」は「さきわい」「にぎわい」などと同じく接尾語「わう」の名詞形<国語大辞典(小)>
・生業は草の種
(なりわいはくさのたね) 人が生計を立てるための手段は、草の種のように数が多いから、どこに行っても職にありつけるものだということ。 類:●世渡りは草の種
・鳴りを潜める
(なりをひそめる)[=静める] 1.音や声を静める。静かにさせる。2.暫く動きを止める。活動が途絶える。

−−−−−−−なる(#naru)−−−−−−−
・鳴る神も桑原に恐る(なるかみもくわばらにおそる) 雷も桑原は避けて落ちない。強い者にも苦手があるということの喩え。 ★俗説:菅原道真の亡霊が雷になり、しばしば京都地方へ落ちて人心を寒からしめたが自分の領地の桑原には落ちなかった。 →参考:桑原(くわばら)
・成るは厭なり思うは成らず
(なるはいやなりおもうはならず) 成就することはきにいらないし、これはと思うものは纏(まと)まらないという意味で、縁談などが、思うようにならないこと。
・成るように成る(なるようになる) ものごとは、とやかく言ったり、あれこれ心配しても変わらない。必然の成り行きのままに、そうなるものである。

−−−−−−−なれ(#nare)−−−−−−−
・馴れ合う(なれあう) 1.お互いに馴れ親しむ。親しみ合う。2.男女が情を通じ合う。 類:●密通する●私通する●野合する 用例:人情・春色梅児誉美−六「そりゃア、茶屋衆となれあった日にゃア」 3.2.から転じて)しっくりする。よく調和する。 用例:俳・貝おほひ−二一番「一句もすらりと立のびて、なれあふたり」 4.密(ひそ)かに示し合わせて悪事を謀(はか)る。 類:●ぐるになる●八百長 用例:茶屋諸分調方記−六「はうばいになれあい」 用例の出典①:貝おほひ(かいおおい) 俳諧発句合せ。一冊。松尾宗房(芭蕉)。寛文12年(1672)。芭蕉の処女集。芭蕉が故郷伊賀上野の俳人36人の発句に自句を加え、計60句30番の句合せに仕立て、自ら判者となって判詞を添えたもの。談林的気分が強い。「三十番俳諧合」。 用例の出典②:茶屋諸分調方記(ちゃやしょわけちょうほうき) 仮名草紙。重宝記(手引書)。元禄6年(1693)。上方の遊里の生活を描いたもの。・・・調査中。
・馴れ初め
(なれそめ) 初めて馴染みになること。特に、恋仲になった初め。また、そのきっかけとなったできごと。 例:「そもそもの馴れそめは」
・慣れっこ
(なれっこ) すっかり慣れてしまっていること。また、慣れてあまり感じなくなっていること。 例:「振られるのも慣れっこになっちゃった」 ★「慣れ事(なれこ)」から変化した言葉。
・成れの果て
(なれのはて) 成り果てた現状。零落(おちぶ)れ果てた姿。 類:●成れる果て 例:「お大尽のなれの果て」
・馴れ馴れしい
(なれなれしい) 1.大変に親しい様子。馴れて心安そうな様子。 用例:宇津保−嵯峨院「九のきみになれなれしき事あらむ」 2.不躾(ぶしつけ)である。無遠慮である。 例:「馴れ馴れしい口を利く」 用例:源氏−梅枝「いとなれなれしきこと、きこえつけたりしを」

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