ことわざの意味
鶏口牛後(けいこうぎゅうご)とは、大きな組織や集団の中で、他人に使われる末端の立場に甘んじるよりも、たとえ小さな組織であってもその長(トップ)になる方が良い、という意味のことわざです。「鶏口となるも牛後となるなかれ」という句を略したものです。「鶏口」は鶏のくちばしを意味し、小さな組織の長をたとえています。「牛後」は牛の尻を意味し、大きな組織の下位の者をたとえています。つまり、人に従属するよりも、小さくとも独立した立場で長となることを選ぶべきだという考え方を示しています。
用例
- 彼は大企業を辞め、鶏口牛後の精神で小さな会社を立ち上げた。
- 就職活動において、鶏口牛後を良しとするか、大企業の安定を選ぶかは個人の価値観による。
- 「鶏口牛後という言葉もある。必ずしも大きな組織に入ることだけが成功ではないよ」と先輩はアドバイスしてくれた。
- 父は常々、「鶏口となるも牛後となるなかれ」と私に言い聞かせていた。
ことわざの由来
「鶏口牛後」の由来は、中国の戦国時代に活躍した縦横家(外交戦略家)である蘇秦(そしん)の言行を記した『史記』蘇秦伝(そしんでん)に見られる故事に基づいています。 当時、強国であった秦に対抗するため、蘇秦は韓、魏、趙、楚、燕、斉の六国が同盟を結ぶ「合従策(がっしょうさく)」を説いていました。韓の恵王(けいおう)にこの策を説いた際、なかなか応じない恵王に対し、蘇秦は「臣聞く、鄙諺(ひげん)に曰く、寧(むし)ろ鶏口と為(な)るとも、牛後と為(な)る無(な)かれ、と。(私が聞いている俗なことわざに、『鶏の口となっても、牛の尻となってはいけない』とあります)」と言いました。 これは、「強大な秦に従属してその一部となる(牛後)よりも、たとえ小国であっても独立を保ち、その王として立つ(鶏口)方が良い」と説得した言葉です。この故事から「鶏口牛後」という四字熟語が生まれました。
類似のことわざ
- 鯛の尾より鰯の頭(たいのおよりいわしのあたま): 大きな集団で下につくよりも、小さな集団でも長となるほうが良いということのたとえ。
- 芋頭でも頭は頭(いもがしらでもかしらはかしら): どんなにつまらないものでも、その集団の長であることには変わりはないということ。