【ねあ】〜【ねの】
・根浅ければ則ち末短く、本傷るれば則ち枝枯る(ねあさければすなわちすえみじかく、もとやぶるればすなわちえだかる) 根が深く張っていなければ梢(こずえ)も伸びず、根元が傷付くと枝葉も枯れる。根本や基礎がしっかりしていないものは、発展がなく直(じき)に駄目になるということ。 出典:「淮南子−繆称訓」「根浅則末短、本傷則枝枯」
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・佞悪醜穢(ねいあくしゅうわい) 《四熟》 心が曲がって性質が悪く、醜く汚らわしいこと。 類:●佞悪奸智 反:■清麗高雅■清廉潔白
・寝息を窺う(ねいきをうかがう) 他人の寝息を観察する。ぐっすり寝ているかどうか探ってみる。転じて、人の睡眠中に気付かれないように悪事や悪戯(いたずら)などをしようとする。
・寧馨児(ねいけいじ) 「寧馨」は晋・宋の俗語で、「このような」の意味。このような男児、「かくの如(ごと)き子」の意味で、優れた子供のこと。 類:●神童
・佞言は忠に似たり(ねいげんはちゅうににたり) 媚(こ)び諂(へつら)う言葉は、ともすると、誠実な真心に似て聞こえるものである。 ★「佞言」はおべっか、諂う言葉。 出典:「宋史−李伝」「佞言似忠、姦言似信」
・寝入り目(ねいりめ) いかにも眠そうな様子。寝惚けたような状態。また、転じて、はきはきしない様子。
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・寝牛起き馬(ねうしおきうま) 牛は寝転ぶのを、馬は立つのを好むところから、好みは各人各様であるということ。 類:●人様々●十人十色
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・願い下げ(ねがいさげ) 1.願い出たことの取消しを申し出ること。願書などを取り下げること。2.一旦希望した事を自分から止(や)めたいと申し出ること。また、頼まれても引き受けないこと。頭を下げてでも拒絶したいこと。 類:●お断り 例:「そんな昇進なら、こっちから願い下げだ」
・寝返る(ねがえる) 1.寝たまま、身体の向きを変える。寝返りを打つ。2.味方を裏切って敵方に付く。 類:●寝返りを打つ
・願ったり叶ったり(ねがったりかなったり) 願いや希望の通りになること。全て思い通りであること。 類:●思うたり叶うたり●渡りに船
・願ってもない(ねがってもない) 願っても簡単には叶いそうもないことが、図らずも叶うようだ。
・根がない(ねがない)[=もない] 根拠がないという意味で、証明できるようなはっきりとした資料や証拠がないということ。 類:●根も葉もない
・根がなくとも花は咲く(ねがなくともはなはさく) まったく事実無根であっても、噂というものは、暫(しばら)くの間飛び交(か)うものである。
・根が生える(ねがはえる) 根が生えたように動かないという意味で、その場にすっかり腰を据えて落ち着くこと。 類:●尻を据える
・値が張る(ねがはる) 値段が普通より可成り高いという意味で、高価であること。
・根から(ねから) 1.根本からそういう状態である。 類:●元から●始めから●根こそぎ●根っから 例:「根からの遊び人」 用例:評判・色道大鏡−五「ねから催(もよほ)したる病人とはおもはれず」 2.(打消しや否定的な表現と呼応して、それを強める) 殆(ほとん)ど問題にもしないで否定する気持ち。 類:●まったく●更々●根っから 例:「根から分からない」 用例:浮・傾城禁短気−五「根から厭と思召す男ならば」
・根から葉から(ねからはから) 全然。一切。「根から」を強めた言い方。 用例:浄・薩摩歌−鑓じるし「ねからはから聞ねば」 ★「葉から」は「根から」に語調を合わせたもの<国語大辞典(小)>
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・根切り葉切り(ねきりはきり) 何から何まで。ある限り。すべて。悉(ことごと)く 類:●根掘り葉掘り●根っきり葉っきり
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・寝首を掻く(ねくびをかく) 1.眠っている人を襲って首を切り取る。 例:「寝返った部下に寝首を掻かれた」 ★卑怯な手段とされた<学研国語大辞典> 2.転じて、卑怯な計略を用いて、相手を陥(おとしい)れる。油断させておいて陥れる。 例:「リストラされた中堅どころは、寝首を掻かれたようなものである」
・根腐る(ねぐさる) 1.食物などが腐る。 用例:多聞院日記−永禄11年5月21日「うどんの粉をねくさらせぬは」 2.余命幾許も(いくばく)ない。命運尽き果てる。多くは、「命が根腐る」の形で、人を罵(ののし)って言う。 用例:浄・浦島年代記−入部の纜「ねぐさって死に来たか」 3.性根(しょうね)が腐る。多く、「根性が根腐る」の形で使う。 用例:浄・菖蒲前操弦−二「根性迄がねぐさったか」 用例の出典㈰:多聞院日記(たもんいんにっき) 興福寺の学侶の多聞院英俊法印の日記。刊本5冊。原本は散逸し写本が興福寺に残る。当代の社会経済資料として珍重されるが、茶湯に関する資料も豊富。特に北野大茶会、利休磔刑とその罪因の記事は注目を惹く。 用例の出典㈪:浦島年代記(うらしまねんだいき) 浄瑠璃。時代物。近松門左衛門。享保7年(1722)。親子2代に渡り、大亀を助ける浦島。その浦島と竜宮城の乙姫とのやりとりも<近松門左衛門でござーい!> 用例の出典㈫:菖蒲前操弦(あやめのまえみさおのゆみはり) 浄瑠璃。3巻。竹田出雲 ・吉田冠子 ・中邑閏助 ・近松半二 ・三好松洛。宝暦4年(1754)竹本座初演。・・・詳細調査中。
−−−−−−−ねこ(#neko)−−−−−−−
・猫が顔を洗い、耳を過ぎると客が来る(ねこがかおをあらい、みみをすぎるときゃくがくる) 猫は、人が近付く気配を素早く感じ、ストレスの転移行動として、猫は顔を洗うような仕種(しぐさ)をしたり、落ち付きがなくなったりする。そのため、猫が顔を洗うと客が来るという。 用例:酉陽雑俎続集「猫洗面過耳、則客至」 出典:酉陽雑俎(ゆうようざっそ) 中国、唐代の子部の小説類の一つ。20巻。続集10巻。段成式撰。860年頃成立。仙仏人鬼から、動植物に至るまでの広範な怪事異聞を、36の部立に分けて随筆風に叙述したもの。
・猫が肥えれば鰹節が痩せる(ねこがこえればかつおぶしがやせる) 鰹節を食った猫は太るが、齧(かじ)られた鰹節は痩せて細くなる。一方が得をすれば、他方が損をするということの喩え。 類:●あちらを立てればこちらが立たぬ●出船に良い風は入り船に悪い
・猫が糞を踏む(ねこがばばをふむ) 猫は排便した後に後ろ足で砂を掛けて隠す習性があることから、悪事を隠して知らん顔をする喩え。特に、拾得物や預かり物を自分のものにしてしまうことをいう。 類:●猫糞
・猫被り(ねこかぶり・ねこっかぶり) 本性を包み隠して、表面は大人しそうに見せること。あるいは知らない振りをすること。また、その人。猫っ被り。 類:●蒲魚(かまとと)
・猫可愛がり(ねこかわいがり・ねこっかわいがり) 猫を可愛がるように、子や孫を甘やかして可愛がること。無闇矢鱈に可愛がること。 例:「孫を猫可愛がりする」
・猫舌(ねこじた) 猫が熱い食物を嫌うところから、熱いものを飲食できない舌。また、その人。
・根刮ぎ(ねこそぎ) 1.草などを根まですっかり抜き取ること。 類:●根扱ぎ 例:「庭の松が根こそぎになった」 ★「こそぐ・こそげる」は、表面に付いているものを削(けず)り取ること。 2.残すところなく、全て取り除くこと。また、禍(わざわい)の元などを根絶すること。 例:「麻薬組織を根こそぎにする」 3.(副詞的に) 余すところなく。悉(ことごと)く。多く、窃盗被害に遭(あ)ったときなどに使う。 類:●洗い浚い●一切合切●残らず 例:「貴金属を根こそぎ奪われた」
・猫撫で声(ねこなでごえ) 猫が人に撫でられるときに出すような、優しく媚びを含んだ声音(こわね)。
・猫に鰹節(ねこにかつおぶし)[=鰹・乾鮭(からざけ)] 猫の好物の鰹節をその傍(そば)に置くということで、みすみす過ちや危険な状態を招くこと。また、そのような危うい状況にあること。 類:●狐に小豆飯
・猫に小判(ねこにこばん)[=石仏(いしぼとけ)]
・猫に木天蓼お女郎に小判(ねこにまたたびおじょろうにこばん) 1.大好物の喩え。2.また、それぞれにとって効果が著しいもの。
・猫にもなれば虎にもなる(ねこにもなればとらにもなる) 猫のように大人しくなれば、虎のように狂暴にもなる。相手の出方次第で、優しくもなれば猛々(たけだけ)しくもなる。
・猫の居るのは屋根の上、烏の居るのは木の上(ねこのいるのはやねのうえ、からすのいるのはきのうえ) 人にはそれぞれに適した居場所があり、物にはそれぞれに適した置き場所があるということ。 類:●やはり野に置け蓮華草●良禽は木を択ぶ●適材適所
・猫の魚辞退(ねこのうおじたい) 魚を見れば飛び付く猫が、その魚を辞退するという意味から、内心は欲しくて堪らないのだが、上辺だけ一応は辞退して見せること。また、一時だけで長続きしないことの喩え。 類:●猫の精進(しょうじん)
・猫の恋(ねこのこい) 春に牡猫が牝猫を恋うこと。猫が交尾期になること。
・猫の子の貰いがけ嫁の取りがけ(ねこのこのもらいがけよめのとりがけ) 「貰いがけ」は、貰った当座。「取りがけ」は、嫁などを迎え入れた初めのころ。猫も嫁も、貰った当座は大切にされる。初めのうちだけ可愛がること。
・猫の逆恨み(ねこのさかうらみ) 気持ちの捻(ね)じ曲がった者が、人から助けてもらいながら、その人を逆に恨んだりすること。 ★猫には陰険な性質があるとされ、人から恩を受けても有り難いとも思わず、却(かえ)って不快に思うと考えられたことから。
・猫の尻へ才槌(ねこのしりへさいずち) 相応しくないこと。また、釣り合わないことの喩え。
・猫の手も借りたい(ねこのてもかりたい)
・猫の歯に蚤(ねこのはにのみ) 猫が自分の歯で蚤を噛むことは滅多にないことから、不確実なことや滅多に成功しないことの喩え。また、骨折り損の喩え。 類:●犬の蚤の噛みあて
・猫の額(ねこのひたい) 猫の額は狭いという意味で、面積が狭いということ。 例:「猫の額ほどの庭」
・猫の額の物を鼠が窺う(ねこのひたいのものをねずみがうかがう)[=猫の鼻先の物を〜] 鼠が、猫のすぐ近くにある餌を狙うこと。 1.危険を恐れない大胆不敵な行為の喩え。2.不可能なことをする喩え。
・猫の目(ねこのめ) 猫の瞳は明るさによって形を変えるところから、移り変わりが激しいことのたとえ。多く、女心などの喩えとして使う。 例:「意見を猫の目のようにくるくる変える」
・猫の横座(ねこのよこざ) 囲炉裏端(いろりばた)の嫁の座席。主婦権のない嫁が座る最も下位の席で土間に添った面。 類:●木尻(きじり)●嫁座敷
・猫は三年の恩を三日で忘れる(ねこはさんねんのおんをみっかでわすれる) 猫は三年飼われた恩を三日で忘れるものである。猫は、人の恩を知らない動物であるということ。 類:●恩知らず 反:■犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ
・猫糞(ねこばば) 猫は糞をした後、前足で砂を掛けてそれを隠すところから、悪事を隠して素知らぬ顔をすること。拾い物などをして、それを届けたり返したりしないで、自分のものとして素知らぬ顔をすること。 用例:滑・浮世風呂−三「猫糞(ネコババ)で、しゃアしゃアまぢまぢだ」 例:「猫糞を決め込む」
・猫は三月を一年とす(ねこはみつきをひととせとす) 人間の三ヶ月は猫の一年に相当する。猫の成長は早いということ。 類:●犬の一年は三日
・猫跨ぎ(ねこまたぎ) 1.不味(まず)い魚。また、捨てるほど大量に捕れる魚。2.塩味が非常にきつい塩漬けの魚。 ★以前は「鮪のトロ」を呼んでいたこともある。釣り人の間では「外道(ヒイラギなど)」を呼ぶ。
・猫股婆(ねこまたばばあ)・猫又婆 根性の曲がった老婆を罵(ののし)っていう言葉。 用例:徒然草−八九「奥山に、猫またといふものありて」 参考:猫股(ねこまた) 猫が年老いて尾が二つに分かれ、よく化けて人に害をするというもの<国語大辞典(小)>
・猫も杓子も(ねこのしゃくしも) 何もかも。誰も彼も。 用例:咄・一休咄「生まれて死ぬるなりけりおしなべて釈迦(しゃか)も達磨(だるま)も猫も杓子も」 ★元々の漢字は「禰子(←禰宜)も釈子(←釈氏)も」。「禰子」は、”神社の”お弟子さん…神道を信仰する人たちの意味。「釈子」は、”釈迦の”お弟子さん…仏教を信仰する人たちの意味。神道と仏教が混在している日本ならではの言葉。
・猫も跨いで通る(ねこもまたいでとおる) 魚の好きな猫でさえ無視して跨いで通る。活きの悪い魚、味の悪い魚。また、魚好きで食べ方の上手な人が残した身が綺麗に取られた魚の骨のことをいう。 類:●猫跨ぎ
・猫を一匹殺せば七堂伽藍を建立したるより功徳あり(ねこをいっぴきころせばしちどうがらんをこんりゅうしたるよりくどくあり) 猫は執念深く魔性のものであるから、猫を一匹殺せば、七堂伽藍を建てるより仏のご利益(りやく)がある。
・猫を追うより皿を引け(ねこをおうよりさらをひけ) 魚を狙う猫たちを追い払うより、魚を棚にしまうことの方が大切である。その場凌(しの)ぎの解決策より、根本を正すことが大切であるということ。 類:●猫を追うより魚除(の)けよ
・猫を殺せば七代祟る(ねこをころせばしちだいたたる) 俗信から。猫は魔性のもので、執念深いから、子々孫々七代まで祟られる。
・猫を被る(ねこをかぶる)
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・寝覚めが良い(ねざめがいい・よい) 眠りから覚めたときの気分の良さということから転じて、後になって自分の行為を気にしたり心を痛めたりする必要がなく、心がすっきりしている状態を表わす。 類:●寝覚めが安い ★逆の場合は、「寝覚めが悪い」というように使う<国語慣用句辞典(集)>
・寝覚めが悪い(ねざめがわるい) 眠りから覚めたときの気分が良くない。転じて、ある事が気になったり重荷になったりして気が安まらない。また、自分の行為、特に過去に他人を苦境に追い込んだなどが反省されて良心が痛む。心が安まらない。
−−−−−−−ねし(#nesi)−−−−−−−
・螺子が緩む(ねじがゆるむ) 緊張が緩(ゆる)んで気が抜け、だらしなくなる。 類:●弛(たる)む
・捻じ込む(ねじこむ) 1.捻じって嵌(は)めこむ。捻じり入れる。2.強引に押し込む。また、無造作に入れる。 例:「金をポケットに捻じ込む」 用例:浄・丹波与作待夜の小室節−中「そんなら是で拾貫分。相場は十三木綿巾着ねぢこんでこそ帰りける」 3.相手の失言や失敗などを捉えて詰(なじ)る。また、文句を言いに押し掛ける。強く抗議する。 例:「隣家から捻じ込まれる」 4.押し入る。入り込む。 用例:伎・高麗大和皇白浪−五立「二三百両、是斎めに掴ませて、後の月から捻(ネ)ぢこんだも」 用例の出典㈰:丹波与作待夜の小室節(たんばよさくまつよのこむろぶし)浄瑠璃、世話物。3段。近松門左衛門。宝永5年(1708)大坂竹本座初演。丹波由留木(ゆるぎ)家の調姫の乳人滋野井(しげのい)と、別れた夫与作との間の子三吉をめぐる悲劇、そして与作・関の小万の恋を扱ったもの。滋野井子別れの段が有名。 用例の出典㈪:高麗大和皇白浪(こまやまとくもいのしらなみ) 歌舞伎。四世鶴屋南北。文化6年(1809)。5幕。石川五右衛門もの。五右衛門夫婦が、我が子恋しさに騙(かた)りを働く。
・捻じ伏せる(ねじふせる) 1.腕などを捻じって倒し、相手を押さえ付ける。 用例:浄・国性爺合戦−五「すきをあらせず滅多打ち、ねぢふせねぢふせ縛りつけ」 例:「引ったくりを捻じ伏せる」 2.強引なやり方で相手を屈伏させる。強引に相手を支配下に置く。 例:「反対派を捻じ伏せた」
・捻じれた薪も真っ直ぐな焔を立てる(ねじれたたきぎもまっすぐなほのおをたてる) 遣り方や原因が間違っているのに、正しい結果が生ずること。 類:●怪我の功名
・螺子を巻く(ねじをまく) 気持ちが緩(ゆる)んだとき、注意したり叱ったりして、改めさせる。 類:●螺子を巻き直す
−−−−−−−ねす(#nesu)−−−−−−−
・鼠鳴き(ねずなき) 1.鼠が鳴くこと。また、口を窄(すぼ)めて鼠の鳴き声を真似ること。 用例:枕−一五一「雀の子の、ねずなきするにをどり来る」 2.特に、忍んできた男が女の元に近付いたときや、遊女などが客を呼び入れようとするときなどにする、鼠の鳴き真似をいう。 類:●鼠(ねずみ)鳴き
・鼠が塩を引く(ねずみがしおをひく) 鼠が塩を盗んでいくのはごく少量ずつで目立たないが、いつの間にか多量になるということで、目に付かない小事が積もり積もって大事に至るということ。また、物が目立たないくらいに減っていって、やがてなくなってしまうこと。
・鼠壁を忘る、壁鼠を忘れず(ねずみかべをわする、かべねずみをわすれず) 壁に穴を開けた鼠はそのことを忘れてしまうが、穴を開けられた壁は、鼠のことを忘れないものである。被害者は、受けた痛手を生涯忘れないものだということの喩え。
・鼠窮して猫を噛み、人貧しうして盗みす(ねずみきゅうしてねこをかみ、ひとまずしうしてぬすみす) 切羽詰まると、鼠が猫に噛み付くように、人もやむなく盗みを働くようになるということ。
・鼠と木挽きは引かねば食われぬ(ねずみとこびきはひかねばくわれぬ) 鼠が毎日餌を盗らないと生きて行けないのと同様に、木挽きは毎日引かなければ食って行けない。勤勉に働かないと生活できないということ。 ★「鼠が引く」は、鼠が食物などを盗むこと。 ★「木挽き」は、木材を大きい鋸(のこぎり)で挽いて製材する人。 出典:尾呂志木挽唄
・鼠無きを似て捕らざるの猫を養う可からず(ねずみなきをもってとらざるのねこをやしなうべからず) 害をなす鼠がいないから、鼠を捕る能力はない猫を、差し支えないといって、飼っておくべきではない。無能な者は、養っておけない。
・鼠に投ずるに器を忌む(ねずみにとうずるにきをいむ) ものを投げて鼠を殺そうと思うが、近くにある器物を損なうのではないかと恐れて、中々できない。君側の奸臣を除こうとしているのに、主君本人を傷付けはしまいかと、余計な心配をすること。 類:●鼠を投たんと欲して器を恐る 出典:「漢書−賈誼(かぎ)伝」「里諺曰、欲投鼠而忌器、此善諭也」
・鼠に引かれそう(ねずみにひかれそう) 鼠が塩を盗んでいくようにいつの間にか消えて、神隠しでも遭うのではないかと心配される様子。独りで家に残されて寂しい様子の喩え。
・鼠に引かれる(ねずみにひかれる) まるで鼠が引っ張ってどこかへ持っていってしまったように、忽然と姿を消したもののこと。 ★独りで留守番をする者に、「鼠に引かれないように気をつけて」などと言ったりもする。 参照:鼠が塩を引く
・鼠の嫁入り(ねずみのよめいり)[=婿(むこ)取り] あれこれ迷っても、結局は平凡なところに落ち着くことの喩え。 昔話:鼠の夫婦がその娘に天下一の婿を取ろうとして、太陽がこの世で一番だと思い申し出ると、太陽は、雲に出合うと照らせないから雲が良いと言う。そこで雲に申し出ると、雲は風に吹かれるから風が良いと言う。だが風は築地に遭えば無力だと言う。そこで築地に頼むと鼠に穴を掘られて適わないと言ったので、結局同じ仲間の鼠を選んだという。
・鼠は社に憑りて貴し(ねずみはしゃによりてたっとし) 社(やしろ)に巣食っている鼠は、燻(いぶ)り出そうにも社に火を放つわけにも行かず、なかなか退治できない。君側の奸臣は、安全な場所に身を寄せているので、なかなか駆逐できないということ。 類:●稷狐社鼠●城狐社鼠 出典:「文選−沈約・恩倖伝論」「曾不知鼠憑社貴、狐籍虎威」 ★「社」は、土地神を祀るやしろのこと。
・鼠を投たんと欲して器を恐る(ねずみをうたんとほっしてきをおそる) ものを投げて鼠を殺そうと思うが、近くにある器物を損なうのではないかと恐れて、中々できない。君主の傍らに蔓延(はび)る奸臣を除こうとしているのに、主君本人を傷付けはしまいかと、余計な心配をすることの喩え。 類:●城狐社鼠
・鼠を以って璞と為す(ねずみをもってはくとなす) 価値のないものを宝物とすること。美名に目が眩(くら)んで実質を見失うことの喩え。 出典:「戦国策−秦」「鄭人謂玉未理者璞、周人謂鼠未[月+昔]者朴」 鄭(てい)では、掘り出してまだ磨き上げていない宝玉のことを「璞」と呼び、周ではまだ乾き切っていない鼠の干物(ひもの)を「朴(はく)」と呼ぶ。周の人が鄭の商人に「ハクを買わないか」と問うたところ、「買いたい」と言うので、懐(ふところ)から取り出すとそれは鼠だった。 ★魏(ぎ)の范雎(はんしょ)が言った言葉。
−−−−−−−ねた(#neta)−−−−−−−
・寝た子を起こす(ねたこをおこす) 折角丸く納まっている事柄に手出しをして、再び問題を引き起こすこと。 類:●日向で埃を立てる●平地に波瀾を起こす●波紋を投ずる●Let sleeping dogs lie.(眠っている犬は寝かしておけ)●It is ill to waken sleeping dogs.(寝ている犬を起こすのはよくない)<「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典>
・嫉に籠む(ねたにこむ)[=持つ] 根に持つ。恨みに思ってずっと忘れない。 類:●遺恨を抱く
・寝刃を合わす(ねたばをあわす) 1.「寝刃」は切れ味の鈍くなった刀剣の刃のこと。刀剣の刃を研(と)ぐこと。2.転じて、密かに悪事を企(たくら)むこと。
・寝た間は仏(ねたまはほとけ) 寝ている間だけが、現実の苦労を忘れて仏のような心になれる唯一の時だということ。 類:●寝る間が極楽●寝るほど楽はない
・根絶やしにする(ねだやしにする) 1.草や木を根元からすっかり取り去って 、再び生えないようにする。 例:「雑草を根絶やしにする」 2.何も残らないように、すっかり取り除く。多く、悪弊(あくへい)などを排除する喩えに使う。 類:●根絶する 例:「暴力団を根絶やしにする」
−−−−−−−ねつ(#netu)−−−−−−−
・熱が冷める(ねつがさめる) 一時の興奮から醒(さ)める。 類:●逆上(のぼ)せが下がる
・根っから(ねっから) 最初からそういう状態である。 類:●根から●元から●始めから 例:「根っからのお人好し」
・熱願冷諦(ねつがんれいてい) 《四熟》 1.熱心に願い求めるが、その本質を冷静に見極めること。 ★「諦」は明らかにすること。よく見てはっきりさせること<新明解四字熟語辞典(三)> 2.求める時には熱心に願望するが、叶わぬときには冷静にさらりと諦(あきら)めること。潔さも必要であるということ。 ★「諦」の「諦める」という意味は、日本独特のもの。
・根っこが生える(ねっこがはえる) その場にすっかり落ち着いてしまい、腰を落ち着けてしまうこと。 類:●根が生える 例:「飲み屋に根っこを生やしてしまった」
・熱しても悪木の陰に憩わず(ねっしてもあくぼくのかげにいこわず) 悪い木の陰で休息すればその身が汚れる。高潔な人、またそうなりたい人は、そういうところに接近しないように身を保持すべきだということ。 類:●悪木盗泉●悪木に蔭せず●渇しても盗泉の水を飲まず●曽子は勝母の閭に入らず 出典:「文選−陸機・猛虎行」「渇不飲盗泉水、 熱不息悪木陰」
・熱し易いは冷め易い(ねっしやすいはさめやすい) ものごとに熱中し易い人は熱意が冷めるのも早いということの喩え。特に、恋愛に関して、惚れっぽい人は飽き易いということ。 類:●近惚れの早飽き
・熱鉄の涙(ねってつのなみだ) 熱した鉄のように熱い涙。 類:●熱涙
・熱に浮かされる(ねつにうかされる) 1.高熱のため、うわ言を言う。2.一つのことに熱中し、前後を忘れる。他の一切を忘れて夢中になる。
・根強い(ねづよい) 1.根元がしっかりしていて、動かない。 用例:北岡本夫木−二一「ねつよかりけり山すげのはし」 2.根気強い。また、執念深い。 類:●しつこい 用例:無名抄「大輔は今少し物など知りて、ねつよくよむ方は勝れり」 3.財政などが豊かで安定している。金持ちである。 用例:浮・好色盛衰記−一「堺はねづよひ所じゃが」 4.従来から、まだ強く存在しているために、なかなか変わらない。 類:●揺るぎない 例:「因習として根強く残っている」「根強い人気」
・熱を上げる(ねつをあげる) あることに夢中になる。魅力に取り付かれて逆上(のぼ)せ上がる。
・熱を吹く(ねつをふく)[=吐く] 気炎を上げる。身勝手なことをいう。 類:●熱を吐く●気炎を吐く●気炎を上げる●広言を吐く
−−−−−−−ねて(#nete)−−−−−−−
・寝ていて人を起こすな(ねていてひとをおこすな) 自分はぶらぶらして働きもせずに、他人ばかりを働かせようなどと考えてはならない。人を働かせるためには、まず自分が率先して働かなければならないということ。
・寝て花をやる(ねてはなをやる) 麹(こうじ)を室(むろ)に寝かして花を咲かせるという意味で、寝て楽しい夢を見て、心を慰めること。また、寝て楽しみごとをする。
・寝ても覚めても(ねてもさめても) 寝ているときも起きているときも、いつも。絶えず。 例:「寝ても覚めても恋しい人の面影が離れない」
−−−−−−−ねと(#neto)−−−−−−−
・根問い葉問い(ねどいはどい) 「根問い」を強調した言い方。根掘り葉掘り聞くこと。 類:●根掘り葉掘り
−−−−−−−ねな(#nena)−−−−−−−
・根無し草(ねなしぐさ) 1.池などの水中に生えて、漂(ただよ)い浮いている草。 類:●浮き草 2.漂い動いて定まらないもの、また根拠のないものごと、根も葉もない噂などの喩え。主に、安住するところがない者などについて言う。 類:●浮き草 例:「職を転々とする根無草」
−−−−−−−ねに(#neni)−−−−−−−
・根に入る(ねにいる) 1.病気が深く体を侵し、なかなか治らないようになる。病状が膠着(こうちゃく)する。 類:●病(やまい)膏肓に入る 2.奥深く染み込む。内部に入り込む。3.心に畳み込む。良く心得ている。得心する。納得する。
・音に泣く(ねになく) 泣く。また、鳥などが声を立てて鳴く。
・根に持つ(ねにもつ) 1.いつまでも恨みに思うこと。恨みを忘れない。 類:●遺恨を抱く 2.本来のものとして持つ。元々から自分のものとして所持する。身に付いている。
−−−−−−−ねね(#nene)−−−−−−−
・ねね様(ねねさま) 1.赤ん坊。赤ちゃん。また、弁(わきま)えのない大人。2.人形を指す幼児語。 ★「様」は接尾語。
−−−−−−−ねの(#neno)−−−−−−−
・根の国(ねのくに) 死者の霊が行くと考えた地下にある世界。また、海上彼方にあると考えられていた世界。日本古代の他界観の一つ。 類:●底の国●黄泉(よみ)●黄泉の国●根堅州国(ねのかたすくに)
・根の苦いとろろは葉も苦い(ねのにがいとろろははもにがい) 根が苦い山芋はその葉まで苦いものである。性根(しょうね)が腐っている者は、その行ないも正しくないものであるということの喩え。また、心が正しくない者は、見るからに悪そうな顔をしているということの喩え。
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