【そら】~【そん】

−−−−−−−そら(#sora)−−−−−−−
・空腕立て
(そらうでだて) 強い振りをすること。偽(いつわ)りの腕自慢。 類:●空威張り●空腕
・空恐ろしい
(そらおそろしい) 現在の状態から将来どうなるだろうと、言いようもなく不安に感じること。何となく恐ろしい。 用例:源氏−手習「知らぬ人に具して、さるみちのありきをしたらんよと空おそろしくおぼゆ」 例:「行く末が空恐ろしい」 
★天罰・神罰・仏罰に対する恐怖や、その人の将来、世の成り行きについての不安などにいう<国語大辞典(小)> 
・空覚え(そらおぼえ) 1.根拠なしに想像を巡らすこと。それとなく感付くこと。2.文句や台本などをすっかり記憶すること。そらで覚えること。 類:●暗記 3.確かでない記憶。 類:●うろ覚え
・空聞かず
(そらきかず) 聞こえない振りをすること。耳に入らない風を装うこと。 類:●空耳潰す 用例:平家−九「我を捨ていづくへゆくぞとの給へ共、空きかずして」
・空上戸(そらじょうご) 酒を飲んでも、少しも酔いが顔色に出ないこと。また、その人。 類:●盗人上戸
・空知らず
(そらしらず) 気が付かない振りをすること。知らない様子をすること。 類:●空惚(とぼ)ける
・空知らぬ雨
(そらしらぬあめ) 空が知らない雨という意味で、涙のこと。
・空知らぬ雪
(そらしらぬゆき) 空が知らない雪という意味で、風に舞う桜などの花弁(はなびら)のこと。
・空吐く
(そらつく) 知らない振りをする。しらばっくれる。
・空飛ぶ鳥も落とす
(そらとぶとりもおとす) 空を飛んでいる鳥さえも落とすほどの力を持っているという意味で、不可能なことがないほど権勢を誇っている喩え。極めて勢いが盛んなこと。 類:●飛ぶ鳥を落とす●立つ鳥の落つるよう
・空に標結う
(そらにしめゆう)[=注連結う] 空中に注連縄を結い渡すという意味で、不可能なこと。思っても甲斐のないことを思い煩(わずら)うこと。
・空に巣掻く
(そらにすがく) 空中に巣を作る。儚(はかな)いことを試(こころ)みる喩え。また、報(むく)いられることのないことの喩え。
・空に三つ廊下
(そらにみつろうか) 「降ろうか」「照ろうか」「曇ろうか」の三つの「ろうか」を廊下に掛けて言った洒落(しゃれ)。天が、まるで「降ろうか、照ろうか、曇ろうか」と言っているように、天候が定まらないこと。
・空の色
(そらのいろ) 1.晴れた大空の色。空色。2.空の様子。天候の具合い。 類:●空合い●空模様
・空の海
(そらのうみ) 海のような大空。空を大海に見立てて言った言葉。
・空の鏡
(そらのかがみ) まるで空に掛かっている鏡のように見える、澄んだ月のこと。特に、秋の名月の形容。
・空の煙
(そらのけぶり) 1.空に立ち昇る煙。2.死者を火葬にする煙。 
★多く、「空の煙に(と)なる」の形で、死ぬことをいう<国語大辞典(小)>
・空の時雨
(そらのしぐれ) 涙のこと。落ちる涙を、降る時雨に喩えた言葉。
・空の雫
(そらのしずく) 涙のこと。落ちる涙を、空から落ちる雫に喩えた言葉。
・空吹く風
(そらふくかぜ) 1.吹き過ぎてゆく風。中空を吹く風。2.転じて、吹き過ぎる風のように、無関心であること。そ知らぬ振りをすること。捉(とら)えどころがないこと。 類:●どこ吹く風
・空耳(そらみみ) 1.声や物音がしないのに聞いたように思うこと。 例:「声がしたようだが、空耳だったか」 2.聞こえても聞こえない振りをすること。 例:「空耳を使う」
・空耳を潰す
(そらみみをつぶす) 聞こえても聞こえない振りをする。
・空耳を走らす
(そらみみをはしらす) 1.聞こえているのに聞こえない振りをする。2.聞いているような振りをする。3.何の音もしないのに、聞こえたように思って、その方に注意する。
・空目を使う(そらめをつかう) 1.見て見ない振りをする。2.上目で見る。上目遣いをする。3.虚(うつ)ろな目付きをする。
・空を仰ぐ
(そらをあおぐ) 1.溜め息を吐(つ)いて天を仰いで嘆(なげ)く。2.感極(きわ)まって空を見上げる。
・空を歩む(そらをあゆむ) 不安で落ち着かない様子。心中に迷いが生じて足もとも覚束(おぼつか)ない様子。 類●地に足が付かない
・空を使う
(そらをつかう)[=吐(つ)く] 1.知らない振りをする。惚(とぼ)ける。また、嘘を言う。 類:●空吐(つ)く●しらばっくれる 2.競馬用語。周囲に馬がいる時は闘争心を出すが、一頭になると集中力を欠いて伸びがなくなること。

−−−−−−−そり(#sori)−−−−−−−
・反り打ち返す(そりうちかえす) 腰の刀の反りの向きを変え、すぐ抜けるように構える。 類:●
反りを打つ●反りを返す 用例:浄・千本桜「是非奥へふん込むと反り打ち返して」  用例の出典:義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) 浄瑠璃。時代物。5段。竹田出雲(二世)・三好松洛・並木宗輔合作。延享4年(1747)大坂竹本座初演。義経伝説中、堀川夜討・大物浦(だいもつのうら)・吉野落に題材を取り、平知盛・維盛・教経らがそれぞれ名を変えて生き延びていたとする平家の後日物語。二段目の切「大物浦合戦」(通称「碇知盛(いかりとももり)」)、三段目の切「鮓屋(すしや)」(通称「いがみの権太」)、四段目の中・切「川連館(かわつらやかた)」(通称「狐忠信(きつねただのぶ)」)が有名。「仮名手本忠臣蔵」「菅原伝授手習鑑」と共に浄瑠璃の三大傑作とされる。
・反りが合う
(そりがあう) 刀の反り具合が鞘(さや)に合うという意味から、気心がぴったりと会うこと。 類:●馬が合う●意気投合する●意気相投ず
・反りが合わぬ(そりがあわぬ) 刀の反りが鞘(さや)に合わないということで、気心が合わない。 例:「あの2人は全く反りが合わない」
・反り身になる
(そりみになる) 身体を少し後ろへ反り返らせる。得意になったり、威張ったりするときの喩え。
・反りを合わせる(そりをあわせる) 刀の反り具合いを鞘に合わせるという意味で、相手の気質や調子に、自分を合わせること。
・反りを打つ
(そりをうつ) 1.太刀の刃を下にして、鞘尻(さやじり)を高く反り返し、すぐ抜けるように身構える。 類:●反り打ち返す 2.反り返らせる。反ったように曲げる。3.逆捩(さかねじ)を食わせる。 類:●反抗する

−−−−−−−それ(#sore)−−−−−−−
・それかあらぬか 1.
それかそうでないか。 用例:源氏−浮舟「物よりのぞきなどして、それかあらぬかと見定めん」 2.そのせいかどうか。 用例:洒・
遊子方言「まだひく四つの拍子木も、それかあらぬか駒下駄の、音に色めくありさまは」 用例の出典:遊子方言(ゆうしほうげん) 江戸中期の洒落本。1冊。田舎老人多田爺(ただのじじい)作。明和7年(1770)刊。書名は漢の揚雄著「揚子方言」のもじり。江戸吉原で、通人ぶった男が振られ、野暮な初心者が厚遇される構想を、洗練された会話文を生かして展開。洒落本の定型を作り上げた傑作。
・それからそれと[=それへと]
 話したり考えたりすることなどが、次々に続く状態。
・それそれまで
 限られたそれだけのこと。それまでのことだ。止むを得ない。 用例:浮・
好色二代男−五「それからそれ迄切の身とはなりけるとや」 用例の出典:好色二代男(こうしょくにだいおとこ)諸艶大鑑(しょえんおおかがみ) 浮世草子。8巻。井原西鶴。貞享元年(1684)刊。副題「好色二代男」。首章と最終章では「好色一代男」の続編の型をとるが、他の38章は独立。
・それ来た
(それきた)[=そら来た] 1.待ち構えていたものが来た時に言う。2.物の受け渡しの際などに、動作に応じる掛け声として言う。
・それ御覧
(それごらん)[=御ろうじませ・御ろうじろ・御覧なさい] 「それ見ろ」を柔かに言ったもの。結果は前から分かっていたのだと、相手に同意を強要する表現。
・それしき 1.(「しき」は遣り方・方法) その遣り方。その方法。その様式。2.(「しき」は接尾語) 事柄の性質、内容、程度が問題とするに足りないほどであること。その程度。高(たか)がそれくらい。
・それとない・それとなく
 はっきりそれという訳ではない。遠回しに。 例:「それとなく断っておいて呉れ」
・それとなしに・それとはなしに
 1.何がどうということもなく。2.具体的にそれと指すことをしないで。 類:●
それとな●暗に
・それにしては
 そうではあると認めてもなお。そうである割りには。 例:「台風が近付いているというが、それにしては静かだ」  
★前の事柄を踏まえて、なお反論したり批判したりするときに用いる<国語大辞典(小)>
・それにしても 1.
そうだとしても。そのことはそれであるにしても。 例:「会合があると言っていたが、それにしても帰りが遅い」 
★前の事柄を一応認めて、更に付け加えるときに用いる<国語大辞典(小)> 2.しかし。 例:「それにしても寒いね」 ★話題を転換するときに用いる語。<大辞林(三)>
・それにつけて
 そのことに関連して。それによって。 
★前の事柄との関係から、後の事柄が生ずることを示す<国語大辞典(小)> 
・それにとりて[=とって]
 1.そのため。その場合に。それに関して。 用例:徒然草−一八八「人に先だちて、小を捨て大につくが如し。それにとりて、三つの石をすてて、十の石につくことは易し」 2.それはそれとして。ところで。 
★一続きの話の中で、話題の少し逸(そ)れる場合、また、逸れていた話を元に返す場合など、文頭に置く語<国語大辞典(小)>
・それに引き換えて
(それにひきかえて) …とは違って。それと比べ、これは全く異なって。 
★前の事柄に比べて、後の事柄が対照的に相違していることを示す。<国語大辞典(小)>
・それはさておき
 ところで。 類:●閑話休題 
★話題を他に転じるとき、その最初に置いて用いる<国語大辞典(小)>
・それはそれとして[=そう・そうと]
 それはそれで置いておいて。それはそれで良いとして。そのことは兎も角。 
★それまでの話をひとまず置いて、他の話題に転じるときに用いる<国語大辞典(小)>
・それはそれは
 1.大変…。とても…。非常に…。 例:「それはそれは美しい景色でした」 
★副詞的に用いて、以下の意を強める<国語大辞典(小)> 2.おやまあ。なんとまあ。例:「それはそれは、お気の毒に」 ★恐縮の意や驚きの意などを表す<国語大辞典(小)>
・それ見たか
(それみたか)[=見たことか・見たこそ] 忠告を無視して失敗した相手に、やや軽蔑の意を含めていう言葉。 類:●様を見ろ
・それ見ろ
(それみろ) 「それ見たか」をやや俗語的に、また、罵(ののし)りの意味合いを強めた言葉。 ★「それ見てみなさい」などとも言う。

−−−−−−−そろ(#soro)−−−−−−−
・揃いも揃って
(そろいもそろって)[=に〜] 同じような類(たぐい)の者が揃うことを、強調した言葉。主に悪い意味合いで用いる。 例:「お前らは揃いも揃って腰抜けだ」
・算盤が合う
(そろばんがあう) 計算が合う。また、採算が取れる。 類:●算盤に乗る●辻褄が合う 
反:■算盤が持てぬ
・算盤が持てぬ
(そろばんがもてぬ) 損益計算をして、利益が出ない。採算が取れない。商売にならない。 
反:■算盤が合う■算盤に乗る
・算盤勘定(そろばんかんじょう) 算盤を弾(はじ)いて収支の計算をするということで、金銭上の損得や利害の計算をすること。
・算盤尽く(そろばんずく) 何ごとも損得を考えて行動すること。打算的なこと。 類:●儲けずく●勘定ずく●計算ずく 
★「ずく」は接尾語<国語大辞典(小)>
・算盤高い(そろばんだかい) 利害損得の計算に敏感で細かい。打算的である。 類:●勘定高い計算高い
・算盤の珠外れ
(そろばんのたまはずれ) 1.計算した以外の金。帳簿に記載しない、表向きでない、余分な金。 2.一説に、算盤の珠が間に合わない、桁外れの大金のこと。
・算盤を弾く
(そろばんをはじく) 1.算盤を用いて計算する。2.損得を計算する。損になるようなことはしない。
・算盤を枕にする
(そろばんをまくらにする) 商人が、寝ている間も算盤を身辺から離さないで商売に打ち込む喩え。

−−−−−−−そわ(#sowa)−−−−−−−
・添わぬ内が花(そわぬうちがはな) 結婚してみればお互い欠点が目について交際中の頃のように楽しいばかりではないということ。 類:●祭りの日より前の日

−−−−−−−そん(#son)−−−−−−−
・損がいく
(そんがいく) 損をする。損失を受ける。
・蹲踞(そんきょ) 1.蹲(うずくま)ること。2.昔、貴人が通行する時、両膝を折って蹲り、頭を垂れて行なった礼。また、後世では、貴人の面前を過ぎる時、膝と手を座に付けて会釈すること。3.相撲や剣道などの試合で、相手と向き合って礼をする時にとる基本姿勢。爪先立ちで踵(かかと)の上に腰を下ろし、膝を開いて上体を正して重心を安定させる。 
★片膝を床に着けることもある<国語大辞典(小)>
・損して得取れ
(そんしてとくとれ) 一時は損をするものの、それが結局将来の得になるという意味で、当面損をすることによって将来その損を補(おぎな)って余りある大きな利益に繋(つな)がる。 類:●損をして利を見よ●損すれば得をする●損せぬ人に儲けなし
・損して恥掻く(そんしてはじかく) 損をした上に更に恥を掻くということから、散々な目に遭うことの喩え。 類:●損の上に恥●損の上塗り●踏んだり蹴ったり泣き面に蜂弱り目に祟り目
・存じながら
(ぞんじながら) 心に思っていながら、という意味で、知っていながらできなかっらことを弁解するときに使う。
・存じ寄り(ぞんじより) 1.考えていること。意見。所存。見込み。 例:「存じ寄りを申し上げる」 2.「知り合い、知人、知己」の謙譲語。 例:「存じ寄りの家」
・存じも寄らず
(ぞんじもよらず) 考えてもいないこと。思いも寄らないとこと。 類:●思い掛けず
・損者三友(そんしゃさんゆう) 付き合って損になる三種の人。安易な道を取る人、他人に媚びる人、口先ばかりの人をいう。便辟(べんぺき)・善柔(ぜんじゅう)・便佞(べんねい)。 
反:■益者三友 出典:「論語−季氏」「益者三友、損者三友。友直、友諒、友多聞、 益矣」
・そんじょそこら 
本来「そこら」を漠然とさし示した言い方であるが、現代ではむしろ強調した言い方として用いられる。 例:「そんじょそこらにはない品物」 
★「そんじょ」は、「その定(じよう)」の転である「そんじょう」からの変化。
・存すれども亡を忘れず(そんすれどもぼうをわすれず) 今は確かに存在しているが、いつ亡びるか分からないということを忘れてはならない。国にせよ物にせよ、栄えたものはいつか亡びるものだということ。 出典:「易経−繋辞・下」「君子安而不忘危、存而不忘亡、治而不忘乱」
・損せぬ人に儲けなし(そんせぬひとにもうけなし) 損を覚悟しなければ、大儲けもできないということ。 類:●損して得取れ●損は儲けの始め●損をして利を見よ●損をせねば儲けもない●The person that loses is a merchant as well as the person that gains.
・樽俎折衝
(そんそせっしょう) 1.酒席の談笑の中で平和的に交渉を進め、相手方の気勢を躱(か)わして有利に交渉すること。外交上の談判(だんぱん)。 類:●折衝 出典「新序−雑事・一」「夫不出於樽俎之間、而知千里之外、其晏子之謂也。可謂折衝矣」 ★「樽俎」は、酒が入った樽と生贄(いけにえ)の肉が盛られた台のこと。「折衝」は、衝突してくる敵軍を折(くじ)き止めるくという意味。 孔子の言葉に「樽俎の間を出でずして、千里の外を知るとはに、それ晏子の謂いなり。折衝すと謂うべし」というものがある。 2.転じて、相手方との交渉の駆け引き。 類:●駆け引き 参考:
晏子春秋(あんししゅんじゅう) 中国の春秋時代の斉の宰相、晏嬰(あんえい)の言行録。紀元前500年頃かと考えられるが、完成は戦国時代か。8編、内篇(6六篇)と外篇(2篇)。斉の景公や孔子などにも影響を与えたといわれる。「晏子」。
・存亡の機
(そんぼうのき)[=秋(とき) 生き残るか滅亡するかの重大な時機、場合。 出典:「韓非子−十過」「合諸侯不可無礼、此存亡之機也」 用例:諸葛亮「前出師表」「益州疲敝、此誠危急存亡之秋」
・損友
(そんゆう) 交際していると自分を損なうことになる友人。 類:●損者 
反:■益友 出典:「論語−季氏」「孔子曰、益者三友、者三
・損を掛ける
(そんをかける) 損を被(こうむ)らせる。相手に損失を与える。