【ここ】~【ここ】

−−−−−−−ここ(#koko)−−−−−−−
・虎口の讒言
(ここうのざんげん) 窮地に陥(おちい)れられるような告げ口や、謗(そし)りごと。 
参考:虎口(ここう) 虎の口のことで、非常に危険な場所や状態の喩え。
・股肱の臣
(ここうのしん) 一番頼みとする部下。補佐として頼りになる臣下。 類:●股掌(こしょう)の臣●腹心●右腕懐刀 出典:「春秋左氏伝」 
参考:股肱(ここう) 腿(もも)と肘(ひじ)のことで、なくてはならないもののこと。転じて、一番頼りになる部下のこと。 ★語源は、「書経−益稷」の「舜曰、作朕股肱耳目」による。
・虎口を逃れて竜穴に入る(ここうをのがれてりゅうけつにいる) 虎の前から逃げたのは良いが、今度は竜の穴に入り込む。災難が次々に来ること。 類:●一難去ってまた一難前門の虎後門の狼
・五合無菜
(ごごうぶさい) 《四熟》 一日五合の扶持(ふち)米だけで、野菜も買えない身分。薄給の身分。
・糊口を凌ぐ
(ここうをしのぐ) やっとのことで暮らしを立てていく。貧しく生活していく。 類:●口を糊す露命を繋ぐ一箪の食一瓢の飲手鍋を提げる
・ここで逢ったが百年目
(ここであったがひゃくねんめ) 巡り会うことが最後となるかもしれない機会。一生のうち最初で最後の機会。捜していた相手にやっと巡り会ったこの機会を逃がしたくない時に言う言葉。
・小言幸兵衛
(こごとこうべえ) 1.落語の一つ。小言を言うのを生き甲斐にしている家主が、家を借りに来た人々に様々な理由を付けて断わる話。「搗屋幸兵衛」「道行幸兵衛」「借家借り」などとも。2.転じて、口喧しい人を指して言う。
・呱呱の声を上げる
(ここのこえをあげる) 「呱」は、赤ん坊の泣き声の形容。 1.赤ん坊が産声を上げる。誕生する。 類:●生まれる 2.比喩的に、新しくものごとが始まる。発足(ほっそく)する。 例:「創刊誌が続々と呱呱の声を上げる」
・ここばかりに日は照らぬ
(ここばかりにひはてらぬ) 太陽はどこにでも照っているということで、ここだけが働いたり生活したりする場所ではない。この場所だけに良いことがある訳ではない。人間、どこへいっても生活してゆけるものである。 類:●お天道様と米の飯はどこへ行っても付いて回る ★他へ移る時の捨て台詞(ぜりふ)に使うこともある。
・ここまでおいで、甘酒進じょ
(ここまでおいで、あまざけしんじょ)[=ござれ〜]・[=飲まそ] 歩行を始めた幼児に、母親などが少し離れて歩かせようとして呼ぶ言葉。また、来られるものなら来て見ろという気持ちで、相手をからかっても使う。 類:●ここまでおいで 
★「進じょ」は「進ぜう」の変化<国語大辞典(小)>

−−−−−−−こころ(あ)(#kokoro1)−−−−−−−
・心合わざれば肝胆も楚越の如し
(こころあわさればかんたんもそえつのごとし) 気が合わないと、近親の者も遠国の人のように疎遠なものである。 出典:「荘子−徳充符」「仲尼曰、自其異者視之、肝胆楚越也」
・心内にあれば色外にあらわる
(こころうちにあればいろそとにあらわる) 心中に思うことは、自然に顔色や動作に現われるものだ。 類:●思い内にあれば色外に現わる
・心内に動けば詞外にあらわる
(こころうちにうごけばことばほとにあらわる) 心の中に思っていることは、知らじ知らずのうち言葉に現われ出るものだ。 出典:「詩経−大序」「情動於中形於言
・心置きない
(こころおきない) 気を使うことがなく気楽である。 類:●心安い 用例:滑・膝栗毛−初「おこころおきなく、めしあがって下さりませ」 
★連用形「こころおきなく」を独立させて、副詞的に用いることが多い<国語大辞典(小)>

−−−−−−−こころ(か)(#kokoro2)−−−−−−−
・心掛ける
(こころがける) 1.いつも心に留めておき、忘れないでいる。いつもそれを目指して努力する。 用例:
右京大夫集「うらやましみと見る人のいかばかりなべてあふひをこころからくらむ」 例:「倹約を心掛ける」 2.心の準備をする。嗜(たしな)む。心得る。 用例:虎明本狂言・武悪「あいつはすすどひやつで、心がけた者じゃ程に、たばかってせい」 3.心をそちらに集中する。目掛ける。狙う。目的とする。 用例の出典:建礼門院右京大夫集(けんれいもんいんうきょうだいぶしゅう) 家集・歌日記。右京大夫(藤原伊行・これゆきの娘)。貞永元年(1232)頃か? 和歌と詞書とから成っている日記的家集。建礼門院に仕え、その宮廷生活の中で親交のあった平家一門の人々に対する追慕の情で貫かれている。
・心が広い
(こころがひろい) 性格が、寛容である。小さいことに拘(こだわ)らない。鷹揚(おうよう)である。
・心苦しい
(こころぐるしい) 1.心に痛みを感じる。辛(つら)く切ない。また、遣り切れない気持ちである。 類:●胸が痛む 用例:万葉−1806「荒山中に送り置きて帰らふ見れば情苦(こころぐるし)も」 2.気の毒だ。労(いたわ)しい。 用例:伊勢−96「岩木にしあらねば、心ぐるしとや思ひけん」 3.相手に済まない気持ちがする。気が咎(とが)める。 例:「そうまでしていただき、心苦しく存じます」
・心鴻鵠にあり
(こころこうこくにあり) 物を教わっている最中に、鴻鵠を射ることばかり考えているということ。心が上(うわ)の空で、ものごとに身が入らない様子。 出典:「孟子−告子・上」「一以為有鴻鵠将至、思援弓[糸(檄-木)]而射之」
・心ここにあらず
(こころここにあらず) →「心焉に在らざれば視れども見えず
・心焉に在らざれば視れども見えず
(こころここにあらざればみれどもみえず) 心が他のことに奪われていれば、たとえ視線が物に向かっていても、その物が目にはいらない。正しい事に心を集中しなければ、身を修めることはできない。 出典:「礼記大学」「心不在焉、視而不見、聴而不聞、食而不知其味、此謂修身在正其心」

−−−−−−−こころ(さ)(#kokoro3)−−−−−−−
・志は髪の筋
(こころざしはかみのすじ) 心を込めて贈れば、仮令(たとえ)髪の毛のような些少なものでも、受け取った人は気持ちを酌(く)んでくれるということ。 類:●塵を結んでも志気は心
・心騒ぐ
(こころさわぐ) 1.心配で気持ちが落ち着かない。あまりのことで心が乱れる。 用例:
落窪−一「立つとて、かい探るに、なし。心さわぎて、起ちゐふるひ」 2.嫌な予感がして胸騒ぎがする。 類:●虫の知らせ胸騒ぎ 用例:読・春雨物語−宮木が塚「何心なくて在りしが、心さわぎぬとて、夜の亥中に帰り来て」 用例の出典①:落窪物語(おちくぼものがたり) 平安時代の物語。4巻。作者、成立年ともに未詳だが、「源氏物語」よりもやや早く、男性の手になるものと思われる。継母に虐待され、落窪の間に押し込められていた中納言忠頼の娘が、左近少将道頼の愛を得、侍女阿漕の助力で道頼に救い出され、継母はその報いを受けるが、後には一家共々幸福になる。 用例の出典②:春雨物語(はるさめものがたり) 読本。上田秋成。文化5年(1808)ごろ成立。「血かたびら」「天津をとめ」「海賊」など古典知識を元にした短編など全10編から成る。最晩年の秋成の史観・芸術観・人間観などを個性的に提示する。
・心する(こころする) 1.気を付ける。気を使う。注意する。 類:●用心する 用例:宇津保−国譲中「物など心してたてまつり給ふ」 2.心構えをする。その気持ちになる。そのつもりになる。 用例:源氏−総角「ひとり臥し給へるを、心しけるにやとうれしくて」

−−−−−−−こころ(た)(#kokoro4)−−−−−−−
・心強い(こころづよい) 1.頼れる人や物があって安心だ。頼もしい。 類:●気強い 反:■心細い 用例:落窪−一「わが君、心づよくおぼしなぐさめよ」 2.意志が堅い。我慢強い。気持ちが張りつめている。気丈である。 類:●気強い 用例:源氏−桐壺「心づよく念じかへさせ給ふ」 3.人情に乏しい。情に絆(ほだ)されない。頑(かたく)なである。つれない。 用例:竹取「心つよく承らずなりにし事、なめげなる物に思しめし止められぬるなん」

−−−−−−−こころ(な)(#kokoro5)−−−−−−−
・心為し
(こころなし)・心成し 自分の心だけでそう思うこと。気のせいか。 類:●思い為し 例:「心為しか、妻の顔がやつれて見える」
・心に鬼を作る
(こころにおにをつくる) 1.恐れて無用な想像をする。 類:●疑心暗鬼 2.後ろ暗く思って悩む。心に疚(やま)しさを覚える。 類:●心の鬼が身を責める
・心に及ぶ
(こころにおよぶ) 予想や想像がつく範囲内にある。思い及ぶ。 用例:源氏−帚木「心にをよばず、いとゆかしき事もなしや」 
★下に打消の語を伴うことが多い<国語大辞典(小)>
・心に垣をせよ
(こころにかきをせよ) 油断をしないで用心せよ。常に用心を怠るなという戒(いまし)め。
・心に笠着て暮らせ
(こころにかさきてくらせ) 笠を被(かぶ)ると上が見えないところから、上を見ないで、足(た)ることを知れ。高望みをせず、分(ぶん)相応に暮らしなさいということ。 類:●上を見ればキリがない
・心憎い
(こころにくい) 1.はっきりしないものに優れた資質を感じ、心惹かれ、近付き、知りたく思う気持ちを持つ。①人柄や態度、美的な感覚などに、上品な深みを感じ、心惹かれる。 類:●奥床しい 用例:源氏−東屋「人がらはいとやむごとなく、おぼえ心にくくおはする君なりけり」 ②情緒が感じられる。風情(ふぜい)が深く、心惹かれるようである。 用例:
栄花−日蔭のかづら「よろづの事、奥深くこころにくき御あたりの有様なれば」 ③間接的な気配を通して、それに心惹かれる。不審である 類:●怪しい 用例:夜の寝覚−一「御簾のうち心にくくうちそよめきて」 ④奥底が知れず、侮りがたい。 2.あまりに優れていて憎らしくさえ感じる。欠点がなく、むしろ妬(ねた)ましさを感じるほどに優れている。憎らしいほど完璧である。 礼:「心にくい応対ぶり」 用例の出典①:栄花物語(えいがものがたり) 平安時代の歴史物語。40巻。作者は上編は赤染衛門、下編は出羽の弁とするなど諸説がある。上編30巻は万寿5年(1028)以降長元7年(1034)以前、下編10巻は寛治6年(1092)以降嘉承2年(1107)以前の成立とされる。宇多天皇の代から堀河天皇の寛治6年まで、15代約200年間の歴史を編年体で記述。藤原道長、頼通の栄華を中心に、宮廷、貴族に関するできごとをかな書きで物語風に記す。「世継」・「世継物語」。 用例の出典②:夜の寝覚(よるのねざめ) 平安中期の物語。現存本は5巻または3巻。菅原孝標(たかすえ)の女の作と伝える。平安中期に成立。女主人公寝覚の女君(源氏の太政大臣の次女)と主人公中納言の義兄妹間の悲恋を中心に、女君の数奇な運命を描く。「源氏物語」の宇治十帖の影響が強い。「夜半の寝覚」・「寝覚」とも。
・心に焦がす
(こころにこがす) 密かに思い焦がれる。人知れず思い乱れる。 類:●心に忍ぶ
・心に錠を下ろす
(こころにじょうをおろす) 1.用心する。気を許さない。2.心を変えまいと堅く決心する。心に決める。
・心に剣を含む
(こころにつるぎをふくむ) 相手に危害を加えようという気持ちを持つ。 類:●害心を抱く
・心に蓋なし
(こころにふたなし) 心に包み隠すことがない。隠しだての心がない。
・心にもない
(こころにもない)[=に〜] 1.身に覚えがない。思いも寄らない。不本意だ。 用例:浮・
西鶴織留−三「心にもなき事にうたがはれぬ」 2.本心ではない。思ってもいない。 類:●心にもあらず 反:■心にあり 例:「心にもないお世辞をいう」 用例の出典:西鶴織留(さいかくおりどめ) 浮世草子。6巻。井原西鶴の第二遺稿集。北条団水編。元禄7年(1694)刊。成稿は、「本朝町人鑑」の内容を持つ巻1・2が元禄元年(1688)ごろ、巻3〜6の「世の人心」が元禄2、3年ごろか。巻1・2は「日本永代蔵」を直接受け継ぎ、当時の経済状況の中で生まれる町人層の悲喜劇を小説的に描くが、巻3〜6はより広い視野から町人の様々な生きざまを随想的に把握している。「日本永代蔵」から「世間胸算用」への過程を示す注目すべき作品。

−−−−−−−こころ(の)(#kokorono)−−−−−−−
・心の仇は心
(こころのあだはこころ) 自分の心を傷付けるものは自分自身の妄念である。悟りを妨げるものはおのれの煩悩(ぼんのう)である。
・心の泉
(こころのいずみ) 泉のように心に湧(わ)き出る考えや感興。 出典:千載・序「心の泉古へより深く」 出典:
千載和歌集(せんざいわかしゅう) 平安末期の第7番目の勅撰和歌集。20巻。藤原俊成撰。後白河院の院宣による。俊成の私撰集を基盤に撰述し、文治4年(1188)成立。四季、離別、羇旅、哀傷、賀、恋、雑、釈教、神祇の部立に分かれ、歌数は流布本で約1286首。代表歌人は、源俊頼、藤原俊成、基俊、崇徳院、和泉式部、西行など。抒情的な古今風と耽美的な新古今風とに通じる両面が見られる一方、宗教的傾向もある。「千載集」。
・心の鬼
(こころのおに) 1.心を責め苛(さいな)まれること。ふと心を過(よ)ぎる不安や恐れ。 ①心の中で疑い恐れること。 類:●疑心暗鬼 用例:
一条摂政集「わがためにうときけしきのつくからにまづは心の鬼もみえけり」 ②心にかねて恥じ恐れていたことに直面してはっと思うこと。気が咎(とが)めること。 類:●良心の呵責 用例:枕草子−135「かたはらいたく、心のおに出で来て、いひにくくなり侍りなん」 2.心の奥に隠れている、善くない心。邪(よこしま)な心。 類:●邪心 用例:浜松中納言−五「われはかく思ふとも、さすがなる心のおにそひ」 3.恋慕愛着の妄念。煩悩(ぼんのう)に捕われる心。 用例:浮・好色一代男−五「なを思ひは胸にせまり、こころの鬼(オニ)骨を砕き」 用例の出典①:一条摂政集(いちじょうせっしょうしゅう) 平安後期の藤原伊尹(これただ・924〜972)の家集。西行作とも伝えられる。歌物語。 用例の出典②:枕草子(まくらのそうし) 随筆。清少納言。正暦4年(994)〜長保2年(1000)ころの成立。異本が多く、雑纂本系の3巻本・伝能因本、類纂本系の前田家本・堺本がある。一条天皇皇后定子に仕えた宮中生活の体験を歌枕的類聚、物はづけ的類聚、自然鑑賞、美的心象、随想、回想などの形でしるしたもの。澄んだ鋭敏な目で周囲に美を発見し、人生の断章を印象深く把握する。「をかし」の美を基軸に据え、描写は正確・簡潔で、「源氏物語」と並んで平安文学の双璧であり、随筆文学の代表と称される。「清少納言枕草子」、「清少納言記」とも。 用例の出典③:好色一代男(こうしょくいちだいおとこ) 江戸時代の浮世草子。8巻8冊。井原西鶴。天和2年(1682)刊。主人公世之介が、7歳から60歳までの54年間の様々な好色体験を経て野暮から粋に成長してゆく愛欲の生涯を描く。
・心の鬼が身を責める
(こころのおにがみをせめる)[=己を責める] 悪事を働いた者が、己の良心の呵責(かしゃく)に苛(さいな)まれること。 類:●心に鬼を作る 用例:謡曲・歌占「身より出だせる咎なれば、心の鬼の身を責めて、かやうに苦をば受くるなり」 用例の出典:歌占(うたうら) 謡曲。四番目物。各流。観世十郎元雅(もとまさ)。二見の神主(かんぬし)渡会家次の一子幸菊丸は、行方(ゆくえ)の知れない父を尋ねて流浪し、加賀国白山の麓(ふもと)で歌占いをしている父と会う。
・心の琴線に触れる
(こころのきんせんにふれる) 人の心の奥を揺り動かし、深い感動や共鳴を引き起こすことを、琴の糸に触れて音を発するのにたとえていう。 類:●心を打つ●琴線に触れる
・心の雲
(こころのくも) 1.心が迷って、悟れないでいる状態を、心に雲が掛かっているのに喩えた言葉。 類:●心の迷い 用例:
続後撰−六〇九「秋の夜は心の雲も晴れにけり」 2.心が塞(ふさ)いで晴れ晴れとしない状態を雲に喩えた言葉。 用例:夫木−一九「身をもなほうしとはいはじ今はただこころの雲を風にまかせて」 用例の出典①:続後撰和歌集(しょくごせんわかしゅう・ぞくごせんわかしゅう) 10番目の勅撰集。20巻。歌数は約1370首。宝治2年(1248)後嵯峨院の院宣により藤原為家が撰し、建長3年(1251)成立。代表歌人は定家・実氏・良経・俊成などで、「新勅撰集」にもれた後鳥羽院・土御門院・順徳院の歌を多く採っている。「千載集」「新勅撰集」と共に二条家の三代集とされる。「続後撰集」。 用例の出典②:夫木和歌抄(ふぼくわかしょう) 鎌倉後期の私撰和歌集。36巻。藤原長清撰。延慶3年(1310)頃成立か。「万葉集」以降の家集・私撰集・歌合などから従来の撰にもれた17,350首余りの和歌を収録し、四季・雑の部立によって類題したもので、歌謡や俗語方言を使った歌、散逸歌集の歌なども収録している。和歌研究上の貴重な資料。「夫木集」。
・心残り(こころのこり) 後に心が残って心配したり残念に思うこと。思い切れないこと。 類:●未練●気掛かり 例:「用事のため結果を見ていけないのが心残りだ」
・心の師となるとも心を師とせざれ
(こころのしとなるともこころをしとせざれ) 自分の心を仏の教えに則して律すべきであり、心の動き(情意)のままに動かされてはならない。 出典:「北本涅槃経−二八」「願作心師、不師於心
・心の注連
(こころのしめ)[=標(しめ) 1.心で、入らせまいと思うこと。立ち入り禁止だという心積もり。 用例:
和泉式部集−上「心のしめはいふかひもなし」 2.身を慎んで心から神に祈ること。「かける」という言葉を伴うことが多い。 用例:長秋詠藻−下「しるやいかに君をみ嶽の初斎(はついもひ)心のしめも今日かけつとは」 ★「注連」は占有のしるしの縄<国語大辞典(小)> 用例の出典①:和泉式部集(いずみしきぶしゅう) 和泉式部の家集。万寿4年(1027)頃。正・続2巻。異本に、宸翰本・松井本・雑種本などがある。1589首。平安文化の爛熟を、またその崩壊を身をもって詠じた。紫式部から「和泉はけしからぬ方こそあれ」と指弾されるほど奔放(ほんぽう)な生活を送ったとされる。 用例の出典②:長秋詠藻(ちょうしゅうえいそう) 平安末期の私家集。3巻。藤原俊成作。治承2年(1178)、守覚法親王の求めで自撰した。歌数は約480首。書名は俊成が皇后宮大夫であったことによる。
・心の直にない者
(こころのすぐにないもの) 心が正しくない者。盗みや騙(かた)りを働く悪者。 
★多く能狂言で用いられる表現<国語大辞典(小)>
・心の関
(こころのせき) 1.思うことが通されず滞ることを関所に喩えた言葉。恋情が通じないときなどに使う。 用例:
順徳院御集「人も守る心のせきをたれすゑて又あふ坂に道まよふらん」 2.心の中で相手の行動を堰(せ)き止めようと思うことを、関所に喩えた言葉。 用例:月詣−四「惜しめどもとまらで過ぎぬ時鳥こころの関はかひなかりけり」 3.相手に心を許さないことを、関所を設けて守るのに喩えた言葉。 類:●警戒心 用例の出典①:順徳天皇御集(じゅんとくてんのうぎょしゅう) 順徳天皇の歌集。・・・詳細調査中。 人物:順徳天皇(じゅんとくてんのう) 第84代の天皇。1197〜1242。後鳥羽天皇の第三皇子。母は修明門院藤原重子。名は守成(もりひら)。承元4年(1210)即位。在位11年。父上皇の討幕計画(承久の乱)に参加したが敗れ、佐渡に配流。在島22年ののち、同地で没した。歌集「順徳天皇御集」、歌学書「八雲御抄」、有職書「禁秘抄」、日記「順徳院御記」がある。 用例の出典②:月詣和歌集(つきもうでわかしゅう) 寿永元年(1182)。賀茂重保。寂蓮・二条院讃岐ら当代歌人36人に対し賀茂社に奉献する百首歌の提出を求め、これらを集めて作ったもの。
・心の丈(こころのたけ) 心の深さ。心のありったけ。思うことのすべて。 例:「恋文に心の丈を書き綴る」
・心の露
(こころのつゆ) 悲しみのあまり内心で流す涙を、心の内の露に喩えていう言葉。
・心の欲するところに従えども矩を踰えず
(こころのほっするところにしたがえどものりをこえず) 自分の心に思う事をそのまま行なっても、道徳の規範から外れることはないという境地。孔子が70歳で到達した境地。 類:●従心 出典:「論語−為政」「七十而従心所欲不踰矩
・心の闇
(こころのやみ) 1.煩悩(ぼんのう)に迷う心のことを、闇に喩えていう言葉。思い惑って理非の分別を失うこと。 類:●迷妄の心 用例:古今−六四六「かきくらす心のやみにまどひにきゆめうつつとは世人(よひと)さだめよ」 2.特に、親が子に対する愛から理性を失って迷う心をいう。 類:●子ゆえの闇 用例:源氏−桐壺「くれまどふ心のやみも堪へがたき片端をだに、はるく許に聞えまほしう侍るを」 出典:「後撰集−1103」「人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな」

−−−−−−−こころ(は)(#kokoro6)−−−−−−−
・心は二つ身は一つ
(こころはふたつみはひとつ) 気持ちはあれもこれもと双方に引かれているが、我が身は一つなので思うに任せないということ。
・心は持ちよう
(こころのもちよう) 心の持ち方次第で同じ事が楽しくも苦しくもなるものだ。 類:●気は持ちよう
・心広く体胖なり(こころひろくたいゆたかなり) 心に疚(やま)しいことがなければ、それが形にも表れて、心身共に伸びやかである。  出典:「礼記大学
・心細い(こころぼそい) 1.頼りなく不安である。心配である。 
反:■心強い 用例:竹取「見れば、世間心ぼそく哀れに侍る」 2.物寂しい。心寂しい。 用例:伊勢−九「わが入らむとする道は、いと暗う細きに、つたかへでは茂り、物心ぼそく」

−−−−−−−こころ(ま)(kokoro7)−−−−−−−
・心も心ならず
(こころもこころならず) 1.落ち着きを失って、そわそわする。 類:●気が気でない 2.上気して我を忘れる。うっとりする。
・心も詞も及ばれず
(こころもことばもおよばれず) 思案の範疇を越えており、形容の言葉もない。想像もつかないし、言葉で言い尽くすこともできない。
・心持ちより搗いた餅
(こころもちよりついたもち) 情けを掛けてくれる心はありがたいが、今の逼迫(ひっぱく)した状況には、それよりも腹の足しになるものの方が欲しい。厚意よりも実利の方がありがたい。 類:●情けのさけより酒屋の酒●思し召しより米の飯●挨拶より円札●(俗)同情するなら金を呉れ ★「持ち」と「餅」を掛けた洒落(しゃれ)。
・心許ない
(こころもとない) 1.思うことを叶えることができないで心が落ち着かない様子。気持ちが焦って落ち着かない。待ち遠しい。じれったい。 類:●もどかしい 用例:源氏−末摘花「八月廿余日、宵過ぐるまで待たるる月の心もとなきに」 2.確信が持てないで不安である。気掛かりである。頼りにならない。 用例:栄花−日蔭のかづら「御露顕(ところあらはし)など、こころもとなからずせさせ給へり」 例:「懐具合が心許ない」 3.はっきりそれと決め兼ねるような状態である。はっきりしない。ぼんやりしている。 類:●覚束(おぼつか)ない 用例:枕草子−三七「花びらのはしに、をかしき匂ひこそ、心もとなうつきためれ」 
★上代の「うら(心)もとなし」と同構成。「もとなし」は「もと(根元・根拠)無し」で、むやみ、無性なさま、自己の制御のきかないさまをいい、副詞「もとな」の同類という<国語大辞典(小)>

−−−−−−−こころ(や)(#kokoro8)−−−−−−−
・心行くまで
(こころゆくまで)[=ばかり] 誰にも妨げられずに、十分満足するところまで。十分に堪能(たんのう)するまで。

−−−−−−−こころ(を)(#kokorowo)−−−−−−−
・心を入れ替える(こころをいれかえる) 今までのことを反省し、考えや態度を改める。
・心を奪う
(こころをうばう) 人の心をひきつける。魅了する。
・心を鬼にする
(こころをおににする) 気の毒に思いながら、その人のためを思ってやむなく厳しくする。
・心を砕く
(こころをくだき) 1.気を揉む。心配する。2.気を配る。苦心する。真心を尽くす。 類:●気を砕く
・心を以て心に伝う
(こころをもってこころにつたう) 「以心伝心」の訓読み。 出典:「伝燈録
・心を許す
(こころをゆるす) 1.心の緊張を弛(ゆる)めて、人に打ち解ける。納得する。特に、愛情を受け入れる。 用例:万葉−六一九「まそ鏡磨ぎし情乎(こころヲ)縦(ゆるし)てしその日の極み」 2.心の緊張を弛(ゆる)めて、必要な注意を怠(おこた)る。気を許す。 類:●油断する 用例:源氏−夕霧「たはやすく心ゆるされぬことはあらじ」 3.心に任せて縦(ほしいまま)にする。 用例:読・
雨月物語−青頭巾「心放(ユル)せば妖魔となり」 用例の出典:雨月物語(うげつものがたり) 江戸中期の読本。5巻。上田秋成作。正称「近古奇談雨月物語」。安永5年(1776)。「剪灯新話(せんとうしんわ)」など中国小説の翻案が多い怪異小説集。「白峰」「浅茅が宿」など9編を収める。

−−−−−−−ここ(を)(#kokowo)−−−−−−−
・ここを最後
(ここをさいご) 死力を尽くして戦うべき最後の場。ここが瀬戸際だと思って死力を尽くすこと。 用例:平家−八「ここを最後と攻め戦ふ」
・ここを先途
(ここをせんど)[=先(せん) ここが、勝敗や運命などを左右する極めて大事な場面である。 用例:謡曲・夜討曾我「われら兄弟討たんとて<略>ここを先途と見えたるぞや」
・ここを踏んだら彼所が上がる
(ここをふんだらあちらがあがる) あれこれ互いに影響し合う。また、一方が良ければ一方が悪く、ものごとは中々全てが巧くゆくという訳にいかないこと。 類:●あちらを立てればこちらが立たず

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