沈黙は金ちんもくはかね

ことわざの意味
雄弁に語ることも素晴らしいが、時として沈黙を守ることのほうが、それ以上に価値があり重要であるという教え。 余計なことを言うよりも、黙っているほうが賢明であり、説得力を持つ場合があること。

用例

  • 下手な言い訳を重ねるより、何も言わずに反省の態度を示すほうが相手の心に響く。「沈黙は金」だ。
  • 激しい議論の中で、彼があえて一言も発さなかったことが、逆にその場の空気を鎮めた。まさに沈黙は金である。
  • 「雄弁は銀、沈黙は金」と言うように、ペラペラと喋るだけが能ではない。聞き役に回る大切さを痛感した。

ことわざの由来

19世紀のイギリスの思想家トーマス・カーライルの著書『衣服哲学(サーター・リサータス)』に登場する言葉が由来とされています。 カーライルはこの作中で、スイスの碑文(またはドイツ語のことわざ)として「Sprechen ist Silber, Schweigen ist Gold(話すことは銀、沈黙することは金)」という言葉を紹介しました。 「言葉(お喋り)も銀のような価値はあるが、沈黙には金のようなそれ以上の価値がある」という比較の形で、沈黙の深遠さを説いたものです。 これが日本に翻訳されて伝わり、「雄弁は銀、沈黙は金」、あるいは単に「沈黙は金」として定着しました。

類似のことわざ

  • 言わぬが花: 物事はあからさまに口に出して言うよりも、黙って察するほうが味わい深く、差し障りもないということ。
  • 口は災い(わざわい)の元: うっかり話した言葉が災難を招く原因になるので、言葉は慎むべきだということ。
  • 雉(きじ)も鳴かずば撃(う)たれまい: 余計なことを言わなければ、災難に遭わずに済むことのたとえ。
  • 言わぬは言うに勝る: 口に出して言うよりも、言わないでいるほうが、思いの深さが相手に強く伝わるということ。

英語の類似のことわざ

  • Speech is silver, silence is golden.(雄弁は銀、沈黙は金/由来となった言葉の直訳)
  • Silence is golden.(沈黙は金/上記の短縮形として日常的によく使われる)
  • A closed mouth catches no flies.(閉じた口にハエは入らない/黙っていれば余計なトラブルを招かない)

ことわざを使った文学作品

  • トーマス・カーライル『衣服哲学(Sartor Resartus)』: このことわざを世に広めた作品です。カーライルは「Speech is of Time, Silence is of Eternity(言葉は時間のものであり、沈黙は永遠のものである)」と述べ、沈黙の持つ宗教的・哲学的な深みを強調しました。