ことわざの意味
唯我独尊(ゆいがどくそん)とは、この世で自分ほど尊いものはいないとうぬぼれること、または、自分だけが優れていると思い込むひとりよがりな態度を指します。もともとは仏教語で、釈迦が誕生した際に「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」と唱えたとされる言葉の略です。本来の仏教的な意味合いでは、すべての生命は誰とも代わることのできない唯一無二の尊い存在であるという、深い自己肯定の宣言でしたが、現代では主に、自己中心的で傲慢な人物をやや批判的に表現する際に用いられることが多いです。
用例
- 彼は常に自分の意見が正しいと思い込み、他人の話に耳を貸さない唯我独尊なところがある。
- あのチームのリーダーは実力はあるが、唯我独尊な振る舞いが目立ち、メンバーとの間に溝ができている。
- 彼女は自分の才能を過信し、唯我独尊の態度を崩そうとしない。
- 彼の小説は、主人公の唯我独尊的な生き様と、それによって生じる葛藤を描いている。
- 彼は若い頃、唯我独尊で突っ走っていたが、多くの失敗を経て謙虚さを学んだ。
ことわざの由来
「唯我独尊」の直接の由来は、仏教の開祖である釈迦(ゴータマ・シッダールタ)の誕生の際に語られたとされる伝説的な言葉、「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」です。 伝説によれば、釈迦は母親の摩耶夫人(まやぶにん)の右脇から生まれ、すぐに七歩歩いて、右手で天を指し、左手で地を指してこの言葉を唱えたと言われています。この「天上天下唯我独尊」は、「この広大な宇宙(天上天下)において、ただ私(我)一人が尊い存在である」という意味です。 仏教的な解釈では、この「我」は釈迦個人だけを指すのではなく、生きとし生けるものすべてが、それぞれかけがえのない尊い生命を持っているという普遍的な真理を表しているとされます。 しかし、この言葉が一般に広まる中で、「唯我独尊」と略され、もっぱら「自分だけが優れているとうぬぼれる」という、やや否定的な意味合いで使われるようになりました。
類似のことわざ
- 傲岸不遜(ごうがんふそん): おごりたかぶって人を見下し、へりくだる気持ちがないこと。
- 傍若無人(ぼうじゃくぶじん): 人前をはばからず、自分勝手に振る舞うこと。