汗馬之労(かんばのろう)

ことわざの意味
汗馬之労(かんばのろう)とは、馬に汗をかかせるほど戦場を駆け巡って立てた手柄や戦功のことを指します。転じて、ある目的を達成するために、あちこち走り回って苦労すること、またはそのために尽力することを意味します。特に、他人のために骨を折る苦労を指す場合が多いです。

用例

  • 新しい事業を立ち上げるにあたり、彼は資金調達のために汗馬之労を惜しまなかった。
  • 今回のプロジェクト成功の陰には、彼の知られざる汗馬之労があった。
  • 両家の間を取り持つために、彼は汗馬之労を厭(いと)わず奔走した。
  • 友人の窮地を救うため、彼女は汗馬之労もいとわず協力した。

ことわざの由来

「汗馬之労」の由来は、中国の歴史書『史記』蕭相国世家(しょうしょうこくせいか)に見られる故事に基づいています。 漢の高祖(劉邦)が天下を統一した後、功臣たちの恩賞を決める際に、蕭何(しょうか)を第一の功労者として手厚く報いました。これに対し、他の功臣たちは「我々は戦場で命を懸けて戦い、多くの傷を負った。蕭何は実際に戦場で馬に汗をかいて戦ったわけではなく(原文:「未嘗有汗馬之労」)、後方で文書仕事や議論をしていただけなのに、なぜ我々より厚遇されるのか」と不満を述べました。 高祖はこれに対し、蕭何の戦略立案や兵站確保といった後方支援の重要性を説き、功臣たちを納得させました。 この故事から、「汗馬之労」は元々「戦場での功績」を意味しましたが、後に広く「物事をまとめるために奔走する苦労」という意味でも使われるようになりました。また、『韓非子』五蠹(ごと)にも関連する記述が見られます。

類似のことわざ

  • 奔走(ほんそう): ある目的のために忙しく走り回ること。
  • 尽力(じんりょく): ある目的の実現のために、持てる力をすべて使って努力すること。
  • 骨折り(ほねおり): 他人のために苦労すること。
  • 身を粉にする(みをこにする): 自分の身を顧みず、力の限り努力すること。