【やま】~【やん】

−−−−−−−やま1(#yama)−−−−−−−
・病革まる
(やまいあらたまる) 病状が危篤の状態になる。
病膏肓に入る
(やまいこうこうにいる)
・病に六不治あり
(やまいにろくふちあり) 治る病気でも、自分から治らなくするような原因が六つある。 ★漢方医学における概念の一つで、扁鵲(へんじゃく)が唱えた。①高慢で我が儘、②金の亡者、③衣食が滅茶苦茶、④ストレス過多、⑤衰弱(手遅れ)、⑥宗教を妄信。 出典:「史記−扁鵲(へんじゃく)倉公列伝」「故病有六不治、驕恣不論於理」
病は気から
(やまいはきから)[=気より]
・病は口より入り禍は口より出ず
(やまいはくちよりはいりわざわいはくちよりいず) 病気は口から入る飲食物によって生じ、禍いは口から出る言葉を慎まないところから起こる。
・山芋を掘る
(やまいもをほる) 鹿児島の言葉。酔っ払って人に絡(から)んだり、諄々(くどくど)と愚痴を零(こぼ)したり、嫌みを言ったりすること。 ★山芋を掘るとき、土中深く埋まっていてどうやって掘ろうか思案してブツブツ言ったり、細くて折れ易いので気が立ってくることから。
・山が当たる
(やまがあたる) 凡(おおよ)その見当を付けていたことが当たること。試験などで予想した問題が出た場合などに使う。 
反:■山が外れる
・山が動く(やまがうごく) 変わるはずがないと思われていたものごとが変化すること。多く、膠着していた事態が変わり始めたときを指して言う。 例:「動かないと思われた武田軍が南下、ついに山が動いた」 ★89年の参院選で、社会党の土井たか子委員長は女性候補を次々と擁立し、「マドンナ旋風」を起こして大勝。55年体制下の参院で初めて与野党が逆転し、「山が動いた」と語った。
・山片付く
(やまかたづく)[=片掛(かたか)く] 建物などが、山に近く寄っている。一方が山に沿っている。片側が山に接している。 用例:万葉−一八四二「山片就(やまかたつき)て家居せる君」
・山が外れる
(やまがはずれる) 予(あらかじ)め見当を付けておいたことが外れる。 
反:■山が当たる
・山が見える
(やまがみえる)[=見られる] 前途の見込みが付く。難所や困難な時期を乗り切って、将来の見通しが立つ。 類:●先が見える
・山から里へ
(やまからさとへ) 里から山へが順序であるのに逆であることから、ものごとがあべこべであること。 類:●寺から里へ本末転倒
・山師の玄関
(やましのげんかん) 山師は、相手を信用させるために玄関を立派に飾り立てることから、見掛けばかり立派にすること。 類:●藪医者の玄関●藪医者の薬味箪笥 ★ここでの「山師」は、投機的な事業で大儲けを狙う人や詐欺師のこと。
山高きが故に貴からず
(やまたかきがゆえにとうとからず)
・山高く水長し
(やまたかくみずながし) 仁者や君子の、徳の高さは山が聳(そび)えるほど高く、人民を潤すことは河水のように広いということ。または、仁者や君子の徳が長く伝わるのを、山がいつまでも高く聳(そび)え、水が永久に流れ続けることに喩えたもの。 類:●山高水長
・山と言えば川と言う
(やまといえばかわという) 人の言葉に反対ばかりすること。 類:●右といえば左ああ言えばこう言う
・山とし高し
(やまとしたかし) 山のように高く積もる。年齢が多く積もることなどの喩えに使う。
・大和の吊し柿
(やまとのつるしがき) 1.色は黒くても味が良いということ。見掛けは良くないが質は良いということの喩え。 ★「大和柿」は、御所柿(ごしょがき)のことで、奈良県御所(ごせ)市の原産といわれる。 2.地口の一つ。 蒂(へた)なりに固まっているということで、下手(へた)のまま固定して進歩する見込みがないことの洒落。
・止まない雨はない
(やまないあめはない) どんなに雨が降り続こうと、必ず止むときが来る。今は不幸な時期であっても、やがて必ず良い時期が来るということ。 類:●明けない夜はない
・山に千年海に千年
(やまにせんねんうみにせんねん) 世の中の経験を十分に積んでものごとの裏表に通じていて狡賢(ずるがしこ)いこと。また、そのような強(したた)か者。 
俗説:山に千年住み、海に千年住んだ蛇は竜になると言われた。 類:●海千山千●海千河千
・山に躓くこと莫くして蟻塚に躓く
(やまにつまずくことなくしてありづかにつまずく) 人は高い山に躓くことはないが、蟻塚のような小さなものに躓く。小事を軽視すると失敗するという戒め。「ありづか」の漢字は[土+至]。 出典:「韓非子−十」・「淮南子−人間訓」
・山眠る(やまねむる) 冬の山が静まり返っている状態。 用例:俳・
寛政句帖−四年「君が代や風治りて山ねむる」 用例の出典:寛政句帖(かんせいくちょう) 俳諧。小林一茶。寛政5年(1793)頃。・・・調査中。 
・山の井
(やまのい) 山中の、湧水を湛(たた)えたところ。 類:●山井 
★掘井戸に対して浅いところから、和歌では「浅い」の序詞の一部としても用いる<国語大辞典(小)>
・山の芋が鰻になる
(やまのいもがうなぎになる)[=化ける] 1.ものごとが突然意外なものに変化することの喩え。到底(とうてい)起こりそうもないことが起こることの喩え。2.特に、卑しい者が急に出世することの喩え。
・山の神
(やまのかみ) 1.山を守り司(つかさど)る神。山神。また、山の精。山子(やまこ)。魑魅(ちみ)。2.自分の妻のこと。特に、結婚後年を経て口喧(やかま)しくなった妻のことを指して言う。また、自分の妻を遜(へりくだ)っても言う。 用例:虎明本狂言・花子「われらも人をはさいさいやり候へども、れいの山のかみが、すこしの間もはなさぬに依て」 ★木花開耶姫(このはなさくやひめ)と一緒に瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に嫁した姉の磐長姫(いわながひめ)のことから、容貌の良くない妻のことを指すようになったとされる。 3.遊女にとって口喧しく恐い存在であるところから、遣手婆(やりてばばあ)のこと。 用例の出典:花子(はなご) 狂言。各流。男が自分の代わりに太郎冠者に座禅衾(ぶすま)を被(かぶ)せ、愛人の花子の所に行く。妻は、それが身代わりであることを見破り、太郎冠者に代わって座禅衾を被る。翌朝帰ってきた夫は、妻とも知らずに花子に会った時の話を小歌混じりに語り、衾を取って驚く。

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・山のことは樵に聞け
(やまのことはきこりにきけ) 山のことなら、山に詳しい樵に聞くのが一番である。実際に携(たずさ)わりそのことに長じている者に聞くのが一番である、ということの喩え。 類:●稼(か)は老農に如かず圃は老圃に如かず海のことは漁師に聞け
・山の手
(やまのて) 1.山の方。山に近い方。山のある地域。2.江戸或いは東京で、やや高台にある住宅地のこと。江戸時代には麹町、四谷、牛込、赤坂、小石川、本郷などを指し、殆(ほとん)ど大名や旗本などの武家屋敷と寺院で占められ、町家は稀だった。明治以降、官吏や地方出身の軍人などが多く居住する。 
反:■下町 ★現在は広く世田谷・杉並区を含める<国語大辞典(小)> 
・山の端
(やまのは) 山を遠くから眺めたとき、山が空に接する部分。 類:●稜線(りょうせん)
・山吹色
(やまぶきいろ) 1.山吹の花のような色。黄色。 類:●黄金色●梔子(くちなし)色 2.色が似ているところから、小判や大判。
・山々
(やまやま) 1.あちこちの山。たくさんの山。また、山岳仏教の多くの寺々。 例:「出羽の山々」 2.多いこと。たくさんあること。あるいは、程度の甚(はなは)だしいこと。 例:「言うべきことは山々ある」 3.この上ないこと。多く、熱望するが実際にはそうできないときに使う。 例:「出席したいのは山々ですが」
・山より大きな猪は出ぬ
(やまよりおおきないのししはでぬ) いくら猪が大きいといっても、棲んでいる山より大きいことはない。誇張するにも限度がある、程々にしなさいということ。
・山笑う
(やまわらう) 新緑や花などによって山全体が萌(も)えるように明るい様子。 用例:俳・
笈の若葉「山笑ふ柳をしたふ名残かな」 用例の出典:笈の若葉(おいのわかば) 俳諧(紀行)。建部綾足(たけべあやたり)?。・・・調査中。 
・山を当てる
(やまをあてる) 鉱脈や埋蔵物がある山を掘り当てること。転じて、可能性の少ないことに賭けて当てる。 例:「有馬記念で山を当てる」
・山を鋳海を煮る
(やまをいうみをにる) 山からは鉱物を採掘して金属を鋳る、海からは海水を煮て塩を採るということ。国内には産物が豊富であるということ。
・山を掛ける
(やまをかける)[=張る] 1.万に一つの幸せを狙って投機的な冒険をする。また、当て推量で物を言う。2.試験で、問題に出そうな箇所を推定する。
・山を成す
(やまをなす) 山のような形を成す。物が堆(うずたか)く積んである。 類:●山成す
・山を抜く
(やまをぬく) 力が強大で山を抜き取るほどである。 類:●抜山蓋世 出典:「史記−項羽本紀」「力抜山兮気蓋世、時不利兮騅不逝」
・山を踏む
(やまをふく) 犯罪を実行すること。警察や犯罪者などが使う俗語。

−−−−−−−やみ(#yami)−−−−−−−
・闇から牛を引き出す
(やみからうしをひきだす) 咄嗟には判断が付かないこと。また、性質がはきはきせず、動作の遅鈍な人。 類:●暗がりから牛
・闇から闇
(やみからやみ)[=より闇] 1.暗黒世界から暗黒世界に移っていくこと。瞬時も光明に出合わないこと。2.胎児を、出まれないうちに死なせること。 類:●堕胎する 3.後に証拠が残らないように、こっそり事件を始末すること。 例:「真相を闇から闇に葬る」
・闇雲
(やみくも) 1.黒い雲。 用例:黄・
高漫斉行脚日記−上「にわかに空かきくもり、やみくも立かさなりけるままに」 2.闇の中で雲を掴むように、漠然としていて宛てがないこと。また、前後の見境がないこと。無理矢理行なうこと。 類:●無闇矢鱈 用例:雑俳・川柳評万句合−宝暦一二「やみくもにすてっぺんから足を取り」 用例の出典:高漫斉行脚日記(こうまんさいあんぎゃにっき) 黄表紙本。恋川春町作・画。安永5年(1776)。3巻。謡曲『善界』『鉢木』の趣向を元にした作品。天狗が高漫斉とその弟子たちを魔道に引き入れようとするというもの。当時の俳諧、茶の湯などの浮薄な流行や営利に走る宗匠の実体を風刺的に描いた。 参考:善界(ぜかい) 能楽。五番目物。天狗物。各流。竹田法印宗盛。唐の天狗の首領善界坊が、日本の仏法を妨げるために比叡山に来るが、不動明王を念じる僧によって追い払われる。
・病み付き
(やみつき) 1.病気に罹(かか)ること。また、病気の罹り始め。2.悪習や道楽に染まること。ものごとに熱中してやめられなくなること。また、その始め。 例:「一度食べたら病み付きになった」
・闇に烏
(やみにからす) 良く似ていて、判別がし難(にく)い。 類:●
闇夜に烏
・闇に暮れる
(やみにくれる)[=暮る] 1.日が暮れて闇夜になる。2.悲しみや嘆きのため、心の分別を失う。
・闇に咲く花
(やみにさくはな) 売春婦。闇の女。 類:●夜の女
・闇に惑う
(やみにまどう)[=迷う] 暗闇のせいで道に迷うこと。また、比喩的に用いて、思慮分別を失って、途方に暮れること。
・闇の現
(やみのうつつ) 暗闇の中での現実という意味で、心が乱れ迷っているときの、僅かな間の正気。
・闇の女
(やみのおんな) 夜、街頭に立って客を引く女。売春婦。 類:●夜の女
・闇の錦
(やみのにしき) 1.
闇夜の錦 2.他に目も呉れないこと。他の事には少しも心を掛けないこと。
・闇の夜
(やみのよ) 1.闇夜。2.
闇夜の錦」の略。3.闇の夜の瓢箪」の略。4.歌舞伎下座音楽の一つ。江戸吉原の傾城の出入りに用いる下座唄。長唄「揚巻」冒頭の一節で、渡り拍子・当り鉦・大太鼓の通り神楽を入れる。 参考:揚巻(あげまき) 長唄「助六姿裏梅(すけろくすがたのうらうめ)」の通称。 参照:助六姿裏梅(すけろくすがたのうらうめ) 歌舞伎所作事。長唄。三世桜田治助作詞。十世杵屋六左衛門作曲。安政4年(1857)初演。通称「揚巻」。「闇の夜に吉原ばかり月夜かな、月じゃ月じゃ」
・闇の夜に灯火を失う(やみのよにともしびをうしなう) 頼りとしていたものや人を失って、途方に暮れること。
・闇の夜の瓢箪
(やみのよのひょうたん) 闇夜では後先も分からないことから、上と下が同じ大きさで上下の区別が付かない瓢箪のこと。 
★根付(ねつけ)などに珍重して用いられた<国語大辞典(小)>
・闇夜に烏
(やみよのからす) 見分けが付かないこと。
・闇夜に目あり
(やみよにめあり) 人知れず悪事をしても、必ず露顕(ろけん)するということ。 類:●壁に耳●壁に耳あり障子に目あり●天に眼(まなこ)
闇夜の鉄砲
(やみよのてっぽう)
・闇夜の灯火
(やみよのともしび)[=に灯火][=提灯(ちょうちん) 酷(ひど)く困まっているときに、頼りになるものに巡り会うこと。また、切望していたものに巡り会うこと。 類:●闇夜の燈●闇の夜道の松明(たいまつ)
・闇夜の錦
(やみよのにしき)[=に錦] 闇夜に華やかな錦の着物を着ても仕様がないということから、無駄なこと、やっても意味のないこと。 類:●夜の錦●闇の夜の錦

−−−−−−−やむ(#yamu)−−−−−−−
・野無遺賢
(やむいけん) 《四熟》 官の任用から漏れた在野の賢人はいないはずだということ。賢人は全てしかるべき官庁に登用され、立派な行政が行なわれること。 出典:「書経−大禹謨」「允若茲、嘉言罔攸伏、野無遺賢、萬邦咸寧」
・止む方なし
(やむかたなし) 止(とど)める方法がないという意味から、仕方がないということ。 類:●
止むを得ない●止むことを得ず●止むなし
・止むなし(やむなし) 止(とど)まることがないという意味から、仕方がないということ。 類:●
止む方なし●止むを得ない●止むことを得ず
・止むに止まれぬ(やむにやまれぬ)[=ず] 止めようとしても止められない。そうしないではいられない。
・病む身より見る目
(やむみよりみるめ)・看る目 病気になっている者も辛(つら)いが、それを看病している者の方がもっと辛いということ。「病む目より見る目」とも。
・止むを得ない
(やむをえない)[=得ず・得ん] 仕方がない。どうしようもない。 類:●理(わり)無い●拠所(よんどころ)ない●
止むなし 例:「止むを得ない理由」

−−−−−−−やも(#yamo)−−−−−−−
・矢も楯もたまらず
(やもたてもたまらず)[=ない] あることをしたいという欲求の、勢いを制することができないこと。思い詰めて堪(こら)えることができないこと。

−−−−−−−やや(#yaya)−−−−−−−
・稍あって(ややあって)[=ありて] 暫(しばら)くして。少し時が経って。
・動もすれば
(ややもすれば) ものごとが、兎角(とかく)そうなりがちであるということ。 類:●何かにつけて●ともすれば●どうかすると●またしても●動もすると●動もせば 用例:源氏−若菜上「ややもすれば、花の木に目をつけてながめやる」 例:「動もすれば、安易な道を選びがちだ」 参考:後漢書−南匈奴」「歳時賞賜、輒億万」<歳時賞賜し、動(ややもす)れば輒(すなは)ち億万なり(毎年金品や官位を与え、どうかするとすぐに億や万になってしまう)> ★「ややもすると」は、「稍」と同源で、「弥」を重ねたものから。漢語の用法「動」に読みを当てたもの。

−−−−−−−やら(#yara)−−−−−−−
・遣らずの雨
(やらずのあめ) 帰ろうとする人を、まるで引き止めるかのように降り出した雨。また、出掛けようとするとき、折悪く降ってくる雨。
・遣らず打っ手繰り
(やらずぶったくり) 人に与えることもしないで、ただ取り上げる一方であること。
・遣らん方なし
(やらんかたなし) 心を晴らそうとしても、心に引っ掛かって晴らしようがない。心から払い除ける方法もない。 類:●
遣る方ない 用例:源氏−夕顔「くやしさもやらんかたなし」 ★「やらんかた」の「ん」は推量の助動詞<国語大辞典(小)>

−−−−−−−やり(#yari)−−−−−−−
・槍が入る
(やりがはいる) 文句や苦情が出る。 類:●横槍が入る
・槍が降っても(やりがふっても) どんな障害や困難があろうとも実行するということ。決心が固いことの喩え。また、風雨を厭(いと)わないこと。 類:●火が降っても槍が降っても●火が降っても雨が降っても●火の雨が降っても
・遣り切れない
(やりきれない)[=ぬ・ん] 1.最後まで成し遂げられない。これ以上できない。 例:「残り30分では遣り切れない」 2.我慢できない。耐えられない。敵(かな)わない。 類:●理(わり)無い 例:「寒くて遣り切れない」「寂しくて遣り切れない」
・遣り繰りが付く
(やりくりがつく) 算段が付くという意味で、金銭や時間、また仕事の手順などを工夫して、通常無理なことが巧く行くようになること。
・遣り繰り算段(やりくりさんだん) 遣り繰って算段をすること。金銭を色々と工面(くめん)をする。 
★特に金銭上のやりくりの工夫<大辞林(三)>
・遣り繰り身上
(やりくりしんじょう) 遣り繰りで辛うじて維持する世帯。
・槍先の功名
(やりさきのこうみょう) 戦場での功名。 類:●武功
・槍下の功名
(やりしたのこうみょう) 戦場で、敵を槍で突き伏せて首を取ること。また、単に、戦場での功名。
・遣り過ごす
(やりすごす) 1.後ろから来るものを先に行かせる。 用例:蜻蛉−中「やりすごして、今はたちてゆけば」 2.なすがままにしておく。相手のするままにして何もしないでいる。 例:「見て見ぬ振りで遣り過ごす」 3.限度を越えてする。やり過ぎる。 類:●度を越す 例:「酒を遣り過ごす」
・槍玉に挙げる
(やりだまにあげる)[=上げる] 1.槍の穂先で突き上げる。槍で突き刺す。2.多くの中から選び出して犠牲にする。特に、非難や攻撃の対象にして責める。 例:「首謀者として槍玉に挙げられる」
・遣り手(やりて) 1.ものごとをする人。行なう人。 類:●仕手(して) 2.腕前のある人。ものごとに巧みな人。 類:●手腕家●敏腕家●切れ者 例:「業界一の遣り手」
・槍を出す
(やりをだす) 1.突き出す。また、文句を付ける。 類:●横槍を入れる 2.能楽で、誤って先に唄い出し、地謡が揃わなくなる。

−−−−−−−やる(#yaru)−−−−−−−
・遣る方ない
(やるかたない) 1.心に蟠(わだかま)っていることの遣り場がない。思いを晴らす方法がない。 類:●
遣らん方なし 用例:宇津保−菊の宴「程もなしとかいふなる身より思ひたまひあまりぬるを、やるかたなければなん」 2.並(なみ)一通りでない。程度がどうしようもないほど異常である。 用例:塩山仮名法語−二「直に心絶し、やるかたなき工夫をして、間断なくんは」 3.伝えてゆく方法もない。 用例:却来華「嫡孫は未だ幼少也。やるかたなき二跡の芸道」 用例の出典①:塩山仮名法語(えんざんかなほうご) 臨済宗の塩山抜隊(ばっすい)和尚が述作した法語集。1巻。13章から成り、僧、尼僧、在俗信者を対象としたもの。成立は至徳4年(1387)以前。 用例の出典②:却来華(きゃくらいか) 世阿弥。最後の伝書。永享5年(1433)。地方興行に出て三重県の津市で突然早世した長男元雅(もとまさ)の死を悼んだ文章。元雅の死によって「当流の道絶えて、一座すぞで破減しぬ」とまで記し、観世座が事実上解体された激しい慟哭を綴る。
・遣る方もない
(やるかたもない) 為(な)すべき方法もないという意味から、思いを晴らす手段がないということ。また、致し方ないということ。

−−−−−−−やろ(#yaro)−−−−−−−
・夜郎自大(やろうじだい) 自分の力量を知らないで威張(いば)ること。 類:●井の中の蛙遼東の豕(いのこ) 
故事:史記−西南夷伝」 中国西南の民族国家夜郎は、漢の強大さを知らずに自分の勢力を誇っていた。漢からの使者に向かって夜郎王は「夜郎国と漢とではどちらが大きいか」と尋ねた。 ★「史記」によれば、「漢は我と大なることいずれぞ」と聞いたのは、夜郎王より?(てん[=さんずい+眞])王が先であった。

−−−−−−−やわ(#yawa)−−−−−−−
・八幡の藪知らず
(やわたのやぶしらず) 入ると出口が分からない藪。転じて、入り込むと出口が分からなくなるということ。迷うこと。 
伝承:千葉県市川市八幡に、かつては迷いこんだら出られないと言われた「八幡の藪知らず」と呼ばれる藪があった。 
・軟らか本
(やわらかぼん) 内容が軟らかい書物。小説・戯曲などの本。また、艶本(えんぽん)。 類:●軟らか物
・和らかを入れる
(やわらかをいれる) 和平を申し入れるという意味で、対立する相手に仲直りを申し入れること。

−−−−−−−やを(#yawo)−−−−−−−
・矢を射るが如し
(やをいるがごとし) ものごとや動作が非常に速いこと、速くて一直線に進むことのたとえ。 類:●矢の如し
・矢を向ける
(やうをむける) 攻撃の矢を向けるという意味から、詰問や攻撃などの矛先を向けること。 類:●矛先を向ける 例:「非難の矢を向ける」

−−−−−−−やん−−−−−−−
・止ん事ない(やんごとない) 1.止むを得ない。打ち捨てて置けない。 用例:蜻蛉−上「やんごとなきことありとて、出でんとするに」 2.一通りでない。重々しい、権威がある、特別である、など。 用例:源氏−若紫「人がらもやむごとなく」 3.地位や家柄が第一流である。高貴である。 用例:伊勢−100「あるやむごとなき人の御局より」 4.貴重である。尊い。恐れ多い。 用例:−七十「やむごとなき物持たせて」 
★「止む事無し」が一語の形容詞に転じた語。「やむごとなし」とも表記<国語大辞典(小)>
・やんちゃ 幼児またはそれ以外が、子供のように我が儘(まま)勝手な振舞いをすること。子供が、活発で大人の言うことを聞かないこと。駄々を捏(こ)ねて無理をいうこと。また、その人。 類:●やんちゃん●脂茶腕白 例:「やんちゃ坊主」「やんちゃ盛り」 
★「やにちゃ(脂茶)」の変化<国語大辞典(小)>

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