ことわざの意味
規則や秩序を守り、嘘をつかずに正直に生きている人が、かえって損をしたり不利益を被ったりすること。ずる賢い者がうまく立ち回って得をする世の中の不条理を嘆く言葉。
用例
- 交通ルールを無視した車が先に行き、守っていた自分が信号に引っかかるなんて、これでは「正直者は馬鹿を見る」だ。
- 手を抜いて仕事をした同僚が要領よく評価され、真面目にコツコツ働いた自分が報われないのは、正直者は馬鹿を見るようでやりきれない。
- テストでカンニングをした生徒が良い点を取り、自分の実力で挑んだ生徒が赤点を取るような事態は、正直者は馬鹿を見る典型例だ。
ことわざの由来
特定の歴史的な書物や事件が単一の由来となっているわけではなく、社会生活の中で人々が感じる「矛盾」や「理不尽」から生まれた言葉です。 道徳的には「正直であること」が正しいとされながらも、現実社会では嘘をついたりルールを破ったりする者が利益を得る場面が多々あります。こうした現実に対する皮肉や諦めの感情が、経験則として言葉になり定着しました。 対義語には「正直は一生の宝」や「正直の頭(こうべ)に神宿る」などがあり、本来あるべき道徳観との対比で使われることも多いです。
類似のことわざ
- 憎まれっ子世にはばかる: 他人から憎まれるような素行の悪い人が、かえって世の中で幅を利かせて威勢よく振る舞うこと。
- 無理が通れば道理引っ込む: 道理に外れたことがまかり通るような世の中では、正しい道理が行われなくなること。
- 正直の儲けは銭っ子一つ: 正直に商売をしても、利益はわずかな小銭程度で、なかなか金持ちにはなれないということ。
- 律義者の子沢山: (本来は「真面目な人は家庭を大切にする」等の意味だが)真面目なだけで貧乏であり、子育てに苦労するという皮肉として、損をする文脈で使われることがある。
英語の類似のことわざ
- Nice guys finish last.(いい人、つまりお人好しは最後になる=競争に負ける、損をする)
- Honesty is ill to thrive by.(正直は成功のもとにはなりにくい)
- Honesty is praised and starves.(正直は賞賛されるが、飢える)