ことわざの意味
いくら上手でも、仕事が遅いのは、多少下手であっても速いことには及ばないということ。 完成度の高さよりも、スピードやタイミングの良さの方が重要であるという教え。
用例
- 完璧な資料を作ろうとして納期に遅れるよりは、7割の出来でも期限内に出すべきだ。「巧遅は拙速に如かず」と言うだろう。
- 災害時の対応などは、まさに「巧遅は拙速に如かず」で、完璧な計画を練るより、まず動くことが命を救う。
- ビジネスの現場ではスピードが命だ。いくら良い製品でも、市場に出すのが遅れれば意味がない。「巧遅は拙速に如かず」を忘れてはならない。
ことわざの由来
中国の春秋時代の兵法書『孫子(そんし)』の「作戦篇」にある記述が由来です。 原文は「故兵聞拙速、未睹巧之久也(故に兵は拙速を聞くも、未だ巧(こう)の久しきを睹(み)ざるなり)」です。 これは、「戦いにおいて、少々手際は悪くても速攻で勝負を決めた例は聞くが、巧みな戦術であっても、長期戦になって成功した例は見たことがない」という意味です。 戦争は長引けば長引くほど、兵士は疲れ、国家の資金も尽きてしまいます。そのため、孫子は百点満点の作戦を練って時間をかけるよりも、多少粗削りでも短期決戦で終わらせることの重要性を説きました。
類似のことわざ
- 兵(へい)は神速(しんそく)を貴(たっと)ぶ: 戦いにおいては、目にも留まらぬ速やかな行動こそが最も重要であるということ。
- 善は急げ: 良いと思ったことは、ためらわずにすぐに実行するべきだということ。
- 先んずれば人を制す: 人より先に着手すれば、有利な立場に立てるということ。
- 拙速は巧遅に勝(まさ)る: 「巧遅は拙速に如かず」と同義。
英語の類似のことわざ
- Done is better than perfect.(完璧を目指すより、終わらせることのほうが良い/Facebook創業者マーク・ザッカーバーグの言葉としても有名)
- Better a diamond with a flaw than a pebble without.(傷のない小石より、傷のあるダイヤモンドのほうが良い/価値判断の基準として、質(素材)を重んじる意味もあるが、文脈により「不完全でも価値ある行動」を指す)
- He who hesitates is lost.(ためらう者はチャンスを逃す)
ことわざを使った文学作品
- 孫武『孫子』: 由来となった兵法書です。現代のビジネス書でも、意思決定のスピードを重視する文脈で、この「巧遅は拙速に如かず」の考え方は頻繁に引用されています。