【よい】~【よの】
・良いうちから養生(よいうちからようじょう) 1.身体は丈夫(じょうぶ)なうちから労(いた)わるのが最高の健康法である。 類:●予防は治療に勝る 2.普段から用心や準備をしておけば、良い結果が得られるということ。 類:●転ばぬ先の杖●濡れぬ先の傘●備えあれば患えなし
・宵越しの銭は持たぬ(よいごしのぜにはもたぬ)[=宵越しの金(かね)は〜]・[=使わぬ] 金銭に執着しないことの喩えで、江戸っ子の気性の一つとされた。金銭を貯めるなどは初めから考えず、その日に得た収入は、その日のうちに使い切ってしまうものだ。
・良い子になる(よいこになる) 自分だけが人に良く思われるような行動を取る。 ★「よい子の顔になる」というようにも使う<国語慣用句辞典(集)>
・酔い醒めの水下戸知らず(よいざめのみずげこしらず) 酔い覚めの渇きに飲む水の美味さは、酒飲みにしか分からぬものである。この味を知らない下戸は可哀想だということ。 類:●酔い醒めの水は甘露の味●酒はやめても酔い醒めの水はやめられぬ●酔い覚めの水千両と値が決まり 出典:古川柳「酔(え)ひ覚めの水のうまさや下戸知らず」
・酔い醒めの水は甘露の味(よいざめのみずはかんろのあじ) 酔い醒(ざめ)めの時分に飲む冷たい水は喩えようもなく美味い味であるということ。
・よいしょ 1.力を入れて物を動かすときや、ある動作を起こそうとするときの掛け声。 類:●どっこいしょ 2.俗謡・民謡などの囃子詞(はやしことば)。 類:●どっこいしょ
・よいしょする 胡麻(ごま)を擂(す)ったり、おべっかを言ったりすること。 類:●胡麻を擂る 例:「上司によいしょする」
・酔いどれ怪我をせず(よいどれけがをせず) 1.酔っぱらいは大怪我をしないものだということ。 類:●酒の酔い落ちても怪我せず 2.無心の者や、心に蟠(わだかま)りの無い無邪気な者は、大きな失敗をしないものだということ。
・良い面の皮(よいつらのかわ) → いい面の皮
・宵の口(よいのくち) 日が暮れてまだそう時間が経っていない頃合い。
・宵の虫の明燭に赴くが猶し(よいのむしのめいしょくにおもむくがごとし) 1.悪を慕(した)うことは、夜に虫が明かりに飛び込むようなもので、必ず身を滅ぼすものであるということ。 出典:「抱朴子」「慕悪者、猶宵之蟲之赴明燭」 2.自らを滅ぼすような禍(わざわい)の中に進んで身を投ずること。みすみす敵の餌食(えじき)になること。 類:●飛んで火に入る夏の虫
・余韻嫋嫋(よいんじょうじょう)・余音嫋嫋 《四熟》 1.音が鳴り止んでもなお、幽(かす)かに残る響き。また、その音が細く長く続く様子。 出典:蘇軾の詩「前赤壁賦」「其声嗚嗚然、如怨如慕、如泣如訴。余音嫋嫋、不絶如縷」 ★「嫋嫋」は、音声が細く長く続く様子。 2.文章などの趣(おもむき)や風情(ふぜい)が、終わった後に残ること。
−−−−−−−よう(#you)−−−−−−−
・用ある時の地蔵顔、用なき時の閻魔顔(ようあるときのじぞうがお、ようなきときのえんまがお) 人は勝手なもので、何か人に頼み事があるときにはお地蔵様のように優しいにこにこ顔をするが、お呼びでないときには閻魔様のように無愛想(ぶあいそう)な顔付きになるものだということ。 類:●借る時の地蔵顔、済す時の閻魔顔
・用意周到(よういしゅうとう) 《四熟》 用意が遍(あまね)く行き届いて、少しも手抜かりがないこと。 類:●手回しが良い●準備万端(ばんたん)
・用が足りる(ようがたりる) 役に立つ、間に合うという意味で、目的や仕事を処理するのに役立つこと。また、自分一人でやれるとか、用便を済ませられるということ。
・陽関三畳(ようかんさんじょう) 《四熟》 別れを繰り返し惜しむこと。「陽関の曲」の結句「西出陽関無故人(西のかた陽関を出ずれば故人無からん)」を三回繰り返して歌い別れを惜しむこと。 出典:蘇軾の詩 ★「陽関の曲」 王維の詩「送元二使安西」の別名。「渭城の曲」ともいう。
・腰間の秋水(ようかんのしゅうすい) 「秋水」は、曇りなくとぎすました刀のこと。腰に差した利刀のこと。
・陽気発するところ金石また透る(ようきはっするところきんせきまたとおる) どんな困難も精神を集中して行なえば、打ち勝つことができる。
・養虎(ようこ) 虎を飼うこと。転じて、不安を将来に残すことや後日禍(わざわい)となる敵を許すことの喩え。 出典:「史記−項羽本紀」「此所謂養虎自遺患也」
・要害堅固(ようがいけんご) 《四熟》 険しい地勢にあり、防備が固く、容易には攻め落とせない城砦の様子。外敵に対する守りが非常に固いこと。 類:●難攻不落●金城鉄壁●金城湯池●堅牢堅固●金剛不壊●不壊金剛 ★「要害」は、味方にとっては要となり、敵にとっては害となる砦の意。
・楊枝一本削ったこともない(ようじいっぽんけずったこともない) 細工仕事に慣れていない、また、細かい仕事に不器用(ぶきよう)である。
・容姿端麗(ようしたんれい) 《四熟》 顔立ちも体形も整っていて美しいこと。普通は女性に使う。 類:●眉目秀麗 ★「端麗」は、形や姿に飾り立てたところがなく、きちんと整っていて美しい様子<学研国語大辞典(学)>
・羊質虎皮(ようしつこひ) 《四熟》 羊が虎の皮を被(かぶ)る。外見は立派だが、実質が伴っていないことの喩え。 類:●虎皮羊質●見掛け倒し●羊頭狗肉●羊頭馬脯 出典:「揚子法言−吾子」「羊質而虎皮、見草而説、見豺而戦、忘其皮之虎矣」 ★「羊質にして虎皮す」と読み下す。
・楊枝で重箱の隅をほじくる(ようじでじゅうばこのすみをほじくる)[=突付く] ⇒ 重箱の隅を楊枝でほじくる
・楊枝に目鼻を付けたよう(ようじにめはなをつけたよう) 痩せた人の比喩。
・陽春白雪(ようしゅんはくせつ) 《四熟》 昔、中国の楚で最も高尚とされた歌曲。「陽春白雪の曲に和する者少なし」などといって、優れた人の言行は凡人には理解され難いという場合に使う。
・擁書万巻(ようしょまんがん) 《四熟》 蔵書が非常に多いこと。 類:●汗牛充棟(かんぎゅうじゅうとう)
・楊枝を違える(ようじをちがえる・たがえる) ごく小さな間違いを犯す。
・用心棒(ようじんぼう) 1.万一の場合、身を守るために備えておく棒。2.締めた戸を中から押えるための棒。新開(しんばり)棒とも。3.転じて、護衛のために雇(やと)っておく従者。特に、博徒(ばくと)などが、警戒のために抱えておいた武芸者のこと。
・要するに(ようするに) つまり。結局。掻い摘んで言えば。それまで述べてきたことを要約して再び述べるときに言う。
・壅塞阻止(ようそくそし) 《四熟》 塞(ふさ)ぎ阻(はば)むこと。塞いで隔てること。 類:●壅阻
・陽台不帰の雲(ようだいふきのくも) 一度契(ちぎ)りを結んだだけで二度と会うことができないこと。「陽台」は、南の丘の上の意味。 出典:宋玉「高唐賦」 参考:朝雲暮雨
・用立てる(ようだてる) 1.役立たせる。用に立たせる。使う。2.他人の用に供する。金銭などを貸す。立て替える。 例:「金を一時用立てる」
・夜討ち朝駆け(ようちあさがけ) 夜に攻め、また朝にも攻めるという意味から、晩に人の家を訪問し、翌朝にもまた同じ人を訪ねるということ。 例:「頼み事を聞いて貰うために夜討ち朝駆けをする」
・蝿頭(ようとう) 蠅(はえ)の頭のこと。 1.細かい文字。細字。2.僅かの利益。小利。 類:●雀の涙
・羊頭狗肉(ようとうくにく) 《四熟》 「羊頭を掲げて狗肉を売る」の略。 類:●看板に偽りあり●羊皮虎皮(ようひこひ)●牛首(牛頭)を揚げて馬肉を売る 反:■看板に偽りなし 出典:「後漢書」・「無門関」・「晏子春秋」
・陽動作戦(ようどうさくせん) 《四熟》 真の目的を隠して敵の判断を誤らせるための作戦。相手の注意を逸(そ)らすために、態(わざ)とある行動を目立たせて、自分の目的を達成しようとする作戦。
・羊頭を掲げて狗肉を売る(ようとうをかかげてくにくをうる) 看板には羊の頭を掲げておきながら、実際には犬の肉を売る。表面と内容が一致しないこと、宣伝は立派でも内実がそれに伴わないこと。 類:●見掛け倒し●羊頭狗肉●牛頭を懸けて馬肉を売る 出典①:「無門関」「懸羊頭売狗肉」 出典②:「晏子春秋」「猶懸牛首于門、而売馬肉于内也」 ★「牛頭を懸けて馬肉を売る」からの転という。
・用に叶えば宝なり(ようにかなえばたからなり) どんなつまらない物でも、何かの役に立つならば、宝物のように価値のあるものだということ。
・陽に開く(ようにひらく) 積極的に出て行く。積極的に、相手に攻撃を仕掛ける。 反:■陰に閉ず
・様に拠りて胡蘆を画く(ようによりてころをえがく) 「胡蘆」は瓢箪(ひょうたん)のこと。様式にのみ頼って、真実みのない外形だけの瓢箪の絵を描くということで、表面の形状や先例を真似て、何ら独創的なところがないことの喩え。 故事:「続湘山野録」など 中国宋代、太祖は、尚書陶穀が起草した制誥詔令は「様によって胡蘆を描くものだ」として重んじなかったので、穀は「堪笑翰林陶学士、一生依様画葫蘆」と詠じて自嘲した。 出典:湘山野録(しょうざんやろく) 3巻・続録1巻 。呉僧釈文瑩、字は如晦の編。北宋期読書人の逸事を集録したもの。禅林の記事を含む。編者の法系は明らかではないが、荊州金鑾寺に菴居していたときの作で、湘山の名のよるところとなった。『津逮秘書』十五、『学津討源』十七、『択是居叢書』初集等に収める。
・洋の東西を問わず(ようのとうざいをとわず) 東洋と西洋とを区別しないで。
・楊布の狗(ようふのいぬ) 外見の変化を見て、中身まで変わったと信じる者のこと。 故事:「韓非子−説林・下」 楊朱の弟の楊布は白い服を着て出掛けたが、雨に遭い黒い服に着替えて帰って来た。それを知らずに飼い犬が吠え立てた。楊布が怒って打とうとすると楊朱が「やめなさい。白犬が出ていって、汚れて黒犬になって帰って来たら、お前だって怪しむだろう」と諭した。
・容貌魁偉(ようぼうかいい) 《四熟》 顔付きと体付きが逞(たくま)しくて立派であること。 出典:「後漢書−郭太伝」
・ヨウ木は危うきに生ぜず(ようぼくはあやうきにしょうぜず)[=拱木(きょうぼく)は〜] 大木は地形の危うい所には生じない。賢人は政治の乱れた国には仕えないということ。 出典:「国語−晋語・八」「直不輔曲、明不規闇、[木+揺-手]木不生危、松柏不生[土+卑]」 ★「ヨウ木」は「[木+揺-手]木」と書き、非常に高大な樹木のこと。
・揺籃期(ようらんき) 「揺籃」は揺り篭のこと。ゆりかごに入っている時期。幼年時代。転じて、ものごとの発展する初期の段階。 類:●揺籃時代
・要領を得ず(ようりょうをえず) ものごとの最も大切なところを得ない喩え。 ★衣服を手にするとき、着物の腰(要)と襟(領)を持つことから。 出典:「史記−大宛列伝」「騫従月氏至大夏、竟不能得月氏要領」<漢の武帝のとき月氏に使者として派遣された張騫(ちょうけん)は、ついに月氏の肝要なところを理解できずに終わった>
・要領を得る(ようりょうをえる) ものごとの大切な箇所をしっかりと把握(はあく)すること。 例:「あの大臣の答弁はまったく要領を得ない」 ★「要領を得ない」というように、打消しの形で用いることが多い<国語慣用句辞典(集)>
・用を足す(ようをたす) 1.用事を済ませる。 類:●用を弁ずる 2.小便をする。小(大)便を済ませる。
・ヨウを佐くる者は嘗め、闘を佐くる者は傷つく(ようをたすくるものはなめ、とうをたすくるものはきずつく) 料理を手伝う者は食べ物を得ることができるが、喧嘩の味方をする者は怪我をする。善いことに関係すればその恩恵を受けるが、悪いことに関わり合うと、とんだ害を蒙(こうむ)るということの喩え。 ★「ヨウ」は、料理を作る役人。 出典:「国語−周語・下」
・俑を作る(ようをつくる) 良くないことを始めたり、悪例を作ったりする。 出典:「孟子−梁恵王・上」 昔の中国には、死者と共に木製や土製の人形(=俑)を埋葬する風習があり、これを、孔子が人を生き埋めにするようだとして憎んだ。
・用を成さない(ようをなさない) そのものの働きをしない。 類:●役に立たない 例:「こんなに遅れては時計の用を成さないない」
・用を弁ずる(ようをべんずる) 用事を済ませる。必要な事柄を処理する。また、必要とするものを準備する。
−−−−−−−よか(#yoka)−−−−−−−
・余暇善用(よかぜんよう) 《四熟》 余った時間を上手に使うということで、暇を巧く使って無駄のないようにしなさいという教え。
・世が世ならば(よがよなら) ものごとが順調にいっていさえすれば。その人にとって都合の良い時代だったならば。 例:「世が世ならお前など傍にも寄れない」
・善かれ悪しかれ(よかれあしかれ) 良いにしろ悪いにしろ。善悪に拘(かか)わらず。どっちにしても。 例:「善かれ悪しかれ、早いにこしたことはない」
−−−−−−−よく(#yoku)−−−−−−−
・よく言うものだ(よくいうものだ)[=奴(やつ)だ] よくそんなことが言えたものだ。江戸時代に流行した言い回し。 類:●よく言うよ
・善く游ぐ者は溺る(よくおよぐものはおぼる) 泳ぎの巧(うま)い者は水で死ぬものである。人は自分の得意とするところで失敗することが多いという喩え。 類:●善く騎(の)る者は墜つ●泳ぎ上手は川で死ぬ●川立ちは川で果てる●木登りは木で果てる 出典:「淮南子−原道訓」「善游者溺、善騎者墜」
・欲が張る(よくがはる) 欲が強く盛んになるという意味から、度を越して欲深く振る舞うこと。
・よくしたものだ 自(おの)ずから望ましいように、あるいは、相応(ふさわ)しいようになるものだ。 例:「世の中はよくしたもの」
・欲と相談(よくとそうだん) 何事につけても欲心から事を行なうこと。欲得ずくで事を行なうこと。
・欲と二人連れ(よくとふたりづれ) 欲心につられて行動すること。 類:●欲得ずく
・欲に目が眩らむ(よくにめがくらむ)[=眩(まぐ)る]
・欲の皮が張る(よくのかわがつっぱる)[=突っ張る] 欲が張ることを、皮が張ることに喩えて言った言葉。
・欲の熊鷹股裂くる(よくのくまたかまたさくる)[=股を裂く] 欲が深過ぎる者は禍(わざわい)を蒙(こうむ)るということの喩え。 類:●欲の熊鷹股から裂ける●二兎を追うものは一兎をも得ず●虻蜂取らず 説話:熊鷹が、二頭の猪を両足で掴(つか)み、猪(いのしし)が左右に逃げようとするのを放さなかったので、股が裂けて死んだ。
・欲の世の中(よくのよのなか) 世の中は全て利欲で動いているということ。 類:●地獄の沙汰も金次第
・善く騎る者は墜つ(よくのるものはおつ) 騎馬の巧(うま)い者は、往々にして落馬して死ぬものである。人は自分の得意とするところで失敗することが多いという喩え。 類:●善く游ぐ者は溺る 出典:「淮南子−原道訓」「善游者溺、善騎者墜、各以其所好、反自為禍」
・浴は江海を必とせず、之が垢を去るを要す(よくはこうかいをひつとせず、これがあかをさるをようす) 水浴に必要なのは揚子江や海のような大量の水でなく、ただ垢を落とせるだけの水である。ものごとはなにも最高でなくても、必要な条件を満たすことができれば良いということ。 ★「江海」は、揚子江と海。 出典:「史記−外戚世家」「浴不必江海、要之去垢」
・欲も得もない(よくもとくもない) 欲心や利得をまったく考えない。また、欲得を考える余裕がない。 例:「怖くなって欲も得もなく逃げた」
・欲を言うと(よくをいうと)[=言えば] 今の状態でも不足はないが、なお一層を望むとすれば。 例:「欲を言うと人並みのボーナスが欲しい」
・欲を掻く(よくをかく) 欲深く振舞う。欲心(よくしん)を起こす。 類:●欲をかわく●欲張る
・欲をかわく(よくをかわく) ある一定の成果があるにも拘(かか)わらず、更に欲心を抱いてものごとをする。 類:●欲を掻く●欲張る
−−−−−−−よけ(#yoke)−−−−−−−
・預言者郷里に容れられず(よげんしゃきょうりにいれられず) 神の信託(しんたく)を受けるほどの優れた人物でも、兎角(とかく)郷里の人や身近な人からは尊敬されないものであるということ。 類:●人は故郷を離れて貴し●No prophet is recognized in his own country. 出典:「新約聖書−ルカ伝」 出身地ナザレで伝道するイエスの言葉に「はっきり言っておく。預言者は、自分の故郷では歓迎されないものだ」とある。
−−−−−−−よこ(#yoko)−−−−−−−
・横板に雨垂(よこいたにあまだれ)[=泥(どろ)] つっかえつっかえしながら物を言うことの喩え。 反:■戸板に豆 ★「立て板に水」の捩(もじ)り。
・横紙破り(よこがみやぶり) ものごとを無理に押し通すこと。我を通すこと。また、そのような人。
・横紙を破る(よこがみをやぶる・やる) 和紙は、漉き目に沿って縦に裂くと裂け易いが、横には裂け難い。それを敢えて破るというところから、無理を押し通すこと。 類:●横紙を裂く●横車を押す●横に車を押す
・横車を押す(よこぐるまをおす) 横に車を押して動かすように、理に合わないことを無理に押し通すこと。理不尽なことを強引にする。 類:●横紙を裂く●横紙を破る●横に車を押す●倒行逆施
・横様の幸い(よこさまのさいわい) 思い掛けない幸運。偶然の幸い。 類:●僥倖(ぎょうこう)●まぐれ幸い●まぐれ当たり●こぼれ幸い
・横様の死に(よこさまのしに) 「横死(おうし)」の訓読み。災害や殺害など不慮の災難で死ぬこと。 類:●横死●非業の最期●不慮の死
・横槌で庭を掃く(よこづちでにわをはく)[=家を掃く] 1.急な客に慌てふためきながらも、手厚く持て成そうとすること。いろは歌留多(大坂)の「よ」の句。 類:●鎚で庭を掃く 用例:咄・一休咄−巻四の五「さて彼の僧一休なりとて、横槌にて庭はき、杓子で芋もり、御馳走申事、中々いふもおろかなり」 2.転じて、露骨(ろこつ)に世辞を言ったり、追従(ついしょう)したりすることの喩え。
・横手を打つ(よこでをうつ)[=合わせる] 1.思わず両手を打ち合わせる。意外なことに驚いたり、深く感じたり、また、はたと思い当たったりしたときなどにする動作。 用例:浄・曾根崎心中「九平次横手を打ち、なる程判はおれが判」 2.手を組む。
・横と出る(よことでる) 素直でない態度を取る。意地悪い態度を取る。旋毛(つむじ)曲がりなことをする。
・横流し(よこながし) 配給品や統制品などの物資を、正規の手続きを経ないでこっそりと転売すること。 例:「闇米の横流しをしている」
・横に車を押す(よこにくるまをおす)[=押し出す] 無理を押し通す。 類:●横に車●横車を押す
・横に出る(よこにでる) 無理なことを押し通す、脅かしたり強請(ゆす)ったりすること。 類:●横に渡る●横に行く●横を行く●横を言う●横を申す
・横になる(よこになる) 1.体を横たえる。臥(ふ)す。寝て休む。2.道理に合わなくなる。
・横に寝る(よこにねる) 1.返済、支払、納入などをしないでいる。特に、借りたものを返さないでいる。 用例:浮・懐硯−4「皆済時には横にねて幾度か水籠に打こまれ」 2.横領する。非道なやり方で取り上げる。強請(ゆす)り取る。
・横の物を縦にもしない(よこのものをたてにもしない) 面倒臭がって何もしない。極めて横着(おうちゃく)なたとえにいう。 類:●ものぐさ●縦の物を横にもしない
・横槍が入る(よこやりがはいる) 他人の談話、仕事などに横合いから、急に第三者が口出ししてくる。苦情や文句が入る。 類:●槍が入る
・横槍を入れる(よこやりをいれる) 1.両軍が入り乱れて戦っているとき、別の一隊が側面から槍で突き掛かる。2.他人の談話、仕事などに横合いから、急に第三者が口出しをする。傍(かたわ)らから非難めいた言い方をしたり、出しゃばった行ないをしたりする。 類:●差し出口をする
−−−−−−−よし(#yosi)−−−−−−−
・葦の髄から天井を覗く(よしのずいからてんじょうをのぞく)[=見る] 自分の狭い見識に基(もとづ)いて広大なことについて勝手な判断を下すこと。 類:●管を以て天を窺う ★「よし」は、「あし」の忌み詞。
・誼みを通じる(よしみをつうじる) 親しい交わりを持つようになるという意味で、便宜を得ようとして、相手に交際を求めること。
・四畳半趣味(よじょうはんしゅみ) 待合(まちあい)などの粋な小部屋で、芸者相手に楽しみながら酒を飲んだりする趣味。
・葦原雀(よしわらすずめ) 1.スズメ目ヒタキ科ウグイス亜科の鳥、ヨシキリの異名。2.転じて、口数が多くて煩(うるさ)い人。早口で多弁な人。 類:●お喋(しゃべ)り●鉋屑(かんなくず)へ火がついたよう●油紙へ火のついたよう ★一般に、「雀」は良く喋る者の喩え。
・縦んば(よしんば) 仮令(たとえ)そうであったとしても。仮にそうであっても。 用例:浄・壇浦兜軍記−三「よしんば忍びて観音へ参詣を致すにもせよ」 用例の出典:壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき) 浄瑠璃。全5段。長谷川千四と文耕堂の合作。享保17年(1732)。竹本座初演。題材は源頼朝に一矢を報いようと平家の侍大将悪七兵衛景清と彼に関わる源平両陣営の人々を描いている。今日では歌舞伎・文楽とも三段目の導入部「阿古屋琴責の段」のみがもっぱら上演される。
−−−−−−−よせ(#yose)−−−−−−−
・余勢を駆る(よせいをかる) 何かを成し遂げた勢いに乗って、更に何かをしようとする。 類:●勢いに乗る●弾(はず)みに乗る
・余喘を保つ(よぜんをたもつ) 今にも絶えそうな息でありながらやっと生き続けている。転じて、滅亡しそうなものが、辛うじて存続している。
−−−−−−−よそ(#yoso)−−−−−−−
・余所に聞く(よそにきく) 自分とは直接関係のないこととして聞くということで、他人事として聞き流すこと。また、聞こえない振りをすること。
・余所にする(よそにする)[=なす] 好い加減にして、それを顧(かえり)みないでいる。疎(おろそ)かにする。放っておく。
・余所になる(よそになる) 1.疎遠になる。2.関心がなくなる。そっちのけになる。
・他所に見る(よそにみる) 人事(ひとごと)のように見る。
・余所の花は良く見える(よそのはなはよくみえる) 他人のものは何でも良いものに見える。 類:●隣りの花は赤い
・余所余所しい(よそよそしい) 1.関係がない。無関係である。 用例:狭衣−三「あなうたて、いとよそよそしきことをもしらせ給にけるかな」 2.打ち解けない様子である。親しみを持たない。他人行儀である。特に、これまで親しくしていた間柄について言う。 類:●隔(へだ)てがましい●疎々(うとうと)しい 用例:狭衣−二「よそよそしからんもてなしに」 例:「今日の彼女は変に余所余所しかった」
−−−−−−−よた(#yota)−−−−−−−
・与太る(よたる) 「与太」が動詞化した言葉。 1.不良じみたことをする。2.出鱈目(でたらめ)なことを言う。嘘を吐く。
・涎を垂らす(よだれをたらす)[=流す] 唾液を口から流し出す。また、空腹なときに食物を見て、非常に食べたくなる様子。転じて、欲しがる気持ちが甚(はなは)だしい状態。 類:●咽喉が鳴る
・与太郎(よたろう) 1.知恵の足りない者、愚か者を擬人化して言った言葉。 類:●与太●よたろ 2.嘘。出鱈目(でたらめ)。また、出鱈目を言う人。嘘吐き。 ★人形浄瑠璃社会でいった語<国語大辞典(小)>
・与太を飛ばす(よたをとばす) 「与太」とは、虚言や冗談のことで、無責任な言葉を勝手気侭(きまま)に言い散らすこと。
・予断を許さない(よだんをゆるさない)・〜が許されない 事態が起こってみるまで判断できない。現時点では、軽々しく判断を下すべきではないということ。 例:「容態は一進一退で、予断を許さない」
−−−−−−−よつ(#yotu)−−−−−−−
・四つの自由(よっつのじゆう) 「言論の自由」、「宗教の自由」、「窮乏からの自由」、「恐怖からの自由」のこと。1941年、アメリカ合衆国第32代大統領フランクリン・ルーズベルトが、年頭教書において強調したもの。民主主義の根幹として大西洋憲章(1941年)に取り入れられ、連合国の戦争目標となり、のちに国際連合結成の理念となった。
・因って来たる(よってきたる) 元となる。原因となる。由来する。
・拠って件の如し(よってくだんのごとし) 「従って、前記記載の通りである」という意味で、書状や証文の最後に書き記す語句。 ★「よって…件の如し」とも用いる<国語大辞典(小)>
・寄って集って(よってたかって) 寄り集まって。大勢で集まって。みんなで。
・四つに組む(よつにくむ)[=渡る] 1.相撲で、両者が互いに両手を差し合ってがっぷりと組み合う。2.転じて、互いに正面からぶつかって堂々と争う。 例:「難問と四つに組む」
−−−−−−−よと(#yoto)−−−−−−−
・余桃の罪(よとうのつみ) 主君の寵愛(ちょうあい)など気まぐれなものであるから、過信しない方が良いという喩え。 類:●余桃を食らわす●可愛さ余って憎さ百倍 故事:「韓非子−説難」「君曰、此固嘗矯駕吾車、又嘗啗我以余桃、〈略〉愛憎之変也」 衛(えい)の弥子瑕(びしか)は主君(霊公)の寵愛を受け、食べかけの桃を献上して喜ばれるほどであったが、寵愛が薄れると、その事を取り沙汰されて罪を受けた。
・淀む水には芥溜まる(よどむみずにはごみたまる) 流れが停滞するところには芥が溜まって水が腐ってしまう。同じように、組織も時折り人を入れ替えないと停滞してしまい、弊害を生むものであるということ。
−−−−−−−よな(#yona)−−−−−−−
・夜鍋(よなべ) 夜間に仕事をすること。また、その仕事。 類:●夜業(やぎょう) 例:「夜鍋仕事」 ★夜、鍋で物を煮て食べながらする仕事の意からとも、「夜並(よなべ)」で夜を並べてする仕事の意からともいい、その他諸説ある<国語大辞典(小)>
−−−−−−−よに(#yoni)−−−−−−−
・世に在り(よにあり) 1.世の中に生き長らえる。この世に生存する。2.世の人に認められる。世に時めいている。 用例:枕草子−184「それぞ世に在る人の手はみな見知りて侍らむ」
・世に出ず(よにいず)[=出る] 1.この世に現れ出る。また、仏がこの世の衆生を救うために世に現れる。 例:「秘蔵品が世に出る」 2.世間に出る。官職に就く。3.世に知られる。出世する。 例:「若くして世に出る」 4.勘気(かんき=勘当)が許され、再び主君に仕える。
・世に越ゆ(よにこゆ) 普通より優れている。 用例:保元−上・古活字本 「矢束をひくこと世に越えたり」
・世に知らず(よにしらず) 普通ではない。世に類がない。 類:●世になし
・世に連れる 世の流れや動きに従う。 例:「歌は連れ、世は歌に連れ」
・世にとまる(よにつれる) 生き長らえる。
・世に無し(よになし) 1.世の中にない。この世に生存しない。また、世に存在しない。2.この世にまたとない。世の中に比べるものがない。類例がない。非常に優れている。3.世に用いられない。時勢に合わない。世に容(い)れられず、零落(れいらく)している。
・世に無し者(よになしもの) 世に容(い)れられない者。世間から冷遇されている者。また、世間を憚(はばか)る者。 類:●世捨て人
・世に似ず(よににず) 世の中に類がない。世にまたとない。この上もない。 用例:竹取「かたちの世に似ずめでたきことを」
・世に経(よにふ) 1.この世に生き長らえる。この世を暮らし過ごす。 用例:古今−春下「わが身世にふるながめせしまに」 2.俗世にあって暮らす。出家の身ではなく俗人として世を送る。3.世心が付く。男女の情を解する。 用例:後撰−恋五「ねになけば人笑へなり呉竹の世にへぬをだにかちぬと思はむ」
・世に旧る(よにふる) 1.世に出て古くなる。世間で珍しくなくなる。 用例:後撰−春中「春雨の世にふりにたる心にもなほ新しく花をこそ思へ」 2.結婚の経験がある。 用例:源氏−蜻蛉「ただ人、はた、怪しき女、世にふりにたるなどを、持ち居るたぐひ多かり」
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・余念がない(よねんがない) 気を散らすような余計な考えが一切ないという意味で、心が一つのことに集中している様子。 類:●没頭する 例:「仏像彫りに余念がない」
・余念もない(よねんもない) 1.余念がないと同意。2.無邪気で、たわいない。 用例:多情多恨「余念もない顔をして小い鼾(いびき)を立ててゐる」 用例の出典:多情多恨(たじょうたこん) 小説。尾崎紅葉。明治29年(1896)発表。愛妻をなくし悲嘆に沈んでいた鷲見(すみ)柳之助が、親友葉山の妻お種の親身の世話で次第に心を開いていくという心理の経過を、言文一致体で描く。
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・世の〜(よの〜) 「天下周知の」という意味で、程度が甚だしいことの形容。大変な〜。この上ない〜。またとない〜。 用例:竹取「世のかしこき人なりとも」
・世の覚え(よのおぼえ) 世間の評判。声望。
・余の儀(よのぎ) 他のこと。別の理由。別事。 例:「余の儀にあらず」 ★「余の儀にあらず」など否定表現を伴って、ほかのことではなく、などの意で、以下に述べることを取りたてて強調するのに用いる語<国語大辞典(小)>
・夜の悉(よのことごと) 一晩中。夜通し。 類:●終夜●よもすがら 用例:万葉−一五五「夜(よる)はも夜之尽(よのことごと)昼はも日のことごと」
・世の例(よのためし) 1.以前からあって、現在思い出される事柄。また、これから人々の口の端に語り継がれていくであろう事柄。世の前例。また、世の中に手本となる事柄や故事。 用例:源氏−桐壺「世のためしにもなりぬべき御もてなし也」 2.世の中の慣わしや習慣。世の赴(おもむ)くところ。 用例:徒然草−一三七「目の前にさびしげになりゆくこそ、世のためしも思ひ知られて哀なれ」
・世の常(よのつね) 1.特別ではなく、ごく普通であること。また、そのような時。 類:●一通り●世間並み●平常●平素●尋常 例:「人の盛衰は世の常だ」 2.並みの言葉では事態を十分に表現できない。〜というのでは不十分。〜どころではない。〜は愚か。 用例:源氏−葵「ただ、それなる御有様に、あさましとは、よのつね也」
・世の中改まる(よのなかあらたまる) 世の支配者・統治者が代わる。新しい御代になる。治世が変わる。
・世の中は相持ち(よのなかはあいもち)[=世は〜] 世の中は互いに助け合うことによって円満に事が運ぶ。 類:●相身互い
・世の中は九分が十分(よのなかはくぶがじゅうぶ) 世の中のことは、100%自分の思い通りにはいかない。望んだことの九割方が叶(かな)えば満足すべきだということ。
・世の中は三日見ぬ間に桜かな(よのなかはみっかみぬまにさくらかな) 桜の花が咲く頃は、三日も見ないでいるとすぐに満開になっていたり、散ってしまっていたりする。そのように、世の中の移り変わりは激しいものだということ。 類:●滄桑之変 出典:大島蓼太(おおしまりょうた)の句 ★「世の中は三日見ぬ間に桜かな」として流布しており、桜の花がすぐに散ってしまうように世の中の移り変わりは激しい、の意味で言われる。
・世の中は盲千人目明き千人(よのなかはめくらせんにんめあきせんにん) 世の中には無知な者もたくさんいるが、眼識を備えた者もかなりたくさんいるということ。 類:●盲千人目明き千人
・世の習い(よのならい) 世間で普通のこと。世間の習わし。世間の習慣。 類:●世の常●世習い 例:「弱肉強食は世の習いだ」
・夜のほどろ(よのほどろ) 1.「ほどろ」は明け方のこと。夜がほのぼの明ける頃。 類:●未明 2.「ほどろ」が「程」に誤解されて、夜の頃。夜分。
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