ことわざの意味
教養や徳の備わっていない凡人(小人)は、暇を持て余すと、ろくなことを考えず、つい悪いこと(不善)をしてしまうということ。また、人は適度に忙しい方が道を踏み外さずに済むという教訓。
用例
- 夏休みに入って毎日暇を持て余した子供たちが、近所でいたずらばかりしている。「小人閑居して不善をなす」とはよく言ったものだ。
- 定年退職して急にやることがなくなった結果、怪しい投資話に引っかかったり、ギャンブルにのめり込んだりするのは、「小人閑居して不善をなす」の典型例かもしれない。
- 彼は仕事が忙しい時は輝いていたが、窓際部署に異動して暇になった途端、社内の陰口を広めるようになった。まさに小人閑居して不善をなすだ。
ことわざの由来
中国の儒教の経典である『大学(だいがく)』にある一節が由来です。 原文は「小人閑居為不善、無所不至(小人閑居して不善を為し、至らざる所無し)」です。 「小人(しょうじん)」とは、体の小さい人や子供のことではなく、人格や徳が未熟なつまらない人間のことを指します。「閑居(かんきょ)」とは、為すべきことがなく暇でいること、あるいは一人でいて人目がない状態を指します。 立派な人物(君子)は一人でいる時こそ自分を律する(慎独)ものだが、小人は人目がないと際限なく悪いことをしてしまう、という対比で説かれています。
類似のことわざ
- 怠惰は悪徳の母: 怠けて何もしないでいることは、あらゆる悪い行いを生む原因になるということ。
- 小人の暇つぶし: つまらない人間が暇に任せて、ろくでもないことを企てること。
英語の類似のことわざ
- Idle hands are the devil’s workshop.(暇な手は悪魔の作業場/何もすることがないと、悪魔が入り込んで悪さをさせる)
- The devil finds work for idle hands to do.(悪魔は、暇を持て余している手に仕事を見つけてやる)
- Doing nothing is doing ill.(何もしないことは、悪いことをしているのと同じである)
ことわざを使った文学作品
- 『大学』: このことわざの出典です。儒教の基本経典「四書」の一つであり、江戸時代には武士の必読書とされました。修身斉家治国平天下(身を修め、家を整え、国を治め、天下を平和にする)の道を説く中で、孤独な時の心の持ち用の重要性を述べています。