【あす】~【あと】
・明日ありと思う心の仇桜(あすありとおもうこころのあだざくら) 明日を当てにして今を疎(おろそ)かにしていると、せっかくの機会を逃してしまう。今できることは即座にやってしまえということ。 類:●今日の一針は明日の十針●Defer not until tomorrow if you can do it today.(今日できるなら明日に延ばすな)<「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典> ★親鸞上人の歌とされ、後に「夜半(よわ)に嵐の吹かぬものかは」と続く。
・飛鳥川の人心(あすかがわのひとごころ) 飛鳥川のように度々氾濫して、浅い深いが定まらない。変わり易い人の心のこと。 類:●飛鳥川の淵瀬(ふちせ)●淵瀬
・預かり物は半分の主(あずかりものははんぶんのぬし) 人の物を預かれば、半分は自分のものと思っても差し支(つか)えないということ。
・梓に鏤む(あずさにちりばむ)[=刻(きざ)む・上(のぼ)す・ものす] 書物を版木に彫り付ける。本を発行する。 類:●上梓(じょうし)する ★「梓」は版木の意、「ちりばむ」は刻むの意<国語大辞典(小)>
・明日のことは明日自らが思い煩わん(あすのことはあすみずからがおもいわずらわん) 明日の心配は明日に任せよ、明日のことまで思い悩むなということ。 類:●明日は明日の風が吹く●明日のことは明日案じよ 出典:「新約聖書−マタイ伝・6章34節」 山上(さんじょう)の垂訓(すいくん)にあるイエスの言葉。
・明日の事を言えば鬼が笑う(あすのことをいえばおにがわらう)[=思えば〜] 世の中の事は予見できないものだ。 類:●来年のことを言うと鬼が笑う●鬼が笑う
・明日の百より今日の五十(あすのひゃくよりきょうのごじゅう) 明日百文の銭をもらうよりも、今日もらえる五十文の方が良い。 1.先の分からない大きな話に乗るより、少なくても、確実なところを今手にする方が賢明である。 類:●後の百より今五十●末の百両より今の五十両●聞いた百文より見た一文●先の雁より手前の雀●死して千年より生きての一日●A bird in the hand is worth two in the bush.(掌中の一羽は叢中の二羽に値する) 2.暮らし向きなどが逼迫(ひっぱく)していることの喩え。 類:●轍鮒の急
・明日の淵瀬(あすのふちせ)[=は〜] 明日にはどう変わるか分からない。将来の成り行きが分からない。 出典:「古今−933」 「世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬になる」
・明日は閻浮の塵ともならばなれ(あすはえんぶのちりともならばなれ) 明日はこの広い人間世間の塵となって飛び消えるものなら消えてしまえ。どうなろうとなるようになれ。どうとでもなれ。
・明日は我が身(あすはわがみ) 他人に起こったことが、いつ自分自身のことになるか分からないということ。 類:●昨日は人の身今日は我が身●他山の石
・東男に京女(あずまおとこにきょうおんな)[=京女郎] 男は、逞(たくま)しく粋な江戸の男が良く、女は、美しく情のある京都の女が良いということ。当時は、この取り合わせが似合いであるとされた。
・あずり貧乏(あずりびんぼう) 一生懸命あくせく働いても貧乏から抜け出せない。「あずり貧乏人宝(ひとだから)」というようにも使う。 ★「あずり」は、あがくこと、奔走することという意味<国語慣用句辞典(集)>
−−−−−−−あせ(#ase)−−−−−−−
・畦から行くも田から行くも同じ(あぜからいくもたからいくもおなじ) 畦道を通って行っても、田んぼの中を突っ切っても、結局行き先は同じである。手段や方法が多少違っても、結果に大差はないということの喩え。 類:●遅牛も淀早牛も淀 ★「畦走るも田走るも同じこと」とも。
・汗になる(あせになる) 1.汗水を流す。また、労苦を厭わずに働く。用例:蜻蛉−上「わが身はあせになりつつ」 2.恥ずかしさや緊張感で汗を流す。また、そのような思いをする。 用例:源氏−帚木「流るるまであせになりて」 類:●汗を流す●汗をかく●冷汗三斗 用例の出典:源氏物語(げんじものがたり) 平安中期の長編物語。54巻。紫式部。長保3年(1001)以後の起筆とされるが成立年代は未詳。54帖(雲隠は巻名だけ)から成る。主人公光源氏が藤壺宮との過ちに戦(おのの)きながら、愛の遍歴の後、准太上天皇となるが、託された女三の宮と柏木との密通事件によって過去の罪の報いを知り、苦悩のうちに生涯を終える雲隠までの前編と、つなぎの三帖を置いて、柏木と女三の宮との罪の子薫を主人公に、競争者匂宮と宇治の姫君たちを配し、暗い愛の世界を描く後編の「宇治十帖」とから成る。仏教的宿世観を基底にし、平安貴族の理想像と光明が、当時の貴族社会の矛盾と行きづまりを反映して、次第に苦悶と憂愁に満ちたものになっていく過程が描かれ、「もののあわれ」の世界を展開する。日本古典の最高峰とされる。「源語」「紫文」「源氏」、古くは、「源氏の物語」と「の」を入れて呼ばれたらしい。
・汗の結晶(あせのけっしょう) 労働によって得た成果。苦心の末に得た成果。
・汗水流す(あせみずながす)[=垂(た)らす] 精を出して働く。苦労を厭(いと)わずに働く。
・汗を握る(あせをにぎる) 危急の場面を傍らで見ていて、はらはらする。 例:「手に汗を握る」
・汗を揉む(あせをもむ) 馬が汗を掻く。または、汗をかくほどよく働く。
−−−−−−−あそ(#aso)−−−−−−−
・遊びに師なし(あそびにしなし) 遊び事は、誰に教わるまでもなく自然に覚えて身についてしまうものだということ。 類:●恋に師匠なし
・遊ぶ糸(あそぶいと) 陽炎(かげろう)のこと。糸遊(いとゆう)。 用例:和漢朗詠−下「あるかなきかにあそぶいとゆふ」 ★「遊糸(ゆうし)」の訓読み<国語大辞典(小)>
−−−−−−−あた(あ)(#ata1)−−−−−−−
・値千金(あたいせんきん) 千金もの値打ちがあるものを指して言う。ものごとの価値を高く評価していう。
・予うるの取ると為るを知る(あたうるのとるとなるをしる) 与えることが、実は得ることになるのだということ。人民から吸い取ろうとするだけでは、却(かえ)って従わず、思うように得られないということ。 出典:「管子−牧民篇・四順」「故知予之為取者、政之宝也」<予うるの取ると為るを知るは、政の宝なり(『与えることが取ることになる』と知っていることが、政治の秘訣である)>
・与えよ、さらば与えられん(あたえよ、さらばあたえられん) 1.イエス・キリストの言葉。無条件に与えなさい、そうすれば神の祝福が与えられるでしょう、ということ。 出典:「新約聖書−ルカ福音書6」 ★「先ず与えれば後に返ってくる」という解釈は間違い。損得を抜きに純粋な心で他人に施(ほどこ)せば、本人は気分が爽やかであるばかりか、相手からも感謝される。それが神の祝福である、ということ。物的「見返り」は期待しない。 2.誤解から一般化して、先ず与えなさい、そうすれば後に返ってくる。
−−−−−−−あた(さ)(#ata3)−−−−−−−
・あた湿気ない(あたじけない) 〔俗語〕 1.けちである。吝(しわ)い。 用例:雑俳・柳多留−二「木戸番はあたじけないと首を振り」 2.取るに足りない。貧弱である。 用例:読・操草紙−二「かかるあたじけなき娘共は」 ★語源未詳、江戸〜明治の流行語であった。 ★「あた」は程度が甚だしいことを表わす接頭語、「ない」は、性質を表わす接尾語で、「非常に湿気ている」の意味か。 用例の出典:操草紙(あやつりそうし?) 読み本。明和8年(1771)? ・・・調査中。
・あたじけ茄子(あたじけなすび) けちんぼ。 ★「あたじけない」の「な」と茄子をかけた洒落<国語大辞典(小)>
−−−−−−−あた(た)(#ata4)−−−−−−−
・安達原殿(あだちがはらどの) 鬼婆(おにばば)のこと。転じて、嫁が悪意を持っていう、姑(しゅうとめ)を指す言葉。 ★奥州安達原に鬼女が住んでいたという伝説から<国語大辞典(小)>
・当たって砕けろ(あたってくだけろ)[=砕けい] 成功するしないに関わらず、進んで決行すべきであるということ。実行しなければ何事も成就しないということ。 例:「男は当たって砕けろ」
−−−−−−−あた(な)(#ata5)−−−−−−−
・寇に兵を籍し盗に糧を齎す(あだにへいをかしとうにかてをもたらす) 敵に兵隊や武器を提供したり、盗賊に食料を与えること。敵側の利益になるようなことをすること。また、悪事を働く者に都合の良い口実を与えてやること。 類:●盗に食を齎す●賊に兵を貸す●敵に糧 出典:「孟子−告子・上」「今乃ち黔首(けんしゅ)を棄て以て敵国に資し、賓客を却(しりぞ)けて以て諸侯を業(たす)け、天下の士をして退きて敢て西に向かわず、足を裹(つつ)んで秦に入らざらしむ。これ所謂(いわゆる)寇に兵を藉し盗に糧を齎す者なり」
・徒の火宅(あだのかたく) 儚く悩み多いこの世。 類:●火宅無常
・徒の悋気(あだのりんき) 自分に関係のないのに、他人の恋愛を見て起こす、無駄な焼き餅。おかやき。 類:●岡焼き●法界悋気
−−−−−−−あた(は)(#ata6)−−−−−−−
・徒花(あだばな) 1.咲いても実を結ばない花。転じて、表面はそれらしく見えるが、実質や内容を伴わないものごとを喩えて言う。 類:●無駄花(むだばな) 用例:閑吟集「ならぬ徒花真白に見えて、憂き中垣の夕顔や」 2.咲いてもすぐ散ってしまう儚(はかな)い花。主に、桜を指す。また、儚く淡い恋の喩え。 類:●徒桜(あだざくら) 用例:夫木集−四「風をだに待つ程もなき徒花は」 3.季節外れに咲く花。〔日葡辞書〕 4.遊里で、客が芸妓などに祝儀(しゅうぎ)として渡す紙纏頭(かみばな)のうちで、後で現金と替えるつもりのないもの。 用例:浮・椀久二世物語「外聞ばかりの徒花を出し人々に嬉しがらせ」 用例の出典:閑吟集(かんぎんしゅう) 歌謡集。編者未詳、一説に連歌師宗長との説があるが、確証はない。1巻。永正15年(1518)。室町時代の小歌226首のほか猿楽、田楽、宴曲などを合わせて311首を収める。恋愛を中心とした人事の歌が殆どで、庶民の感情を伝え、江戸歌謡の基礎となった。
・仇は情け(あだはなさけ) 仇と思ったことが、却(かえ)って情けとなる。
・徒花に実は生らぬ(あだばなにみはならぬ) 徒花は咲くだけで実が生らないことから、外見が華やかでも、中身や実質を伴わなければ良い結果には結び付かないということ。
・あたぼう 当たり前だ。当然だ。 類:●あた ★「当たり前だ、べらぼうめ」を縮約した言い方<大辞林(三)> 参考:箆棒(べらぼう)
−−−−−−−あた(ま)(#ata7)−−−−−−−
・頭打ち(あたまうち) 1.相場、俸給などが一定の限界に達して、それ以上上がらなくなること。2.ものごとが限界に達して、それ以上の進展の見込みがなくなること。 類:●天井打ち
・頭押さえりゃ尻ゃ上がる(あたまおさえりゃしりゃあがる) 一方を押さえると、もう一方が上がる。何もかもうまくいくことは難しいということの喩え。 類:●彼方立てれば此方が立たぬ●右を踏めば左が上がる
・頭が良い(あたまがいい) 賢(かしこ)い。 例:「中学時代までは頭が良いと言われた」
・頭が痛い(あたまがいたい) 1.頭痛がする。2.悩み事・心配事などで、苦悩する。 例:「どら息子の将来を考えると、頭が痛い」
・頭が固い(あたまがかたい) 自分の考えに拘(こだわ)って、融通が利かない。頑固である。また、そういう人。 類:●石頭
・頭が切れる(あたまがきれる) 利口(りこう)である。頭の回転が早く、てきぱきとものごとを処理する能力がある。
・頭隠して尻隠さず(あたまかくしてしりかくさず) 1.かくれんぼなどで、全身隠れた積もりなのに、実際には頭だけで尻が丸見えになっていること。 類:●頭を蔵(かく)して尾を露(あらわ)す●雉の草隠れ 出典:「帰潜志−九」「王笑曰、此老所謂、蔵頭露尾耳」 出典:帰潜志(きせんし?) 史書。元代。劉祁(りゅうき)。・・・調査中。 2.転じて、悪事や悪戯(いたずら)などで、一部分だけしか隠してないのに、全部を隠したつもりでいるのを嘲(あざけ)って言う。 類:●柿を盗んで核(さね)を隠さず
・頭が下がる(あたまがさがる) 他人の行為や性格に敬服させられる。尊敬の気持ちが起こる。
・頭が低い(あたまがひくい) 態度が偉(えら)ぶっていないで、どんな人に対しても丁寧である。謙虚である。 類:●腰が低い
・頭が古い(あたまがふるい) 1.考え方が古臭くて、時代にそぐわない。 類:●時代錯誤 2.古い因習に拘(こだわ)って、融通が利かない。 類:●頑固●頭が固い
・頭が回る(あたまがまわる) 利口(りこう)である。頭の回転が早く、てきぱきとものごとを処理する能力がある。
・頭から水を浴びる(あたまからみずをあびる) 予期せぬことに見舞われて、ぞっとすること。
・頭から湯気を立てる(あたまからゆげをたてる) とても怒っている様子。かんかんになっている様子。 類:●怒髪天を衝く●色をなす●(女)柳眉を逆立てる
・頭熟し(あたまごなし) 相手の言い分を聞かず、初めから一方的に押さえ付けるような態度を取ること。 類:●あたまくだし 例:「頭ごなしに叱る」 ★「熟(こな)す」は、見下す・軽く扱う・貶(けな)すなどの意味。
・頭でっかち(あたまでっかち) 1.身体(からだ)全体の割りに、頭が大き過ぎること。2.一般に、物の上部が下部に比べて不釣合いに大きいこと。 例:「頭でっかちな建物」 3.比喩的に、知識だけが豊富で実行が伴わない様子。理屈ばかり並べて実際には何もしないこと。 類:●マッチ棒 例:「塾通いでは頭でっかちになる」
・頭でっかち尻つぼみ(あたまでっかちしりつぼみ)[=尻窄(すぼ)り] 頭ばかりが無闇に大きなこと。また、初めは大きく終わりが小さいこと。初めは勢いが良いが、終わりは駄目なこと。 類:●竜頭蛇尾
・頭に来る(あたまにくる)[=へ来る] 1.怒りや悲しみや驚きのために、頭に血が上(のぼ)る。かっとなる。 類:●鶏冠(とさか)に来る●逆上する 2.酒の酔いや病毒などが頭に回る。3.気が変になる。狂人になる。 例:「とうとう頭に来やがったか」 4.意識に上(のぼ)る。思い出す。
・頭に血が上る(あたまにちがのぼる) 感情が昂(たか)ぶり、冷静さを失う。興奮すると頭部に血が集まり、顔や耳が赤くなることから言う。 類:●逆上する●かっとなる
・頭の上の蝿も追えぬ(あたまのうえのはえもおえぬ)
・頭の黒い鼠(あたまのくろいねずみ) 頭髪の黒い鼠=人間のこと。鼠が物を盗むように、物を掠(かす)め取る人。家の中の物がなくなった時などに、それを盗んだのは、頭が鼠色の鼠でなくて、頭の黒い鼠=人間であろうと、犯人を仄(ほの)めかしていう。
・頭の天辺から足の爪先まで(あたまのてっぺんからあしのつまさきまで) 全身の全部。上から下まで。また、一から十まで、全部。 類:●頭から尻尾まで●徹頭徹尾●天井から縁の下まで
・頭を痛める(あたまをいためる) 心配事や苦労で頭を痛める。あれやこれやと心配する。
・頭を抱える(あたまをかかえる) 途方に暮れて考え込む。困り果てる。
・頭を下げる(あたまをさげる) 1.お辞儀(じぎ)をする。2.頼む。3.相手の力に屈する。降参する。謝(あやま)る。許しを請う。 例:「彼にだけは頭を下げたくない」 4.感心する。 例:「彼の実直さには頭が下がる」
・頭を搾る(あたまをしぼる) あれこれ考える。色々と工夫する。 例:「ない頭を搾る」
・頭を撥ねる(あたまをはねる) もと興行師仲間の用語。他人の利益の一部を掠(かす)め取るという意味。上前(うわまえ)を掠め取る。ピンハネする。 類:●上前(うわまえ)を撥ねる●ピンを撥ねる
・頭を冷やす(あたまをひやす) 血が上った頭を冷ます。興奮した状態から、冷静になる。 例:「頭を冷やしてもう一度考え直せ」
・頭を丸める(あたまをまるめる) 頭髪を剃ることから転じて、出家する。僧になる。
・頭を擡げる(あたまをもたげる)[=持ち上げる] 1.押さえていた疑いなどが浮かび上がってくる、また、隠れていたある考えが浮かんでくる。思い付く。 例:「疑念が頭を擡げる」 2.次第に勢力を得て、人に知られるようになる。台頭してくる。
・頭を割る(あたまをわる) 1.鈍器などで殴って頭蓋骨に傷を付ける。2.思いをあれこれ巡らす。苦心する。
・仇も情けも我が身より出る(あだもなさけもわがみよりでる) 人から憎まれるのも愛されるのも、日頃の自分の心掛けや行ないの結果によるものである。普段から、人に対して軽々しい言動を控え、過ちのないようにしなければならないということ。 類:●因果応報●自業自得●身から出た錆●情けは人の為ならず●檜山の火は檜より出でて檜を焼く
−−−−−−−あた(ら)(#ata9)−−−−−−−
・可惜口に風を入る(あたらくちにかぜをいれる)[=引かせる] 折角言ったことが無駄になること。折角意見をしたり良い声で歌ったりしても、その甲斐がなくなること。
・新しい空気(あたらしいかぜ) 新しい時代に生まれた新しい風潮という意味で、主に、新時代の文化や思想について用いる。 類:●新しい波●新しい風
・新しい酒を新しい皮袋に盛る(あたらしいさけをかわぶくろにもる)[=葡萄酒を〜] 新しい内容を、新しい形式で表現する。新形式の中に新思想を盛り込む。 出典:「新約聖書(改訳)−マタイ伝・九章」
・新しい酒を古い皮袋に盛る(あたらしいさけをふるいかわぶくろにもる)[=〜入る] 新しい内容を、古くからある形式の中に盛り込む。旧形式の中に新思想を盛り込む。 出典:「引照旧新約全書−馬太伝・九章」 出典:引照旧新約全書(いんしょうきゅうしんやくぜんしょ) 聖書の訳本。明治22年(1889)。1巻。米国聖書会社。のち、聖書翻訳・出版事業は、昭和13年(1938)に設立された日本聖書協会が受け継いだ。
・可惜身命(あたらしんみょう) 《四熟》 身体や命を大切にすること。命を疎(おろそ)かにすべきではないということ。 反:■不惜身命 ★「命を惜しむべし」と読み下す。
・当たらず障らず(あたらずさわらず)・触らず ものごとに付いてはっきり言わない。核心に触れない。曖昧(あいまい)で事なかれ主義であるということ。 類:●当たり障りがない 例:「当たらずさわらずの返答をする」
・当たらずといえども遠からず(あたらずといえどもとおからず) 正しく的中はしていないが、たいした間違いがなく、ほぼ当たっている。
・可惜花を散らす(あたらはなをちらす) 惜しまれる人が若死にすること。 ★「あたら」は、「もったいないことにも(まあ)」「惜しいことにも(まあ)」などの意味。
・当たりが付く(あたりがつく) 1.気持ちが傾く。惚(ほ)れる。 用例:洒・箱まくら−上「旦那さん、春さんにあたりがつきましたか」 2.見当がつく。手掛かりができる。 用例:滑・七偏人−二「誰とも当りの付かざる故」 3.芝居興行などで評判を取る。また、商売で成功する。 用例の出典①:河東方言箱まくら(かわひがしほうげんはこまくら) 洒落本。田螺金魚。安永7年(1778)。1巻1冊。・・・調査中。 用例の出典②:七偏人(しちへんじん) 江戸末期の滑稽本。5編。梅亭金鵞。安政4年(1857)〜文久3年(1863)。「八笑人」に倣(なら)い、酒を飲みながらの茶番を書いたもの。金持ちの若隠居喜次郎とそこへ集まる暇人たちの話。正式な書名は、「妙竹林話〜七偏人(みょうちくりんばなし〜しちへんじん)」。 著者:梅亭金鵞(ばいていきんが) 幕末から明治開化期に活躍した戯作者。1821〜93。本名、吉田政和。通称、熊三郎。江戸両国の人。滑稽本・人情本にその才を示したが、明治維新後は、「団団珍聞(まるまるちんぶん)」主筆、「東京絵入新聞」客員などとして活躍。著に「七偏人」「柳之横櫛」などがある。
・あたりきしゃりき 「当たり前」を洒落ていう。近世以後、職人などが用いるぞんざいな言葉。 類:●あたりきしゃりきのこんこんちき ★「しゃりき」は「車力」で、「りき」の音を繰り返して語呂をよくするために添えたもので、さらに「車引き」とか「けつの穴馬力」とか続けてもいう<国語大辞典(小)>
・辺りに人なきが如し(あたりにひとなきがごとし) 遠慮のない振る舞いをする。 類:●傍若無人
・当たり前(あたりまえ) 1.道理から考えて、そうあるべきこと。誰が考えてもそうであること。 類:●当然 例:「借りた金は返すのが当たり前だ」 2.ごく普通のこと。ありふれていること。世間並みの。 例:「当たり前の策では勝てない」 ★「当然」の当て字「当前」の訓読から<国語大辞典(小)>
・辺りを輝かす(あたりをかがやかす)・耀かす その人から光が出て、辺りを照らすように感じられるという意味。人格、服装、様子などが立派で、素晴らしいこと。 類:●辺り輝く
・当たりを付ける(あたりをつける) 1.惚(ほ)れる。気持ちが傾(かたむ)ける。2.見当を付ける。手掛かりを見付ける。 類:●目星を付ける 例:「犯人の当たりを付ける」
・当たりを取る(あたりをとる) 1.芝居興行などで評判を取る。また、商売で成功する。2.見当を付ける。 類:●当たりを付ける
・辺りを払う(あたりをはらう) 他を近くに寄せ付けない。美麗、威厳などで周囲を威圧する様子。堂々としている様子。 類:●辺りを圧す●辺りを制す●他を圧す
・当たるも八卦当たらぬも八卦(あたるもはっけあたらぬもはっけ) 占いは、当たりもするが外れもする。必ずしも的中しないのが占いというものだ。
・当たるを幸い(あたるをさいわい) 手に当たるを幸いとして。手当たり次第に。 類:●当たる任せ●手当たり次第●盲滅法
−−−−−−−あた(わ)(#atawa)−−−−−−−
・能わざるに非ずせざるなり(あたわざるにあらずせざるなり) ものごとを成就(じょうじゅ)できないのは、やる能力があるのに、それを発揮しないからである。実行力や意志の欠如を指摘して言う。 出典:「孟子−梁恵王・上」「王之不王、不為也、非不能也」
・仇を鬼に作る(あだをおににつくる) 自分に害を与えるもの(仇)を更に恐ろしい鬼の姿に作るという意味で、甚(はなは)だ悪い状況、そら恐ろしい状態を喩えていう。
・仇を恩で報いる(あだをおんでむくいる) 恨みのある者に対し、却って情けを掛けること。 類:●仇を情に引き換える●恨みに報ずるに徳を以ってす 反:■恩を仇で返す
・仇をなす(あだをなす)[=結ぶ] 恨みに思う。人に危害を加える。仕返しをする。 用例:太平記−一八「今武家の為に結怨(アタヲムスビ)」
−−−−−−−あち(#ati)−−−−−−−
・彼方立てれば此方が立たぬ(あちらたてればこちらがたたぬ) 一方の良いようにすると他方には悪くなる。相対する二者を両立させることは難しいということの喩え。 類:●あなた立てればこなた立たぬ●あなたを祝えばこなたの怨み●猫が肥えれば鰹節が痩せる●出船に良い風は入り船に悪い●頭押えりゃ尻ゃ上がる●It’s hard to please everybody. ★「立てる」は「顔を立てる」の意味。 ★後に「両方立てれば身が立たぬ」と続けても言う。
−−−−−−−あつ(#atu)−−−−−−−
・熱い戦争(あついせんそう) 英語hot warの訳語。直接武力による戦争。外交や経済などの手段による対立を「冷たい戦争(cold war)」というのに対していう。
・悪貨は良貨を駆逐する(あっかはりょうかをくちくする)
・厚かましい(あつかましい) 恥知らずで遠慮がない。厚顔である。類:●図々しい 用例:評判・吉原讚嘲記時之大鞁「うすなさけまたるいさまをきみにみはあつかましとぞきみはいわなん」 用例の出典:吉原讚嘲記時之大鞁(よしわらさんちょうきときのたいこ) 遊女評判記。寛文7年(1667)。・・・調査中。
・圧巻(あっかん)
・熱くなる(あつくなる) 1.むきになって怒る。 類:●かっとなる 用例:滑・膝栗毛−三「北八水たまりの中へころげて、大きにあつくなり」 2.あるのことに熱中してしまう。異性に逆上(のぼ)せ上がる。 類:●あつあつとなる 用例:伎・お染久松色読販 −序幕「深川芸者のお糸といふにあつく成り」
・呆気ない(あっけない) ものごとが思ったよりも貧弱、非力または簡単で、物足りない。また、想像に反して容易で張り合いがない。 用例:雑俳・柳多留−三「あっけない壱歩か蛍飛びしまひ」 例:「呆気ない幕切れ」 ★物足りないの意の「飽く気(け)なし」の転。「呆気」は当て字<大辞林(三)>
・呆気に取られる(あっけにとられる) 思い掛けない状況になって、驚き、ぼんやりする様子。
・あっけらかん・あけらかん 1.意外さに、口を開けてぼんやりしている様子。ぽかんとした様子。また、その人。 類:●あけらけん●あけらほん 用例:滑・六阿弥陀詣−嗣編「三助どのも、釣する側にあけらくゎんと」 2.何もなかったように平気でいる様子。けろっとしている様子。 例:「失敗してもあっけらかんとしている」 3.伸び伸びとして開けっ広げな様子。4.何もなく空間が広く空いている様子。がらんとしている様子。 ★「あけらかん」の転<大辞林(三)> ★語源は、「口を開けた様子」の意の「あんけ(開けの転)」からかという。 蛇足:江戸後期の狂歌師に、朱楽菅江(あけらかんこう)という人がいた。本名は山崎景貫(かげつら)。元文5年(1740)〜寛政12年(1800)。 用例の出典:滑稽六阿弥陀詣(こっけいろくあみだもうで) 滑稽本。十返舎一九。・・・調査中。
・悪口雑言(あっこうぞうごん) 《四熟》 口に任せて、様々に悪口を言い捲ること。また、その言葉。 類:●悪口罵詈●罵詈雑言●讒謗罵詈●罵詈讒謗●爬羅剔抉
・悪口を切る(あっこうをきる) 人を悪し様に言う。悪口を吐く。
・暑さ寒さも彼岸まで(あつささむさもひがんまで) 残暑の暑さも秋の彼岸頃まで、余寒の寒さも春の彼岸までという意味。共に、その後は気候も穏やかになり、凌(しの)ぎ易くなるということ。 ★「暑い寒いも彼岸まで」「暑さ寒さも彼岸ぎり」とも。
・暑さ忘れて蔭忘る(あつさわすれてかげわする) 暑さが去ると同時に涼しかった物陰のありがたさを忘れてしまう。転じて、恩を忘れることが早い。 類:●喉元過ぎれば熱さを忘る●雨晴れて笠を忘る
・在って無かしもの(あってなかしもの) あっても、ないに等しいもの。名ばかりのもの。 類:●無用の長物●あるなしもの ★「無かし」は「無かりし」の変化した「無かっし」の促音の無表記<国語大辞典(小)>
・在ってもあられぬ(あってもあられぬ) そこに居ても居るような気持ちになれないという意味で、じっとしてはいられない気持ちを表わす場合に用いる。 類:●いたたまれない●居ても立ってもいられない●あるにもあられず
・有っても苦労無くても苦労(あってもくろうなくてもくろう) 物もお金も子供も、有れば有ったでそれなりの苦労があるし、また、無ければ無いで苦労をするものである。あれば心配の種であるし、無ければ悲しみの種であるということ。 類:●子は有っても苦労無くても苦労
・あっという間(あっというま) あっと声を出すほどの短い間。一瞬の間。 例:「あっと言う間の出来事」
・あっと言わせる(あっといわせる) 吃驚(びっくり)させる。思わずあっと声を出すほど感心させる。 類:●耳目を驚かせる 例:「世の中をあっと言わせる」
・天晴れ(あっぱれ)・遖 1.驚くほど立派である。感嘆、悲哀や決意など強い感動を表わす。 類:●嗚呼(ああ) 用例:平家−五「あっぱれ、この世の中は只今乱れ、君も臣もほろびうせんずるものを」 2.感心して褒め称える気持ちを表わす言葉。体言の上に付いて、連体詞のように用いることもある。 類:●見事(みごと)●素晴らしい●出来(でか)した 用例:謡曲・八島「あっぱれ大将やと見えし」 ★「あわれ(哀)」の変化で中世に発生した語形。「天晴」は当て字<国語大辞典(小)> ★「遖」は国字<広辞苑第四版(岩)> 用例の出典:八島(やしま) 謡曲。二番目物。各流。作者不明。「平家物語」による。八島の浦で塩屋に一夜の宿を乞(こ)うた旅僧の夢の中に義経の亡霊が現れる。屋島の合戦での弓流しの経緯(いきさつ)を語り、修羅道で苦しむ様子を示すというもの。勝ち修羅の一つ。幸若や地唄などにも取り入れられた。
・熱火を子に払う(あつびをこにはらう)[=掛ける] 炎に襲われたとき、最愛の我が子の方へ火を払ってでも熱さから逃れようとする。普通ならどんなことがあっても守るべき者に、自分の災いを肩代わりさせること。また、危急の場合には極端な利己心が現われるものだということの喩え。 類:●跳ね火を子に払う 出典:「十善戒経」
・羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)
・誂え向き(あつらえむき) 1.特別に注文したとおりにできていること。また、出来合いではない誂えた上等なもの。 類:●お誂え向き 2.希望していた通りのこと。また、そのような物。 類:●理想的●注文通り●打って付け 用例:滑・七偏人−三「此方の誂(アツラ)へ向なのだ」
・圧力を掛ける(あつりょくをかける) 権力、財力、武力、集団などの力、その他の強制力によって従わせるようにする。威力をもって押し付ける。威圧する。
−−−−−−−あて(#ate)−−−−−−−
・当て馬(あてうま) 1.牝(めす)馬の発情を調べたり促(うなが)したりするために、牡(おす)馬を近付けてみること。また、その牡馬。2.転じて、相手の様子を探るために仮の者を前面に出すこと。また、その者。 例:「当て馬として先発メンバー表に入れた」
・宛行扶持(あてがいぶち) 先方の要求に関係なく、与える側が一方的な条件で与える所領、俸禄など。また、そのような与え方をすること。 用例:雑俳・柳多留−一五「初会にはあてがひぶちをくってゐる」 用例の出典:俳風柳多留(はいふうやなぎだる) 川柳集。176冊。呉陵軒可有ほか編。明和2年(1765)〜天保11年(1840)刊。1〜24編前半までは初代柄井川柳、以下五世まで代々の撰集。「川柳評万句合」の中から前句を省いても意味の通じる句を集めた小型本。「やなぎだる」とも。
・当てが外れる(あてがはずれる) 期待していたこと、見込みが外れる。 用例:滑・七偏人−三「一番ヤンヤと請ける気の当が外れて」 類:●予期に反する●当てが違う
・当て事と越中褌は向こうから外れる(あてごととえっちゅうふんどしはむこうからはずれる)[=畚褌(もっこふんどし)は〜] 兎角(とかく)当てにしていることは、先方の都合で外れることが多い。 ★越中褌(畚褌)は、前の部分(前方・先方)から外れることが多いことから。
・当て込む(あてこむ) 1.良い結果を予期して、それを当てにする。旨い結果や良い機会を期待する。 類:●当てにする 例:「お祭りの人出を当て込む」 2.芝居などで、最近の事件や話題などを、脚本または、台詞(せりふ)やしぐさにそれとなく取り入れて客受けを狙う。 用例:伎・神有月色世話事「これは五右衛門を当込んだのだ」 用例の出典:神有月色世話事(かみありづきいろのせわごと) 歌舞伎。河竹黙阿弥。文久2年(1862)。通称「縁結び」。・・・詳細調査中。
・当てずっぽう(あてずっぽう)・当てずっぽ はっきりした根拠もなしに判断し、事を行なうこと。また、その内容。 類:●当て推量●出鱈目 用例:浄・扇的西海硯−道行「あてづっぽうに声を懸け」 用例の出典:扇的西海硯(おうぎのまとさいかいすずり) 浄瑠璃。並木宗輔、並木丈輔。享保19年(1734)。那須与市の西国出陣と、息子小太郎・駒若の初陣(ういじん)争いを描いたもの。別名「那須与市西海硯」。通称「乳母争い」。
・当て付ける(あてつける) 1.物を宛てがう。割り当てる。 用例:古今著聞集−一〇・三七七「おほゐ子が田にはあてつけざりける時」 2.他のことに託(かこつ)けて不満、非難、恨みなどの感情を遠回しに表現する。皮肉な言い方や皮肉な態度を示す。3.男女の仲の良いところを、見せ付ける。わざと見せびらかす。
・当て所もない(あてどもない) 「当てど」は、当てる所、即ち、心当たりという意味で、目当てがないということ。なんとなく不安である。 用例:浮・好色五人女−二「薬代の当所(アテト)もなく」 用例の出典:好色五人女(こうしょくごにんおんな) 浮世草子。5巻5冊。井原西鶴。貞享3年(1686)。当時著名な巷説(こうせつ)に取材し、お夏清十郎、樽屋おせん、おさん茂右衛門、八百屋お七、おまん源五兵衛の5組の恋愛事件を扱う。 人物:井原西鶴(いはらさいかく) 江戸前期の浮世草子作者、俳人。1642〜93。本名平山藤五。別号鶴永、西鵬、二万翁。家号松寿軒。大坂の人。西山宗因に談林風俳諧を学び、矢数俳諧を得意とした。浮世草子の名作を数多く残した近世文学の代表者。著「好色一代男」「好色五人女」「好色一代女」「武道伝来記」「武家義理物語」「本朝二十不孝」「日本永代蔵」「世間胸算用」「西鶴織留」「西鶴置土産」、俳諧に「大句数」「大矢数」など。
・当てにする(あてにする) 信用して頼りにする。助力などを期待する。 例:「些細なことでも親を当てにする」
・当てにならない(あてにならない) 信頼することができない。頼りにならない。また、信用できない。 例:「近頃の天気予報は当てにならない」
・当てられる(あてられる) 1.男女の仲の良さを見せつけられる。 例:「新婚の二人に当てられる」 2.害を与えられる。体に障(さわ)る。 例:「毒気に当てられる」
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・後足で砂を掛ける(あとあしですなをかける)
・後押し(あとおし)・跡押し 1.荷車などの後るを押して、引き手を助けること。また、その人。 例:「坂が急なので後押しが必要だ」 2.転じて、陰で助力すること。力添えをしたり、悪いことを唆(そそのか)したりすること。また、それをする人。 類:●後援●後ろ楯●尻押し 例:「代議士の後押しが付いている」
・跡形もない(あとかたもない) 1.何かがあったという形跡が全然ない。痕跡もない。2.訳が分からない。筋道が立たない。根拠がない。 用例:拾遺愚草−上「秋の夜は雲路をわくる雁がねのあとかたもなく物ぞ悲しき」 用例の出典:拾遺愚草(しゅういぐそう) 鎌倉初期の私家集。藤原定家の和歌を収める。自撰。本編3巻と員外の4巻から成る。建保4年成立、その後天福元年(1233)に出家するまでのものを加えている。総歌数は3,829首。六家集の一つ。
・後釜(あとがま) 1.竈(かまど)に残り火がある内に次の釜を掛けること。また、その釜。2.跡取り、跡継ぎ。また、後添(のちぞ)いの妻、後妻(ごさい)。 用例:伎・四天王楓江戸粧−二番目「跡釜(アトガマ)に引摺り込む相談に」 3.後任。後任者。 例:「後釜に据わる」
・後腐れ(あとくされ) ものごとが綺麗に片付かないで、ごたごたや悪影響が残ること。事後の関わり合い。 例:「後腐れないように別れた」 ★「あとぐされ」とも<国語大辞典(小)>
・後先になる(あとさきになる) 1.後になったり、先になったりする。 例:「二人が後先になって歩いて行く」 2.前後の順序が逆になる。論点に食い違いが生じる。 用例:人情・春色恵の花−二「はかりし事も前後(アトサキ)に、なりゆく浮世の定めなさ」 例:「話が後先になってしまった」
・後先見ず(あとさきみず)[=無し] 前後を顧(かえり)みない無分別なこと。また、その人。 類:●出たとこ勝負●前後の見境がない●跡見ず将棋(しょうぎ)
・後先を踏まえる(あとさきをふまえる)[=踏む] 周囲の事情や状況を良く考える。予(あらかじ)め十分に見込みを付けておく。
・後にする(あとにする) そこから離れる。旅立つ。
・後にも先にも(あとにもさきにも) それ一回きりのことであることを強調して言う。今までも、またこれからも。 例:「彼が両親の話をしたのは、後にも先にもそれきりだった」
・後の雁が先になる(あとのかりがさきになる・がんが〜) 後から来た者が前の者を越して先になる。後輩が先輩を追い越したり、若い者が先に死んだりする場合に使う。
・後の祭り(あとのまつり)
・後は野となれ山となれ(あとはのとなれやまとなれ) 当面のことさえ凌(しの)いでしまえば、その先のことや、その結果がどうなろうとも知ったことではない。 類:●旅の恥は掻き捨て●After us the deluge!<「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典> 反:■立つ鳥後を濁さず 出典:「冥途の飛脚」
・後腹を病む(あとばらをやむ) 比喩的に用い、事が一段落ついた後で、なお好ましくないことが引き続いて迷惑する。苦労する。 用例:浮・好色一代女−五「智恵の有(ある)男を頼み、跡腹やまずに仕切銀のうち弐貫目出して」 用例の出典:好色一代女(こうしょくいちだいおんな) 浮世草子。6巻6冊。井原西鶴。貞享3年(1686)刊。公卿の娘として宮仕えした主人公が不義をして主家を追われた後、淫蕩な本能にかられるまま、あるいは生活苦のために、女に与えられた様々な境遇や職業を転々として年を重ね、次第に転落してゆく生涯を描く。
・後へ引かない(あとへひかない) 自分の意見や主張に固執して、譲歩しない。 例:「言い出したら後へ引かない」
・後へ引けない(あとへひけない) 戻(もど)れない。 例:「今更後へは引けない」
・後へも先へも行かぬ(あとへもさきへもゆかぬ) 進退窮(きわ)まる。 類:●二進(にっち)も三進(さっち)もいかない
・迎合を打つ(あどをうつ) 人の話に調子を合わせて受け答えする。 用例:大鏡−六「ただ殿のめづらしう興ありげにおぼしてあどをよくうたせ給ふに」 用例の出典:大鏡(おおかがみ) 平安時代の歴史物語。3巻本、6巻本、8巻本がある。著者未詳。鳥羽天皇の時代の成立か。大宅世継、夏山茂樹という二老人の昔語りに、若侍が批判を加えるという形式で、文徳天皇から後一条天皇まで、14代176年間の歴史を藤原道長の栄華を中心に紀伝体で描く。「世継物語」とも。
・後を黒む(あとをくろむ) 戦いの際、背後の方を守る。後方から援護する。
・後を詰める(あとをつめる) 1.後のことの約束を固める。2.遊里で、客が遊女を、翌朝まで買い切る。3.決着を付ける。結末を付ける。終わらせる。
・跡を取る(あとをとる) 跡を継ぐこと、家や会社などの相続をすること。 類:●跡目を継ぐ
・後を引く(あとをひく) 決まりが付かずいつまでも続く。また、いつまでも続けてする。 用例:浮・男色大鑑−七「跡引て明暮恋にせめられ」 ★主に飲食や好みなどについていう<国語大辞典(小)>
・迹を滅せんと欲して雪中を走る(あとをめっせんとほっしてせっちゅうをはしる) 足跡を消そうとして雪の中を走る。してはいけないことを敢えてすること。目的とその方法が相反していることの喩え。 出典:「淮南子−説山訓」「欲滅迹而走雪中、拯溺者而欲無濡」
・跡を譲る(あとをゆずる) 誰かに跡を継がせる。 類:●跡を立てる 反:■後を取る