ことわざの意味
どんなに大きく堅固な物事であっても、ごくわずかな油断や、小さな欠陥を見過ごしたことがきっかけとなって、全体が崩壊してしまうことのたとえ。
用例
- わずかな計算ミスが原因でロケットの打ち上げが失敗した。「千里の堤も蟻の穴から」とはこのことだ。
- 社内の些細な不正を放置していたら、やがて大スキャンダルに発展し会社が傾いた。千里の堤も蟻の穴からである。
- 「千里の堤も蟻の穴から」と言うように、小さな体調の変化を軽視せず、早めに休息を取ることが大切だ。
ことわざの由来
中国の戦国時代の思想書『韓非子(かんぴし)』にある「喩老(ゆろう)篇」の記述が由来です。 原文は「千丈之堤、以螻蟻之穴潰(千丈の堤も、螻蟻(ろうぎ)の穴を以(もっ)て潰(つい)ゆ)」というものです。 「千丈(あるいは千里)」とは非常に長い距離や巨大なものを表し、「螻蟻」はケラやアリのような小さな虫を指します。 巨大な堤防であっても、小さな虫が開けた穴から水が漏れ出し、やがてはそれが原因で決壊してしまうという例えから、法家である韓非が、些細な法規の乱れや君主の油断が国家の滅亡につながることを警告した言葉です。
類似のことわざ
- 蟻の穴から堤も崩れる: 「千里の堤も蟻の穴から」と同じ意味。
- 大事の前の小事: 大きな事が起こる前には、必ず小さな前兆があるということ。
- 禍(わざわい)は小(ちい)さきより生ず: 災難や失敗は、些細なことの積み重ねや小さな油断から始まるということ。
- 小事は大事: 小さなことだと侮っていると、それが大事に至る原因になるので、疎かにしてはいけないということ。
- 油断大敵: ほんの少しの気の緩みが、大きな失敗を招くということ。
英語の類似のことわざ
- A small leak will sink a great ship.(小さな水漏れが、大きな船を沈める)
- A little neglect may breed great mischief.(少しの怠慢が、大きな災いを生むことがある)
- A stitch in time saves nine.(今日のひと針、明日の十針/ほころびが小さいうちに直せば一針で済むが、放っておくと九針縫わねばならなくなる=小さな問題を放置すると大きくなるという教訓)
ことわざを使った文学作品
- 韓非『韓非子』: このことわざの出典です。韓非は厳格な法治主義を唱えた思想家であり、微細な違反や綻びを早期に発見・対処することの重要性を説くためにこの比喩を用いました。