【やい】~【やほ】

−−−−−−−やい(#yai)−−−−−−−
・刃に掛かる(やいばにかかる) 刃物で殺される、斬られる。
・刃に掛ける(やいばにかける) 刃物で殺す、斬る。
・刃に伏す
(やいばにふす) 刃の上に身を伏せるという意味で、自害すること。刃で身を貫く。 類:●剣に伏す
・刃の傷は癒すべきも、言葉の疵は癒すべからず
(やいばのきずはいやすべきも、ことばのきずはいやすべからず) 刀剣で受けた傷は治せるが、言葉によって受けた心の疵は治すことができない。一度口にした言葉は元に戻らないから、言葉は良く選んで慎むべきだということ。
・刃の験者
(やいばのげんじゃ) 効験が刃のように鋭く、霊験が新(あらた)たかな修験者(しゅげんじゃ)。
・刃を迎えて解く
(やいばをむかえてとく) 竹を割るように刃物が向かうままに裂けるという意味から、ものごとが非常に易しくできること。 出典:「晋書−杜預伝」 
参考・人物:杜預

−−−−−−−やえ(#yae)−−−−−−−
・八重立つ山たつやま) 幾重にも重なり合って白雲が立つ、人里離れた深い山。
・八重の遠(やえのおち) ずっと遠いあちらの方。 類:●彼方(かなた)
・八重の潮路
(やえのしおじ・しおみち) 遥かな潮路。非常に長い海路。 類:●八潮路 
参考:潮路(しおじ) 海路。または、海流。
・八重の山路
(やえのやまじ) 幾重にも重なって非常に長い山路。八重山にある路。 
参考:八重山(やえやま) 幾重にも重なった山。深山(みやま)。
・八重無尽
(やえむじん) 《四熟》 幾重にも縛(しば)り付けること。 用例:浄・用明天皇職人鑑−道行「足手を取て八重むじんにからげ付れ共」

−−−−−−−やお(#yao)−−−−−−−
・八百長
(やおちょう) 1.相撲などの勝負事で、前もって勝敗を打ち合わせておき、表面だけ真剣に勝負を争うように見せ掛けること。 類:●いんちき 例:「八百長試合」 ★八百屋の長兵衛、通称八百長という人がある相撲の年寄とよく碁をうち、勝てる腕前を持ちながら、巧みにあしらって常に一勝一敗になるように細工したところから起こるという<国語大辞典(小)> ★長兵衛は明治時代初期の人という。なお、明治34年(1901)10月4日付けの読売新聞では、「八百長」とは、もと八百屋で水茶屋「島屋」を営んでいた斎藤長吉のことであるとしている。 2.(転じて、一般に)前もって示し合わせておきながら、さりげなく装(よそお)うこと。 類:●馴れ合い
・矢面に立つ
(やおもてにたつ) 敵の矢の飛んで来る正面に立ちはだかるという意味で、質問・非難・攻撃などが集中する立場に身を置くこと。

−−−−−−−やか(#yaka)−−−−−−−
・夜鶴
(やかく) 1.夜の鶴、夜鳴く鶴。また、夜中に巣篭もっている鶴のこと。2.子を思う親の愛情が、非常に深いことの喩え。 類:●夜の鶴 出典:白居易「五絃弾」「第三第四絃冷冷、夜鶴憶子籠中鳴」
・薬缶で茹でた蛸(やかんでゆでたたこ) 薬缶で蛸を茹でると、硬(かた)くなって、手も足も何も取り出せないということからの洒落(しゃれ)。 1.進退窮(きわ)まること、手の打ちようがないことの喩え。 類:●手も足も出ない二進も三進も行かない 2.部屋などに閉じ篭もって、じっとしていることの喩え。 類:●引き篭もり 例:「いつまでも薬缶の蛸になっているんじゃないよ」 ★「薬鑵の蛸」とも<国語大辞典(小)> ★関西の洒落言葉。

−−−−−−−やき(#yaki)−−−−−−−
・焼きが回る
(やきがまわる) 1.鍛治が刃物を作るとき、焼き加減が行き過ぎて、却(かえ)って切れ味が鈍(にぶ)る。2.年を取ったりして、頭の働きや腕前などが衰える。 類:●呆(ぼ)ける 例:「こんなことを見落とすなんて、俺も焼きが回ったな」 3.すっかり古惚(ふるぼ)けた状態になる。
・焼き餅焼くとて手を焼くな
(やきもちやくとててをやくな) 度を越した嫉妬(しっと)は、自分に禍(わざわ)いを招くものであるから、慎(つつし)まなければならない。
・焼き餅を焼く
(やきもちをやく) 焼き餅の「焼く」は、「妬(や)く」に通ずるところから、焼き餅は嫉妬(しっと)を意味し、嫉妬するとか、妬(ねた)むとかということ。特に、男女間の嫉妬について言う。 ★「焼く」は、心の働かせ方を比喩的に言う場合にも用いる。 1.心を悩ます。胸を焦がす。2.種々に気を配る。あれこれ面倒を見る。3.(「妬く」とも書く)嫉妬する。悋気する。4.嬉しがらせを言う。煽(おだ)てる。
・焼きを入れる(やきをいれる) 1.鍛治が刃物などを焼いて鍛(きた)える。2.人に苦しみなどを与えて鍛える。緩(ゆる)んだ気持ちを引き締めさせる。ぼんやりしている者に活(かつ)を入れる。 類:●活を入れる 例:「若い社員に焼きを入れる」 3.制裁を加える。拷問に掛ける。 例:「気に入らないから焼きを入れて来い」

−−−−−−−やく(#yaku)−−−−−−−
・扼咽拊背
(やくいんふはい) 《四熟》 人の弱みを押さえて苦しめ追い詰めること。「扼咽」は、のどを押さえて締めること。
・役者が上
(やくしゃがうえ)[=一枚上] 知略や駆け引き、または、貫禄などにおいて抜きん出ていること。
・やくざ
 1.ものごとが悪いこと。役に立たないこと。つまらないこと。粗末(そまつ)なこと。生活の態度がまともでないこと。また、そのもの。 例:「やくざな稼業」 ★カブ賭博の一種である三枚ガルタで、八(や)九(く)三(さ)の札がくると、ぶたのうちでも最悪の手になるところから<国語大辞典(小)> 2.(派生して)博打(ばくち)打ち。無職渡世の遊び人。また、無頼漢(ぶらいかん)。 類:●やくざ者●破落戸(ごろつき) ★不良のこと。現在では、暴力団員のことも指す。
・役者に年なし
(やくしゃにとしなし) 役者はどんな年齢の役でも演じることができる。また、良い役者は年齢と共に芸が磨かれるため、いつまでも年を取らないように見える。 類:●役者は年知らず●芸人に年なし
・薬石の言
(やくせきのげん) 「薬石」は、病気を治す薬と、鍼(はり)治療の石鍼のこと。 1.薬と石鍼のように、人の身のためになる言葉。2.(転じて)忠告や諫言(かんげん)のこと。 類:●箴言(しんげん) 故事:新唐書−高馮」 唐の太宗の忠臣であった高馮(こうふう)が上奏(じょうそう)文で適切な助言や諫言をした。太宗はそれを「薬石の言」と称(たた)え、天然の薬石を褒美として与えた。
・薬石の効なし
(やくせきのこうなし) 種々の薬や治療法を試みたが、その甲斐(かい)なく。あらゆる手を尽くしてみたが、その甲斐なく。 例:「兼ねてより病気療養中のところ薬石の効なく」 ★「石」は「石鍼(いしばり)」のこと。
・役立たず
(やくたたず) 物の役に立たないこと。また、そういう者を罵(ののし)って呼ぶ言葉。 類:●穀潰し
・役に立たずの門立ち(やくにたたずのかどだち) 無能な者が門に立って騒いでも、なんにもならないということ。
・役に立つ
(やくにたつ) その役目を果たすのに適している。その役割を十分に行なう能力がある。用が足りる。 例:「愚図だが力仕事には役に立つ」
・役人風を吹かす
(やくにんかぜをふかす) 役人であることを殊更(ことさら)に強調するという意味で、自分は役人だと尊大に構えて威張る様子。
・役人と木っ端は立てるほど良い(やくにんとこっぱはたてるほどよい) 薪は立てるように置くと良く燃え、役人も、顔が立つようにしてやると良く働くということ。
・厄病神
(やくびょうがみ) 1.疫病を流行させるという神。 類:●疫病(えやみ)の神 2.人から忌み嫌われる人の喩え。 類:●貧乏神
・役不足
(やくぶそく) 1.振り当てられた役目に対して、不満を抱くこと。与えられた役目に満足しないこと。2.その人にとって、役目や肩書きが軽過ぎて、力量を十分に発揮できないこと。役が不相応に軽いこと。 ★「彼では役不足だ」などの使い方は、「力量不足」との混同であり、誤用。
・櫓を上げる
(やぐらをあげる) 櫓を作る。また、転じて、芝居や操り人形の座を作って興行を始めること。
・薬籠中の物
(やくろうちゅうのもの) 薬箱の中にある薬品のように、いつでも必要なときに、自分の役に立ち、自由自在に使える人や物。 類:●自家薬籠中の物懐刀

−−−−−−−やけ(#yake)−−−−−−−
焼け石に水
(やけいしにみず)
・焼け糞
(やけくそ)[=自棄糞] 自棄(やけ)を強めて言った言葉。 類:●自暴自棄捨て鉢
自棄のやん八 ★「−くそ」 〔接尾〕 他の語について、卑しめののしる意を表わす語。「けったくそ」「ぼろくそ」など<国語大辞典(小)>
・火傷火に怖じる(やけどひにおじる) 火傷をした者が、焚き火に当たるのも怖がる。一度の失敗に懲りて、必要以上の用心をすること。 類:●羹に懲りて膾を吹く蛇に噛まれて朽ち縄に怖じる
・火傷火に懲りず
(やけどにこりず) 火傷をした者が、懲りずにまた火に当たるということ。以前に失敗したことがあるのに、性懲りもなく同じ失敗を繰り返すこと。 
反:■羹に懲りて膾を吹く
焼け野の雉子夜の鶴
(やけののきぎすよるのつる)
・自棄のやん八
(やけのやんぱち)[=弥左衛門(やざえもん)・勘八(かんぱち) 自棄の状態を人名のように表わした言葉。 類:●自暴自棄 
参考:自棄焼け] ものごとが思い通りにならないため、自分で自分の身を粗末に扱い、どうなっても構わないという気持ちになること。投げ遣りな行動をとること。
・焼け原に霜の降ったよう
(やけはらにしものふったよう) 野火で焼けた野原に白い霜が降ったようであるという意味で、色の黒い醜い女が厚化粧をしている様子。
・焼け太り(やけぶとり) 1.火事に遭った結果、見舞金や保険金を受け取り、却(かえって)豊かになること。 類:●焼け誇り●転んでも只では起きない 2.(転じて)規制や締め付けに遭ったとき、巧く抜け道を捜して、逆に勢力を拡大すること。
・焼け木杭に火がつく
(やけぼっくいにひがつく)[=には火がつき易い] 燃え差しの杭は火が点き易いところから、一度途絶えてもすぐ元に戻ること。また、戻り易いことのたとえ。多く、男女関係に使う。 類:●元の鞘に納まる縒りを戻す
・自棄を起こす
(やけをおこす) 自暴自棄になること。ものごとが思うようにならず、不平不満が昂(こう)じて思慮のない行動をすること。

−−−−−−−やこ(#yako)−−−−−−−
・弥五郎(やごろう) 疫病や災厄を送り出す呪(まじない)的行事に使われる藁人形などの形代(かたしろ)。 
★「ごろう」は御霊(ごりょう)の変化<国語大辞典(小)>

−−−−−−−やさ(#yasa)−−−−−−−
・優男
(やさおとこ) 1.優しい男。風雅の道を解する男。 類:●雅男(みやびお) 2.姿形のなよなよとした柔弱(にゅうじゃく)な男。3.痩(や)せ型の男。
・矢先
(やさき) 事が正(まさ)に始まろうとする時。ちょうどその時。 類:●途端 用例:浄・堀川波鼓−中「悦ぶやさきにおのれめは姉を去れの離別のとは」 例:「外出しようとした矢先の来客」

−−−−−−−やし(#yasi)−−−−−−−
・野次馬
(やじうま) 1.老いた牡の馬。または、暴れ馬。2.火事や騒ぎなどに物見高く集まる者のこと。自分には直接関係がないのに、あれこれと口を出す者のこと。他人の尻馬に乗って無責任に騒ぎ立てたりする者のこと。 用例:当世書生気質「外の野郎共も岡焼半分、面白半分、弥次馬になつて助太刀をする」 
★「やじ」は「おやじ」の変化とも、また「やんちゃ」の変化ともいう。その場合歴史的かなづかいは「やぢうま」<国語大辞典(小)>
・夜食過ぎての牡丹餅(やしょくすぎてのぼたもち) 夕食の後に牡丹餅を貰っても有り難くない。なにごとも、時機を逸しては値打ちが損なわれるものだということ。 類:●六日の菖蒲(しょうぶ)●十日の菊夏炉冬扇 参考:夜食(やしょく) 一日二食であった頃、夜間、別にとった食事の称。午後四時から五時頃に夕食をとり、夜の八時から一〇時頃に別に簡単な食事をする習慣があった<国語大辞典(小)>
・弥次郎
(やじろう) しょっちゅう嘘を吐(つ)く者の称。 ★「嘘吐き弥次郎」「裟婆で見た弥次郎」などとも言う。 出典:落語「弥次郎」(原話:「口拍子−角力取」) 出典:俗談口拍子(ぞくだんくちびょうし) 咄本。安永2年(1773)。軽口耳抜(城戸楽丸)著、鈴木春重(司馬江漢)画。話数は諸本により異同があり、最も多いもので86話。当時の咄本の中では地口が多く見られる。
・野次を飛ばす
(やじをとばす) 相手の言動を妨害するために、嘲(あざけ)り、囃し立てる。大声で野次る。盛んに野次る。
・野心
(やしん) 1.狼の子は人に飼われても慣れず、飼い主を傷付けようとする。そのように、慣れ親しまないで、誰かに危害を加えようとする荒い心。 類:●狼子野心 2.謀反(むほん)の心。また、密かに抱いている、身分不相応な企(たくら)み。3.現状よりも更に高い権力・名誉・財力などを得ようとする心。 類:●大望 例:「政治的野心」 4.田園生活を望む心。5.卑(いや)しい心。下品な心。時に、自分を遜(へりくだ)っていう。 故事:春秋左氏伝−宣公四年」 中国春秋、楚の国の司馬・子良(しりょう)の子・越椒(えつしょう)を指して、子良の兄・子文(しぶん)が「この子は容貌が熊、声は狼のようである。諺(ことわざ)にもあるように、狼の子は最後まで野性の心を失わず、主(あるじ)を害そうとする。きっとこの子は必ず我が一族を滅ぼすであろう」と言った。やがて、成長した越椒は楚王に謀反を起こし、結果、一族は滅びることとなった。
・野心満々
(やしんまんまん) 《四熟》 大望(たいぼう)に満ち溢(あふ)れている状態。

−−−−−−−やす(#yasu)−−−−−−−
・安上がり(やすあがり) 1.安い費用でできること。金銭があまり掛からないこと。2.手軽に済むこと。
・安請け合い(やすうけあい) 1.確信のあるなしに拘(かか)わらず、軽々しく保証すること。2.よく考えもせずに軽々しく引き受けること。
・安かろう悪かろう
(やすかろうわるかろう) 値段が安いだけあって品質も劣ることだろう。安いものに良い品物はないということ。
・安くする
(やすくする) 甘く見る。軽んじる。馬鹿にして掛かる。
・安くない
(やすくない) 男女が特別の間柄にあるとういこと。また、その仲が良いのを冷やかして言う言葉。主に、「お安くない」のかたちで使う。 用例:洒・
寸南破良意「安くねへの、ドレ何んだ、おかん一心命」 用例の出典:寸南破良意(すなはらい?) 洒落本。南鐐堂一片。安永4年(1775)。・・・調査中。
・安っぽい
(やすっぽい) 1.品質や出来上がりが悪くて、値段が安そうに見える。見るからに安物らしい感じである。 例:「安っぽいバッグだな」 2.人や言動について、品格がない。重みがない。軽 々しい。また、価値がない。取るに足りない。 用例:滑・八笑人−二「コレ番毎アバ公アバ公とあんま り安っぽく引だすなへ」 例:「安っぽい田舎芝居」
・休み休み
(やすみやすみ) 1.時々休んでは事を続けること。途中で何度も休みながら。 用例:
三体詩絶句鈔−六「遠き山路を一こしにはのぼられぬ程に、やすみやすみ登る也」 2.良く考えて。熟慮して。主に、命令表現や勧誘表現を伴って「良く考えて〜しなさい」という意味に使う。非難しながら制止する気持ちを込めて使う。 例:「馬鹿も休み休み言え」 用例の出典:三体詩絶句鈔(さんていしぜっくしょう?) ・・・調査中。 参考:三体詩(さんたいし・さんていし) 唐詩の選集。3巻。宋の周種((しゅうひつ)編。1250年頃成立。七言絶句・七言律詩・五言律詩の三詩体の作品のみを選び集めて、作詩のための原理を示すために編んだもの。「虚実」について、「虚」とは「感情を表現したもの」つまり「主体的表現」であり、「実」とは「景物や事実を表現したもの」つまり「客体的表現」であるとした。中・晩唐期の詩人の作品を多く収録する。
安物買いの銭失い(やすものがいのぜにうしない)
・安物は高物
(やすものはたかもの) 安物は直(す)ぐに壊れたり、駄目になったりして、結局は高い物に付くということ。 類:●安物買いの銭失い

−−−−−−−やせ(#yase)−−−−−−−
・痩せ牛の鞦
(やせうまのしりがい) 地口(じぐち)の一つ。 痩せ牛は骨が出ているので、鞦が外れ難い。ものごとに外れがないことをいう洒落。 類:●年寄りの言うことと牛の鞦は外れない●牛の鞦と諺とは外れそうでも外れぬ ★「鞦(しりがい・しりげ)」は、牛の胸から尻にかけて取り付け、車の轅(ながえ)を固定させる紐(ひも)。
・痩せ牛も数集れ
(やせうしもかずたかれ) 弱小な者でも、数が集まれば力になるということの喩え。 類:●餓鬼も人数●蟻も軍勢
・痩せ腕にも骨
(やせうでにもほね) 痩せて非力な腕でも、固い骨が通っているには違いがない。微力な者でもそれなりの意地や誇(ほこ)りを持っているということ。 類:●一寸の虫にも五分の魂
・痩せ馬の道急ぎ
(やせうまのみちいそぎ) 1.無能な者ほど功名を急ぎ、その結果失敗するものである。また、競走などで、最初だけ先行するが、やがて息切れして追い越されてしまうこと。 類:●竜頭蛇尾●痩せ馬の一時●駄馬の先走り 2.心ばかり焦って、ものごとが捗(はかど)らないことの喩え。
・痩せ馬鞭を恐れず
(やせうまむちをおそれず) 1.痩せ馬は、酷使(こくし)に慣れてしまって鞭を恐れない。堕落(だらく)した者や打ちひしがれた者は、無理強いをしても動かないということの喩え。2.また、そのような者には、脅(おど)すよりも愛情を持って接した方が良いということ。
・痩せ我慢は貧から起こる
(やせがまんはひんからおこる) じっと我慢して苦しみや不自由を耐えるのも、貧乏であるためで、生活に困らなければ無理に我慢するようなこともないということ。
・痩せ我慢を張る
(やせがまんをはる) 無理に我慢して堪え忍ぶという意味で、苦痛や欲望などをじっと耐えて平気な顔を装ったり、負け惜しみをして人の同情や援助を拒否したりすること。
・痩せ侍(やせざむらい) 雑役を仕事とする身分の低い侍。知行が低く貧乏な侍。また、それらを見下げ卑(いや)しめていう言葉。 類:●悴侍(かせざむらい)
・痩せても枯れても
(やせてもかれても) どんなに零落(おちぶ)れても〜である。 類:●痩せても気触(かぶ)れても
・痩せの大食い
(やせのおおぐい) 痩せているのにたくさん食べるという意味で、痩せている人は案外大食いであるということ。
・痩せ山の雑木(やせやまのぞうき) 痩山に僅かに生えている雑木という意味で、取るに足りないものの喩え。 類:●牛糞馬涎●塵芥(ちりあくた)

−−−−−−−やた(#yata)−−−−−−−
・屋台骨
(やたいぼね) 1.屋台を構成する骨組み。また、家屋の柱、梁、桁(けた)など。2.家の構え。店構え。3.家や家業を経済的に支える資力。また、転じて、それを生み出す働き手や主要人物。 類:●身代(しんだい)
・矢立の初め
(やたてのはじめ) 矢立の使い始め。また、旅日記などの書き始め。 
参考:矢立て(やたて) 近世、腰に差して携行した筆記具。墨壺に筆のはいる筒を付けて、帯に挟むようになっている。
・矢鱈(やたら) 順序・秩序・節度などがないこと。筋が通らないこと。 類:●無茶苦茶無闇 用例:滑・浮世床−二「小僧がうたった唄は、やたらと流行(はやる)が」 例:「矢鱈なことをするんじゃない」 ★雅楽の「やたらびょうし(八多羅拍子)」からか。拍子が早くて調子が合わないところからという。「矢鱈」は当て字<国語大辞典(小)>

−−−−−−−やち(#yati)−−−−−−−
・野猪にして介するもの
(やちょにしてかいするもの) 「介する」は、鎧(よろい)を着せること。突進するだけの武者のこと。向こう見ずな人を罵(ののし)って言う。 類:●猪武者 
★「介」は鎧(よろい)の意<国語大辞典(小)>
・家賃が高い
(やちんがたかい) 元は力士仲間で使われた言葉で、番付けで実力以上の地位に居ること。一般に、肩書きや序列などが、本人の資質よりも高いこと。

−−−−−−−やつ(#yatu)−−−−−−−
・八つ当たり
(やつあたり) 1.目当てもなくあれこれとことを行ない、偶然に、ある結果を得ること。 類:●紛(まぐ)れ当たり 2.誰彼の区別なく当たり散らすこと。怒りを関係のない人にまで撒き散らすこと。
・厄介になる
(やっかいになる」) 生活の面倒を見て貰う。宿や食事の世話をして貰う。 類:●世話になる
・厄介払い
(やっかいばらい) 厄介なものごとや厄介者を追い払うこと。邪魔者を放逐(ほうちく)すること。
・厄介もっかい
(やっかいもっかい) 「厄介」を強めて言った言葉。
・やっかむ 
他人のことを妬(ねた)む。羨(うらや)む。 類:●妬む●嫉(そね)む●
焼き餅を焼く 用例:雑俳・柳多留−二「さる廻し子はやっかんで跡を追ひ」 ★多く、関東地方でいう。<国語大辞典(小)>
・矢継ぎ早
(やつぎばや) 1.矢継ぎが早いこと。矢を続けて射る技が早いこと。 用例:平家−四「競はもとよりすぐれたるつよ弓精兵(せいびよう)、矢継早の手きき」 2.ものごとを続けざまに手早くすること。次々に俊敏にする様子。畳み掛けてする様子。 例:「矢継早に質問する」
・八つ子も癇癪
(やつごもかんしゃく) 幼い子供でも癇癪を起こされると手強(てごわ)いものである。弱くても侮(あなど)れないということの喩え。 類:●一寸の虫にも五分の魂
・遣っ付け仕事
(やっつけしごと) 間に合わせの、好い加減な仕事。雑な仕事。また、その場限りの仕事。

−−−−−−−やて(#yate)−−−−−−−
・矢でも鉄砲でも持って来い
(やでもてっぽうでももってこい) 相手が自分を攻撃するのに、どんな手段を使ってでも攻めてこいということで、肝を据えてものごとに対処する気構え。または、半ば捨て鉢な気持ちになっているときに発する言葉。

−−−−−−−やと(#yato)−−−−−−−
・宿取らば、一に方角二に雪隠、三に戸締り四には火の元(やどとらば、いちにほうがくににせっちん、さんにとじまりしにはひのもと) 旅先で宿を取る時の注意事項を、語呂よく並べた昔の言葉。
・宿屋の飯も強いねば食われぬ
(やどやのめしもしいねばくわれぬ) 宿屋の飯は、宿代を払っているからといって勝手に食べ始めるかというと、そうではない。やはり、「どうぞ」と勧められないと食べ難いものである。ものごとは勧め方が大事で、商売のコツもそこにあるということ。 類:●茶屋の飯も強い方●茶屋のものも強いねば食えぬ
・宿六
(やどろく) 一家の主(あるじ)のことを卑下して、または、親愛の情を込めていう呼び方。特に、妻が夫の対して使う。 例:「うちの宿六が〜」 
★「宿の碌でなし」から。

−−−−−−−やな(#yana)−−−−−−−
・柳腰
(やなぎごし) 細くしなやかな腰。また、腰細の美人。 類:●細腰●柳腰(りゅうよう)
・柳に風
(やなぎにかぜ) 柳が風に靡(なび)くように、少しも逆らわずに穏やかにあしらうこと。また、巧みに受け流すこと。 類:●柳風に撓(しな)う●楊柳の風に吹かるる如し
柳に雪折れなし
(やなぎにゆきおれなし)
・柳の営み
(やなぎのいとなみ) 将軍の陣営のこと。また、将軍。 類:●幕府 
★「柳営(りゅうえい)」の訓読み<国語大辞典(小)>
柳の枝に雪折れはなし
(やなぎのえだにゆきおれはなし) 柳の枝は撓(しな)うので、雪が積もっても折れない。柔軟なものは弱々しく見えるが、剛堅なものよりも却って強いということの喩え。 類:●歯亡びて舌存す高木風に折らる
・柳の髪
(やなぎのかみ) 1.柳の枝が細くしなやかに垂れる様子を女性の髪に見立てて言った言葉。転じて、柳の枝のような長く美しい女性の髪。
柳の下にいつも泥鰌はおらぬ
(やなぎのしたにいつもどじょうはおらぬ)
・柳の葉を百度中つ
(やなぎのはをももたびあつ) 射術(しゃじゅつ)が優れていること。 
故事:史記−周本紀」 楚(そ)の養由基は射術が上手で、百歩離れた所から柳の葉に百発百中した。
・柳の眉
(やなぎのまゆ・まよ)  1.柳の葉、または柳の萌え出た芽を眉に見立てた言葉。2.転じて、女性の細く美しい眉。 類:●柳眉 出典:「白居易長恨歌」「芙蓉如面」、など 
・柳は緑花は紅
(やなぎはみどりはなはくれない) 1.柳は緑色をなし、花は紅に咲くように、自然そのままである。春の美しい景色を形容。 類:●花紅柳緑(かこうりゅうりょく) 原典:魏承班の詩「生査子詞」「長抱相思病、花紅柳緑間晴雲、蝶舞双双影、羞看繍羅衣、為有金鸞並」 出典:蘇軾の詩、「柳緑花紅、真面目」 2.ものにはそれぞれの自然の理が備わっているということ。3.物が様々に異なっている有り様。
・柳は弱いが他の木を縛る
(やなぎはよわいがたのきをしばる) 一見しなやかで弱々しそうに見える柳の枝も、何本か合わせると薪(たきぎ)を束ねることができる。弱く見える者でも、侮(あなど)り難いということ。 類:●Willows are weak, yet they bind other wood.柔よく剛を制す
・柳を折る
(やなぎをおる) 旅立つ人を見送ること。 
★漢代、長安から旅立つ人を送って覇橋(はきよう)で、柳の枝を折って別れた故事から<大辞林(三)>

−−−−−−−やに(#yani)−−−−−−−
・野に下る
(やにくだる) 1.官職に就いていた者が退いて民間生活に入る。 類:●下野(げや)する●天降(くだ)る 2.与党が政権を失って野党に変わる。 類:●下野する
・脂下がる
(やにさがる) 1.煙管(きせる)の雁首(がんくび)を上に上げてタバコを燻(くゆ)らす。 用例:洒・
深川新話「きせる斜にやに下り」 2.気取って構える。高慢な態度をとる。 用例:雑俳・柳多留−一六「やに下り世上にまなこたかい顔」 例:「女の子に囲まれて脂下がる」 ★煙管を上向きに吸っている様子が、気取って見えることから。 ★現在では、いい気分になってにやにやする意にいう<国語大辞典(小)> 用例の出典:深川新話(ふかがわしんわ) 洒落本。山手の馬鹿人。1冊。刊年未詳。・・・調査中。
・脂を下げる
(やにをさげる) 煙管の雁首の方を上げて、脂を吸口の方へ流す。また、そのような形でタバコを吸う様子。転じて、気取ったポーズをする。または、高慢な態度を取る。
・脂茶
(やにちゃ) 松脂が粘って扱い難いことに喩えて、子供が腕白(わんぱく)であること。 類:●やんちゃ腕白 用例:俳・
牛飼−一「花折は桃のやにちゃな子とも哉」 用例の出典:牛飼(うしかい) 古俳諧。富永燕石編。万治3年(1660)ごろか。・・・調査中。

−−−−−−−やね(#yane)−−−−−−−
・屋根屋の褌(やねやのふんどし) 地口(じぐち)の一つ。見上げたものだという洒落。 類:●屋根ふきの褌 例:「見上げたもんだよ屋根屋の褌

−−−−−−−やの(#yano)−−−−−−−
・矢の如し(やのごとし) 飛ぶ矢のようだということで、速度が極めて速いこと。速くて一直線に進む物の比喩。、また、移り変わりなどが激しいことのたとえ。 例:「光陰矢の如し
・矢の催促
(やのさいそく) 早く早くと急き立てること。厳しく、再三再四催促すること。
・矢の使い
(やのつかい) 催促の使いが頻繁(ひんぱん)に来ること。また、至急を告げる使者。

−−−−−−−やは(#yaha)−−−−−−−
・やばい
 1.危険や不都合が予測される状況である。危(あぶな)い。拙(まず)い。 例:「あの店はやばいぞ」 2.善(よ)からぬ。怪(あや)しげな。 例:「やばい仕事じゃないでしょうね」 ★もと、てきや・盗人などが官憲の追及がきびしくて身辺が危い意に用いたものが一般化した語。「やば」の形容詞化<国語大辞典(小)> 語源説①「大変危険だ」の意味の古い言い方の「彌危ない(イヤアブナイ)」が変化した。②泥棒が夜中に地面に這いつくばりながら忍び込んだりする「夜這(よはい)」が徐々に変化した。 参考:やば ①不都合なこと。けしからぬこと。奇怪なこと。膝栗毛六「おどれら、—なこと働きくさるな」 ②危険なさまにいう隠語。伎、韓人漢文「俺が持つてゐると—なによつて」<広辞苑第四版(岩)>
・やはり野に置け蓮華草
(やはりのにおけれんげそう) 1.滝野瓢水の句「手に取るなやはり野に置け蓮華草」。蓮華の花は野にあるから美しいのだということ。 用例:続近世畸人伝−二「大坂の知己の者遊女を請けむといふを諫めて、手に取るなやはり野に置け蓮華草」 ★遊女を身請けしようとした知人を諌めて詠んだ句。 2.適材適所が良いということの喩えとしても言われる。 用例の出典:近世畸人伝・続近世畸人伝(きんだいきじんでん・ぞく〜) 列伝。三熊思孝(しこう=花顛)・伴蒿蹊(こうけい)。寛政2年(1790)「続〜」は寛政10年(1798)。各5巻5冊。日本各地の武士・学者のみならず、商人、職人、農民、神職、僧侶、歌人、更には下僕や遊女、乞食等々の諸階層の人物百余名の「畸人」たちの「伝」を載せた書。

−−−−−−−やふ(#yahu)−−−−−−−
・藪医者
(やぶいしゃ) 診断や治療が下手な医者。 類:●藪●庸医(ようい)●竹庵●藪薬師(やぶくすし) ★「やぶ」は「野巫(やぶ)」で、本来は「呪術を医薬とともに用いる者」の意であったという。それに「藪」「野夫」などの漢字を当てて、田舎医者の意となり、あざけっていったものか<国語大辞典(小)> ★他説として、「藪」は「見通しが利かない」から、「少々の風(風邪)で騒ぎ立てる」からとも。 参考:「土手医者」=藪も生えない、「筍(たけのこ)医者」=藪にもなれない、「雀医者」=これから藪に向かう、「紐(ひも)医者」=これに掛かったらまず助からない、などもある。
・藪医竹庵
(やぶいちくあん) 「藪医者」のことを、人名のように言ったもの。 類:●竹庵
・藪医者の病人選び
(やぶいしゃのびょうにんえらび) 藪医者は治療の難しそうな患者を診たがらない。そのように、才能や実力のないような者ほど、仕事に難癖をつけたり、選(え)り好みをしたりするものであるということ。 類:●藪薬師(くすし)の病人選び
藪から棒
(やぶからぼう)
・吝かでない
(やぶさかでない) 物惜しみをせずにするの意味で、躊躇(ちゅうちょ)せずにすること。渋らずに、率先して行なうこと。頼みなどを、快く引き受けるときなどに言う。 用例:随・老人雑話−乾「太閤心も辞も行跡も、少も吝さかなることなき生質也」 例:「協力するに吝かでない」 ★「吝か」は、物惜しみすること、けちであること。転じて、思い切りが悪いこと。 用例の出典:老人雑話(ろうじんざつわ) 随筆集。江村宗具(専斎)述、伊藤坦庵記。宝永7年(1710)。1冊。江戸初期、朱子学者でもあった伊藤坦庵が記した逸話物。師の江村専斎の談話を元に綴ったもの。戦国武将の逸話や当時の人々の生活が描かれている。
・藪に功の者
(やぶにこうのもの)[=功・功者(こうしゃ) 1.草深い鄙(ひな)びた所にも立派な者がいるということ。馬鹿にしている者の中に、案外立派な者が交じっているということ。2.「藪」は藪医者のこと。藪医者だと言われている者の中に、案外名医が交じっているということ。 
★「やぶ」には「野夫」を、「こう」には「剛」を当ててもいう<国語大辞典(小)>
・野夫に剛の者
(やぶにごうのもの) 粗野な者たちの中にも勇敢な者がいるものだということ。
・藪に馬鍬(やぶにまぐわ・まんぐわ・うまぐわ) 根が蔓延(はびこ)っている藪で馬鍬を揮(ふる)うということで、無理な事を敢えて行なうこと。
・藪に目
(やぶにめ)[=耳] どこで誰が見ているか分からないということで、秘密などは漏れ易いということ。 類:●壁に耳
・藪に
?(やぶにめくばせす・めくわせす) 藪の方に向かって目配せをする(意味の詳細は不明)。 用例:太平記−三六「独笑(ひとりゑみ)して、藪(ヤブ)に?(メクハセ)し居たる処に」 ★余所見の意とも、藪睨みの意とも、事が秘密であることを示す意ともいわれる<国語大辞典(小)>
・藪の中
(やぶのなか) 関係者の言うことがまちまちで、真相が分からないこと。 例:「真相は依然として藪の中だ」 芥川竜之介の同名の小説から<広辞苑第四版(岩)>
・藪の中の荊
(やぶのなかのいばら) 周囲の環境や交友関係が悪いと、影響されて自分も悪くなってしまうものであるということ。 反:■麻の中の蓬
・薮蛇
(やぶへび) 余計なことをして、却(かえ)って悪い結果を招く。 類:●藪を突突いて蛇を出す
・破れかぶれ(やぶれかぶれ) もうどうにでもなれという気持ち。自暴自棄な様子。 類:●捨て鉢 ★「かぶれ」は、語調を強めるために付いた言葉で、特に意味はない。
・破れても小袖
(やぶれてもこそで) 絹地の着物は、仮令(たとえ)破れてもやはり絹であるという意味から、質の良いものは、壊れてもなおそのよい性質を失わないということ。 類:●腐っても鯛
藪を突突いて蛇を出す(やぶをつついてへびをだす)

−−−−−−−やほ(#yaho)−−−−−−−
・野暮
(やぼ) 1.世情に疎(うと)く、人情の機微を解さないこと。 例:「そんなこと聞くだけ野暮だ」 2.洗練されていないこと。垢抜けていないこと。 例:「野暮な服装」 3.遊里の事情に疎いこと。また、その者。 
反:■粋(すい)■通(つう) ★語源は「野夫(やふ・やぶ)」とする説が有力。「田舎者(いなかもの)」の意。 ★「やぶ」と同原で、もと遊里の事情に暗いことを指した<新明解国語辞典(三)>
・野暮天
(やぼてん) まったく融通が利かないこと。無風流なこと。気が利かないこと。また、その人。 類:●朴念仁唐変木
・野暮と化け物は箱根から先
(やぼとばけものははこねよりさき) 野暮と化け物は箱根から先の西の方に居るものであり、江戸にはいないということ。江戸っ子が、通(つう)であることを自慢して言った文句。

・野暮用(やぼよう) 1.粋(いき)ではない実務的な用事。趣味や遊びのための用事ではない、仕事などの実務上の用事。2.一般に、何の変哲(へんてつ)もないつまらない用事。 例:「ちょっと野暮用でそこまで」

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