【はら】~【はを】

−−−−−−−はら(あ)(#hara1)−−−−−−−
・腹悪し(はらあし) 1.心が荒く立腹し易い。怒りっぽい。短気である。 用例:平家−1「あまりに腹悪しき人にて」 2.心が拗(ねじ)けていて、素直でない。意地が悪い。 類:●
腹黒い 用例:源氏−東屋「腹悪しう言葉多かるものにて」
・腹帯を締めて掛かる
(はらおびをしめてかかる) 覚悟を決めてものごとに取り掛かる。 類:●褌を締めて掛かる

−−−−−−−はら(か)(#hara2)−−−−−−−
・腹が癒える
(はらがいえる) 怒りや恨みなどが晴れる。怒りが治(おさ)まる。憤りが鎮(しず)まる。
・腹が痛む(はらがいたむ) 自分の腹を切れば、痛みを感じることが痛切であるところから転じて、費用や代金を自分で支出すること。 類:●自腹を切る身銭を切る腹を痛める腹を切る
・腹が居る
(はらがいる) 怒りが治(おさ)まる。鬱憤が晴れる。 用例:平家−九「梶原この詞に腹がゐて、<略>どっとわらいてのきにけり」 
★「腹が立つ」に対していう語<国語大辞典(小)>
・腹が大きい(はらがおおきい) 1.度量が大きい。包容力があること。心が広くて大きいこと。 
反:■腹が小さい 2.女性が、妊娠中である。
・腹が来た(はらがきた) 腹が減ってきた。 用例:洒・
通言総籬「少し腹が来たわえ」  ★「北」と掛けて「腹が北野天神」「腹が北山」などの地口(じぐち)に用いることが多い<大辞林(三)> 用例の出典:通言総籬(つうげんそうがまき) 洒落本。山東京伝作・画。天明7年(1787)刊。好評だった黄表紙「江戸生艶気樺焼」の人物たちを再登場させて、前半では遊里を巡る最新の話題や流行を語らせ、後半は、吉原の遊女を初め実在の人物をモデルとしてその風俗・言語を精細に描いた。洒落本の代表作。「総籬」。 
・腹が北山(はらがきたやま)[=は北山時雨(きたやましぐれ) 「北」を「来た」に掛けて、腹が空いてきたことをいう洒落(しゃれ)。
・腹が決まる(はらがきまる) 心や考えが決まるという意味で、決心すること。覚悟が決まること。
・腹かく(はらかく) 後悔する。悔しがる。 用例:浄・
源義経将棊経−一「其痩馬共引上よ、蹴殺されてはらかくな」 用例の出典:源義経将棊経(みなもとのよしつねしょうききょう) 浄瑠璃。近松門左衛門。宝永3年(1706)?正徳元年(1711)? 判官物。戦場の駆け引き戦術を、女中を将棋の駒に見たてて動かし、面白く描く近松門左衛門でござーい!
・腹が下る
(はらがくだる) 下痢(げり)をする。
・腹が黒い(はらがくろい) 心が汚れているという意味で、心が拗(ねじ)けていて意地が悪いこと。根性が悪い。心の中に悪巧みを持っている。意地が汚い。 類:●
腹黒い
・腹が空く(はらがすく) 空腹になる。 類:●腹が減る
・腹が据わる
(はらがすわる) 1.ものごとに動じない。落ち着く。度胸が据わる。2.心が決まっていて揺るがない。また、覚悟する。 類:●腹が決まる
・腹が立つ
(はらがたつ) 怒りを抑えられない。怒る。立腹する。 類:●腹立つ●癪に障る
・腹が立つなら親を思い出せ(はらがたつならおやをおもいだせ)[=親を思い出すが薬] 腹が立ってならないとき、軽挙(けいきょ)に及ぶ前に、そこで暫(しばら)く親のことを思い出して気を鎮(しず)めなさいということ。短気を起こして暴力沙汰(ざた)になり、万一罪人にでもなったら、親がどんなに悲しむかを考えよということ。
・腹ができる
(はらができる) 1.食事をして腹が一杯になること。2.転じて、覚悟や決心ができる、しっかりと考えが纏まること。 例:「中々腹ができた奴だ」
・腹が無い(はらがない) 1.度胸がない。胆力が据わっていない。2.度量がない。
・腹が煮える(はらがにえる) 腹の中が煮え返るようである。非常に激しく怒って興奮すること。
・腹が張る(はらがはる) 1.飽きるほど飲食して満腹する。2.太って腹が突き出る。
・腹が脹れる
(はらがふくれる) 1.腹の部分が肥え太る。腹が太くなる。2.腹一杯になる。満腹する。飽食する。3.孕(はら)む。妊娠する。4.言いたいことを言わないので、不満が溜まる。 用例:大鏡−序「おぼしきことを言はぬは、げにぞ腹ふくるる心ちしける」
・腹が太い
(はらがふとい) 1.腹が脹れている。腹一杯である。満腹である。2.度量が広い。胆力が大きい。 類:●太っ腹 3.横着(おうちゃく)である。
・腹が減っては軍が出来ぬ
(はらがへってはいくさができぬ)[=は出来ぬ] 空腹では、何事も身を入れてやれない。
・腹が減る
(はらがへる) 空腹になる。 類:●腹が空く
・腹から
(はらから) 1.元より。元来。生まれながら。 用例:浄・夏祭浪花鑑−四「俺も腹からの町人でなければ」 2.本心から。心底から。 例:「腹から怒る」
・腹黒い
(はらぐろい・くろい) 心が拗(ねじ)けていて意地が悪い。心中に悪巧みを持っている。 類:●
腹が黒い 用例:苔の衣−二「いでやはらくろき人々の、まろがなきままにたばかり出して」 用例の出典:苔の衣(こけのころも) 鎌倉中期の擬古物語。4巻。作者未詳。建長年間(1249−56)の成立とされる。右大将が、思い叶って結ばれた北の方の死に悲嘆し遁世する前半と、二人の間に生まれた姫君への兵部卿宮の激しい悲恋を主題とする後半から成る、無常感に染め上げられた陰鬱な物語。

−−−−−−−はら(さ)(#hara3)−−−−−−−
・ばらす
 1.一纏(まと)まりになったものをばらばらにする。壊(こわ)して散らす。また、一度成立した契約などを破棄する。 用例:洒・青楼五つ雁金−三「此そうだんはとてもの事にばらしてくんなせへ」 2.殺す。切り殺す。 用例:浄・加増曾我−一「ばらしてくれんとをっ取まはし」 3.売り払う。安く売り飛ばす。安売りする。 用例:浄・鎌倉三代記−五「差出す古草履。一つに合しばらしても二足三文」 4.芝居で、大道具などを取り払う。5.米相場で、客の注文で買った米を仲買人が自分の思惑(おもわく)で売る。6.秘密を暴(あば)く。暴露(ばくろ)する。 例:「何から何までばらしてやる」 7.釣りで、一度針に掛かった魚を逃がす。 ★「散(ばら)す」から。 用例の出典:加増曾我(かぞうそが) 浄瑠璃。近松門左衛門。宝永3年(1706)。「本領曽我」の後日談。成人した兄弟の敵討ちを描く。歌舞伎的な要素に富み、「陽気な曽我物」と評される<近松門左衛門でございーい!

−−−−−−−はら(た)(#hara4)−−−−−−−
・腹たかし
(はらたかし) 腹が脹れている。妊娠している。
・腹で行く
(はらでいく) 1.本心で向かい進むという意味で、真心(まごころ)を尽くして接すること。2.覚悟を決めて大胆に行動すること。

−−−−−−−はら(な)(#hara5)−−−−−−−
・腹に一物(はらにいちもつ) 心中に蟠(わだかま)りがあること。心の中に企みごとを持っていること。 類:●胸に一物 例:「腹に一物ある御仁」
・腹に収める
(はらにおさめる) 聞き知ったことを、他人に言わずに心に留めておく。 類:●腹に仕舞う
・腹に落ちる
(はらにおちる) 納得する。なるほどと思う。事情が良く理解できて、心の底から合点が行くこと。 類:●得心が行く合点が行く
・腹に据え兼ねる(はらにすえかねる) 怒りを抑えることができない。 
反:■腹を据える
・薔薇に棘あり
(ばらにとげあり) 薔薇はとても美しい花だが、摘もうとするとその鋭い棘で指を傷付ける。一見美しく淑(しと)やかそうな女性も、隠れたところに人を傷付ける要素を持っているものだという喩え。 類:●綺麗な薔薇には棘がある●外面如菩薩内心如夜叉 ★英語の諺Every rose has its thorn.から。
・腹に持つ
(はらにもつ) 心の奥底に溜めて、いつまでも忘れないこと。心に恨みを持っていること。 類:●根に持つ
・腹の皮が張れば目の皮が弛む(はらのかわがはればめのかわがたるむ) 1.食事を採って腹が一杯になれば、自然と眠くなるものである。2.飽食(ほうしょく)は怠惰(たいだ)の元だということ。 類:●大食腹に満つれば学問腹に入らず●A belly full of gluttony will never study willingly.
・腹の皮を縒る
(はらのかわをよる)[=筋(すじ)を〜][=捩(よじ)る] 可笑しさに、腹の皮が捩(よじ)れるほど大笑いをする。可笑しくて堪(たま)らない様子。 類:●腹の筋を縒る●腹を切る
腸(はらわた)を切る腸を断つ
・腹の探り合い
(はらのさぐりあい) お互いに、相手の真意を推し量ろうと、心の中を伺う。勝負に勝つため、相手の出方を見て、その戦法を見極める。 類:●鎌の掛け合い●化かし合い
・腹の虫
(はらのむし)[=中の虫] 1.人体の腹中に寄生する虫。回虫(かいちゅう)の類(たぐい)。2.空腹時の腹鳴りを、腹中に虫がいて、それが鳴くものとしていう言葉。 例:「腹の虫が鳴く」 3.機嫌の良し悪しなどの感情の起伏を腹の中にいる虫によって起こるものとしていう言葉。腹立ちや不満などの感情。 例:「腹の虫が治まらない」
・腹の虫が治まらない
(はらのむしがおさまらない)[=承知しない] 癪(しゃく)に障(さわ)って我慢ができない。腹立つ気持ちを抑え難い。
・腹の虫の居所が悪い
(はらのむしのいどころがわるい) 機嫌が悪い。

−−−−−−−はら(は)(#hara6)−−−−−−−
・腹は借り物
(はらはかりもの) 母親の腹は一時の借り物で、生まれる子の身分は父親の貴賎の如何(いかん)に因る。
・腹八分
(はらはちぶ)・腹八分目 腹を八分通り満たしたところで止(や)めておくこと。ものごとを十分に満足するまでやるのではなく、物足りなく思うところで止めておくこと。 類:●腹八分目●節制は最良の薬なり 例:「腹八分に医者要らず」 
類:●Light suppers make long life.(腹八分に医者いらず)<「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典

−−−−−−−はら(ま)(#hara7)−−−−−−−
・腹持ちが良い(はらもちがいい) 食べたものの消化が遅く、直(す)ぐには空腹にならないこと。また、そういう食べもの。 例:「餅は腹持ちが良い」
・腹持ちが悪い
(はらもちがわるい) 食べたものがすぐに消化されてしまい、直(す)ぐにまた空腹になってしまうこと。また、そういう食べもの。 例:「蕎麦は腹持ちが悪い」
腹も身の内
(はらもみのうち)

−−−−−−−はら(わ)(#harawa)−−−−−−−
・腸が腐る
(はらわたがくさる) 精神が堕落する。根性や気骨(きこつ)がなくなる。
・腸が千切れる
(はらわたがちぎれる) 悲しみや、辛さに耐え切れない。 類:●断腸の思い 例:「腸が千切れる思い」
・腸が煮え返る
(はらわたがにえかえる)[=煮えくり返る・燃え返る] あまりにも腹が立って、怒りを堪(こら)えることができない。憤怒に堪えられない。
・腸が見え透く
(はらわたがみえすく) 心の中が良く分かる。本心がはっきりと分かる。
・腸を切る
(はらわたをきる) 可笑しくて堪(たま)らず、大笑いする。 類:●
腸を断つ
・腸を断つ
(はらわたをたつ) 1.激しい悲しみに堪えられない様子。心が張り裂ける思い。 類:●断腸●断腸の思い 2.可笑しさに堪えられないで大笑いをする。

−−−−−−−はら(を)(#harawo)−−−−−−−
・腹を合わす(はらをあわす)[=合わせる]
心を通じ合わせる。一致協力する。示し合わせる。 類:●ぐるになる●共謀する●肌を合わせる
・腹を痛める
(はらをいためる) 1.子を宿し、産みの苦しみを味わう。赤ん坊を産む。 類:●腹を抱える 
★「腹を痛めた子」のかたちで、自分が産んだ子のこと。 2.自分の持ち金を出す。損をする。 類:●身銭を切る腹を切る自腹を切る腹が痛む
・腹を癒す
(はらをいやす) 怒りを晴らす。鬱憤(うっぷん)を晴らす。
・腹を居る
(はらをいる) 怒りを鎮(しず)める。鬱憤を晴らす。
・腹を抉る
(はらをえぐる) 人の心の中を見通して、鋭く問い尋ねる。
・腹を抱える
(はらをかかえる)[=捧(ささ)ぐ] 可笑しくて堪らず大笑いする。 類:●抱腹 例:「腹を抱えて笑い転げる」
・腹を決める
(はらをきめる) 覚悟を決める。決心する。決意する。 類:●
腹を括る臍を固める肝を据える
・腹を切る
(はらをきる) 1.切腹する。2.可笑しさに堪え切れないで大笑いする。 類:●
腹を抱える 用例:竹取「はらをきりて笑ひ給ふ」 3.自分で費用を出す。身銭を出す。 類:●腹を痛める
・腹を括る
(はらをくくる) 覚悟を決める。 類:●
腹を決める
・腹を下す
(はらをくだす)[=解(と)く] 下痢をする。腹具合いが悪くなる。
・腹を拵える
(はらをこしらえる)[=丈夫にする] 食事を取って、空いた腹を満たす。腹を一杯にする。
・腹を肥やす
(はらをこやす) 私利を貪(むさぼ)る。 類:●私腹を肥やす
・腹を壊す
(はらをこわす) 下痢をする。 類:●
腹を下す
・腹を探る(はらをさぐる) 1.相手の真意を掴もうとして、それとなく心の中を窺(うかが)う。 例:「痛くない腹を探られる」 2.腹を診察する。
・腹を据える
(はらをすえる) 1.怒りや恨み、鬱憤(うっぷん)を晴らす。2.心を落ち着ける。怒りを抑(おさ)える。3.覚悟を決める。 類:●肝を据える 
反:■腹に据え兼ねる
・腹を立てる
(はらをたてる)[=立つ] 怒る。 類:●立腹する
・腹を召す
(はらをめす) 「腹を切る」の尊敬語。他人が切腹すること。
・腹を読む
(はらをよむ) 相手の心の中を推し測る。相手の考えを知る。
・腹を縒る
(はらをよる)[=捩(よじ)る] とても可笑しくて、身体を捩って大笑いをする。
・腹を割る
(はらをわる) 隠し立てせずに本心を打ち明ける。包み隠さず全てを曝(さら)け出す。

−−−−−−−はら(ん)(#haran)−−−−−−−
・波瀾万丈
(はらんばんじょう) 《四熟》 激しい変化に富んでいること。主に、人の人生などについて言う。 例:「波瀾万丈の生涯」

−−−−−−−はり(#hari)−−−−−−−
・張り合いが抜ける
(はりあいがぬける) 張り切っていた気持ちが失われる。がっかりする。やる気をなくす。
・張り合う(はりあう) 1.互いに負けないよう競争し合う。対抗する。 用例:曾我物語−一「まけじ、おとらじと、手をはなちて、はりあひける」 2.好きな異性に対して恋を争う。 用例:俗曲・妹背山縁苧環「お姫様と張りあふとは」 3.引っ叩き合う。撲(なぐ)り合う。〔日葡辞書〕 用例の出典:願絲縁苧環(ねがいのいとえにしのおだまき) 常磐津。宝田寿助。天保4年(1833)。『妹背山婦女庭訓』の四段目を元にしたもの。求女(もとめ…実は藤原淡海)に身分違いの一目ぼれをしたお三輪が、男の裾に苧環の糸を縫いつけて追って行き、行き着いた御殿で非業の最期を遂げる。「妹背山道行」とも。
・張り切る
(はりきる) 1.ぴんと張る。一杯に張る。 例:「凧の糸が張る切る」 2.心が引き締まる。緊張する。 類:●張り詰める 3.ものごとに積極的に当たろうという意欲に満ちる。元気が漲(みなぎ)り溢(あふ)れる。 類:●意気込む 用例:伎・霊験曾我籬−六幕「今日行きたいと張り切ってゐらるる」 用例の出典:
霊験曾我籬(れいげんそがのかみがき) 歌舞伎。鶴屋南北。文化6年(1809)。市村座。嫁切りもの。・・・調査中。
・馬力を掛ける
(ばりきをかける)[=出す] 一段と精を出して仕事に励む。
張子の虎
(はりこのとら)
・張り込みを食う
(はりこみをくう) 相手に鋭く追及されて、遣り込められる。 
★「張り込み」は、ここでは言い負かすことを意味する<国語慣用句辞典(集)>
・張り込む(はりこむ) 1.一杯に入れる。水などを入れて一杯にする。2.中に貼って固定する。貼り付ける。 例:「アルバムに写真を貼り込む」 3.力を入れる。精を出して努力する。意気込んでする。 用例:人情穴探意の裡外−三「何ぼう仕事を張込んでも」 4.奮発して買う。大いに散財する。奮発して大金を投ずる。奢(おご)る。 類:●奮発する 用例:雑俳・
折句大全「金弐両はり込む」 5.理屈を言って屈伏させる。文句を言って捻(ね)じ込む。遣り込める。 用例:洒・浪花色八卦「客にもはりこむ事きびしく」 6.一定の場所に待機して見張り番をする。見張る。 例:「刑事が張り込んでいる」 用例の出典①:折句大全(おりくたいぜん) ・・・調査中。 用例の出典②:浪花色八卦(なにわいろはっけ) 洒落本。外山翁。宝暦7年(1757)。・・・詳細調査中。
・針刺すばかり
(はりさすばかり) ごく僅(わず)かなことの喩え。 類:●
針の先で突いたほど
・罵詈雑言
(ばりぞうごん) 《四熟》 汚い言葉で、悪口を並べ立てて罵ること。また、口を極めた悪口。 類:●悪口雑言 例:「罵詈雑言を浴びせる」
・張り詰める
(はりつめる) 1.一面に残す所なく覆(おお)う。一杯に張る。 用例:日葡辞書「コヲリガハリツメテアル」 例:「床にタイルを張り詰める」 ★自動詞的にも用いる<国語大辞典(小)> 2.気持ちを十分に張る。心を引き締(し)める。 類:●緊張する 用例:浄・最明寺殿百人上?−道行「梓弓、やたけ心ははりつめて」 例:「道場の張り詰めた空気」 3.十分に緩みなく引き渡す。 用例:日葡辞書「ユミヲハリツメテヲク」
・針の穴から天を覗く
(はりのあなからてんをのぞく)[=溝(みぞ)から〜・耳穴(みみず)から〜] 自分の狭い見識を基準にして、広大なことについて勝手な推測を下すことの喩え。 類:●管を以って天を窺う
・針の先で突いた程
(はりのさきでついたほど) ごく僅(わず)かなことの喩え。
・針の筵
(はりのむしろ) 針を植えた筵のこと。非常に恐ろしくて、まったく安心できない場所の喩え。いつも苦しめられている、辛く悲しい場所や環境。また、そういう境遇。 例:「針の筵に座らされた思い」
・針の山
(はりのやま) 1.地獄にあって針を植えてあるという山。2.転じて、苦痛で、そこにいるのに耐えられない場所の喩え。 類:●
針の筵
・針ほどのことを棒ほどに言う
(はりほどのことをぼうほどにいう) 小さな事を大きく言い触らす。大袈裟に言う。 類:●針小棒大 
★「針を棒に言いなす」とも<国語大辞典(小)>
・針を蔵に積む
(はりをくらにつむ) 長年に亘(わた)って、せっせと小金を貯め込むことの喩え。中々一杯にならないところから、少しも貯まらない、いくらあっても足りないなどの意味を含ませる。 用例:浮・日本永代蔵−三「尻も結ばぬ糸のごとく、針を蔵に積む内証」
・針を立つる土地無し
(はりをたてるとちなし) 針を立てるほどの、ごく僅(わず)かな場所もない。余地が全然ない。人などが密集していることの喩え。 類:●立錐の余地もない
・針を含む(はりをふくむ) 針を懐(ふところ)の内に持っているという意味で、相手に悪意を持つころ。また、表面は穏やかなようだが、実は相手の心を傷付ける言動が隠されていること。 類:●刺(とげ)を含む
・針を以て地を刺す(はりをもってちをさす) 狭い見識で、高い見識に対して推測を加え、見当違いの判断を下すこと。また、到底達成できそうもないことを計画することの喩え。 類:●貝殻で海を測る●針の穴から天上覗く●鍵の孔(あな)から天を覗く管を以って天を窺う 出典:「説苑−弁物」

−−−−−−−はる(#haru)−−−−−−−
・春一番
(はるいちばん) 立春(2月5日頃)後に最初に吹く、気温上昇を伴(ともな)った強い南風。日本海を発達した低気圧が通過すると起き、太平洋側の異常高温や日本海側のフェーン現象などを起こす。 類:●春一(はるいち)●春嵐(はるあらし) 用例:皆吉爽雨(みなよしそうう)「雀らも春一番にのりて迅し」 ★安政6年(1859)、旧暦2月13日、長崎県五島沖に出漁した壱岐の郷ノ浦の漁師53人は、春先の強い突風に遭って遭難、全員水死してしまった。これ以来、春の初めの強い南風を「春一(はるいち)」・「春一番」と呼ぶようになった。郷ノ浦町には「春一番の碑」もある。 ★倉嶋厚氏の気象歳時記によれば、春二番を「花起こし」春三番を「花散らし」と呼ぶという。
・春かたまけて
(はるかたまけて) 1.春が近づいて。2.春になるのを待ち受けて。 用例:万葉−八三八「鶯鳴くも波流加多麻気弖(ハルカタマケテ)」
・春さる
(はるさる) 「さる」は移動する、近付くなどを意味する。春になる。春がやってくる。
・春立つ
(はるたつ) 春になる。 ★江戸時代、元禄(1688〜1704)以前は、夕方日没の頃が日付けの変わり目(一日の終わり)だったらしい。即(すなわ)ち、節分祭と立春節は、同じ日付に行なっていたことになる(現在の暦では前夜と当日)。
・春の限り
(はるのかぎり) 春の終わり。 類:●春の果て
・春の心
(はるのこころ) 1.春を人に見立てて、その春が持つ心をいう。また、春の季節の人の心。春の頃の、長閑(のどか)な人の心。2.恋する心。春情。 用例:人情・春色梅美婦禰−初「春の心を押ししづめ、種々胸をいためしが」
・春に会う
(はるにあう) 春の季節に会うという意味で、巧いチャンスに出会って、大いに繁栄すること。
・春の目覚め
(はるのめざめ) 青春期に達して、性の欲望が起こること。
・春の夜の夢
(はるのよのゆめ) 1.春の夜に見る夢。2.短いこと、儚(はかな)いことの喩え。
・春を売る
(はるをうる)[=鬻(ひさ)ぐ] 女が男に身を任せて報酬を得る。売春行為をする。

−−−−−−−はれ(#hare)−−−−−−−
・ばれが来る
(ばれがくる) 「ばれ」は、ごたごたや失敗を表し、事が巧くゆかなくなるという意味。ものごとが順調に運ばないで駄目になること。
・晴れの舞台(はれのぶたい)・晴れ舞台 1.大劇場の桧(ひのき)舞台。2.転じて、華々しい重要な場所。 類:●桧舞台
・腫れ物に触るよう
(はれものにさわるよう) 痛い腫物に触れるように、恐る恐る大切に扱う。特に、機嫌を損なわないように気を使うこと。
・ばれる 1.
秘密・悪事・陰謀などが発覚する。隠していたことが表沙汰になる。 用例:浄・
持統天皇歌軍法−二「ばれて来てはもう隠さぬ」 例:「妻に浮気がばれる」 2.交渉などが破談になる。 用例:洒・蕩子筌枉解「みうけのばれたる女郎を賦すとみへたり」 3.しくじる。失敗する。釣りで、針に掛かった魚が逃げる。また、カルタ賭博(とばく)で手札が定限以上となって負ける。 ★1.3.は、「散(ば)らす」から。 4.淫(みだ)らな話をする。下品な話をする。 類:●下(しも)がかる ★川柳点の末番を「ばれ(破礼)」といい、それらの句がしもがかりの句であるところから<国語大辞典(小)> 用例の出典①:持統天皇歌軍法(じとうてんのううたぐんぽう) 浄瑠璃。近松門左衛門。正徳4年(1714)。立願成就の願いを「春過て夏来にけらし白妙の〜」の歌に託して、敵を討つ近松門左衛門でござーい!> 用例の出典②:蕩子筌枉解(とうじ???) 洒落本。・・・調査中。
・破廉恥
(はれんち) 廉恥の心を破る。恥を恥とも思わないこと。恥ずかしいことを平気ですること。人倫、道徳などに反する行為をすること。 類:●厚顔 
参考:廉恥(れんち) 心が潔白・正直で、恥を知る心が強いこと。

−−−−−−−はを(#hawo)−−−−−−−
・葉を欠いて根を断つ
(はをかいてねをたつ) 枝葉を除こうとして、大切な根本を駄目にしてしまう。 類:●角を矯めて牛を殺す
・歯を噛む
(はをかむ) 1.激怒する。2.歯軋(ぎし)りをする。悔しさや怒りを堪(こら)える。
・羽を枯らす
(はをからす) 鳥の羽が艶(つや)を失って枯れたようになること。高い地位にいた人が、零落(おちぶ)れて貧弱な姿になることの喩え。 類:●尾羽(おは)打ち枯らす
・羽を利かす(はをきかす)[=が利く] 羽振りが良い。勢力がある。 用例:浄・
?狩剣本地−一「恨みいうてもはがきかぬ」 ★一説に「歯が利く」とし、歯が立つの意とする<国語大辞典(小)> 用例の出典:?狩剣本地(もみじがりつるぎのほんち) 浄瑠璃。近松門左衛門。正徳4年(1714)。平惟茂と2人の女性とのかかわりに、宝剣をめぐる悪の行為の錯誤の上に成り立つ悲劇近松門左衛門でござーい!
・歯を食い縛る
(はをくいしばる) 悔しさや怒り、または苦痛などを必死に堪(こら)える。 例:「歯を食い縛って耐える」
・歯を切す
(はをせっす) 歯を食い縛る。 類:●切歯(せっし)
・歯を染める(はをそめる) 女性が結婚すること。人妻になること。 
★昔、女性が結婚すると歯を黒く染めてお歯黒にする風習があったところから<国語慣用句辞典(集)>
・歯を出す(はをだす) 歯を剥(む)き出して怒る。感情を剥き出しにして叱(しか)り付ける。

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