ことわざの意味
色即是空(しきそくぜくう)とは、仏教、特に般若心経(はんにゃしんぎょう)に説かれる中心的な教えの一つです。この世に存在するあらゆる事物や現象(色:しき)は、固定的な実体を持つものではなく、その本質は空(くう)である、という意味です。「色」とは、目に見え、形あるもの、物質的な存在全般を指します。「空」とは、何もない虚無ということではなく、すべてのものは縁起(えんぎ:様々な原因や条件が相互に関係し合って成り立つこと)によって生じており、それ自体で独立した不変の実体はない、という仏教の根本的なものの見方です。したがって、「色即是空」は、この世のすべてのものは実体がない仮の姿であり、本質的には空であると説いています。
用例
- 彼は富や名声のはかなさを悟り、色即是空の境地で生きている。
- 華やかな世界の裏側にある虚しさを知り、色即是空という言葉が胸に響いた。
- あらゆる執着から解放されるためには、色即是空の教えを理解することが大切だ。
- どんなに栄華を極めても、しょせんは色即是空、永遠に続くものはない。
- 漫画『クレヨンしんちゃん』の野原家の床の間には「色即是空」の掛け軸がある。
ことわざの由来
「色即是空」は、大乗仏教の経典である『般若波羅蜜多心経(はんにゃはらみったしんぎょう)』、通称『般若心経』の中の有名な一節、「色不異空 空不異色 色即是空 空即是色(色は空に異ならず、空は色に異ならず、色は即ち是れ空、空は即ち是れ色)」に由来します。 これは、観自在菩薩(かんじざいぼさつ)が般若(智慧)の深い行をしていた時に、人間を構成する五蘊(ごうん:色・受・想・行・識)もまた本質的には空であると見極め、一切の苦しみから解放された、という文脈で説かれています。 「色」はサンスクリット語の「ルーパ(rupa)」の訳で、形あるもの、物質的なもの全般を指します。「空」はサンスクリット語の「シューニャ(śūnya)」の訳で、実体がないこと、変化してとどまらないことを意味します。「即是」は「すなわちこれ」と読み、イコールの関係を示します。 つまり、「目に見える形あるものは、すなわち実体のない空である」というのがこの句の基本的な意味です。
類似のことわざ
- 一切皆空(いっさいかいくう): あらゆる現象や存在には実体がなく、すべては空であるということ。
- 諸行無常(しょぎょうむじょう): この世のあらゆるものは常に変化し続け、永遠不変なものはないということ。