ことわざの意味
乾坤一擲(けんこんいってき)とは、運命や国家の存亡をかけて、のるかそるかの大勝負をすること、またはそのような重大な決断を下すことを意味します。「乾坤」は天と地、「一擲」はサイコロを一度投げることを指し、天が出るか地が出るか、運を天に任せて一度きりの大勝負に打って出るという、非常に大きな賭けを表す言葉です。
用例
- 我が社は、この新製品の開発に乾坤一擲の勝負をかける。
- 監督は、試合の最終盤に乾坤一擲の采配を振るった。
- 彼は、長年勤めた会社を辞めて起業するという乾坤一擲の決断をした。
- 人生には、時に乾坤一擲の挑戦が必要な場面がある。
ことわざの由来
「乾坤一擲」の由来は、中国唐代の詩人である韓愈(かんゆ)が詠んだ「過鴻溝(こうこうをすぐ)」という詩の一節、「誰(たれ)か君王に勧(すす)めて馬首(ばしゅ)を回(めぐ)らしむ 真成(しんせい)に一擲(いってき)乾坤(けんこん)を賭(と)す」に基づいています。 この詩は、楚の項羽と漢の劉邦が天下を争った際、鴻溝(こうこう)という場所を境にして一時的な和議を結んだものの、劉邦が和議を破って項羽を追撃し、最終的に天下統一を成し遂げた故事を詠んだものです。詩の中で、韓愈は劉邦が天下を賭けてこの大勝負に出たことを「一擲乾坤を賭す」と表現しました。 「乾」は天(陽)を、「坤」は地(陰)を意味し、これらを合わせて「天地」、転じて「天下」や「運命全体」を指します。「一擲」はサイコロなどを一度投げることを意味し、この場合は運を天に任せて一度きりの大きな賭けに出ることを表しています。
類似のことわざ
- 一か八か(いちかばちか): 結果はどうなろうと、運を天に任せて思い切ってやってみること。
- 伸るか反るか(のるかそるか): 成功するか失敗するか、結果が極端に分かれるような思い切った行動をすること。
- ルビコン川を渡る: 後戻りできない重大な決断をし、行動を起こすことのたとえ。古代ローマのカエサルが元老院の命令に背いてルビコン川を渡り、内乱に突入した故事に由来。
- 清水の舞台から飛び降りる: 危険を顧みず、思い切って大きな決断をすることのたとえ。
- 背水の陣(はいすいのじん): 決死の覚悟で事に当たることのたとえ。