ことわざの意味
敵(相手)の実力や現状と、自分自身の実力や現状を客観的に深く理解していれば、何度戦っても負けるような危険な目には遭わないという教え。事前の情報収集や現状分析の重要性を説く言葉。
用例
- 今度のプレゼンコンペに勝つためには、競合他社の提案内容を予測し、自社の強みを再確認する必要がある。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」だ。
- 受験勉強では、志望校の出題傾向(敵)を知り、自分の苦手分野(己)を把握することが合格への近道だ。まさに敵を知り己を知れば百戦危うからずである。
- 彼は対戦相手のデータを徹底的に分析し、自分のフォームも完璧に調整して試合に臨んだ。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」の精神が勝利を呼んだのだ。
ことわざの由来
中国の春秋時代の兵法書『孫子(そんし)』の「謀攻篇(ぼうこうへん)」にある一節から来ています。 原文は「彼(かれ)を知り己(おのれ)を知れば百戦殆(あや)うからず」です。 元々は「敵」ではなく「彼」という言葉が使われていましたが、意味としては「敵」を指します。 この言葉には続きがあり、「不知彼而知己、一勝一負(彼を知らずして己を知れば、一勝一負す)」「不知彼不知己、毎戦必殆(彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし)」と説かれています。つまり、相手を知らず自分だけ知っているなら勝負は五分五分、どちらも知らなければ必ず危険に陥る、としています。
類似のことわざ
- 備えあれば憂いなし: 普段から準備を整えておけば、いざという時に心配することはないということ。
- 転ばぬ先の杖: 失敗しないように、前もって用心深く準備しておくこと。
- 先んずれば人を制す: 人より先に事を行えば、相手を制圧して有利な立場に立てるということ。
英語の類似のことわざ
- Know your enemy and know yourself, you need not fear the result of a hundred battles.(敵を知り己を知れば、百戦の結果を恐れるに足らず/『孫子』の英訳として定着している)
- Forewarned is forearmed.(あらかじめ知らされていれば、武装したのも同然/警戒していれば防げる)
- Knowledge is power.(知識は力なり)
ことわざを使った文学作品
- 孫武『孫子』: このことわざの出典そのものであり、世界最古かつ最強の兵法書として、ナポレオンやビル・ゲイツなど多くの指導者・経営者に愛読されています。